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015 再び
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「皇后陛下」
背後から声がかかり、振り返るとエミリアが手紙を差し出した。
「アンダルシア王国より、使節団が今夜遅くに到着するとの報せが届きました。王子殿下も使節団とご一緒にご到着されるとのことです」
「……そう」
唇の内側を、ほんのわずかに噛む。
彼女は静かに紙を受け取り、目を落とした。
《今夜、戻ります。早くルシェル様にお会いしたいです。月が天頂に昇る頃、あの庭園でお待ちしています》
(ゼノン様……)
その名を心の中で呼ぶだけで、胸の奥の温度が変わるのが分かる。
――ふわり。
風もないのに、すぐ脇の窓辺を、小さな銀の光が掠めた気がした。
(……蝶?)
けれど見たのは一瞬で、次の瞬間には何も残っていなかった。
「エミリア、少し一人にしてくれる?」
「かしこまりました」
エミリアは軽く一礼し、その場を離れた。
残されたルシェルは、手紙を胸に抱えたまま、そっと目を伏せる。
今夜、彼が来る。それはただの外交に過ぎないけれどーーそれ以上にしてはいけない。わかっている。
けれど、胸の奥に芽生え始めた感情を振り払うことができなかった。
***
夜が深まりゆくにつれ、宮殿の空気はさらに張りつめていった。
だが、その張りつめた静けさの中に、ルシェルはひときわ異質な気配を感じていた。
それはかつて胸の奥に宿った淡い光が、再び微かに灯るような感覚だった。
月が天頂に昇る頃、ルシェルは庭園へと歩を進めた。
空気は冷たく澄んでおり、月光が石畳を銀色に照らし出している。
音もなく、風もない夜。
けれど不思議なことに、草の香りとともに、かすかな気配が確かに肌に触れる。
庭園のライラックの前で、闇をまといながらも月の光をその身に受けて立つゼノンの姿があった。
青と銀の礼装に身を包み、深い夜の闇を全て払いのけてしまうような青い瞳。
「…ゼノン様」
目の前にいる彼が、夢ではないと確かめるように、一歩だけ前へ進んだ。
「…無事到着されたようで何よりです。アンダルシアからの長旅、お疲れ様でした」
「ありがとうございます。来てくださって嬉しいです。早くルシェル様に会いたくて、急いできましたので…」
「ええ、お手紙ありがとうございました」
ゼノンはゆっくり手を差し出した。
「少し…歩きませんか?」
その手を、ルシェルはしばらく見つめた。そして、少し躊躇いながらも彼の手を取った。
隣で寄り添うように歩いている。だが、決して越えてこない。これ以上はない。
「私がいない間、お変わりありませんでしたか?」
ゼノンの問いかけに、ルシェルは目を伏せた。
「ええ。いつもと変わらぬ日々でしたよ」
「そうですか…。私は……ルシェル様のことを思わない日はありませんでしたよ」
彼の声は静かだった。けれど、その一言が胸を打つ。
「ルシェル様が笑っているか、誰かにいじめられてはいないか、また一人で泣いていないか……そればかり考えていました」
ルシェルは俯く。
「私も…あなたのことを、よく思い出していました」
唇が自然に動いていた。言葉が漏れた瞬間、自分も驚いた。
ゼノンは静かに微笑んだ。
その瞳には、慈しみと、切なさと、言葉にできない何かが揺れていた。
「この庭園は、あなたの心を映しているようですね。静かで、優しくて、そして…どこか少し寂しい」
「……寂しい…ですか…」
ルシェルは視線を遠くに向けた。
噴水の水音が、ふたりの間の沈黙をやさしく包み込む。
「明日からは、また忙しくなりますね」
ゼノンは足を止めて、振り返った。
「ええ……」
ルシェルは微笑んだ。
銀色の蝶が、再び夜空を舞ったのは、その直後のことだった。
ーー庭園の片隅で、ルシェルとゼノンは並んで腰かけた。
距離は保たれていたが、互いの体温が伝わりそうなほどの近さだった。
「……春の夜は、なんだか少し名残惜しいですね」
ルシェルの言葉に、ゼノンがそっと頷く。
「この国の春は、香りが深いです。風の中に、精霊の名残があるようにも感じます」
「精霊の名残…?」
「ええ。かつてこの地に多くの精霊たちがいた頃の名残が…この国の風に染みついている。今はもう誰もそれを知ることはできないけれど…」
ゼノンの声にはどこか懐かしさがあった。まるでそれを、知っているかのように。
「ゼノン様は…不思議な方ですね」
「そうでしょうか?」
「……時々、すべてを知っているかのような眼をなさいます。私の心の奥底まで見透かされているような……そんな気がします」
彼は少し視線を落とし、静かに笑った。
「あなたの心に触れたいと願うから、自然とそう思われるのかもしれません。けれど私にはさっぱりですよ…ただあなたを知りたりと思うだけで……本当はあなたのことを、何もわかってはいないのです」
ルシェルは返す言葉がなかった。
ゼノンがふと、彼女に視線を向けた。
「まだ…皇帝陛下を愛していらっしゃいますか?」
唐突な問いかけにルシェルは少し動揺した。今のルシェルには答えづらい質問だった。
ふと、ユリアナの言葉を思い出す。
『揺らぎがあるということは、そこになんらかの感情がある証です。自分の気持ちを蔑ろにせず、むしろその揺らぎに寄り添ってあげることが、心の平穏を保つことになるのではないかと…。ですから、どの気持ちも蔑ろにすることなく受け止め、その揺らぎと向き合うべきだと…』
(そうね、揺らいでいることは認めるべきだわ)
ルシェルは何かを決意して、そっと重い口を開いた。
「ゼノン様に出会った頃は、確かにノアを愛していました。ノアは私にとって、親友であり、同志であり、最愛の人でしたから……。いくら記憶をなくしても、いつかは元の彼に戻ってくれると信じていましたし、何より彼以外の男性の隣にいる自分が想像できませんでした。それに、私は皇后としての自分に誇りを持っています。ですが、ノアの記憶喪失以来、私は皇后としての立場すら危ういことに不安を感じていました。そんな時、ゼノン様がこの国にきて、たくさん癒しをくれました。それがどんなに心強いことだったか、きっと伝わらないでしょうけど…」
その声は、わずかに震えていた。
「だから…私は正直なところ、ゼノン様に惹かれています。ですが私は皇后として、これからもノアを支えていくつもりです。たとえ、彼の記憶がもう戻らないとしても……それが、私の勤めですから」
「……」
ゼノンは何も言わなかった。ただその横顔を、静かに見つめるばかりだった。
やがて、夜の風がふたりの間を通り抜けた。
その風の中に、微かにライラックの花の香りが混じっていた。
「ゼノン様」
「はい」
「……あなたは、どうして私にそんなにも優しくしてくださるのですか?」
その問いは、ずっと彼女の中にあったものだった。
ゼノンはしばし沈黙し、そして静かに口を開いた。
「…ただ、あなたの助けになりたい。ただ、本当にそれだけなのです。ルシェル様からしたら、出会って間もない男にこんなことを言われるのは不思議に思われるでしょうが……」
「……」
「ルシェル様は、転生や生まれ変わりを信じますか?」
思わずルシェルは彼を見つめた。
「転生…生まれ変わり…ですか?」
ゼノンは目を伏せ、微かに笑った。
「……いえ、忘れてください。ただ、私が言いたかったのは…そういうものを信じてしまうほどに、私はルシェル様に心惹かれているということです」
それ以上、彼は何も語らなかった。
ふたりの間に流れる空気は、穏やかで、そして切なかった。
ーー数日後。
宮廷は一転して賑やかさを増し、使節団の迎え入れ準備が本格化していた。
ルシェルは朝の儀礼を終え、謁見の間で各国の使節との対面に備えていた。
控えの間で待機していたエミリアが、ルシェルにそっと声をかける。
「皇后陛下。各国の使節団が正門を通過しました。お迎えのご準備を」
「ええ」
ルシェルはゆっくりと立ち上がり、礼装の裾を整えた。
あの夜の月明かりが、まだ瞼の裏に残っている。
背後から声がかかり、振り返るとエミリアが手紙を差し出した。
「アンダルシア王国より、使節団が今夜遅くに到着するとの報せが届きました。王子殿下も使節団とご一緒にご到着されるとのことです」
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彼女は静かに紙を受け取り、目を落とした。
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――ふわり。
風もないのに、すぐ脇の窓辺を、小さな銀の光が掠めた気がした。
(……蝶?)
けれど見たのは一瞬で、次の瞬間には何も残っていなかった。
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「かしこまりました」
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残されたルシェルは、手紙を胸に抱えたまま、そっと目を伏せる。
今夜、彼が来る。それはただの外交に過ぎないけれどーーそれ以上にしてはいけない。わかっている。
けれど、胸の奥に芽生え始めた感情を振り払うことができなかった。
***
夜が深まりゆくにつれ、宮殿の空気はさらに張りつめていった。
だが、その張りつめた静けさの中に、ルシェルはひときわ異質な気配を感じていた。
それはかつて胸の奥に宿った淡い光が、再び微かに灯るような感覚だった。
月が天頂に昇る頃、ルシェルは庭園へと歩を進めた。
空気は冷たく澄んでおり、月光が石畳を銀色に照らし出している。
音もなく、風もない夜。
けれど不思議なことに、草の香りとともに、かすかな気配が確かに肌に触れる。
庭園のライラックの前で、闇をまといながらも月の光をその身に受けて立つゼノンの姿があった。
青と銀の礼装に身を包み、深い夜の闇を全て払いのけてしまうような青い瞳。
「…ゼノン様」
目の前にいる彼が、夢ではないと確かめるように、一歩だけ前へ進んだ。
「…無事到着されたようで何よりです。アンダルシアからの長旅、お疲れ様でした」
「ありがとうございます。来てくださって嬉しいです。早くルシェル様に会いたくて、急いできましたので…」
「ええ、お手紙ありがとうございました」
ゼノンはゆっくり手を差し出した。
「少し…歩きませんか?」
その手を、ルシェルはしばらく見つめた。そして、少し躊躇いながらも彼の手を取った。
隣で寄り添うように歩いている。だが、決して越えてこない。これ以上はない。
「私がいない間、お変わりありませんでしたか?」
ゼノンの問いかけに、ルシェルは目を伏せた。
「ええ。いつもと変わらぬ日々でしたよ」
「そうですか…。私は……ルシェル様のことを思わない日はありませんでしたよ」
彼の声は静かだった。けれど、その一言が胸を打つ。
「ルシェル様が笑っているか、誰かにいじめられてはいないか、また一人で泣いていないか……そればかり考えていました」
ルシェルは俯く。
「私も…あなたのことを、よく思い出していました」
唇が自然に動いていた。言葉が漏れた瞬間、自分も驚いた。
ゼノンは静かに微笑んだ。
その瞳には、慈しみと、切なさと、言葉にできない何かが揺れていた。
「この庭園は、あなたの心を映しているようですね。静かで、優しくて、そして…どこか少し寂しい」
「……寂しい…ですか…」
ルシェルは視線を遠くに向けた。
噴水の水音が、ふたりの間の沈黙をやさしく包み込む。
「明日からは、また忙しくなりますね」
ゼノンは足を止めて、振り返った。
「ええ……」
ルシェルは微笑んだ。
銀色の蝶が、再び夜空を舞ったのは、その直後のことだった。
ーー庭園の片隅で、ルシェルとゼノンは並んで腰かけた。
距離は保たれていたが、互いの体温が伝わりそうなほどの近さだった。
「……春の夜は、なんだか少し名残惜しいですね」
ルシェルの言葉に、ゼノンがそっと頷く。
「この国の春は、香りが深いです。風の中に、精霊の名残があるようにも感じます」
「精霊の名残…?」
「ええ。かつてこの地に多くの精霊たちがいた頃の名残が…この国の風に染みついている。今はもう誰もそれを知ることはできないけれど…」
ゼノンの声にはどこか懐かしさがあった。まるでそれを、知っているかのように。
「ゼノン様は…不思議な方ですね」
「そうでしょうか?」
「……時々、すべてを知っているかのような眼をなさいます。私の心の奥底まで見透かされているような……そんな気がします」
彼は少し視線を落とし、静かに笑った。
「あなたの心に触れたいと願うから、自然とそう思われるのかもしれません。けれど私にはさっぱりですよ…ただあなたを知りたりと思うだけで……本当はあなたのことを、何もわかってはいないのです」
ルシェルは返す言葉がなかった。
ゼノンがふと、彼女に視線を向けた。
「まだ…皇帝陛下を愛していらっしゃいますか?」
唐突な問いかけにルシェルは少し動揺した。今のルシェルには答えづらい質問だった。
ふと、ユリアナの言葉を思い出す。
『揺らぎがあるということは、そこになんらかの感情がある証です。自分の気持ちを蔑ろにせず、むしろその揺らぎに寄り添ってあげることが、心の平穏を保つことになるのではないかと…。ですから、どの気持ちも蔑ろにすることなく受け止め、その揺らぎと向き合うべきだと…』
(そうね、揺らいでいることは認めるべきだわ)
ルシェルは何かを決意して、そっと重い口を開いた。
「ゼノン様に出会った頃は、確かにノアを愛していました。ノアは私にとって、親友であり、同志であり、最愛の人でしたから……。いくら記憶をなくしても、いつかは元の彼に戻ってくれると信じていましたし、何より彼以外の男性の隣にいる自分が想像できませんでした。それに、私は皇后としての自分に誇りを持っています。ですが、ノアの記憶喪失以来、私は皇后としての立場すら危ういことに不安を感じていました。そんな時、ゼノン様がこの国にきて、たくさん癒しをくれました。それがどんなに心強いことだったか、きっと伝わらないでしょうけど…」
その声は、わずかに震えていた。
「だから…私は正直なところ、ゼノン様に惹かれています。ですが私は皇后として、これからもノアを支えていくつもりです。たとえ、彼の記憶がもう戻らないとしても……それが、私の勤めですから」
「……」
ゼノンは何も言わなかった。ただその横顔を、静かに見つめるばかりだった。
やがて、夜の風がふたりの間を通り抜けた。
その風の中に、微かにライラックの花の香りが混じっていた。
「ゼノン様」
「はい」
「……あなたは、どうして私にそんなにも優しくしてくださるのですか?」
その問いは、ずっと彼女の中にあったものだった。
ゼノンはしばし沈黙し、そして静かに口を開いた。
「…ただ、あなたの助けになりたい。ただ、本当にそれだけなのです。ルシェル様からしたら、出会って間もない男にこんなことを言われるのは不思議に思われるでしょうが……」
「……」
「ルシェル様は、転生や生まれ変わりを信じますか?」
思わずルシェルは彼を見つめた。
「転生…生まれ変わり…ですか?」
ゼノンは目を伏せ、微かに笑った。
「……いえ、忘れてください。ただ、私が言いたかったのは…そういうものを信じてしまうほどに、私はルシェル様に心惹かれているということです」
それ以上、彼は何も語らなかった。
ふたりの間に流れる空気は、穏やかで、そして切なかった。
ーー数日後。
宮廷は一転して賑やかさを増し、使節団の迎え入れ準備が本格化していた。
ルシェルは朝の儀礼を終え、謁見の間で各国の使節との対面に備えていた。
控えの間で待機していたエミリアが、ルシェルにそっと声をかける。
「皇后陛下。各国の使節団が正門を通過しました。お迎えのご準備を」
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