異世界わんこ

洋里

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第一章

ギルド登録

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 翌日、朝食も、みんなで1階に降りていただく。
 昨夜と違って、泊り客は、わたし達だけだったようで、とても静かだ。
 メニューは、焼き立てのパンが数種類と、レタスとトマトのサラダ、お好みの卵料理を一人一品付けてくれる。
 わたしは、プレーンオムレツをお願いしたが、他のみんなは、思い思いに半熟の茹で卵やスクランブルエッグ、目玉焼きのターンオーバー、などなど注文している。
 パンは、どれもあつあつのふわふわで、つい食べ過ぎそうになるが、2つで我慢しておく。
 本当、この宿の食事は危険極まりないわ、主に、食べ過ぎて太りそうという意味においてだけど。
 犬達には、アニタさんが、白身の魚を茹でた物に雑穀と野菜を混ぜた物を用意してくれていて、私たちの食事の間に食べさせてくれた。
 どうも、最初から犬達に興味があったようで、撫でたり抱き上げたりしながら面倒をみてくれている。
 ありがたく、お任せしておこう。
 そうして、ゆっくり食事をとった後、食後のコーヒーを飲みながら、今後の予定を話し合う。
「まず、俺等は、昨日ギルドの倉庫に預けて来た、積み荷を卸してくるだろ。 その間、女の子達はマナちゃんと冒険者ギルドに行ってやってくれ」
「は~い」
「任された~」
「マナちゃんは、ギルドで冒険者登録と魔法の才能調べてもらうんだろ? 交易ギルドでは、魔法の才能は調べらんねぇからなぁ。 ま、身分証明証が手に入ればいいんだから、どっちでも大差ないしな。 後は、ドードーのドロップ品の換金か。 どっちのギルドでも換金率は同じだから、俺等で、まとめて換金して来てもいいんだけど、どんなもんか経験しといた方がいいだろうから。 自分の分は自分でやってみな」
「うん、分かった」
「明日は、仕入れで一日掛かるし。 ミミアとリムも仕入れ作業に入ってもらうから、マナちゃんに付き合えないけど、明後日は全員1日休みだから。 んで、しあさってには、この町を出発して俺等の村に帰る。 まぁ、魔法の才能が分かったら、そっちの講習とか受けられるかもしれないし、その辺はギルドで聞いてみてよ」
「魔法の講習なんて、あるんだ」
「そ~だよ~。 攻撃や防御、補助魔法なんかの戦闘系は冒険者ギルドで受けられるし、回復魔法なら教会でやってるよ~」
「じゃあ、明日は、その講習を受けられるように聞いて来るね」
「うんうん、それがいいと思う~。 講習料も格安でお得だし~」

 ひとしきり、今後の予定を話し終えて犬達を引き取りに行くと、三匹共、アニタさんに物凄い勢いで懐いてしまっていた。
( なでて~、もっとなでて~ )
とでも言うように、尻尾を振りながら、体をすりすり擦り付けて甘えている。
 アニタさんも、まんざらでもないようで、口元をほころばせながら
「あらあら、しょうがないね、この子達はまったく」
 などと言いながら、3匹の頭や背中を撫でてくれている。
「こんなに小さいのに、これで赤ん坊じゃないんだろう?」
「はい、もう成犬ですね。 ココが5才で、こっちのハクとミルクは2才ですから」
と説明すると、ちょっと、アニタさんの表情が曇ったようだった。
「こういう珍しい犬で、これだけ可愛いとあっちゃ、ちょっと気を付けた方がいいかもしれないねぇ」
「そんなに珍しいですかね? うちの方では、割とよく飼われてるんですけど」
「そうなのかい? この辺じゃ、まず見た事ないねぇ。 大体の犬はもっと大きいからねぇ」
「気を付けた方が、っていうのは盗難とかですかね?」
「うーん。 盗みとかの犯罪は、この辺は治安がしっかりしてるから、大丈夫だとは思うけどねぇ」
 何だか、歯切れの悪い返事が返ってくる。
「この町の領主様が、無類の犬好きでねぇ」
「その領主様に、取り上げられちゃうとか?」
「いやいや、そんな、無理矢理取り上げるなんて、いくら領主様でも、そこまでの無体をする権利はないけどねぇ」
「はぁ」
「ま、気を付けるに越した事はないからねぇ」
 よく分からないけど、目を離さないとか、普通に日本で気を付けてたようにすればいいのかな。
「ありがとうございます。 犬達が離れないように気を付けておきますね」
「うん、うん。 まぁ、さほど神経質になる事もないだろうけど、一応ねぇ」
 最後まで、何だかはっきりしない物言いで、ちょっと気にはなるけど、まぁ普通に気を付けよう。


 さて、冒険者ギルドである。
 宿から、商店街を突っ切って、そこから更に北に向かう。
 まだ、時間が早いせいか、残念ながら開いているお店はないようだ。
 宿の部屋に、犬達を置いて出掛ける訳にもいかないので、三匹も一緒に歩いているが、お外大好き、お散歩大好きな三匹なので、とても嬉しそう。
 宿から、15分ほどは歩いただろうか、冒険者ギルドは町の中心部に位置していた。
 他の建物が、一様にレンガ造りだったのに対して、ギルドの建物は頑丈そうな石造りで、巨大な岩を切り出して作られたと思われる、立派な柱に彫刻が施された物が、ひときわ目を引いている。
 その柱が、正面の入り口を挟んで二本立っており、いかにも堅牢としたたたずまいを見せていた。
 入り口から中に入りつつ、ミミアが言う。
「冒険者ギルドは、凄く立派な建物でしょ~。 交易ギルドの方は、商店街の裏手の奥~の方にあるんだけど、あっちは普通に質素な造りなんだ~」
 リムが続ける。
「交易ギルドは商売人のギルドだから、余計な物にはお金を掛けない、ケチってなんぼって感じだからね~」
 そんな説明を聞きながら、辺りを見渡す。
 正面入り口から、入ってすぐは大広間になっており、左右には、ブースごとに仕切られた受付カウンターが3つずつ。
 カウンターの後ろは、大きな棚がしつらえてあり、一面が引き出しだらけに見える。
 そして、それぞれの棚の横には扉がある。
 正面の壁には、依頼の内容が書かれている紙だろうか、たくさんの掲示物が貼りだしてある。
 受付カウンターは、それぞれブース毎に1名ずつ、計6名の綺麗なお姉さんが座っていて、それぞれ、テキパキと冒険者達の要望を捌いていた。
「左側が依頼の受付~。 右が、ドロップ品の換金とその他雑務かな~?」
 リムが、指差し確認のように左、右、と指を向けながら話す。
「新規登録とか、レベルアップした時の変更手続きは、右の手前っぽいよ~」
「早く来てよかったね~、全然、空いてる~」
 そうして、二人に手を引かれ、右手前のブースに連れて行かれる。
 新規登録のブースのお姉さんは、お胸の迫力がある大柄美人さんだ。
 受付のお姉さん方は、皆さん制服らしき統一された服装をしていらっしゃるのだけど、このお姉さん、胸の所だけサイズが合ってないんじゃないかな? 
 パツンパツンで、女のわたしでも、ちょっと目のやり場に困るかも。
 ブースの椅子は、一脚しかないのでわたしがそこに座り、ミミアとリムは犬達と後ろに控えてくれる。
「ようこそ、ハンブルの冒険者ギルドへ。 こちらは、新規冒険者登録や、レベルアップ時の登録内容の変更などを承っております。 本日は、どういったご用件でございますか?」
 流れるように口を継いで出る声の透明感があって綺麗な事。
 美人は、声まで美人だぁ。
 ちょっと、緊張してドギマギしながらも
「新規登録を、お願いします」
と答えると、すかさず、後ろの棚の引き出しから、書類であろう紙を取り出す為に立ち上がる。
 (凄い、スーパーモデルかよ!) 
とツッコミたくなるような、細身ですらりとしたプロポーションで思わず見とれてしまう。
 そんなわたしの、不躾な視線も物ともせずに、また、流れるように説明をしてくれる。
「こちらの新規登録者申請に、上からお名前、住所、生年月日、年齢、現在のレベル、お使いの武器、お得意な魔法傾向、分かる範囲で結構ですのでご記入下さい。 同時にパーティ申請もされますか?」
 ペンと申請書を渡されながら、更に緊張する。
 どうしよう、わたし住所不定だし、生年月日は、こっちの元号とかすら知らないよ。
「あの、住む所が決まっていないのですが。 あと、生まれた日も、ちょっとあやふやって言うか」
 あー、アヤシイかなぁ?
「構いませんよ。 では、ご宿泊の宿の住所や、お泊りになっている、お知り合いの方の住所でも大丈夫です。 冒険者の中には、住む所を定めずに色んな街を渡り歩くスタイルの方も多くいらっしゃいますので。 生年月日も、大体の物で構いません。 この時代、孤児の方も多いですし、皆さん、正確に分かるとは限りませんし」
「そうなんですね、ありがとうございます」
「いえ。 ご記入は、ごゆっくりどうぞ」
 そう言って、ニッコリ笑って下さる、美人でスタイルも性格もいい。
 素敵だ、完璧超人だ。
 記入は、日本語でしてるけど、この申請書類自体が、日本語で作成されているので助かった。
 取りあえず、宿の住所を、後ろのミミアに教えてもらって記入する。
「あの、レベルとか魔法傾向とか、分からないのですが」
「では、こちらで、お調べする事が出来ますので、別室にご案内致します。 お連れの方々も、ご一緒にどうぞ」
 そう言って、カウンターの横の跳ね上げになっている部分をカタンと持ち上げると、お姉さんが、こちらへ出て来て先導してくれる。
 慌てて、書類をひっつかんで追い掛ける。
すると、カウンターの列と掲示板の間に大きな扉があった。
 そこを開けると、ふかふかの絨毯の敷いてある廊下が続いており、両隣に、やはり扉が並んでいる、その内の奥の一室に通される。
 日本で言うところの、20畳位はあろう部屋で、真ん中に水晶のような丸い玉が、うやうやしく飾られており、両隣には、高級そうなソファがクッションと共に置かれている。
「こちらの水晶球に、手をかざして頂くと、現在のレベルや適性魔法などが分かります。結果は、後ほど書面にてお渡ししますので、周りでお待ちの方に見える事はありません。 どうぞ、お近くにいらして、お手をかざしてみて下さい」
 お姉さんに促されて、おそるおそる手を近づける。
 水晶球に、触れるか触れないか、というところまで近づけた時、一瞬、パァッと青白い光が水晶に浮かび上がった。
 何となくだけど、手から体全体をスキャンされたような気がする。
「はい、結構です。 では、お次の方」
「いえ、今日は、わたし一人なんですが」
「え、そうなんですか? そちらの小さな犬の方々は?」
「へ、いぬですか?」
「はい、犬の皆様も、ご一緒に登録なさるのかと。 今、動物担当の者を、こちらに呼び出しておりますが」
「そんな事も出来るんですか?」
「ええ、もちろんです。 動物の冒険者・パーティメンバーは、珍しくはありますが、ある程度、いらっしゃいます。 見た所、お連れの犬の方々は、才がお有りのようにお見受けいたしましたが」
「さい」
「はい。 よろしければ、水晶球で、お調べになってみてはいかがですか?」
「あっはい、じゃあ、お願いします」
 ワンコ達も、登録するなんて考えもしていなかったから、びっくりだけど、才があるとか言ってもらえたのは嬉しい。
 どんな才があるのか、俄然がぜん、興味が湧いてくる。
「じゃあ、まずはハクちゃんおいで」
 そう声を掛けると、ハクが、嬉しそうに駆けて来て、ピョンっと、わたしの膝に飛び乗る。
 そのまま、背中側から抱っこして、前足を水晶球にかざす。
 同じように、ココもミルクも調べてもらい、内容を書き出してもらうのを待つ間、隣の応接室っぽい部屋に移動する。
 ロココ調に似た、豪奢ごうしゃな家具セットがしつらえられた、さらに華美な部屋だ。
 そこでソファに腰掛け、
「お待ちの間、どうぞ」
と、メイド姿の女性が、紅茶を運んでくださる。
 あぁ、緊張してたから、喉がカラカラだったわ、ありがたい。
 そうして、紅茶をいただきながら待っていると、紙の束を抱えた受付のお姉さんと、もう一人別の、背の低い可愛らしい女性が、部屋に入って来た。
「たいへん、お待たせ致しました。 結果の書面をお持ちしましたのと、こちらの、動物担当をお連れしました」
「こんにちはぁ、動物冒険者担当のユキナと申しますぅ」
「はい、よろしくお願いします」
 この、ユキナさんと言う方は、受付さんとは、また違った服装をしていらっしゃる。
 受付さんはブラウスに上着、ミニスカートなのだが、この方は、上半身は受付さん達と同じだけど、下はパンツスタイルだ。
 背は、わたしとあまり変わらない位なので155cmくらい? ミントグリーンの爽やかな髪色で、肩の長さ程の髪の先が外にピュンピュンはねている。
 高校生くらいに若く見えるけど、雰囲気は、落ち着いているので童顔なだけかもしれない。
「私は、受付業務に戻りますので、続きは、こちらの動物担当が承ります。 では失礼致します」
 そう言って、受付のお姉さんは、一礼して部屋を出て行く。
「今回は、わんちゃん達のご登録と言うことでぇ、私が直接、わんちゃんの意向などをお伺いいたしますぅ」
 おっとりとした口調の、ちょっと関西弁っぽいイントネーション。
「直接ですか?」
「はぃ。 私、動物さんと、お話しできますのでぇ」
 それまで黙っていた、ミミアとリムがびっくりして声を上げる
「え~、動物通訳士~?」
「何で、こんな地方の町にそんな人がいるの~?」
 にっこり笑顔で、ユキナさんは答える。
「はぃ。 その動物通訳士ですぅ。 最近、結婚して、こちらの配属にしてもらったばかりなんですぅ」
「それは、おめでとうございます。 で、ウチの犬達と会話して頂けると」
「はぃ、ありがとうございますぅ。 あぁ、でもそちらのママわんこちゃんはテレパシー使えますよねぇ。 皆さん、まだ会話してらっしゃらないのかしらぁ」
「はい?」
「ママわんこちゃん、飼い主さん達と、お話しなさらないのぉ?」
 すると、ママわんこちゃんと呼ばれたココが、こちらをじっと見すくめながら、次の瞬間、わたしの頭の中に直接声が響いた。
(ココ、お腹空いた)
 ココの、わたしへの第一声であった。
「ココ、お腹空いたって。 わたしに最初に言いたい事がそれ?」
 呆然ぼうぜんとして呟くと、ミミアとリムが騒ぎ出す。
「え~、ココちゃんしゃべったの~?」
「聞こえないよ~、わたしもココちゃんの声聞きたい~」
 ユキナさんが続ける、
「どうやら、飼い主さんだけに、お話ししたいタイプのコみたいですねぇ」
「「えぇ~」」
「色んな性格のコが、いますからぁ」
 ミミアとリムは、大ブーイングだが、ココはどこ吹く風である。
「ごめんねココ。 後で宿に帰ってから、ご飯出してもらうから、今は我慢して?」
(わかった、がまんする)
「ありがとう、えらいね」
(ふふー、ココえらい)
 嬉しそうである。
「では、飼い主様との、感動の初・意思疎通が終わりました所でぇ、わんちゃん、おひとりずつの個別面談をさせて頂きますぅ。 つきましては、私の膝の上に順番にいらして頂きたいのですがぁ?」
「あ、はい。 じゃあココからで」
「はぁい。 ココさん、お膝にいらしてくださいねぇ」
 ココは無言で、ユキナさんの膝の上に飛び乗った。
 そうして、ユキナさんは、しばらくココの頭や肩の辺りを撫でたり触ったりしながら、
「ほぉ、ふぅん? なるほどですぅ」
 などと言いながら、書類の記入をしていく。
 さらに、同じように、ハクとミルクの面談も行っていった。
 犬達の面談と書類記入が終わり、再び犬達は、ミミアとリムに預けられる。
 そして、飼い主である、わたしとの面談に移る。
「えぇとですねぇ。 端的に言いましてぇ、お宅のわんちゃん達は、みなさんとっても適正ありの結果が出ましたぁ」
「適正ありですか?」
「はぃ、とってもですぅ。 まずは、ココちゃんですけどレベルは4ですぅ。 飼い主さんとのテレパシー能力はぁ、本人がその気になれば、本当は誰とでも会話出来ますねぇ」
「そうなの~?」
「ココちゃん~、リムともお話しして~」
 また二人が騒ぎ出す、が、ココは知らんぷりで無視している。
「あとは、魔法適正ですがぁ。 防御魔法と索敵能力が出てますねぇ」
「さくてき」
 心当たりがあった、あのドードーの群れに襲われた時、最初に気付いて警戒し出したのは、その索敵能力のお陰だったのか。
「はぃ。 あとハクちゃんはぁ、ファリニシュに進化してますねぇ」
「ファリ?」
「はぃ。 伝説の神話の中の犬ですねぇ。 神話の中では、毛皮からワインを出すとも、口から金銀を吐き出すとも言われてましてぇ、昼は巨大化、夜は愛玩犬の大きさに変化するとかぁ」
「あぁー、なるほど」
 心当たりある。
 さすがに、ワインや金銀は出さないけど、大きさの変化はまさしくしてる。
「魔法の適性は、残念ながらないようですぅ。 魔力が全部進化に行っちゃうタイプかなぁ? でも攻撃力と防御力は、進化のせいか膨大ぼうだいですよぉ。 レベルも13にまで上がってますしぃ、お供にいれば安心ですねぇ」
「はぁ、ありがとうございます」
「最後に、ミルクちゃんですがぁ。 このコは、ちょっと変わってますねぇ。 妖精タイプって出てますぅ」
「ようせい……」
「はぃ。 妖精と言ってもぉ種族的な事ではなくて、この場合は、タイプってだけなんですけどぉ。 まだレベルが低くて、1ですねぇ。 これから、どう影響が出て来るのか、楽しみですねぇ」
「はぁ」
「魔法適正は、攻撃系にありそうなんですけどぉ、こちらも、まだ発現前っぽくてぇ。 一応、講習は受けられますけど、まだ、あまり意味はないかもですぅ。 どうされますかぁ?」
「ココちゃん、どうする? ココは、防御の魔法覚えたい? ミルクは、攻撃の魔法覚えたいかな?」
(ココは、マナ達まもりたいから、おぼえたい。 ミルクは、くたびれたからやだって)
「そっか。 じゃあ、後でココだけ講習受けさせてもらおうか?」
「あぁー、でしたら飼い主様もご一緒にぃ。 ワンちゃんだけですと他の冒険者様に、ちょっかいかけられたり、要らぬトラブルの元になったりしますのでぇ」
「分かりました。 じゃあ、後でココとわたしでお願いします」
「はぃ。 後はですねぇ、飼い主であるマナ様の適性結果も、続けてお知らせしてよろしいでしょうかぁ?」
「あ~、じゃあ、ミミア達は部屋を出てるよ~」
「プライバシーだからね~、じっくり聞いて来て~。 受付カウンターの方に戻ってるから~」
 そう言って、ミミアとリムは、ソファから立ち上がる。
 別に、いてくれてもいいんだけど、まぁ、それがこちらのマナーなのかもしれない。
「ありがとう、じゃあ後でね」
 二人が、犬達と部屋を出ると、改めてユキナさんが、わたしの書類を広げつつ話し出す。
「はぃ、では、マナ様の結果をお教えいたしますねぇ。 まずはレベルですが、7まで上がっています。 戦闘を、ある程度こなしてこられたのかなぁ。 新規に登録される割には高目ですねぇ」
「はぁ、多少は」
 ドードーとしか戦ってないけど、レベルの平均値とか、人並みが、どの位なのか分からない。
「次に魔法適性ですけれどぉ。 回復魔法と、補助魔法の適性ありと出ておりますぅ。 補助魔法は、こちらのギルドで講習を受ける事が出来ますしぃ。 回復魔法は、お隣にあります教会で1日2回やっている、実践付き講義が受けられますぅ」
「えーと、その講習や講義を受けると、それぞれの魔法が、すぐ使えるようになるんでしょうか?」
「それは、個人によりますねぇ。 すぐ出来る方もおられればぁ、かなりの練習が必要な方もおられますぅ。 しかしながら、適性はある訳ですから、いつかは出来るようになりますよぅ」
「はぁ。 その講義や講習は、すぐ受けられるんですか?」
「えぇとですねぇ。 今日は、午前中のうちに防御魔法も補助魔法も講習ありますのでぇ、このまま、ココちゃんと防御魔法講習を受けていただいてからぁ、続けて補助魔法講習も受けていただけますねぇ。 ちょーっと、ハードかもしれませんけれどぉ、どうなさいますぅ?」
「やります」
 正直、話を聞いていただけで、もうかなり疲れてしまっているけれど、なにせ、時間があまりないのでハードだろうがやるしかない。
「はぃ。 では、講習の申し込みを出しておきますねぇ。 それぞれ、1時間程度ですしぃ、すぐには出来なくてもテキストがもらえますから、後から、自己鍛錬で頑張って頂ければ大丈夫ですからぁ、お気楽にぃ、ね」
「はい」
「後は、回復魔法の講義ですけれどぉ。 こちらは、明日の午前中でもよろしいかしらぁ、飛び込みでは受け付けてもらえないので、明日でよろしければ、申し込み手続きをしておきますけれどぉ?」
「はい。 それでお願いします」
「かしこまりましたぁ。 では、魔法の件は以上ですぅ。 後は、パーティ登録ですねぇ。このままワンちゃん達との登録をされて行かれますかぁ?」
「パーティの登録、するしないで、何が違ってくるんでしょうか?」
「そうですねぇ。 まずは、依頼を受けられる範囲が広がりますねぇ。 ソロですと、受けられる依頼も簡易なものに限られてしまいますのでぇ」
「なるほど」
「後、これは動物の冒険者さまに特化した事ではあるんですけどぉ。 パーティメンバーに入れるとぉ、メンバー用の、判別しやすいアイテムがギルドからプレゼントされましてぇ」
「プレゼント」
「はぃ。 それを、動物のメンバー様が身に着ける事によってぇ、他の冒険者様に、間違って狩られるリスクがなくなりますぅ」
「パーティ登録します。 今日します」
 あのコ達が間違って狩られるなんて、冗談じゃない、そんなリスクがあるなんて、あり得ないわ。
 その、プレゼントされるアイテムってやつ、絶対ゲットしなくちゃ。
「はぃ。 それを、お勧めいたしますぅ。 思わぬ事故があってからでは遅いですからぁ。 では、パーティ申請の書類もこちらで作成いたしますのでぇ、パーティの名称は、いかがなさいますかぁ?」
「う────ん」
 急展開過ぎて何も思い付かないよ。
「じゃあですねぇ、ハクちゃんの進化したファリニシュにちなんで、 “ファリニシュ・ファミリア” なぁんてどうでしょ?」
「それにします」
「えぇ? あーそうですかぁ? では、私の提案に乗って頂いたのでぇ、ギルドからのプレゼント品に “F・F” って、ロゴの刺繍をサービスしちゃいますねぇ」
「ありがとうございます。 そのプレゼントって今日中に頂けるのでしょうか?」
「え、えぇまぁ。 では、お帰りの際には受け取れるように、特急で処理を進めさせますわねぇ」
「はい、ぜひお願いします」
 弱冠じゃっかん、ユキナさんは引いてる様子だったけれど、犬達の安全第一。
 遠慮なんてしていられないのである。

 こうして、ひとしきり、説明や手続きのお願いが済んで、そのまま魔法の講習を受ける事になる。
 元の受付カウンターのある広間に戻ると、ココだけ受け取って、ミミアとリムには、ハクとミルクを連れて帰ってもらう事にした。
 それぞれ、1時間ほどの講習らしいから、全部終わっても昼は軽く過ぎてしまう。
 それまで、待っていてもらうのも気が引けるし、ハクもミルクも外に出たいー、と暴れ出しているので、帰ってもらうのがこちらとしても安心できる。
 アニタさんに、犬達のご飯をお願いしておいてほしい、と頼むと
「あ~、大丈夫だよ~。 アニタさん、ワンちゃん達に夢中だったから、滞在中は、放っておいても勝手に面倒みてくれるから~」
「じゃあ、ハクちゃんとミルクちゃんは、ウチの部屋で預かっておくから、講習がんばってね~」
 そう言って二人は、ワンコ2匹を連れて宿へと帰って行った。

 残されたわたしとココは、ギルドの2階の、教室のような部屋で講習を受けるのだが。
 強いて言えば、自動車免許の更新の講習。
 あんな感じの、心得、とか事故を起こさない為の注意点、とか、あまり実践的ではない講習内容で、どうやったら、この講習だけで魔法が使えるのやら? と疑問だったのだけど、もらったテキストには、具体的な魔法の使用方法が詳しく載っていたので、結局は自主鍛錬が必要不可欠なのだろう。
 結局、ココは講習の間中、わたしの膝の上で寝ているだけだった。





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