女神と共に、相談を!

沢谷 暖日

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恋する乙女の恋愛相談

妹の友達は失恋を背負っている

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「まぁ、ここにお座りなさって」

 机の上に、コトリとミルクティーの入ったカップを置きながら、私は部室に入って立ち尽くしたままの桃杏ちゃんに呼びかける。

 最後の一本だったミルクティーの粉を使用し、おもてなし。
 私も飲もうと思っていたから、正直めっちゃ使うか迷ったけど、私の良心がもてなすことを優先したらしい。
 私は偉い子だなと、一人で勝手に関心している。

「あ。ありがとうございます」

 謙虚にお辞儀をし、椅子にゆっくりと腰を下ろす。
 こんな丁寧な印象の人なのに、本当に何を相談するのだろうか。

 ……というか。
 この子は楓花が「悩んでそう」という理由だけで連れてきたのだと思う。
 妹には、結構強引なところあるし。

 そう考えながら、私も桃杏ちゃんの正面の椅子へと腰を下ろす。
 ちなみに天崎さんは。部屋の隅で、寂しそうに正座をしていた。
 ……スカートが汚れるぞー。

「うん。まぁいいか」

 そんな彼女を横目でちらと確認し、前へと向き直る。
 すー、と穏やかな音を立て、ミルクティーを啜る桃杏ちゃんを見ながら、私は問うてみた。

「桃杏ちゃんは、恋愛相談しに来たの?」
「──っ」

 カップを傾ける手がぴたりと止まる。
 静まり返る部屋。
 私は察した。

「……そうっぽいね」

 私のその納得に、桃杏ちゃんは、持ったカップをゆっくりと机へと戻した。

「……はい。そうなんです」

 こんな真面目そうな子が、とは思ったけれど。
 昨日はこの子よりもヤバイ人に恋愛相談(告白)されたし、それほどの驚きは無かった。
 恥ずかしそうに俯いた彼女を一瞥し、私は続けた。

「ほーほー。……それで、妹に無理やり連れてこられたっぽいけど……その。別に無理して相談しなくていいからね?」

 そう問うと。
 桃杏ちゃんはバッと顔を上げた。
 ボブの髪が、パサっと揺れる。

「いや、ちゃんと楓花ちゃんに聞かれたので大丈夫です。ここには私の意志できていますから」
「そう? ……えっと。じゃあ、いきなりだけど。……その相談内容は?」

 一応私は先輩なので、怖がらせないようにと優しく問うた。
 桃杏ちゃんは「えっと」と少し間を空け。
 数秒何かを思案したらしく、その後に口を開いた。

「その前に、ですが。……お姉さんと楓花ちゃんって付き合ってるんですか?」
「えっ」

 いきなりすぎる問いに、度肝を抜かれた。

「いや、そんなことあるわけないでしょ⁉︎」

 なんでそんなことを、と聞く前に、反射的に驚きを見せる。
 びっくり……というか、何の繋がりも無いような気がするんだけど。

「ありそうです。なんかお姉さんと楓花ちゃん、仲すごく良さそうですし。……実際、姉妹で付き合ってる人っているんですよ」
「いやいや。姉妹で付き合うだなんて漫画みたいな話、あるわけないでしょ」
「あるんですよ。本当に。……私が中学の頃に好きだった人は、姉妹で付き合っていたんですよ? その事実を知った時は悲しくて。一瞬で散った私の初恋だったんです。もう、恋愛なんてしたくないって思ったけど、でも、出会いが欲しかったから、わざわざ女子校に来たのでしょうね。私の中学からもかなり離れた場所に位置してますし、誰も私の中学の人はこの学校を志望しませんでしたよ。それに──」
「す、すとっぷ」

 これ以上話させると、本当に永遠に話していきそうな勢いだった。

 にしても。
 ……重い。
 内容も重いし、空気も重い。
 ……こんなガチなの受けたことないんだけど。

 まぁ。理解したことといえば。
 桃杏ちゃんは失恋を背負っているらしくて。
 それで、高校に入って好きな人ができて。
 でも失恋が忘れられないから、どうすればいいのか相談をしにきたのだろう。

 私的には。失恋を背負っても、そのまま背負い投げすればいいと思うけど。
 恋愛経験の無い私には、そういうのは全くと言っていいほどにわからない。
 きっと底知れぬ辛さとか。そういうものがあるのだろう。

 けれど。こう言う事も可能性として考えれた。
 楓花がこの部屋に入ることを、桃杏ちゃんは否定した。
 そして、私と楓花が付き合ってるかどうかを確認してきた。
 ってことは。
 ……桃杏ちゃんの好きな人は、楓花?
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