58 / 67
第六章「博士の遺言」
6-12
しおりを挟む
「ああ、もういい加減にしてくれませんかね? チロル、君もこちらにいらっしゃい。私が強制的にこの世界を元に戻しますので」
「チロル、行っちゃダメ!」
わたしの声に首をふり、チロルは男の人の足元に並ぶ。
男の人は拳銃を構えたまま、もう片方の手で白衣ポケットから大きな石を出した。
「こんなこともあろうかと、石を持ってきて良かったです」
手のひらサイズの石は、どうやらチロルやアイルちゃんの首輪についているものと同じもののようだ。
「お二方、チロルとアイルが大変お世話になりました。なんの御礼もできませんが、せめてあなた達の生活を元に戻させていただきます」
「やめて!」
「大丈夫ですよ、痛みなど感じません。ほんの十秒後には、全てが終わってますからね」
ニヤリと笑った男の人がわたしとヒューガに向かって石をかかげる。
少しずつ黒く光り出す石。
その危ない色に、ギュッと目を閉じた時だった。
「止めなさい、西方くん」
誰かもう一人知らない男の人の声が聞こえて、わたしはそっと目を開けた。
「遅くなってすまなかったね、アイル」
穴から出てきたらしい、うちのパパよりも少し年上の白衣を着た人が、アイルちゃんを抱きしめていた。
「ヒナタ博士!」
アイルちゃんも嬉しそうに、その人に甘えている。
呆然とその様子を見守るわたしたちに気づいた博士と呼ばれたその人が、ニッコリ笑って頭を下げた。
「アイルとチロルを守って下さり、ありがとうございます」
「あ、いえ、あの」
敵意がないことに安心しながらも、何者なのかわからずにあせっているわたしたちに、博士のことを教えてくれたのは、アイルちゃんだった。
「ヒナタ博士は、アタシの飼い主のおばあちゃんの息子さんなの。ね!」
「ええ、母が亡くなってわたしがアイルの飼い主になる予定だったんですがね。研究所の方でアイルの様子に皆が騒ぎを起こしてしまって、このような状況に。あなた方を巻き込んでしまいまして、本当にすみません」
やわらかく微笑むヒナタ博士が、どこかで会ったことあるような気がして、安心する。
この人は悪い人なんかじゃない、きっと。
「チロル、行っちゃダメ!」
わたしの声に首をふり、チロルは男の人の足元に並ぶ。
男の人は拳銃を構えたまま、もう片方の手で白衣ポケットから大きな石を出した。
「こんなこともあろうかと、石を持ってきて良かったです」
手のひらサイズの石は、どうやらチロルやアイルちゃんの首輪についているものと同じもののようだ。
「お二方、チロルとアイルが大変お世話になりました。なんの御礼もできませんが、せめてあなた達の生活を元に戻させていただきます」
「やめて!」
「大丈夫ですよ、痛みなど感じません。ほんの十秒後には、全てが終わってますからね」
ニヤリと笑った男の人がわたしとヒューガに向かって石をかかげる。
少しずつ黒く光り出す石。
その危ない色に、ギュッと目を閉じた時だった。
「止めなさい、西方くん」
誰かもう一人知らない男の人の声が聞こえて、わたしはそっと目を開けた。
「遅くなってすまなかったね、アイル」
穴から出てきたらしい、うちのパパよりも少し年上の白衣を着た人が、アイルちゃんを抱きしめていた。
「ヒナタ博士!」
アイルちゃんも嬉しそうに、その人に甘えている。
呆然とその様子を見守るわたしたちに気づいた博士と呼ばれたその人が、ニッコリ笑って頭を下げた。
「アイルとチロルを守って下さり、ありがとうございます」
「あ、いえ、あの」
敵意がないことに安心しながらも、何者なのかわからずにあせっているわたしたちに、博士のことを教えてくれたのは、アイルちゃんだった。
「ヒナタ博士は、アタシの飼い主のおばあちゃんの息子さんなの。ね!」
「ええ、母が亡くなってわたしがアイルの飼い主になる予定だったんですがね。研究所の方でアイルの様子に皆が騒ぎを起こしてしまって、このような状況に。あなた方を巻き込んでしまいまして、本当にすみません」
やわらかく微笑むヒナタ博士が、どこかで会ったことあるような気がして、安心する。
この人は悪い人なんかじゃない、きっと。
33
あなたにおすすめの小説
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~
狭山ひびき
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。
そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。
「……わたしは、妖精が見えるの」
気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは――
心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる