きっと、叶うから

横田碧翔

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低学年編

新メンバー

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 真守がいなくなった次の週。グランドに着くと、勇武の隣に、知らない子がいた。同じ学校の友達だろうか。何でもいいが、真守がいなくなったばかりということもあり、入れ替わりのようでなんだか気にくわない。その不満をぶつけるように、僕は壁に向かって思いっきりボールを蹴り飛ばした。

 練習がはじめる前に、監督がその子を全員に紹介した。
「今日からこのチームに入る勇気だ。一緒の学校のやつもいるから、大丈夫だとは思うけど仲良くしてな。じゃあ勇気、自己紹介して」
「はじめまして。野村勇気です。サッカーは初めてです。よろしくお願いします」
なんだ初心者か。一番上手な真守がいなくなって、初心者の勇気が入ってきた。自己紹介のときは下を向きながらぼそぼそしゃべるし、背は少し高いのに猫背だし、キノコみたいな髪型だし、なんだか暗い感じだ。そんな勇気が、僕はますます気に入らない。だから、ミニゲームで相手チームになったら、ドリブルでコテンパンにしてやろうと決めた。

練習が始まり、軽くランニングと体操をすると、勇気の入部を祝って、最初から最後までミニゲームということになった。さっそくチャンスが来たと僕は胸を弾ませる。あとはチーム分けで違うチームになれば完璧だ。僕と勇武がそれぞれの色のビブスを持ち、監督が、だいたい同じくらいの力になるように、チームを分けていく。同じ学校だし安心だからと、勇気は勇武のチームに振り分けられる。その瞬間、僕は心の中でガッツポーズした。

 勇武チームのボールでミニゲームが始まった。勇武がドリブルで攻め込んでくる。そのまま、一人をかわしたところで、勇気にパスを出す。チャンスだと思い、僕はスピードに乗ってボールを奪いにいく。初心者だからと遠慮する気持ちは一ミリもない。勇気がボールをトラップしたところを奪い去ろうと、左足を伸ばす。だが、僕の足は空を切った。そこにあったはずのボールは、僕の股の下を通り抜けていく。勇気は、突っ込んでくる僕を見て、トラップをせずに、ファーストタッチからドリブルしてきたのだ。こんなプレーが初心にできるのだろうか。僕をかわした勇気は、そのままの勢いでゴールまで行き、シュートを放つ。次男瞬間、ゴールネットがふわりと揺れる。なめてかかって完全にやられた。真守と比較して、勝手なイメージで気にくわない奴だと決めつけた。ゴールを喜ぶ勇気の顔には、あの暗さはなく、むしろ熱がこもっている。そんな姿を見て、悔しさ以上に、嬉しさがこみ上げてくる。だって、勇気が上手いということは、チームが強くなるおいうことだから。僕と勇武と勇気。三人を中心に、このチームはこれから強くなるかもしれないと思うと、ワクワクが止まらなかった。だが、その前に、やられた分はきっちりやり返さなければならない。今度は、僕のドリブルから試合が再開する。さっきのお返しと言わんばかりに、僕は勇気にドリブルを仕掛ける。スピードに乗った勢いで、そのまま左にかわそうとする。だが、そのコースに勇気の右足が伸びてくる。やっぱり勇気は上手い。思った通りだ。勇気が足を開いた瞬間、開いた股に向かってボールを転がす。そして、勇気の足を飛び越え、勇気を置き去りにした。そのとき、どうだと言わんばかりに勇気を見ると、驚いた顔をしたあと、楽しそうに笑った。

 練習が終わり、勇気に気になっていたことを聞いた。
「ほんとに初心者?上手すぎない?」
僕が詰め寄るように聞くと、勇気は自己紹介のときのモジモジした姿に戻ってしまう。サッカーをしているときは別人だ。
「いつも勇武とサッカーしてるから。」
おそるおそる勇気が答える。なるほど。そういうことか。学校の休み時間や、放課後に公園でサッカーをしているのか。それにしても上手すぎる気はするが。
「てかそれ、もう初心じゃないじゃん!」
「たしかに」
僕のツッコみに答えながら、勇気がコートの外で始めて笑った。その顔があまりにも純粋で、
照れくさくなって目をそらす。
「これからよろしくね!」
今の会話で緊張がなくなったのか、勇気が突然大きな声を出した。僕は、その変化に驚きながらも、目を見てしっかりと答える。
「うん!よろしく!」

こうして、二年生の夏、僕は別れと出会いを経験し、三年生へと成長していく。
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