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13.私じゃなくても
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夕べ部屋に戻った時には確かにいたはずの高野さんが起きた時にはいなかった。
リビングには手書きのメッセージが残っていた。
『やはり東京に戻ってからの帰省だと二度手間になっちゃうんで、一足先に実家に帰ります~! 今朝母がこっちに来る用事があるというので、迎えにきてもらいました。まだ皆寝てたので、こっそり出て行くことをお許しくださいね~! あ! またゴールデンウィーク明けに榛名先輩お迎えに上がりますね! ロッジの鍵は開けっ放しで大丈夫です、後で清掃に来る人がいるんで! 荷物忘れてたら、東京戻ったらお届けしますね! 私も榛名家の一員になったみたいで、本当に楽しかったです。また、皆で遊びましょうね~!! 高野麻衣』
「なんか、あったのかな?」
美咲さんの独り言に。
「でも、ゴールデンウィーク明け、普通に祥兄迎えに来るみたいだし、変わり無さそうじゃん?」
大丈夫じゃない? と笑う洸太朗くんに、美咲さんも頷いた。
夕べのうちにタイマーを入れておいたご飯で、今朝はおにぎらずを作る。
海苔の上に、ご飯を敷いたものを用意して、夕べお風呂に入る前に作っておいた具材をのっけて食べる、好きなものを好きなだけスタイルで。
今朝、珈琲を淹れていたら祥太朗さんが「おはよう」と声をかけてくれた。
「おはようございます」と目を合わさずに返事をし、隣をすり抜ける。
何か話しがあるような、そんな気がしたけれど、今の私にはそれに応えることはできなかった。
朝ごはんを終え、帰り支度を始め、いよいよ車に移動する時になって、私はチラリとマスターの顔を見る。
マスターは、大丈夫、と少し微笑んでから。
「あのさ、明日から休んだ分ちょっと忙しくてさ、夜も予約で連日埋まってて。風花さんにお願いしたら手伝ってくれることになったんだけどさ」
美咲さんも勇気さんも祥太朗さんも、桃ちゃんや洸太朗くんも、一体今更何の話だとばかりに不思議そうな顔をしている。
「ゴールデンウィーク明けまで、風花さん借りてもいい?」
「いや、借りてもいい? って仕事でしょ? いつものことじゃない」
「連日遅いなら、俺迎えに行くよ? つうか、忙しいなら俺も手伝おうか? 皿洗いくらいはできるし」
祥太朗さんの優しさにズキンと胸が痛む。
違う、違うの、祥太朗さん、そうじゃなくて。
「榛名家の食事係、ゴールデンウィークの間だけでも免除してやってくれる?」
「あたりまえだよ。遅く帰ってまで風花ちゃんが食事の支度なんて疲れちゃうし、一日中働きづめになるんなら休んで欲しい。任せて、風花ちゃん! 私と桃ちゃんで何とかするし」
「いや、美咲と桃ちゃんじゃなくて、俺がどうにかするから、そういうのは遠慮しないで」
祥太朗さんの笑顔に決心が揺らぎそうになる。
「うん、帰って寝て、またすぐ仕事じゃ疲れちゃうしさ。だから、しばらく俺の家で寝泊まりしてもらおうかと」
「は?」
「はあ!?」
「はああああああああ!?」
全員の目が、これでもかと大きく開き、私とマスターを見比べて。
「涼真と風ちゃんって付き合ってる!?」
勇気さんのつぶやきを皮切りに散々問い詰められることになる。
一瞬、祥太朗さんと目が合った。
どちらからともなく、すぐに逸らす。
残り五日のゴールデンウィーク、その間に私は気持ちの整理をするのだ。
目が合っただけで胸が痛む内は、祥太朗さんには会わない。
リビングには手書きのメッセージが残っていた。
『やはり東京に戻ってからの帰省だと二度手間になっちゃうんで、一足先に実家に帰ります~! 今朝母がこっちに来る用事があるというので、迎えにきてもらいました。まだ皆寝てたので、こっそり出て行くことをお許しくださいね~! あ! またゴールデンウィーク明けに榛名先輩お迎えに上がりますね! ロッジの鍵は開けっ放しで大丈夫です、後で清掃に来る人がいるんで! 荷物忘れてたら、東京戻ったらお届けしますね! 私も榛名家の一員になったみたいで、本当に楽しかったです。また、皆で遊びましょうね~!! 高野麻衣』
「なんか、あったのかな?」
美咲さんの独り言に。
「でも、ゴールデンウィーク明け、普通に祥兄迎えに来るみたいだし、変わり無さそうじゃん?」
大丈夫じゃない? と笑う洸太朗くんに、美咲さんも頷いた。
夕べのうちにタイマーを入れておいたご飯で、今朝はおにぎらずを作る。
海苔の上に、ご飯を敷いたものを用意して、夕べお風呂に入る前に作っておいた具材をのっけて食べる、好きなものを好きなだけスタイルで。
今朝、珈琲を淹れていたら祥太朗さんが「おはよう」と声をかけてくれた。
「おはようございます」と目を合わさずに返事をし、隣をすり抜ける。
何か話しがあるような、そんな気がしたけれど、今の私にはそれに応えることはできなかった。
朝ごはんを終え、帰り支度を始め、いよいよ車に移動する時になって、私はチラリとマスターの顔を見る。
マスターは、大丈夫、と少し微笑んでから。
「あのさ、明日から休んだ分ちょっと忙しくてさ、夜も予約で連日埋まってて。風花さんにお願いしたら手伝ってくれることになったんだけどさ」
美咲さんも勇気さんも祥太朗さんも、桃ちゃんや洸太朗くんも、一体今更何の話だとばかりに不思議そうな顔をしている。
「ゴールデンウィーク明けまで、風花さん借りてもいい?」
「いや、借りてもいい? って仕事でしょ? いつものことじゃない」
「連日遅いなら、俺迎えに行くよ? つうか、忙しいなら俺も手伝おうか? 皿洗いくらいはできるし」
祥太朗さんの優しさにズキンと胸が痛む。
違う、違うの、祥太朗さん、そうじゃなくて。
「榛名家の食事係、ゴールデンウィークの間だけでも免除してやってくれる?」
「あたりまえだよ。遅く帰ってまで風花ちゃんが食事の支度なんて疲れちゃうし、一日中働きづめになるんなら休んで欲しい。任せて、風花ちゃん! 私と桃ちゃんで何とかするし」
「いや、美咲と桃ちゃんじゃなくて、俺がどうにかするから、そういうのは遠慮しないで」
祥太朗さんの笑顔に決心が揺らぎそうになる。
「うん、帰って寝て、またすぐ仕事じゃ疲れちゃうしさ。だから、しばらく俺の家で寝泊まりしてもらおうかと」
「は?」
「はあ!?」
「はああああああああ!?」
全員の目が、これでもかと大きく開き、私とマスターを見比べて。
「涼真と風ちゃんって付き合ってる!?」
勇気さんのつぶやきを皮切りに散々問い詰められることになる。
一瞬、祥太朗さんと目が合った。
どちらからともなく、すぐに逸らす。
残り五日のゴールデンウィーク、その間に私は気持ちの整理をするのだ。
目が合っただけで胸が痛む内は、祥太朗さんには会わない。
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