ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

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第六章「博士の遺言」

6-12

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「ああ、もういい加減にしてくれませんかね? チロル、君もこちらにいらっしゃい。私が強制的にこの世界を元に戻しますので」
「チロル、行っちゃダメ!」

 わたしの声に首をふり、チロルは男の人の足元に並ぶ。
 男の人は拳銃を構えたまま、もう片方の手で白衣ポケットから大きな石を出した。

「こんなこともあろうかと、石を持ってきて良かったです」

 手のひらサイズの石は、どうやらチロルやアイルちゃんの首輪についているものと同じもののようだ。
 
「お二方、チロルとアイルが大変お世話になりました。なんの御礼もできませんが、せめてあなた達の生活を元に戻させていただきます」
「やめて!」
「大丈夫ですよ、痛みなど感じません。ほんの十秒後には、全てが終わってますからね」

 ニヤリと笑った男の人がわたしとヒューガに向かって石をかかげる。
 少しずつ黒く光り出す石。
 その危ない色に、ギュッと目を閉じた時だった。

「止めなさい、西方くん」

 誰かもう一人知らない男の人の声が聞こえて、わたしはそっと目を開けた。

「遅くなってすまなかったね、アイル」

 穴から出てきたらしい、うちのパパよりも少し年上の白衣を着た人が、アイルちゃんを抱きしめていた。

「ヒナタ博士!」

 アイルちゃんも嬉しそうに、その人に甘えている。
 呆然とその様子を見守るわたしたちに気づいた博士と呼ばれたその人が、ニッコリ笑って頭を下げた。

「アイルとチロルを守って下さり、ありがとうございます」
「あ、いえ、あの」

 敵意がないことに安心しながらも、何者なのかわからずにあせっているわたしたちに、博士のことを教えてくれたのは、アイルちゃんだった。

「ヒナタ博士は、アタシの飼い主のおばあちゃんの息子さんなの。ね!」
「ええ、母が亡くなってわたしがアイルの飼い主になる予定だったんですがね。研究所の方でアイルの様子に皆が騒ぎを起こしてしまって、このような状況に。あなた方を巻き込んでしまいまして、本当にすみません」

 やわらかく微笑むヒナタ博士が、どこかで会ったことあるような気がして、安心する。
 この人は悪い人なんかじゃない、きっと。




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