46 / 86
義姉妹の学校生活
てんちゃんから
しおりを挟む
「……堪能したね」
私はてんちゃんから離れて、顔も合わせずにそう言う。
トイレでなにやってんだろうと冷静になって、今の状況が少し恥ずかしくなった。
でも、やっぱり、このハグするという時間は心地が良かった。
嫌なことを全部忘れられて、目の前のてんちゃんのことしか考えれなくなるから。
良い匂いがするし。
シャンプーは私と同じだけど、そういう匂いじゃない。
……てんちゃんの匂い。みたいなそのようなものだ。
とりあえず、その匂いを嗅げば私はなぜかホッとするのだ。
「終わり?」
私が離れた事に対して、てんちゃんは意外そうな声を出した。
「うん。てんちゃんの言う通り、人がきたらまずいかなとか思ったし」
「そう」
頷くその声は寂しげだった。
顔を見れば、少し哀愁めいたものが浮かび上がっている気がした。
「離れたの、嫌だった?」
多分こういうことだろう。
少し自意識過剰っぽいかもだけど。
両思いなんだからこう聞くくらい、いいだろう。
「うん。だからもうちょっと──」
俯いたてんちゃんは、そのまま私に抱き着く。
押すようにして抱きついて、私を冷たいタイルの壁に追いやった。肩が壁にぶつかる。
拘束されているようだった。
「わっ」
「もうちょっとだけだから」
「……うん」
急にどうしたんだろう。
今までてんちゃんからなんて無かったのに。
私が促さずに、てんちゃんは抱きついてくれた。
素直に嬉しい。
「これは普通だからね」
「うん。そうだね」
普通じゃないよ。
そう心の中で言う。
てんちゃんも、普通じゃないの分かってて自分を言い聞かせるために、そう言っているのだとは思うけど。
「ねぇ。お姉ちゃん」
「ん? なに?」
「離れないでよ?」
「うん。というか、てんちゃんが抱きついてきてるしね」
「違う。これからの生活で」
「……うん」
てんちゃんから、「離れないで」と。そう言って貰えるのは本望だ。
だけど。
なんでだろう。
少し怖い。
てんちゃんが昨日と比べて変わってる。
その様子は変貌と言ってもいい。
昨日まで私の方がグイグイとしてたのに、今日になって、私が藤崎さんと話されてるのを見られてから、てんちゃんの方が少し態度を露わにしているような。
「お姉ちゃん。自分から一緒にいたいって言ったのに、離れたりするのはダメだからね?」
てんちゃんが抱きしめるその腕には、しっかりとした力がある。
私を束縛するような。
それくらいの意味を込めているような。
そんな抱擁だった。
私はてんちゃんから離れて、顔も合わせずにそう言う。
トイレでなにやってんだろうと冷静になって、今の状況が少し恥ずかしくなった。
でも、やっぱり、このハグするという時間は心地が良かった。
嫌なことを全部忘れられて、目の前のてんちゃんのことしか考えれなくなるから。
良い匂いがするし。
シャンプーは私と同じだけど、そういう匂いじゃない。
……てんちゃんの匂い。みたいなそのようなものだ。
とりあえず、その匂いを嗅げば私はなぜかホッとするのだ。
「終わり?」
私が離れた事に対して、てんちゃんは意外そうな声を出した。
「うん。てんちゃんの言う通り、人がきたらまずいかなとか思ったし」
「そう」
頷くその声は寂しげだった。
顔を見れば、少し哀愁めいたものが浮かび上がっている気がした。
「離れたの、嫌だった?」
多分こういうことだろう。
少し自意識過剰っぽいかもだけど。
両思いなんだからこう聞くくらい、いいだろう。
「うん。だからもうちょっと──」
俯いたてんちゃんは、そのまま私に抱き着く。
押すようにして抱きついて、私を冷たいタイルの壁に追いやった。肩が壁にぶつかる。
拘束されているようだった。
「わっ」
「もうちょっとだけだから」
「……うん」
急にどうしたんだろう。
今までてんちゃんからなんて無かったのに。
私が促さずに、てんちゃんは抱きついてくれた。
素直に嬉しい。
「これは普通だからね」
「うん。そうだね」
普通じゃないよ。
そう心の中で言う。
てんちゃんも、普通じゃないの分かってて自分を言い聞かせるために、そう言っているのだとは思うけど。
「ねぇ。お姉ちゃん」
「ん? なに?」
「離れないでよ?」
「うん。というか、てんちゃんが抱きついてきてるしね」
「違う。これからの生活で」
「……うん」
てんちゃんから、「離れないで」と。そう言って貰えるのは本望だ。
だけど。
なんでだろう。
少し怖い。
てんちゃんが昨日と比べて変わってる。
その様子は変貌と言ってもいい。
昨日まで私の方がグイグイとしてたのに、今日になって、私が藤崎さんと話されてるのを見られてから、てんちゃんの方が少し態度を露わにしているような。
「お姉ちゃん。自分から一緒にいたいって言ったのに、離れたりするのはダメだからね?」
てんちゃんが抱きしめるその腕には、しっかりとした力がある。
私を束縛するような。
それくらいの意味を込めているような。
そんな抱擁だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる