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第三章 魔族にもいろいろあるようです。
いざ魔界へ!
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結論から言えば、暖は、魔界に行くことになった。
苦渋の決断をしたダンケルは、暖に対し魔界に入ったら絶対自分から離れるなと、くどいほどに注意してくる。
「お前が俺の庇護下を離れて、万が一にでも攻撃されたら……魔界が滅ぶ」
ダンケルの表情は真剣で冗談を言っている雰囲気は少しもない。
暖だって、自分が原因で魔族が全滅するのは嫌だった。
だから、ここは反論せずに素直に頷く。
本当は、防御用として暖にかける魔法や加護をもう少し威力の少ないものにすればいいのだろうが、それは何としても、リオールたちが頷かなかった。
それどころか――――
「ウララ、これはドワーフ特製の爆弾だ。叩きつければどんな岩盤もあっという間に砕く。こっちは追尾機能付きの投石器。一度狙った相手は地獄の底まで追いかける。どちらもドワーフ一族門外不出の武器だが、遠慮せずに持って行け」
自信満々にネモが差し出してくる武器に、暖の顔はひきつった。
そんな凶悪な武器を使いたくない。
「モ、モウ、充分ダカラ」
「何を言う! 俺は、他の皆と違い魔法が使えないから、これくらいしかしてやれることが無いんだ。頼むから持って行ってくれ! ……本当はこんな武器ではなく、一緒について行って直接守ってやりたいんだが、竜の加護が発動するまでは魔界に入れないというのだから仕方ない。俺は、魔法では魔女や竜、エルフには勝てない。しかしいざ乱戦になればドワーフほど頼りになる者はいない! 俺が一番に活躍するからな! 楽しみにしていろ」
胸をドンと叩きネモはふんぞり返る。
「……勘弁してくれ」
ダンケルは、頭を抱えた。
そしてそれから三日後、似たようなお見送りを村のあちこちで受けて、暖はようやく旅立つ。
この村の住人は、ほとんどお年寄りなのに「ウララのためなら、魔族の一人や二人、軽くやっつけてやるからな」と言ってくれる優しい人たちばかりだった。
(みんな、最初に出会った時は足腰が痛かったり動悸や息切れがしたりで心配な人ばかりだったのに、いつの間にか元気になってくれて)
気持ちだけでも嬉しいと暖は思う。
「無理、シナイデ」
「無理なんてしないさ。これもみんなウララのおかげだよ」
優しい村人たちの見送りで、暖は泣きそうだ。
「……これで、自覚がないんだからな」
隣でダンケルがブツブツと何か呟いていたが、涙をこらえる暖には聞こえなかった。
最後にもう一度と、念入りにディアナやギオル、リオールやラミアーが防御魔法を重ねがけしてくれる。
「いい加減にしろ!」
怒鳴ったダンケルが袋叩きにされたりするエピソードもあったが――――暖はなんとか無事に旅立った。
この世界に来てからはじめての、村の外である。
眼下に広がる広大な景色と予想以上に多い家々に、暖は目を奪われる。
「魔界、遠イ?」
「あぁ。地の果てなんだが――――」
ワクワクしながら問いかける暖に、ダンケルは顔を青ざめさせながら答える。
声にも今ひとつ元気がないように聞こえる。
それもそのはず、暖とダンケルは現在竜の背に乗っていた。
『俺の翼なら、魔界までひとっ飛びだ。あっという間に連れて行ってやる』
長い首を曲げて、背中に乗っている暖の方を見てくるのは、以前会ったことのあるスウェンだ。
親切にも彼は暖を送ってくれるのだと言う。
『ギオルと、約束したんだ。今のあいつは制約であの村から出るわけにはいかないから、外では俺がお前を守ると』
認知症を患っていたギオルは、まだ正気が残っていた頃に決して村から出ないという制約を自ら課すことで、あの村での生活を許されていた。
認知症の症状は改善されたが、制約はまだ解除されていない。
竜玉の力が発揮されれば、その制約も吹き飛ぶそうだが、現段階でギオルが外に出ることはできなかった。
このためスウェンは、わざわざ村まで暖を送りに来てくれたのだ。
力強い竜の翼は、易々と風を従える。
ダンケルが風よけの魔法をかけてくれているため寒さも風圧も感じずにすみ、空の旅はすこぶる快適だ。
高く険しい山々も、あっという間に飛び越え、過ぎ去って行った。
「いいか、本当に途中まででいいからな! 竜の背に乗って帰還などしたら間違いなく攻撃される!」
しかし、楽な空の旅にもかかわらずダンケルの顔はひどく強張っている。
なんでも竜と魔族は長年の仇敵で、魔族が竜の背に乗るなど天地がひっくり返っても決してあるはずのないことなのだとか。
「俺が竜に乗るなんて、冗談にしても笑えない。こんなところを仲間に見られたら――――」
ブツブツと呟くダンケル。
スウェンは、ダンケルの言葉など、どこ吹く風だった。
『魔族の攻撃など脅威でもなんでもないぞ。そんなものこの俺に当たるものか』
悠々と飛びながらそんなことを言ってくる。
「当たらなくても、攻撃の余波を察知して、ウララの報復魔法が発動したらどうするつもりだ!?」
暖への攻撃に自動で報復する防御魔法。
その報復が直撃でしか発動しないとは限らない。
いったいどれだけの距離で攻撃されたら発動するのか全く不明なのだ。
「あの魔女もエルフも竜も、絶対直撃以外の攻撃にも報復魔法をかけているに違いないんだ!」
ダンケルは、確信をもって言い切る。
「本当にやり過ぎなんだ!」
怒鳴るダンケルに対し、スウェンは楽しそうに笑った。
『ギオルがそんなに好戦的なのは久し振りだ。――――最近は何に対してもまったくやる気がなかったからな。奴のそんな態度が見られただけでも、俺は嬉しい』
上機嫌なスウェンは、クルリと宙がえりをする。
遊園地のジェットコースターのようで、暖は思わず声を上げて笑った。
反対にダンケルは「うわっ!」と情けない悲鳴を上げる。
「私モ、嬉シイ、デス」
確かにやり過ぎだとは思うけど、ギオルが元気になったことは単純に嬉しいことだ。
『そうだ! この際、俺も一つ自動報復魔法を追加してやろう』
良いことを思いついたというように、スウェンが提案する。
「止めろ! 本気で魔界を滅ぼす気か!」
ダンケルの悲痛な叫びが、ひつじ雲の広がる空に響き渡っていった。
苦渋の決断をしたダンケルは、暖に対し魔界に入ったら絶対自分から離れるなと、くどいほどに注意してくる。
「お前が俺の庇護下を離れて、万が一にでも攻撃されたら……魔界が滅ぶ」
ダンケルの表情は真剣で冗談を言っている雰囲気は少しもない。
暖だって、自分が原因で魔族が全滅するのは嫌だった。
だから、ここは反論せずに素直に頷く。
本当は、防御用として暖にかける魔法や加護をもう少し威力の少ないものにすればいいのだろうが、それは何としても、リオールたちが頷かなかった。
それどころか――――
「ウララ、これはドワーフ特製の爆弾だ。叩きつければどんな岩盤もあっという間に砕く。こっちは追尾機能付きの投石器。一度狙った相手は地獄の底まで追いかける。どちらもドワーフ一族門外不出の武器だが、遠慮せずに持って行け」
自信満々にネモが差し出してくる武器に、暖の顔はひきつった。
そんな凶悪な武器を使いたくない。
「モ、モウ、充分ダカラ」
「何を言う! 俺は、他の皆と違い魔法が使えないから、これくらいしかしてやれることが無いんだ。頼むから持って行ってくれ! ……本当はこんな武器ではなく、一緒について行って直接守ってやりたいんだが、竜の加護が発動するまでは魔界に入れないというのだから仕方ない。俺は、魔法では魔女や竜、エルフには勝てない。しかしいざ乱戦になればドワーフほど頼りになる者はいない! 俺が一番に活躍するからな! 楽しみにしていろ」
胸をドンと叩きネモはふんぞり返る。
「……勘弁してくれ」
ダンケルは、頭を抱えた。
そしてそれから三日後、似たようなお見送りを村のあちこちで受けて、暖はようやく旅立つ。
この村の住人は、ほとんどお年寄りなのに「ウララのためなら、魔族の一人や二人、軽くやっつけてやるからな」と言ってくれる優しい人たちばかりだった。
(みんな、最初に出会った時は足腰が痛かったり動悸や息切れがしたりで心配な人ばかりだったのに、いつの間にか元気になってくれて)
気持ちだけでも嬉しいと暖は思う。
「無理、シナイデ」
「無理なんてしないさ。これもみんなウララのおかげだよ」
優しい村人たちの見送りで、暖は泣きそうだ。
「……これで、自覚がないんだからな」
隣でダンケルがブツブツと何か呟いていたが、涙をこらえる暖には聞こえなかった。
最後にもう一度と、念入りにディアナやギオル、リオールやラミアーが防御魔法を重ねがけしてくれる。
「いい加減にしろ!」
怒鳴ったダンケルが袋叩きにされたりするエピソードもあったが――――暖はなんとか無事に旅立った。
この世界に来てからはじめての、村の外である。
眼下に広がる広大な景色と予想以上に多い家々に、暖は目を奪われる。
「魔界、遠イ?」
「あぁ。地の果てなんだが――――」
ワクワクしながら問いかける暖に、ダンケルは顔を青ざめさせながら答える。
声にも今ひとつ元気がないように聞こえる。
それもそのはず、暖とダンケルは現在竜の背に乗っていた。
『俺の翼なら、魔界までひとっ飛びだ。あっという間に連れて行ってやる』
長い首を曲げて、背中に乗っている暖の方を見てくるのは、以前会ったことのあるスウェンだ。
親切にも彼は暖を送ってくれるのだと言う。
『ギオルと、約束したんだ。今のあいつは制約であの村から出るわけにはいかないから、外では俺がお前を守ると』
認知症を患っていたギオルは、まだ正気が残っていた頃に決して村から出ないという制約を自ら課すことで、あの村での生活を許されていた。
認知症の症状は改善されたが、制約はまだ解除されていない。
竜玉の力が発揮されれば、その制約も吹き飛ぶそうだが、現段階でギオルが外に出ることはできなかった。
このためスウェンは、わざわざ村まで暖を送りに来てくれたのだ。
力強い竜の翼は、易々と風を従える。
ダンケルが風よけの魔法をかけてくれているため寒さも風圧も感じずにすみ、空の旅はすこぶる快適だ。
高く険しい山々も、あっという間に飛び越え、過ぎ去って行った。
「いいか、本当に途中まででいいからな! 竜の背に乗って帰還などしたら間違いなく攻撃される!」
しかし、楽な空の旅にもかかわらずダンケルの顔はひどく強張っている。
なんでも竜と魔族は長年の仇敵で、魔族が竜の背に乗るなど天地がひっくり返っても決してあるはずのないことなのだとか。
「俺が竜に乗るなんて、冗談にしても笑えない。こんなところを仲間に見られたら――――」
ブツブツと呟くダンケル。
スウェンは、ダンケルの言葉など、どこ吹く風だった。
『魔族の攻撃など脅威でもなんでもないぞ。そんなものこの俺に当たるものか』
悠々と飛びながらそんなことを言ってくる。
「当たらなくても、攻撃の余波を察知して、ウララの報復魔法が発動したらどうするつもりだ!?」
暖への攻撃に自動で報復する防御魔法。
その報復が直撃でしか発動しないとは限らない。
いったいどれだけの距離で攻撃されたら発動するのか全く不明なのだ。
「あの魔女もエルフも竜も、絶対直撃以外の攻撃にも報復魔法をかけているに違いないんだ!」
ダンケルは、確信をもって言い切る。
「本当にやり過ぎなんだ!」
怒鳴るダンケルに対し、スウェンは楽しそうに笑った。
『ギオルがそんなに好戦的なのは久し振りだ。――――最近は何に対してもまったくやる気がなかったからな。奴のそんな態度が見られただけでも、俺は嬉しい』
上機嫌なスウェンは、クルリと宙がえりをする。
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反対にダンケルは「うわっ!」と情けない悲鳴を上げる。
「私モ、嬉シイ、デス」
確かにやり過ぎだとは思うけど、ギオルが元気になったことは単純に嬉しいことだ。
『そうだ! この際、俺も一つ自動報復魔法を追加してやろう』
良いことを思いついたというように、スウェンが提案する。
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