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第18話 彩音の一人旅②(挿絵あり)
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府中・東京競馬場――
春先の昼の光が広い敷地を照らし、空気がゆったりと流れていた。 彩音は案内板を見つめながら、少し緊張したように歩き出す。
(あ…テレビで見たことあるやつだ…)
(なんだっけ…パダック…?)
彩音がパダック?の方向へ向かっていく。
(ふふ。なんか…小さい運動場みたい。)
「あ…」
(パダックじゃない…パドックだった…)
馬がゆっくりと歩く丸い広場。
周囲にはちらほら人が集まり、のんびりとした空気が漂う。
(人も少ないな…レースは…次、第5レース…)
(芝の1500…距離かな…)
彩音は苦笑いしながら肩をすくめた。
(全くわかんない…)
パドックの外周をうろうろしながら、ちらりと周りの人たちを見てしまう。
(あ…私と同い年ぐらいの人もいる…)
(…まさか…同じ大学じゃないよね…)
(とりあえず…離れよ!)
小走り気味に離れ、スタンドを見上げる。
(スタンド?あるんだ…)
階段へ足をかける。
(若い人は…)
タン…タン…タン…
(階段…使わないと…)
タン…タン…タン…
(ダメですよ~)
タン……タン……
(はぁ…きつい…)
(…何これ…何階まであるの…?)
(はぁ…エレベーターにすればよかった…)
(とりあえず一番上!)
タン…タン…タン…
――スタンド6階。
「はぁ…着いたぁ…」
息を整えながら室内を通り抜け、窓際へ歩く。 ガラスの向こうに広がるコースが一気に視界に飛び込んできた。
「おぉ…すごい…」
彩音の目が輝く。
(テレビで見たことある光景…だけど全然違う…)
(すごいなぁ…ここ…走るんだよね…)
(なんか…歓声が聞こえてきそう…)
ターフビジョンに第5Rの出走馬の名前が映し出される。
(始まるのかな…8頭…)
(うーん…なんか暗号化されてるからわかんないや…)
(ハナ…クビ…?)
(確って…1番に賭ければ勝てるのかな…)
(でも確に賭けたらみんな勝てちゃうよね…)
隣にいた二人組の話が耳に入ってきた。
「第5はだめだったな…」
「なぁ…まさか捲られるとはな…」
「第6やるのか?」
「いや、今日は運がないらしいからやめとくわ…」
二人は去っていく。
(終わっちゃってたんだ…)
(確は1等のことか…なるほど…)
(なんか競馬楽しそう…)
「……」
彩音はぶんぶんと首を振る。
(でもギャンブルだからやめよ…今度守護霊さんと一緒に遊びにこよ。)
ふと時計を見る。
(うわ…もう14時過ぎてる…いつもならアパート帰ってる時間…)
(守護霊さん心配してるかな…)
「よし…」
(お土産買ってこ!)
(たしか1階にお土産コーナーあった。)
彩音はエレベーターへ向かう。
「ん…と…」
(エレベーターにしよ…)
――1階。
(お土産コーナー…ここかな…)
お店に入ると、色とりどりの馬グッズが並んでいた。
「あ…かわいい…馬のぬいぐるみだ…」
(食べ物とか無理だし…)
(やっぱりぬいぐるみかな…)
「う…やっぱり大きいのは高いな…」
(マスク?覆面?してるの…なんでしてるんだろ…)
(馬も身バレするとやばいとかあるのかな…)
彩音は棚の前で品定めを続ける。
(うーん…この子…守護霊さんに合いそう…)
(奮発して中サイズ!守護霊さんぜったいよろこぶ)
(ふふ。決定~。あなたは今日からうちの子です。)
「すみませーん。」
「いらっしゃいませー」
――帰り道。
(やっば…もう16時だ…守護霊さん心配してるよね…)
急ぎ足でアパートに続く角を曲がる。
「あ…」
アパートの前で、ちいさな影がきょろきょろと辺りを探していた。
(守護霊さん…)
「!!」
守護霊さんが彩音を見つけ、ぱたぱたと駆け寄ってくる。 その顔は心配でいっぱいだった。
「あ…ごめんね…ちょっと寄り道してて…」
「検査結果が悪いとかじゃないから大丈夫だよ。」
守護霊さんは胸を撫で下ろし、ほっとした表情になる。
「とりあえず部屋戻ろ。」
こくり。
――彩音の部屋。
「ちょっと東京競馬場寄ってたんだ」
「?」
守護霊さんの眉間に小さなしわが寄り、ぷくっと頬がふくらむ。
「あ、違うよ。ギャンブルとかじゃなくてちょうどいいバスの時間なかったから歩いて帰ろって。」
彩音はバッグを下ろし、荷物をがさごそ探りながら続ける。
「あの辺り散策してなかったしね。で、東京競馬場あるの思い出して…」
馬のぬいぐるみを取り出し、守護霊さんの前でそっと動かす。
「!?」
「守護霊さんごめんなさい。彩音は悪くないんだ。」
「だって…僕を見つけてくれたから。」
「……」
守護霊さんは柔らかい表情で微笑む。
「彩音をゆるしてあげて?」
こくり。
彩音も微笑む。
「ありがとう守護霊さん。」
「今日から僕もここの住人。よろしくね。」
こくり。
彩音はぬいぐるみをソファの脇に置く。
守護霊さんは吸い寄せられるように近づき、そっと座るように見つめた。
(気に入ってくれたみたい…よかった…)
「あ、競馬場。今度守護霊さんも行こう。上からの景色すごかったんだ。」
「あの景色は見せてあげたい。」
守護霊さんが振り返り――
こくこく。
「ふふふ。じゃあ今度行こうね。」
春先の昼の光が広い敷地を照らし、空気がゆったりと流れていた。 彩音は案内板を見つめながら、少し緊張したように歩き出す。
(あ…テレビで見たことあるやつだ…)
(なんだっけ…パダック…?)
彩音がパダック?の方向へ向かっていく。
(ふふ。なんか…小さい運動場みたい。)
「あ…」
(パダックじゃない…パドックだった…)
馬がゆっくりと歩く丸い広場。
周囲にはちらほら人が集まり、のんびりとした空気が漂う。
(人も少ないな…レースは…次、第5レース…)
(芝の1500…距離かな…)
彩音は苦笑いしながら肩をすくめた。
(全くわかんない…)
パドックの外周をうろうろしながら、ちらりと周りの人たちを見てしまう。
(あ…私と同い年ぐらいの人もいる…)
(…まさか…同じ大学じゃないよね…)
(とりあえず…離れよ!)
小走り気味に離れ、スタンドを見上げる。
(スタンド?あるんだ…)
階段へ足をかける。
(若い人は…)
タン…タン…タン…
(階段…使わないと…)
タン…タン…タン…
(ダメですよ~)
タン……タン……
(はぁ…きつい…)
(…何これ…何階まであるの…?)
(はぁ…エレベーターにすればよかった…)
(とりあえず一番上!)
タン…タン…タン…
――スタンド6階。
「はぁ…着いたぁ…」
息を整えながら室内を通り抜け、窓際へ歩く。 ガラスの向こうに広がるコースが一気に視界に飛び込んできた。
「おぉ…すごい…」
彩音の目が輝く。
(テレビで見たことある光景…だけど全然違う…)
(すごいなぁ…ここ…走るんだよね…)
(なんか…歓声が聞こえてきそう…)
ターフビジョンに第5Rの出走馬の名前が映し出される。
(始まるのかな…8頭…)
(うーん…なんか暗号化されてるからわかんないや…)
(ハナ…クビ…?)
(確って…1番に賭ければ勝てるのかな…)
(でも確に賭けたらみんな勝てちゃうよね…)
隣にいた二人組の話が耳に入ってきた。
「第5はだめだったな…」
「なぁ…まさか捲られるとはな…」
「第6やるのか?」
「いや、今日は運がないらしいからやめとくわ…」
二人は去っていく。
(終わっちゃってたんだ…)
(確は1等のことか…なるほど…)
(なんか競馬楽しそう…)
「……」
彩音はぶんぶんと首を振る。
(でもギャンブルだからやめよ…今度守護霊さんと一緒に遊びにこよ。)
ふと時計を見る。
(うわ…もう14時過ぎてる…いつもならアパート帰ってる時間…)
(守護霊さん心配してるかな…)
「よし…」
(お土産買ってこ!)
(たしか1階にお土産コーナーあった。)
彩音はエレベーターへ向かう。
「ん…と…」
(エレベーターにしよ…)
――1階。
(お土産コーナー…ここかな…)
お店に入ると、色とりどりの馬グッズが並んでいた。
「あ…かわいい…馬のぬいぐるみだ…」
(食べ物とか無理だし…)
(やっぱりぬいぐるみかな…)
「う…やっぱり大きいのは高いな…」
(マスク?覆面?してるの…なんでしてるんだろ…)
(馬も身バレするとやばいとかあるのかな…)
彩音は棚の前で品定めを続ける。
(うーん…この子…守護霊さんに合いそう…)
(奮発して中サイズ!守護霊さんぜったいよろこぶ)
(ふふ。決定~。あなたは今日からうちの子です。)
「すみませーん。」
「いらっしゃいませー」
――帰り道。
(やっば…もう16時だ…守護霊さん心配してるよね…)
急ぎ足でアパートに続く角を曲がる。
「あ…」
アパートの前で、ちいさな影がきょろきょろと辺りを探していた。
(守護霊さん…)
「!!」
守護霊さんが彩音を見つけ、ぱたぱたと駆け寄ってくる。 その顔は心配でいっぱいだった。
「あ…ごめんね…ちょっと寄り道してて…」
「検査結果が悪いとかじゃないから大丈夫だよ。」
守護霊さんは胸を撫で下ろし、ほっとした表情になる。
「とりあえず部屋戻ろ。」
こくり。
――彩音の部屋。
「ちょっと東京競馬場寄ってたんだ」
「?」
守護霊さんの眉間に小さなしわが寄り、ぷくっと頬がふくらむ。
「あ、違うよ。ギャンブルとかじゃなくてちょうどいいバスの時間なかったから歩いて帰ろって。」
彩音はバッグを下ろし、荷物をがさごそ探りながら続ける。
「あの辺り散策してなかったしね。で、東京競馬場あるの思い出して…」
馬のぬいぐるみを取り出し、守護霊さんの前でそっと動かす。
「!?」
「守護霊さんごめんなさい。彩音は悪くないんだ。」
「だって…僕を見つけてくれたから。」
「……」
守護霊さんは柔らかい表情で微笑む。
「彩音をゆるしてあげて?」
こくり。
彩音も微笑む。
「ありがとう守護霊さん。」
「今日から僕もここの住人。よろしくね。」
こくり。
彩音はぬいぐるみをソファの脇に置く。
守護霊さんは吸い寄せられるように近づき、そっと座るように見つめた。
(気に入ってくれたみたい…よかった…)
「あ、競馬場。今度守護霊さんも行こう。上からの景色すごかったんだ。」
「あの景色は見せてあげたい。」
守護霊さんが振り返り――
こくこく。
「ふふふ。じゃあ今度行こうね。」
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