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仲良し少女の恋愛相談
美結ちゃんとの対面
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例の如く。対面で座り。
例の如く。紅茶を淹れ、美結ちゃんに差し出す。
背後にいる心音の気配を感じながら、私は話を切り出した。
「……本題だけど。手紙を渡せていないってのは……それは、どうして?」
「えっとねー。振られるのが怖いから!」
少し攻めた質問をしたかなと、そう思ったが。
返ってきた言葉はあっさりとしていた。
「振られるって、怖いよね……。私がもし好きな人に告白して振られてたとしたら、一生のトラウマになると思う……」
と、振られたことも無いのに、こんなことを言ってみた。
私と心音はまだ付き合っていない。
私は……心音と付き合いたい。って思っているはず。
……心音もそう思っている。と信じている。
だから、告白をするとしたらどっちからなんだろう。
これで仮に私が付き合ってくださいと心音に告げたとして、そこからくる返答が私の意図していたものとは異なっていたらと思うと、思わず身震いしてしまう。
美結ちゃんは明るく言ってはいるが、振られた時の恐怖を考えると……というか、考えたくもない。
きっとそこには計り知れないほどの恐怖が満ちていて。
世の告白する人たちというのは、一体どれほどの想いを抱いているのか。
……とか、別に今考えることでは無いか。
そう。思い出したかのように、私は会話に集中を戻す。
「……伊奈ちゃん先輩って、告ったことあるの……?」
そう意識を戻した途端に、恐る恐るとそう問われる。
「いや、無い無い」
私は片手を横に振ってそれを否定する。
「あるわけ無いでしょ」
苦笑しながら、そう付け加えた。
「ふーん? そーなんだ。……と、それで。後ろにいるのが、伊奈ちゃん先輩の彼女さん……だと?」
興味なさそうに私に応答した美結ちゃん。
続けて、私の後ろを指してそう言ってくる。
真っ先に行く推論が『彼女』というのもおかしな話だと、普通は思いそうなものだけど……ここに相談に来るほとんどは女子同士だし、今更そう言われても何も違和感はない。
むしろ、やはりそうかという感じだった。
「んーん。別に……ただの友達……かな?」
とか言ってみたけど。
この声も多分、心音には聞こえているんだよね。
後になって『ただの友達なんですか?』とか言われそうで少し怖いなー。
なんて思いながら、美結ちゃんの表情が和らいでいくのを確認する。
心音のことを、私の彼女って思っていたのだろうか。
この学校にいるのだから、心音の存在は全生徒に知れ渡っていると思っていたのに。
そういうのに、美結ちゃんはさして興味を示さない人なのだろうか。
いや、少なくとも、私の知っている白河美結という人物はそうではなかった。
なんなら、いろいろなことに興味を示すような人だった。
……って。これも今更考えるような内容でないか。
と、再び意識を頭の中から取り出す。
「……ふーん。伊奈ちゃん先輩に、そんな美形な彼女は不釣り合いだと思ってたんだけど、やっぱり彼女じゃなかったんだね!」
「ぐっ……。そ、そう思われますか……。ま、まぁ。ただの部員だよ」
心に深く言葉の槍が刺さる。
……痛い。痛すぎる。
そう心の片隅で思っていたこと事実を、いざこうして他人に突きつけられるというのは、分かっていたこととは言えグサリとくる。
けれど、無邪気に微笑む美結ちゃんに、そう強いことを言えるわけもなく、私は無理やり言葉の槍を心から取り外した。
「うん。……んで! それちゃったけど話戻すね!」
「う……うん。了解した」
傷口を押さえながら頷いて。
そして美結ちゃんはこう言った。
「えっとー。……手紙を、一緒に書き直そ?」
例の如く。紅茶を淹れ、美結ちゃんに差し出す。
背後にいる心音の気配を感じながら、私は話を切り出した。
「……本題だけど。手紙を渡せていないってのは……それは、どうして?」
「えっとねー。振られるのが怖いから!」
少し攻めた質問をしたかなと、そう思ったが。
返ってきた言葉はあっさりとしていた。
「振られるって、怖いよね……。私がもし好きな人に告白して振られてたとしたら、一生のトラウマになると思う……」
と、振られたことも無いのに、こんなことを言ってみた。
私と心音はまだ付き合っていない。
私は……心音と付き合いたい。って思っているはず。
……心音もそう思っている。と信じている。
だから、告白をするとしたらどっちからなんだろう。
これで仮に私が付き合ってくださいと心音に告げたとして、そこからくる返答が私の意図していたものとは異なっていたらと思うと、思わず身震いしてしまう。
美結ちゃんは明るく言ってはいるが、振られた時の恐怖を考えると……というか、考えたくもない。
きっとそこには計り知れないほどの恐怖が満ちていて。
世の告白する人たちというのは、一体どれほどの想いを抱いているのか。
……とか、別に今考えることでは無いか。
そう。思い出したかのように、私は会話に集中を戻す。
「……伊奈ちゃん先輩って、告ったことあるの……?」
そう意識を戻した途端に、恐る恐るとそう問われる。
「いや、無い無い」
私は片手を横に振ってそれを否定する。
「あるわけ無いでしょ」
苦笑しながら、そう付け加えた。
「ふーん? そーなんだ。……と、それで。後ろにいるのが、伊奈ちゃん先輩の彼女さん……だと?」
興味なさそうに私に応答した美結ちゃん。
続けて、私の後ろを指してそう言ってくる。
真っ先に行く推論が『彼女』というのもおかしな話だと、普通は思いそうなものだけど……ここに相談に来るほとんどは女子同士だし、今更そう言われても何も違和感はない。
むしろ、やはりそうかという感じだった。
「んーん。別に……ただの友達……かな?」
とか言ってみたけど。
この声も多分、心音には聞こえているんだよね。
後になって『ただの友達なんですか?』とか言われそうで少し怖いなー。
なんて思いながら、美結ちゃんの表情が和らいでいくのを確認する。
心音のことを、私の彼女って思っていたのだろうか。
この学校にいるのだから、心音の存在は全生徒に知れ渡っていると思っていたのに。
そういうのに、美結ちゃんはさして興味を示さない人なのだろうか。
いや、少なくとも、私の知っている白河美結という人物はそうではなかった。
なんなら、いろいろなことに興味を示すような人だった。
……って。これも今更考えるような内容でないか。
と、再び意識を頭の中から取り出す。
「……ふーん。伊奈ちゃん先輩に、そんな美形な彼女は不釣り合いだと思ってたんだけど、やっぱり彼女じゃなかったんだね!」
「ぐっ……。そ、そう思われますか……。ま、まぁ。ただの部員だよ」
心に深く言葉の槍が刺さる。
……痛い。痛すぎる。
そう心の片隅で思っていたこと事実を、いざこうして他人に突きつけられるというのは、分かっていたこととは言えグサリとくる。
けれど、無邪気に微笑む美結ちゃんに、そう強いことを言えるわけもなく、私は無理やり言葉の槍を心から取り外した。
「うん。……んで! それちゃったけど話戻すね!」
「う……うん。了解した」
傷口を押さえながら頷いて。
そして美結ちゃんはこう言った。
「えっとー。……手紙を、一緒に書き直そ?」
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