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恋する乙女の恋愛相談
妹の友達は妹が好き。そして変人
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「あの。見当違いかもしれないけど、聞いていい?」
「……どうぞ?」
私は今程した予想──桃杏ちゃんの好きな人は楓花であるという予想がその通りであるかを、聞いてみようと生唾を飲み込んだ。
いや、その通りなのだと思う。
だって考えてみれば、結構あからさまだから。
「えっと……桃杏ちゃんの好きな人って……楓花で合ってる?」
びくびくと、桃杏ちゃんの方が震えた。
その震えはかなりのもので、5センチ間を圧倒的速さで往復する。
それくらいの震えだった。
つまり、分かりやす過ぎた。
「な、なななな、な。なな。な、なんでそれを!」
声を荒げ、顔を突き出してきた。
目を見開いて。額から少量の汗を流していて。
意外にも感情を顔を出すタイプなのだろうと思った。
「逆にどうして、それで隠せていると思ったのか不思議なところだけど」
「え。そうなんですか⁉︎ じゃあ、ばれてるんですかね⁉︎」
「いや、妹は結構鈍感というか、シスコンだし、そういうの気にしない系だから、多分大丈夫だと思うよ」
気を遣って言ったはずだが、興奮気味だった彼女は、机に乗り出していた体をすーっと椅子の方へ戻し。
と思えば、首が折れるかのようにカクンと見下ろした。
「そう、ですか。……じゃあ、私のことなんてどうてもいいんですかね」
「ま、待って! どうして、そう悲観的になるの!」
「だってそうじゃないですか。やっぱり楓花ちゃんはお姉さんのことを性的な目で──」
「見られてないから! 見られてたら流石の私でも怖いから!」
「そうですかね。人って分からないものですよ。……例えばですね、別に彼女なんていないよーって、そういう感じを振舞っている女子がいたとします」
と、急に何かを語り出す。
そして、なぜ女子同士なのかはスルーしておこう。
桃杏ちゃんは、女子に恋する乙女なのだろう。
「その子が私と普通に毎日会話をしてくれるとします」
「うんうん」
「そしたら私に気があるってことになりますよね?」
「うん? まぁ続けて」
「そして私は告白するんですよ」
「うんうん」
「そしたら、こっぴどく振られるんですよ」
「まぁ。それは可哀想だよね」
「ほら! 人って分からないじゃないですか!」
「確かにね。わかんないかもね。桃杏ちゃんの言っていること、何一つ分からなかったから」
「まぁ。要するに、私を『女の子に恋をする人』にさせた人が、何で私を振るんだって話です。ほら。人ってよく分からない」
「うん。もう例え話であること、隠す気ゼロだね」
桃杏ちゃんは思い出話な風に語っているけど、かなり気の毒にも感じる。
『人って分からない』
確かに、人には未知の部分が多い。
それは科学が及ばない範囲の話でも言えることで。
そういう意味では、彼女の言っていることは案外的を射ているのかもしれない。
「振られてからの毎日は凄く大変でした」
「まだ続くの?」
「しかもその私を振った人、私の前の席だったので。プリントを回してもらう時は、ずっと俯いてプリントを受け取ったり。まぁともかく大変だったんです」
「それは確かに……大変そう」
「そしてやっと失恋を振り切れることができました。それが!」
「それが?」
「楓花ちゃんとの出会いだったんです!」
「おおー。我が妹ながらよくやった」
「出会いは吹奏楽部での出会いだったんですよ」
「馴れ初めの話いる?」
水を差してみると。
桃杏ちゃんは、軽く机をドンと叩き、こっちをキッと鋭く見つめてきた。
「そこ『が』! 重要なんです」
「すみません」
「で、私は右も左も分からない状態で初めて、それで同じトランペットの楓花ちゃんに色々と教えてもらったんです。……あ。知ってますか? トランペットって難しいんですよ?」
「うん。楓花が持って帰ってきた楽器を、吹かせてもらったことあるから分かるよ。本当に全然吹けなかった記憶しかない」
「え。それ、間接キスですか?」
「違います」
……違くない。
けどダル絡みされそうなので、違うということにしておこう。
「んで。まぁそれで。『あれ? この心臓のドキドキは一体?』ってなって」
「乙女かっ!」
「乙女ですけど」
「すみません」
「はい。それで。この気持ちの正体を確かめるために」
「うんうん。きになる」
「私は部活終わりに、誰もいない楽器庫から楓花ちゃんのトランペットを取り出して、マウスピースに──あ。マウスピースって知ってます? 楽器の口をあてる部分です」
「わかるよ。それにその続きもなんとなくわかった」
「私は、そのマウスピースに口づけを……」
「……はい」
「するとすると~。なんとこれは! 恋だったんですよ!」
マジで、大声で何言っているんだこの人状態である。
一目見た時に。真面目に桃杏ちゃんを描写した私の時間を返して欲しい。
「そうはならんやろ」
「なっとるんですよ。これが」
「……どうぞ?」
私は今程した予想──桃杏ちゃんの好きな人は楓花であるという予想がその通りであるかを、聞いてみようと生唾を飲み込んだ。
いや、その通りなのだと思う。
だって考えてみれば、結構あからさまだから。
「えっと……桃杏ちゃんの好きな人って……楓花で合ってる?」
びくびくと、桃杏ちゃんの方が震えた。
その震えはかなりのもので、5センチ間を圧倒的速さで往復する。
それくらいの震えだった。
つまり、分かりやす過ぎた。
「な、なななな、な。なな。な、なんでそれを!」
声を荒げ、顔を突き出してきた。
目を見開いて。額から少量の汗を流していて。
意外にも感情を顔を出すタイプなのだろうと思った。
「逆にどうして、それで隠せていると思ったのか不思議なところだけど」
「え。そうなんですか⁉︎ じゃあ、ばれてるんですかね⁉︎」
「いや、妹は結構鈍感というか、シスコンだし、そういうの気にしない系だから、多分大丈夫だと思うよ」
気を遣って言ったはずだが、興奮気味だった彼女は、机に乗り出していた体をすーっと椅子の方へ戻し。
と思えば、首が折れるかのようにカクンと見下ろした。
「そう、ですか。……じゃあ、私のことなんてどうてもいいんですかね」
「ま、待って! どうして、そう悲観的になるの!」
「だってそうじゃないですか。やっぱり楓花ちゃんはお姉さんのことを性的な目で──」
「見られてないから! 見られてたら流石の私でも怖いから!」
「そうですかね。人って分からないものですよ。……例えばですね、別に彼女なんていないよーって、そういう感じを振舞っている女子がいたとします」
と、急に何かを語り出す。
そして、なぜ女子同士なのかはスルーしておこう。
桃杏ちゃんは、女子に恋する乙女なのだろう。
「その子が私と普通に毎日会話をしてくれるとします」
「うんうん」
「そしたら私に気があるってことになりますよね?」
「うん? まぁ続けて」
「そして私は告白するんですよ」
「うんうん」
「そしたら、こっぴどく振られるんですよ」
「まぁ。それは可哀想だよね」
「ほら! 人って分からないじゃないですか!」
「確かにね。わかんないかもね。桃杏ちゃんの言っていること、何一つ分からなかったから」
「まぁ。要するに、私を『女の子に恋をする人』にさせた人が、何で私を振るんだって話です。ほら。人ってよく分からない」
「うん。もう例え話であること、隠す気ゼロだね」
桃杏ちゃんは思い出話な風に語っているけど、かなり気の毒にも感じる。
『人って分からない』
確かに、人には未知の部分が多い。
それは科学が及ばない範囲の話でも言えることで。
そういう意味では、彼女の言っていることは案外的を射ているのかもしれない。
「振られてからの毎日は凄く大変でした」
「まだ続くの?」
「しかもその私を振った人、私の前の席だったので。プリントを回してもらう時は、ずっと俯いてプリントを受け取ったり。まぁともかく大変だったんです」
「それは確かに……大変そう」
「そしてやっと失恋を振り切れることができました。それが!」
「それが?」
「楓花ちゃんとの出会いだったんです!」
「おおー。我が妹ながらよくやった」
「出会いは吹奏楽部での出会いだったんですよ」
「馴れ初めの話いる?」
水を差してみると。
桃杏ちゃんは、軽く机をドンと叩き、こっちをキッと鋭く見つめてきた。
「そこ『が』! 重要なんです」
「すみません」
「で、私は右も左も分からない状態で初めて、それで同じトランペットの楓花ちゃんに色々と教えてもらったんです。……あ。知ってますか? トランペットって難しいんですよ?」
「うん。楓花が持って帰ってきた楽器を、吹かせてもらったことあるから分かるよ。本当に全然吹けなかった記憶しかない」
「え。それ、間接キスですか?」
「違います」
……違くない。
けどダル絡みされそうなので、違うということにしておこう。
「んで。まぁそれで。『あれ? この心臓のドキドキは一体?』ってなって」
「乙女かっ!」
「乙女ですけど」
「すみません」
「はい。それで。この気持ちの正体を確かめるために」
「うんうん。きになる」
「私は部活終わりに、誰もいない楽器庫から楓花ちゃんのトランペットを取り出して、マウスピースに──あ。マウスピースって知ってます? 楽器の口をあてる部分です」
「わかるよ。それにその続きもなんとなくわかった」
「私は、そのマウスピースに口づけを……」
「……はい」
「するとすると~。なんとこれは! 恋だったんですよ!」
マジで、大声で何言っているんだこの人状態である。
一目見た時に。真面目に桃杏ちゃんを描写した私の時間を返して欲しい。
「そうはならんやろ」
「なっとるんですよ。これが」
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