まだまだこれからだ!

九重

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第一章 異世界の住人はとても個性的でした。

魔女と女騎士2

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「な、何でワシの温泉にあんな”モノ”が浮かんでおるのじゃ!?」

 ディアナが怒鳴る。

「フム。土左衛門かな?」

 動じぬウルフィアは、歴戦の騎士だ。今更死体の一つや二つどうということもない。
 とんでもないと、ディアナは怒った。

「ワシの温泉にケチが付く! さっさと拾わんか!」

 何で私がと、思わぬでもなかったが、まさかディアナに拾わせるわけにもいかないかと、ウルフィアは腰を庇いながらも温泉に入り死体を拾う。

「おや?」

 素っ裸の死体を引っ張り上げながら、ふと違和感を感じた。 おもむろにあまり大きくない胸に耳を当てる。

「ディアナ、この死体生きておるぞ」

 ウルフィアの耳に、はっきりと心臓の鼓動が聞こえた。
 ディアナの顔が、嫌そうに歪む。

「もう暫く……死ぬまで捨てておけ!」

 そう怒鳴り返された。
 まさかそうもいくまいと、ウルフィアは死体――――元へ、気絶している女性を抱えてディアナの元に戻る。彼女の体は、びっくりするくらい軽かった。 

「フム。この軽さは子供かな?」

 そう思わざるを得ないほど華奢な体だ。
 ウルフィアは、嫌そうなディアナの足元に女性の体を横たえた。
 とりあえず気道を確保するため顎を上に上げる。
 無理に水を吐かせる事は、かえって嘔吐物を喉に詰まらせる事があるから危険なのだ。
 口元に耳を寄せれば、女性はしっかりと呼吸していた。胸の上下も規則正しい。
 さほど心配いらないと、何度も死線をくぐり抜けてきたウルフィアは判断した。

「ディアナ、あなたのローブを貸してくれ」

「何でワシが……」

 ブツブツ言いながらも、ディアナは黒いローブを脱いでこちらに寄越してきた。
 それをウルフィアは、女の体にグルグル巻きで巻きつける。

「全くとんだ厄介者が一緒に付いて来てしまったものじゃ。ワシの一世一代の魔法が台無しじゃ」

 ローブを脱ぎ寒そうに体を震わせたディアナが不満をこぼす。

「この少女が、あなたの召喚魔法に巻き込まれてここにいるという事実は、認められるのだな?」

 ウルフィアが確認すれば、ディアナはフンと鼻を鳴らした。

「何もないところに今までいなかった者を呼び寄せるような大がかりな魔法を使える者はワシ以外におらぬからな」

 大威張りで話すディアナ。
 ここは威張れないところだろうと、ウルフィアは頭を抱えた。

「では、当然彼女の面倒は、あなたが見るのだろう?」

「何でそうなる? 身元不明の不審人物の保護など役人の仕事であろう」

「この村の役人が、その責任を負うと思うか?」

 ウルフィアは、この長閑な村の役場にいるたった一人の役人を思い出していた。
 悪い人間ではないが、どうにもやる気というものが見えない事なかれ主義の男。
 ディアナも同じ人物を思い出したのだろう、しかめられていた顔を、なお酷くしかめた。
 そのまま何か悪態をつこうとして口を開く――――


 しかし、その口は言葉を発せずに閉じられた。
 ローブで、す巻きになっていた女性が、突如ウゥ~ッと呻いたのだ。
 ウルフィアは、落ち着いてその場から一歩下がる。
 次の瞬間、狙いすましたように、ウルフィアの下がったその場所に、気絶していた女性は、ゲェ~ッと飲んでいた水を吐き出した。

「グッ…ゲホ、ゲホ…ッ!」

 逃げ損ねたディアナの足元に吐き出した水がはねた。
 ものすごい表情でディアナはウルフィアを睨みつける。
 しかし、文句を言おうとして開いた口は、また言葉を発せずに閉じられた。


「××、○△×!」


 倒れていた女性が起き上がり叫んだのだ。

「なんじゃ何と言ったんじゃ?」

「言葉が通じないのだろう」

 沈着冷静にウルフィアは事実を指摘する。
 どこからきたともわからぬ者と言葉が通じる方が不思議だった。

「なんと厄介な奴なんじゃ」

 ディアナが天を仰ぐ。


 ――――全くもって、その通りだった。

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