主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

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光の国に転生した闇属性の俺!?

105)別れと始まり

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ーーー

「ナハト!!ナハト!早く起きるんだぞ!!」

「んん~…あと5分…」

「僕っちに早く起こせって言ったのはお前だぞ!!ナハトは1年前から朝が弱いのは変わらないんだぞーー!!」

モゾモゾと布団の中で寝返りを打つ。今日は何かあった気がするが、どうしても眠たくて仕方がない。ゆさゆさとシェイドに体を揺さぶられながらぼやけた頭で考える。

(うーん。今日何かあったっけ…?)

「はー、もう僕っちは知らないんだぞ。あとで僕っちを責めるなよ!」

まだ、布団でうとうとしていると、ガチャと部屋のドアが開く。俺の断りもなく入ってくる人物といえば一人しかいない。

「酷いじゃないかナハト。今日は僕のことを見送ってくれるって約束しただろう?」

「お兄様…?」

(あれ…?今日は確か…)

「……あ!!!!」

そうだ。今日は義兄の入学式だった。前日の夜に見送りには起きると約束していたのだ。朝が弱い俺はすっかり忘れてしまっていた。

シェイドがうちに来てから1年たった。あれから、俺は5歳、義兄は12歳になった。あんなに悩んでいた魅了魔法もシェイドが来たことで安定してきた。魅了魔法は結局俺の魔力過多が原因だったのだ。あれほど悩んでいたのがばかみたいにコントロールできるようになった。

「ナハトは本当に魔法が上手になったよね」

パジャマで見送りに行くわけにはいかないので、基礎魔法を使って着替える。この世界の魔法は思っていたよりも便利で、うまく使えばQOLを上げてくれる優れものだ。

「こんなふうに、魔法をうまく使えるようになったのはお兄様のおかげですよ」

「僕がずっとナハトのそばにいられたら覚える必要もない魔法だけど、今日からは離れ離れになってしまうからね。でも、僕もここまで上手くなるとは思わなかったよ。きっと、ナハトには魔法の才能があるんだろうね」

「ほ、褒めすぎですよ」

ふっとつい顔を背けてしまう。いつからだろうか、義兄の顔を正面から見ることができなくなったのは。きっと、義兄には人を引きつける力がある。その完璧な顔面はもちろん。彼からは目を離せなくなるようなオーラがあるようで、さすが主人公だと思ってしまう。

ーーー

「じゃあ、行ってきます。お父様、お母様、そしてナハト」

「エドちゃん。身体にだけは気をつけてね」

「君を馬鹿にするやつがいたら実力でねじ伏せればいい。主席として胸を張っておいで」

「はい。お父様、お母様」

ニコッと笑って父と母と言葉を交わした義兄は俺の方をくるりと向いた。

「お兄様、頑張ってください」

「ああ、頑張ってくるよ。なぜ家から通うことができなかったのか理解できないけど、今夜から映像魔法で連絡を取ろうね」

そう、学園の中等部は寮に入るか入らないか決めることができたらしい。俺はそんな事実を知らなかった。裏で義兄は自宅から通えるように結構粘ったそうだが、陛下に却下されたらしい。光属性でしかも主席。国は彼を手に入れたいのだろう。

(やっぱり主人公なんだろうな)

俺は義兄が学園に行ってる間に公爵家から離れるつもりだ。どれだけ義兄が俺に好意的だとしてもそれがいつまで続くかなんてわからない。それにきっと俺は魔力の量とかも考えてこの世界の悪役だ。一応悪魔とも契約しているしな。

「ナハト、この家でいい子にしてるんだよ」

「はい。お兄様の弟として胸を張れるようになります。なので安心してくださいね」

義兄と抱き合い。遂に別れの時が訪れる。義兄が小さくまとめた荷物を持って魔導車に入っていく。

(俺はあんたのためにもこの家から出ないといけないんだ)

俺は誰にも言い明かすことのできない思いをこっそり胸に秘めながら、義兄の乗った魔導車を見えなくなるまで見送った。義兄のいない6年の間に家を出ても生きていけるような力をつけていかなければいけない。

きっと義兄から離れることができれば、義兄を見るたびに出る胸のモヤモヤも消えるはず。そうに違いない。

(これは義兄との”別れ”であり、新しい生活に向けての”始まり”だ)

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