義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日

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義姉妹の学校生活

学校でハグするのは変?

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「さて、お姉ちゃんに問題です」

 「ハグしよ」と言ったのに、てんちゃんは、そんな返しをしてきた。

「うん? 急にどうしたの」

「問題。家族は普通、学校でハグをしますか? するかしないかで答えなさい。制限時間は──」
「する」
「いや、しないよ!」

 もう教室に人はいないので、てんちゃんと私は周りの目を心配することもなく、普通にお話できている。

「したくないの?」
「そ、そりゃあ、私だってしたいよ? でも、そういうのは誰にも見られない場所でやった方がいいと言いますか、なんと言いますか」

 もごもごと喋るてんちゃん。
 少し照れ臭そうにしてる。

「じゃあ、トイレでする?」

 こう返答してみたら、てんちゃんは少し硬直した。
 数秒黙り込んで、何を言うんだろうって思いながら言葉が返ってくるのを待つ。

「……さて、お姉ちゃんに問題です」
「う、うん。話、逸らされた」

 ……一分くらい前にも同じこと言われたような。

「問題。家族は普通、学校のトイレでハグをしますか? するかしないかで──」
「する」
「だからしないって!」

「じゃあ! 私から、てんちゃんに問題です」

 今度は私がこう切り出してみる。

「よし。分かった。答えてあげる」
「問題。女友達同士が、学校でハグするのはおかしいですか、おかしくないですか?」

「……それは、たしかに、おかしくないとは思うけど」
「じゃあ。しようよ。トイレで」
「……うーん」

「多分、てんちゃんは意識し過ぎているんだと思うよ。私と普通の家族でいたいがあまりにさ。仲良い姉妹くらい、学校でハグくらいするよ」
「そう。……なのかな?」

 てんちゃんは「んー」と数秒間唸って、渋々頷く。
 だけど、嫌そうにはしていなかった。


※※※※※※


「ねぇっ。ちょっ。お姉ちゃん」

 トイレの個室で、てんちゃんに抱きついて、その抱きついた手で体をまさぐる。

 いきなりだ。
 個室に入ってすぐに私はこうした。
 ずっと、ハグしたかったから……。

「ねぇてんちゃん。可愛い。好き」
「そんなっ、色んなとこ触んないでっ」

「じゃあやめてあげるね」
「ねぇだめ。やめちゃやだ」

 可愛い声を出すてんちゃんを見ると、なんだかいじめたくなる。……可愛すぎる。
 そして。昨日から思ってたけど、てんちゃんって変態だ。
 体を触られて喜ぶなんて。

 「やめてやめて」とか言いながら、そんな物欲しそうな顔をしたりして。
 そんな顔を見せられる度に、私の中の何かが熱くなっていくのだ。

「大好き」

 「大好き」か「可愛い」しか言ってない気がしてきたけど、本当にその通りなんだからしょうがない。

「誰かきたらどうするの」

「その時は、その時。もうちょっと、こうしていようよ」
「……うん。いいよ」

 てんちゃんは抱き返してこない。
 それは、ちょっと悲しい。

 体温は今、すごく高い。
 多分、どっちとも。

 今やっていることは普通じゃない。
 それは容易く理解できる。
 てんちゃんは、それに気付いているのかな?
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