だからウサギは恋をした

東 里胡

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第六章 ユウウツうさぎ

6-3

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「そういえば、会長、どうして一年の教室に?」

 三年生は二階だ。一年生のいる四階になんの用事があったのだろう?

「おまえが……」
「はい?」
「先週のクラス委員説明会の後、なんだか元気なかっただろ? 顔色も悪かったし、それきり生徒会室に来なくなったし」

 それきり怒ったような顔で歩き出す会長の言葉の意味をゆっくりかみしめてから。

「好きです、会長!」
「はぁ!?」
「やっぱり心配してくれていたんですね、私のこと! なのに私ってば全然それに気づけなくてごめんなさい! そうですよね、もっと早く会長に会いに行ってたら、元気になれてたし、心配かけずにすんだのに、でも」
「でも?」
「会長が私を心配して、教室まで迎えに来てくれたのは、嬉しいんです、めちゃくちゃ嬉しいんです! だから、もうね、本当に、大好きです、会長!」

 階段の踊り場で私の声がひびいた。

「心配なんかしてない! もういいから、声でかいんだって!」

 逃げるように早足になる会長の耳が、頬が赤い。

「照れないでくださいよ。そういうシャイなとこも、す」
「うるさい! 黙れ、うさぎ!」

 立ち止まった会長が私を振り向く。

「放課後、生徒会室に来い」
「え?」
「おまえの話を聞こうと思う」
「私が、会長のことをどれだけ好きかってことでしょうか? それならば、一日でも足りませんけど」
「そうじゃない。おまえの悩みだ」

 真顔になった会長の目が私の心の中までのぞきこんでいるみたい。

『友達なんて、できない。そう悩んでいる人がいるなら、直接、生徒会室まで来てください。その時は、俺が君の友達になるから、遠慮なくドアを叩いて。俺は、鈴城学園生徒会長は、ここにいる全ての友達の悩みを解決できるように、生徒会室で待っています』
 あの日の会長の挨拶が胸の奥によみがえってきて、泣き出しそうになる。
 会長、私が悩んでいたの気づいてくれていたんだ。

「行きます、必ず」

 涙が落ちる前にゴシゴシと目の周りをふいて笑ったら、会長が私の背中をポンポンと優しく叩いてから、歩き出していく。眼鏡の奥の目がほほえんでいたことがうれしくて。

「待ってください~!」

 私はまたあわてて、その背中を追いかけるのだった。
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