だからウサギは恋をした

東 里胡

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第九章 うさぎ、パニック!

9-5

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「前川ってね、うさぎちゃんとは正反対のタイプの子でさ」
「え?」
「どっちかというと、暗い子で」
「うそ?」
「ん?」
「私の知ってるサツキちゃんは、明るい子だったんです。クラスの女子の人気者みたいな、輪の真ん中にいるような子で」

 だから、サツキちゃんが言った『赤ちゃんみたい』ってつぶやきは、そのまま皆に広まった。
 サツキちゃんが言うことは、いつも正しい、そんな感じだったから。

「昔の前川のことは知らないけどね、今はあまり笑わない子だよ。ただ、一生懸命マネージャーの仕事をしてくれてるし、言葉数は少ないけど信頼をおける子なんだ。しっかりしてるから、クラス委員もやっててさ。あ、この間の定例会で知ってるか」
「はい」
「だから、さっきみたいに泣いてるの見たのはじめてで、正直驚いたけど。もう一人泣いてる子が、まさかのうさぎちゃんじゃん。それでダブルでおどろいた」

 なんだか、ビックリさせちゃってすみません。肩をすくめた私を見て、吉居先輩がまた苦笑いする。

「ごめんね、なぐさめるのが愁じゃなくってオレで」
「え?」
「愁のが良かったでしょ、うさぎちゃん的には」
「い、いえ、そんなこと!」

 プルプル首を振る私に今度はクスクスと肩を震わせて笑う。

「まあ、今日は迷った。前川をなぐさめるべきか、うさぎちゃんかって。でも、なんだかうさぎちゃんの方を放っておけなくてさ」
「え?」
「耳垂れさがったうさぎ飼ってるんだっけ?」
「はい、ホーランドロップです」
「そんな感じに見えた」

 ホーランドロップに見えた?

「うさ耳が垂れて、しょんぼりしちゃってるみたいで。オレたちの知ってるうさぎちゃんって、ホラ『会長、大好きです!』って、いつも笑顔でピョンピョン跳ねてる子だからさ」

 私のモノマネを声色を変えてまで似せてきた吉居先輩をジトッとにらむと、ゴメンゴメンと笑う。

「たまには会長じゃなくって、副会長にも頼ってよ。つうか、基本的に女の子が泣いてるの放っておけないし、近いうちに前川にも話しを聞こうと思う」

 瞬間、私の顔色が不安に変わったのを見たのだと思う。

「大丈夫、うさぎちゃんのことは話さない。たださ、うさぎちゃんはどうしたいのか教えてくれる?」
「どうしたいか?」
「そう、前川と今後どうしていきたいか」

 サツキちゃんと……? 少しだけ考えて、だけど。

「放っておいて、ほしい、です」

 それが私の心の声だ。六年前もずっと思っていたこと。
 もう放っておいてほしい、私の存在を気にしないでほしい。

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