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3 浅はかな過去の自分
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「聖国に行くなら、私が護衛をしましょう」
突然の声に、私は振り向く。そこには、アルバートの騎士であるブライアルドが立っていた。彼は私に優しい微笑みを向けた。
「あなたに命を救われてから、ずっと感謝していました。あなたが聖国で聖女になるのなら、是非護衛として連れて行ってください」
私とブライアルドは幼馴染だった。
私達がまだ何者でもなかった頃、二人してよく森の中を駆け回り、無邪気に笑い合っていた。彼は剣の練習に夢中で、私は彼を見守るのが大好きだった。
「いつか、僕は王国一の騎士になるから」
「そうなったら、私を守ってね」
「もちろん! 僕のお姫様」
しかし、私がアルバート殿下と婚約した時から、二人で楽しく過ごすなんてことは難しくなっていった。婚約者としての義務が増え、ブライアルドとはあまり会話を交わさなくなったのだ。
そして、あの日。
戦場でブライアルドが命を落としそうだという報せが届いた時、ミレーナは胸が張り裂ける思いだった。
もうその頃には紋が入っていたし、役に立つかなんてわからなかった。
けれど、何も考えず、ただ彼を救いたい一心で現場へ駆けつけた。ブライアルドは瀕死の状態で、誰もが彼の命を諦めかけていた。
私は全力で彼に魔法を施した。
彼の傷口に手を当て、涙を流しながら力を注ぎ込んだ。その魔力は彼を死の淵から引き戻し、命を救うことができた。
しかし、傷は残った。
「あんなに努力していたのに。本当は治せたのに……」
彼の傷を見るたびに、自分の無力さを感じた。助けられたとはいえ、ブライアルドが完全に回復することはなく、彼の体にはその戦いの痕跡が刻まれていた。
「ミレーナ、そんな顔しないで。君がいなければ、僕は今頃ここにいなかったんだ。君が命を救ってくれた。それだけで十分だよ。騎士としては努力すれば大丈夫だ」
しかし、彼の言葉を聞いても、その後ろめたさを拭うことはできなかった。
自分が浅はかだった為彼を完璧に助けることができなかった、という思いが私にはずっと残っていた。
あの時の気持ちが蘇り、先程は我慢できた涙が溢れてきた。
「でも、私はあの時大した力を奮えなかった。がっかりしたわ、自分に。そしてこんなものを刻まれてしまった馬鹿さに」
私は足にある紋に目をやった。それは今もなお、薄暗い光を放っている。ブライアルドは私のスカートをそっと元に戻し、整えた。
「まったく、綺麗なお姫様がいつまでも足を出してちゃだめですよ」
突然の声に、私は振り向く。そこには、アルバートの騎士であるブライアルドが立っていた。彼は私に優しい微笑みを向けた。
「あなたに命を救われてから、ずっと感謝していました。あなたが聖国で聖女になるのなら、是非護衛として連れて行ってください」
私とブライアルドは幼馴染だった。
私達がまだ何者でもなかった頃、二人してよく森の中を駆け回り、無邪気に笑い合っていた。彼は剣の練習に夢中で、私は彼を見守るのが大好きだった。
「いつか、僕は王国一の騎士になるから」
「そうなったら、私を守ってね」
「もちろん! 僕のお姫様」
しかし、私がアルバート殿下と婚約した時から、二人で楽しく過ごすなんてことは難しくなっていった。婚約者としての義務が増え、ブライアルドとはあまり会話を交わさなくなったのだ。
そして、あの日。
戦場でブライアルドが命を落としそうだという報せが届いた時、ミレーナは胸が張り裂ける思いだった。
もうその頃には紋が入っていたし、役に立つかなんてわからなかった。
けれど、何も考えず、ただ彼を救いたい一心で現場へ駆けつけた。ブライアルドは瀕死の状態で、誰もが彼の命を諦めかけていた。
私は全力で彼に魔法を施した。
彼の傷口に手を当て、涙を流しながら力を注ぎ込んだ。その魔力は彼を死の淵から引き戻し、命を救うことができた。
しかし、傷は残った。
「あんなに努力していたのに。本当は治せたのに……」
彼の傷を見るたびに、自分の無力さを感じた。助けられたとはいえ、ブライアルドが完全に回復することはなく、彼の体にはその戦いの痕跡が刻まれていた。
「ミレーナ、そんな顔しないで。君がいなければ、僕は今頃ここにいなかったんだ。君が命を救ってくれた。それだけで十分だよ。騎士としては努力すれば大丈夫だ」
しかし、彼の言葉を聞いても、その後ろめたさを拭うことはできなかった。
自分が浅はかだった為彼を完璧に助けることができなかった、という思いが私にはずっと残っていた。
あの時の気持ちが蘇り、先程は我慢できた涙が溢れてきた。
「でも、私はあの時大した力を奮えなかった。がっかりしたわ、自分に。そしてこんなものを刻まれてしまった馬鹿さに」
私は足にある紋に目をやった。それは今もなお、薄暗い光を放っている。ブライアルドは私のスカートをそっと元に戻し、整えた。
「まったく、綺麗なお姫様がいつまでも足を出してちゃだめですよ」
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