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仲良し少女の恋愛相談
蝶が羽ばたく
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美結ちゃんの口から出た相談内容。
美結ちゃんに教示し、それで書いたであろうその手紙。
それを書き直したい。そういうことだった。
と言っても、どういうことかよく分からない。ので、問うてみる。
「手紙を書き直す? それまたどうして?」
「あ。いやー。今日の朝、見返してみたんだけど。……なんか恥ずかしい。それだけだけど……」
「ふむふむ」
ということは、今日その人に手紙を渡す予定だったのだろう。
だから朝読み返して、そして恥ずかしくなってしまって。
だからこうして私のところに来たと。
別に一人で書き直せるような気もするけど。
これを突っ込むのは失礼というものだろうか。
「なるほどね。まぁ、早速書き直そうか」
「了解! ……それと、なんだけど」
何か濁すように言い、細い指を上げながら私を──いや、私の後ろを指す。
見ずとも分かるので私は前を向いたままだけれど、そこにはもちろん心音がいる。
「そこの美人さんには部屋から出ていって欲しいのですが……」
ゆっくりと動いた口から出された言葉は、敬語だった。
ただそれだけなんだけど、なんというか美結ちゃんが敬語を使うのもなんだか珍しく感じた。
……思えば、私と妹と以外に一緒にいるところをほとんど見たことがない。
美結ちゃんは初対面の人に対しては、結構礼儀正しいのかもしれない。
「あれ? えっと、聞こえなかったんですかね?」
何も返事をしない心音に疑問を抱いたようで、困惑が美結ちゃんの口から漏れ出る。
さっきも思ったけど、心音の存在というのは全生徒に浸透していると思っていたのだが、やはりそうでも無いらしい。
やはり。心音が耳が聞こえない(ということになっている)ことを美結ちゃんは知らないようだ。
「美結ちゃんって……えっと。後ろの人のこと知らないの?」
「うん。知らないよ。芸能人?」
きょとんと、そう言われてしまう。
少し驚きはしたが、そういう人もいるのだろうとその言葉に首を振った。
「い、いや。知らないなら別にいいんだけど……。……とりあえず、こ──天崎さんにはここを出ていって貰おうかな」
心音。
そう言おうとしても恥ずかしさで言葉に出来ず、結局前の呼び名で呼んでしまう。
この声も、心音に届いているのだから、後でこのことに触れられたら大変だ。
「まぁ、いいか」
上半身だけを振り向けつつ、そう納得して心音を見上げる。
私を見下ろす心音の視線が少し鋭いものに感じたような気がしたけど、多分気のせいだと信じながら私は部室の外に出るよう促した。
促すと言っても、カバンからスマホを取り出し、『部屋から出ていって欲しいだって』と送っただけ。
別に美結ちゃんは心音のことを知らないんだし、こんなことする必要はないとは思うけど、心音は学校では耳が聞こえないとしているから一応これくらいはしておいた。
ポケットの震えに、スマホを取り出した心音はさっとLINEを開いて、『少しだけ、一緒に来てください!』と送ってきた。
断る意味も無いので、『おっけいー』と送って席から立ち上がる。
「あれ? 伊奈ちゃん先輩、どこに行くんですか?」
部屋を出ていく私に問いかけたその声に。
「あ、すぐ戻るから待ってて!」
応えて。
心音の気配を背後に感じながら、部屋の外へと出てドアをバタンと閉めた。
※
少し歩く。
吹奏楽の音が奥の音楽室から聞こえる。
廊下の窓際に身を寄せて、心音の顔を見る。
また何かをスマホに打ち込んでいるようだった。
意識がスマホに集中している。
「どうしたの?」
聞いた時。
──ブー。
持っていたスマホが振動する。
いつも通りにそれを見る。
『もう少しついてきてください!』
見上げれば、心音も私を見つめていた。
教師にバレるのもあれなので、ささっとスマホをポケットに突っ込む。
と、突っ込んだタイミングを見てか。
逆の腕が心音に奪われる。
「──おぉっと」
ぐいっと、心なしか強く引かれて。
おっとっと、とバランスを崩してこけそうになってしまった。
咄嗟のことで頭が追いつかず、数秒を経て私は、背中を見せて前をずかずかと歩く心音に呼びかける。
「まてまて、私、自分で歩けるから」
言うと、心音はピタと足を止め。
その背中に私は顔を突っ込む。
「ぼへっ!」
鼻の頭をさすさすしながら、少し距離を取って見上げると、私の顔を覗く心音。
心音は軽く『うん』と口には出さずに頷くと、手を離してスタスタ前の方へと歩いて行った。
「あ、待って!」
音楽室とは逆方向に歩いていく心音の背中を追いかける。
けど……。
心音が歩いて行ってる場所は空き教室しかなくて……。
そこは吹奏楽部が個人練で使うくらいしか用途のない場所だ。
そう思いながら心音を見てると、くいっと角度を曲げて思っていた通りの空き教室へと消えていった。
少し歩いて、私もその教室の中へと入る。
沈みかけの夕日が部屋内を照らして、そこに宙を舞う埃が映る。
空き教室ではあるが、机は綺麗に配置されていた。
そんな特に意味もないことを描写しつつ、私は窓の方へと身を寄せた心音の元へと歩み寄った。
「えっと、どうしたの?」
窓の方に背中を向けて。
心音に肩を並べて聞いてみた。
心音がいつも通りスマホを操作して。
私も返信を確認するためにスマホを見る。
『シュポッ』と送信音が耳に届いたほぼ同時にメッセージが届く。
『今は、二人きりだから大丈夫ですよね?』
目を通して、その言葉を理解するのに時間を要した。
なんのこと?
そう暫く頭の中で考えて。
結局、答えが見つからない。
諦めて、その言葉の意味を聞こうとした時。
私は──。
「え──」
心音の腕に絡みつけられて。
固まった。
膠着した。
「……こういうことをしても。大丈夫ですよねって。……そういうことです」
ハグだった。
細い声が私の耳を刺激した。
ぞわぞわと妙な何かが私を駆け巡った。
その言葉をただ。可愛いとしか思わなくて。
心音が言った言葉を、意味のあるものとして捉えることができなかった。
早くなっていた心臓が、少しだけ落ち着きを取り戻してきて。
改めて、私は心音の体温、そして今の状況をなんとなく理解した。
「そ、そ。その。天崎さん?」
「心音」
「こ、心音……?」
「はい」
これが。心音に対して『心音』と呼ぶ初めてだった。
心臓は、当然の様に速さを増す。
「その。えっと。……なんで今?」
今は美結ちゃんの相談に乗っていたのに。
こういうことはそれが終わってからでもよかったんじゃないかと思う。
いや。すごく嬉しいから。これで、いいけど。
「今じゃ。ダメですか?」
「ダメじゃない……です」
「それと。伊奈さんは美結さんに構いすぎです」
「はい……」
「……美結さん、私と伊奈さんのこと不釣り合いって言ってたじゃないですか」
「実際、そうじゃない?」
心音は美人で、私は凡人。
普通に不釣り合いなのは、誰の目から見ても明らかではある。
だけど。今、こうしてハグされて。
これは現実なのかと疑いたくなるくらいだ。
心音は数秒間空けて。
恥ずかしそうに、こう囁く。
「私が好きだから……いいんです」
「……や、やめて。恥ずい……」
「じゃあ、やめます」
「やめないで!」
心音はそんな焦った様子の私を、可笑しそうにくすくすと笑った。
「笑わないで!」
「ごめんなさい。……ふふ」
顔を見れないけど、心音はまだ笑っていた。
だけど、笑っている心音がなんだか凄く可愛く思えて。
私は、自分の垂らしていた手を上げて。
抱き返した。
最初に感じたのは心音の柔らかさ。そして温かさ。
そして、私の心の内がとても熱くなるのを感じた。
「ど、どう?」
何を求めて、私はこう聞いたのだろう。
聞いてすぐに、そう聞いたことを少しだけ後悔した。
けれど、心音はまた少しだけ微笑んで、
「嬉しい。ありがとう」
そう言ってくれた。
やがて、数分間。
ただただ抱き合って。
「じゃあ、部室戻るね。美結ちゃん待ってるから」
私と離れて寂しそうな心音に呼びかける。
その時。ちょうど鳴った携帯。私は無意識のまま取り出して。
『後で、キスもしますからね』
心音からそう送られてきていた。
顔を見てもやっぱり真顔だった。
私に笑顔を見せて欲しい。
そう思いながら。私は部室へと向かった。
心が弾む。
頬が緩む。
軽くスキップ、ルンルンと。
美結ちゃんに教示し、それで書いたであろうその手紙。
それを書き直したい。そういうことだった。
と言っても、どういうことかよく分からない。ので、問うてみる。
「手紙を書き直す? それまたどうして?」
「あ。いやー。今日の朝、見返してみたんだけど。……なんか恥ずかしい。それだけだけど……」
「ふむふむ」
ということは、今日その人に手紙を渡す予定だったのだろう。
だから朝読み返して、そして恥ずかしくなってしまって。
だからこうして私のところに来たと。
別に一人で書き直せるような気もするけど。
これを突っ込むのは失礼というものだろうか。
「なるほどね。まぁ、早速書き直そうか」
「了解! ……それと、なんだけど」
何か濁すように言い、細い指を上げながら私を──いや、私の後ろを指す。
見ずとも分かるので私は前を向いたままだけれど、そこにはもちろん心音がいる。
「そこの美人さんには部屋から出ていって欲しいのですが……」
ゆっくりと動いた口から出された言葉は、敬語だった。
ただそれだけなんだけど、なんというか美結ちゃんが敬語を使うのもなんだか珍しく感じた。
……思えば、私と妹と以外に一緒にいるところをほとんど見たことがない。
美結ちゃんは初対面の人に対しては、結構礼儀正しいのかもしれない。
「あれ? えっと、聞こえなかったんですかね?」
何も返事をしない心音に疑問を抱いたようで、困惑が美結ちゃんの口から漏れ出る。
さっきも思ったけど、心音の存在というのは全生徒に浸透していると思っていたのだが、やはりそうでも無いらしい。
やはり。心音が耳が聞こえない(ということになっている)ことを美結ちゃんは知らないようだ。
「美結ちゃんって……えっと。後ろの人のこと知らないの?」
「うん。知らないよ。芸能人?」
きょとんと、そう言われてしまう。
少し驚きはしたが、そういう人もいるのだろうとその言葉に首を振った。
「い、いや。知らないなら別にいいんだけど……。……とりあえず、こ──天崎さんにはここを出ていって貰おうかな」
心音。
そう言おうとしても恥ずかしさで言葉に出来ず、結局前の呼び名で呼んでしまう。
この声も、心音に届いているのだから、後でこのことに触れられたら大変だ。
「まぁ、いいか」
上半身だけを振り向けつつ、そう納得して心音を見上げる。
私を見下ろす心音の視線が少し鋭いものに感じたような気がしたけど、多分気のせいだと信じながら私は部室の外に出るよう促した。
促すと言っても、カバンからスマホを取り出し、『部屋から出ていって欲しいだって』と送っただけ。
別に美結ちゃんは心音のことを知らないんだし、こんなことする必要はないとは思うけど、心音は学校では耳が聞こえないとしているから一応これくらいはしておいた。
ポケットの震えに、スマホを取り出した心音はさっとLINEを開いて、『少しだけ、一緒に来てください!』と送ってきた。
断る意味も無いので、『おっけいー』と送って席から立ち上がる。
「あれ? 伊奈ちゃん先輩、どこに行くんですか?」
部屋を出ていく私に問いかけたその声に。
「あ、すぐ戻るから待ってて!」
応えて。
心音の気配を背後に感じながら、部屋の外へと出てドアをバタンと閉めた。
※
少し歩く。
吹奏楽の音が奥の音楽室から聞こえる。
廊下の窓際に身を寄せて、心音の顔を見る。
また何かをスマホに打ち込んでいるようだった。
意識がスマホに集中している。
「どうしたの?」
聞いた時。
──ブー。
持っていたスマホが振動する。
いつも通りにそれを見る。
『もう少しついてきてください!』
見上げれば、心音も私を見つめていた。
教師にバレるのもあれなので、ささっとスマホをポケットに突っ込む。
と、突っ込んだタイミングを見てか。
逆の腕が心音に奪われる。
「──おぉっと」
ぐいっと、心なしか強く引かれて。
おっとっと、とバランスを崩してこけそうになってしまった。
咄嗟のことで頭が追いつかず、数秒を経て私は、背中を見せて前をずかずかと歩く心音に呼びかける。
「まてまて、私、自分で歩けるから」
言うと、心音はピタと足を止め。
その背中に私は顔を突っ込む。
「ぼへっ!」
鼻の頭をさすさすしながら、少し距離を取って見上げると、私の顔を覗く心音。
心音は軽く『うん』と口には出さずに頷くと、手を離してスタスタ前の方へと歩いて行った。
「あ、待って!」
音楽室とは逆方向に歩いていく心音の背中を追いかける。
けど……。
心音が歩いて行ってる場所は空き教室しかなくて……。
そこは吹奏楽部が個人練で使うくらいしか用途のない場所だ。
そう思いながら心音を見てると、くいっと角度を曲げて思っていた通りの空き教室へと消えていった。
少し歩いて、私もその教室の中へと入る。
沈みかけの夕日が部屋内を照らして、そこに宙を舞う埃が映る。
空き教室ではあるが、机は綺麗に配置されていた。
そんな特に意味もないことを描写しつつ、私は窓の方へと身を寄せた心音の元へと歩み寄った。
「えっと、どうしたの?」
窓の方に背中を向けて。
心音に肩を並べて聞いてみた。
心音がいつも通りスマホを操作して。
私も返信を確認するためにスマホを見る。
『シュポッ』と送信音が耳に届いたほぼ同時にメッセージが届く。
『今は、二人きりだから大丈夫ですよね?』
目を通して、その言葉を理解するのに時間を要した。
なんのこと?
そう暫く頭の中で考えて。
結局、答えが見つからない。
諦めて、その言葉の意味を聞こうとした時。
私は──。
「え──」
心音の腕に絡みつけられて。
固まった。
膠着した。
「……こういうことをしても。大丈夫ですよねって。……そういうことです」
ハグだった。
細い声が私の耳を刺激した。
ぞわぞわと妙な何かが私を駆け巡った。
その言葉をただ。可愛いとしか思わなくて。
心音が言った言葉を、意味のあるものとして捉えることができなかった。
早くなっていた心臓が、少しだけ落ち着きを取り戻してきて。
改めて、私は心音の体温、そして今の状況をなんとなく理解した。
「そ、そ。その。天崎さん?」
「心音」
「こ、心音……?」
「はい」
これが。心音に対して『心音』と呼ぶ初めてだった。
心臓は、当然の様に速さを増す。
「その。えっと。……なんで今?」
今は美結ちゃんの相談に乗っていたのに。
こういうことはそれが終わってからでもよかったんじゃないかと思う。
いや。すごく嬉しいから。これで、いいけど。
「今じゃ。ダメですか?」
「ダメじゃない……です」
「それと。伊奈さんは美結さんに構いすぎです」
「はい……」
「……美結さん、私と伊奈さんのこと不釣り合いって言ってたじゃないですか」
「実際、そうじゃない?」
心音は美人で、私は凡人。
普通に不釣り合いなのは、誰の目から見ても明らかではある。
だけど。今、こうしてハグされて。
これは現実なのかと疑いたくなるくらいだ。
心音は数秒間空けて。
恥ずかしそうに、こう囁く。
「私が好きだから……いいんです」
「……や、やめて。恥ずい……」
「じゃあ、やめます」
「やめないで!」
心音はそんな焦った様子の私を、可笑しそうにくすくすと笑った。
「笑わないで!」
「ごめんなさい。……ふふ」
顔を見れないけど、心音はまだ笑っていた。
だけど、笑っている心音がなんだか凄く可愛く思えて。
私は、自分の垂らしていた手を上げて。
抱き返した。
最初に感じたのは心音の柔らかさ。そして温かさ。
そして、私の心の内がとても熱くなるのを感じた。
「ど、どう?」
何を求めて、私はこう聞いたのだろう。
聞いてすぐに、そう聞いたことを少しだけ後悔した。
けれど、心音はまた少しだけ微笑んで、
「嬉しい。ありがとう」
そう言ってくれた。
やがて、数分間。
ただただ抱き合って。
「じゃあ、部室戻るね。美結ちゃん待ってるから」
私と離れて寂しそうな心音に呼びかける。
その時。ちょうど鳴った携帯。私は無意識のまま取り出して。
『後で、キスもしますからね』
心音からそう送られてきていた。
顔を見てもやっぱり真顔だった。
私に笑顔を見せて欲しい。
そう思いながら。私は部室へと向かった。
心が弾む。
頬が緩む。
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