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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
単身赴任をするそうです
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その後の戦いの顛末を詳しく語る必要はないだろう。
暖が自分の意思でこの世界に残ることを決めた姿を見た魔王は、めっきり大人しくなり、抵抗らしい抵抗もせずに魔王城の地下牢へ封じられる。
魔王が消え、ダンケルが名実ともに魔界のトップとなったため、戦いは急速に終息した。
「ウララ、私のためにこの世界に残ってくれて嬉しいです」
崩れかかった魔王城から出て、王宮前の広場に集った仲間たち。
ニコニコと笑うリオールが、アルディアの隣に立つ暖の手をそう言いながら握ってくる。
「誰がお前のためだ?」
アルディアは、不機嫌そうにリオールを睨んだ。
「死にぞこないの王子――――いえ、王は黙っていてください。まあ今回の功績を認めて、今すぐ息の根を止めることはしないでおきますが、ウララがこちらに残ると決めたのなら本当の勝負はこれからです。……ウララ、雰囲気に呑まれてうっかりしてしまった愛の告白なんかは全然気にしなくていいですからね。私とこれから、じっくりゆっくり永遠の愛を育みましょうね」
暖の手を自分の口元に引き寄せたリオールは、上目づかいのキスをする。
クラクラするような色気だった。
『ふむ。確かに人族の愛は移ろいやすいと聞く。比べて竜は、玉を預けたただ一人を生涯愛し抜く一族だ。ウララ、我と末永く幸せになろうな』
長い首を折り曲げギオルまでそう言ってきた。
一層不機嫌そうな顔になったアルディアが、暖の腰に手を回し自分の方に引き寄せる。
「愛だの恋だのはどうでもいいが。ウララはちゃんと村に帰ってくるんだろうな? 人の王になった王子は、これまでのようには村におられんのだろう? ……だからといってウララを人の城なんぞに閉じ込めるのなら、俺は、今度は人間相手に戦うぞ!」
戦斧を握り締めたネモが前に出て、アルディアを睨みつけた。
「まあ! 今度は人間相手に戦えるのぉ? 人間の血は魔族よりうんと美味しいからぁ、私も次は真面目にやるわよぉ」
今回の戦いは不真面目だったと告白したも同然のラミアーの言葉だった。
しかも彼女は人の血は吸わないのではなかったか?
「ふむ。それはわしとしても気になるところじゃのぅ」
これ見よがしに杖を握ったディアナが、横目でアルディアを見てくる。
アルディアは「ハァ~」と大きなため息をついた。
「わかっている。今回、私が王となったのは、あくまでウララを奪い返すための手段だ。無事にウララを保護したら、さっさと王位を返上してウララと一緒に村に帰るつもりだった……のだが――――」
アルディアの言葉を聞いて、いつの間にか近くに来ていたサーバスが焦った顔で首をブンブンと横に振る。
「王位返上なんて! そんなこと簡単にできるはずないでしょう!」
サーバスに諌められ、アルディアは嫌そうに顔をしかめた。
「――――残念ながらサーバスの言う通りだ。仕方ないので退位するまで当分私は村から王宮へ単身赴任になる。まあ、できるだけ急いで数年以内には玉座を兄に押し付けるつもりでいるがな」
「単身赴任!?」
暖は、素っ頓狂な声をあげた。
単身赴任とは、家族のある人が家族を伴わず一人で勤務地に赴くことである。
「ふむ。ウララを人間の王妃にしたいなんぞという世迷いごとを言い出さなかっただけ、合格点じゃな」
偉そうにディアナが評した。
「そんな、ウララを王妃という名で人間の国に囲うような真似をしたら魔王の二の舞だ。今度は、人間対他種族の戦いに突入してしまう。私はそんな勝ち目のない戦はしない。……ああでも、ウララの夫の座は譲らないからそのつもりで。結婚式は帰って直ぐにでも挙げる。……もちろん、ただのアルディアとウララとしてになるがな」
きっぱりとアルディアは、そう宣言した。
「結婚式? ……単身赴任?」
暖は、目をしろくろさせる。
そんな、一国の王が普通の一個人として結婚して、しかも単身赴任なんてことができるのだろうか?
しかし、聞いている暖以外の者は、誰も異論を唱えないのでこれはこれとしてありなのかもしれない。
(異世界の常識、おかしすぎでしょう!?)
心の中でツッコんでしまった。
「私のことより、そちらはどうなんだ? 『落ちたる竜王』や『エルフの失われた王』の復位を望む声が、竜の国やエルフの国で上がりはじめていると聞いているぞ。……もちろん『神を堕落させた吸血姫』の帰還を望む声も」
アルディアの言葉に、今度はリオールとギオル、ラミアーが嫌そうに顔をしかめる。
『そんな竜王は知らんな』
「エルフの失われた王なんて、子供のおとぎ話ですよ」
「面倒なのは嫌いなのよぉ」
三人が三人とも目を逸らした。
病気が治ったことから、それぞれの故国から帰ってきてほしいと願われているギオルたちだが、彼らに応えるつもりはないようだ。
それもそれで良いのだろうか?
「魔族との約束も忘れるな。ウララは定期的に魔界に通ってもらうからな」
少し離れて立っていたダンケルが念を押すように話しかけてきた。
話し合いの結果、月に十日ほど暖は魔界で治療をすることが決まっている。
「わかっている」と、煩そうにアルディアが答えた。
「ウララ、待っているから必ず来てね」
モノアが一つ目をウルウルさせながら頼んでくる。
モノアの隣には、正妃が立っていた。
魔界の後宮は今の体勢のまま、いったんダンケルの預かりとなるのだそうだ。
ダンケルが魔王となったことにより、徐々に変わっていくことだろう。
「絶対来ル! カラ、シッカリ食ベル、約束!」
暖の言葉にモノアは大きく頷いた。正妃も静かに頭を下げる。
ブラットやイノトのような者たちも、ダンケルが責任を持って教育し直すと約束してくれた。
たいへんだろうが頑張ってもらう以外の方法はない。
「行こう、ウララ」
ずっと腰を抱いたままだったアルディアが、焦れたように暖の体を引き寄せた。
「きゃっ! アルディア!」
態勢を崩した暖を、アルディアは嬉しそうに抱きしめる。
彼の後ろで警護をしていたウルフィアが呆れたように苦笑をもらした。
「帰還するぞ! 人間の国に!」
暖を抱いたままアルディアは、大号令をかける。
その後、彼女の耳元で小さく囁いてきた。
「……帰ろう。あの村へ」
微笑み大きく頷く暖だった。
暖が自分の意思でこの世界に残ることを決めた姿を見た魔王は、めっきり大人しくなり、抵抗らしい抵抗もせずに魔王城の地下牢へ封じられる。
魔王が消え、ダンケルが名実ともに魔界のトップとなったため、戦いは急速に終息した。
「ウララ、私のためにこの世界に残ってくれて嬉しいです」
崩れかかった魔王城から出て、王宮前の広場に集った仲間たち。
ニコニコと笑うリオールが、アルディアの隣に立つ暖の手をそう言いながら握ってくる。
「誰がお前のためだ?」
アルディアは、不機嫌そうにリオールを睨んだ。
「死にぞこないの王子――――いえ、王は黙っていてください。まあ今回の功績を認めて、今すぐ息の根を止めることはしないでおきますが、ウララがこちらに残ると決めたのなら本当の勝負はこれからです。……ウララ、雰囲気に呑まれてうっかりしてしまった愛の告白なんかは全然気にしなくていいですからね。私とこれから、じっくりゆっくり永遠の愛を育みましょうね」
暖の手を自分の口元に引き寄せたリオールは、上目づかいのキスをする。
クラクラするような色気だった。
『ふむ。確かに人族の愛は移ろいやすいと聞く。比べて竜は、玉を預けたただ一人を生涯愛し抜く一族だ。ウララ、我と末永く幸せになろうな』
長い首を折り曲げギオルまでそう言ってきた。
一層不機嫌そうな顔になったアルディアが、暖の腰に手を回し自分の方に引き寄せる。
「愛だの恋だのはどうでもいいが。ウララはちゃんと村に帰ってくるんだろうな? 人の王になった王子は、これまでのようには村におられんのだろう? ……だからといってウララを人の城なんぞに閉じ込めるのなら、俺は、今度は人間相手に戦うぞ!」
戦斧を握り締めたネモが前に出て、アルディアを睨みつけた。
「まあ! 今度は人間相手に戦えるのぉ? 人間の血は魔族よりうんと美味しいからぁ、私も次は真面目にやるわよぉ」
今回の戦いは不真面目だったと告白したも同然のラミアーの言葉だった。
しかも彼女は人の血は吸わないのではなかったか?
「ふむ。それはわしとしても気になるところじゃのぅ」
これ見よがしに杖を握ったディアナが、横目でアルディアを見てくる。
アルディアは「ハァ~」と大きなため息をついた。
「わかっている。今回、私が王となったのは、あくまでウララを奪い返すための手段だ。無事にウララを保護したら、さっさと王位を返上してウララと一緒に村に帰るつもりだった……のだが――――」
アルディアの言葉を聞いて、いつの間にか近くに来ていたサーバスが焦った顔で首をブンブンと横に振る。
「王位返上なんて! そんなこと簡単にできるはずないでしょう!」
サーバスに諌められ、アルディアは嫌そうに顔をしかめた。
「――――残念ながらサーバスの言う通りだ。仕方ないので退位するまで当分私は村から王宮へ単身赴任になる。まあ、できるだけ急いで数年以内には玉座を兄に押し付けるつもりでいるがな」
「単身赴任!?」
暖は、素っ頓狂な声をあげた。
単身赴任とは、家族のある人が家族を伴わず一人で勤務地に赴くことである。
「ふむ。ウララを人間の王妃にしたいなんぞという世迷いごとを言い出さなかっただけ、合格点じゃな」
偉そうにディアナが評した。
「そんな、ウララを王妃という名で人間の国に囲うような真似をしたら魔王の二の舞だ。今度は、人間対他種族の戦いに突入してしまう。私はそんな勝ち目のない戦はしない。……ああでも、ウララの夫の座は譲らないからそのつもりで。結婚式は帰って直ぐにでも挙げる。……もちろん、ただのアルディアとウララとしてになるがな」
きっぱりとアルディアは、そう宣言した。
「結婚式? ……単身赴任?」
暖は、目をしろくろさせる。
そんな、一国の王が普通の一個人として結婚して、しかも単身赴任なんてことができるのだろうか?
しかし、聞いている暖以外の者は、誰も異論を唱えないのでこれはこれとしてありなのかもしれない。
(異世界の常識、おかしすぎでしょう!?)
心の中でツッコんでしまった。
「私のことより、そちらはどうなんだ? 『落ちたる竜王』や『エルフの失われた王』の復位を望む声が、竜の国やエルフの国で上がりはじめていると聞いているぞ。……もちろん『神を堕落させた吸血姫』の帰還を望む声も」
アルディアの言葉に、今度はリオールとギオル、ラミアーが嫌そうに顔をしかめる。
『そんな竜王は知らんな』
「エルフの失われた王なんて、子供のおとぎ話ですよ」
「面倒なのは嫌いなのよぉ」
三人が三人とも目を逸らした。
病気が治ったことから、それぞれの故国から帰ってきてほしいと願われているギオルたちだが、彼らに応えるつもりはないようだ。
それもそれで良いのだろうか?
「魔族との約束も忘れるな。ウララは定期的に魔界に通ってもらうからな」
少し離れて立っていたダンケルが念を押すように話しかけてきた。
話し合いの結果、月に十日ほど暖は魔界で治療をすることが決まっている。
「わかっている」と、煩そうにアルディアが答えた。
「ウララ、待っているから必ず来てね」
モノアが一つ目をウルウルさせながら頼んでくる。
モノアの隣には、正妃が立っていた。
魔界の後宮は今の体勢のまま、いったんダンケルの預かりとなるのだそうだ。
ダンケルが魔王となったことにより、徐々に変わっていくことだろう。
「絶対来ル! カラ、シッカリ食ベル、約束!」
暖の言葉にモノアは大きく頷いた。正妃も静かに頭を下げる。
ブラットやイノトのような者たちも、ダンケルが責任を持って教育し直すと約束してくれた。
たいへんだろうが頑張ってもらう以外の方法はない。
「行こう、ウララ」
ずっと腰を抱いたままだったアルディアが、焦れたように暖の体を引き寄せた。
「きゃっ! アルディア!」
態勢を崩した暖を、アルディアは嬉しそうに抱きしめる。
彼の後ろで警護をしていたウルフィアが呆れたように苦笑をもらした。
「帰還するぞ! 人間の国に!」
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その後、彼女の耳元で小さく囁いてきた。
「……帰ろう。あの村へ」
微笑み大きく頷く暖だった。
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