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義姉妹の学校生活
体育館裏の告白
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放課後になった。
当の藤崎さんはというと、さようならの挨拶をした後、すぐに教室を飛び出して行った。
体育館裏にいっているのだろう。
……告白されるんだろうな。
あの手紙の感じでそれ以外な訳がない。
私自身平静を装っているけど、内心めっちゃ驚いている。驚きまくっている。
私のことを好きになった理由も、いつ、告白されるくらいの好感度になっていたのかも分からない。
私は意を決して、立ち上がった。
前の席の固まってるてんちゃんを一瞥し、教室を後にする。
廊下を歩く。ゆっくりと。
まだ付かないでと願いながら。
下駄箱でスリッパを脱いで靴に履き替える。
歩く。
さらにゆっくりと。
コンクリート、砂利、土。
どんどん変わりゆく地面。
その地面の感触を踏みしめる度、目的地に近付いていて、今の時間は現実なんだなと謎の納得をしてしまう。
そうしていたら、私は体育館裏にたどり着いていた。
体育館と鉄格子に挟まれたその場所は狭い。
鉄格子の向こうには小川があって、それを囲うように大量の木々があって薄暗い。
いかにも人が寄り付かなさそうな、告白にピッタリな場所だった。
そして。
藤崎さんはそこにいた。
あさってを向いてぽつんと。
私の足音に反応してこっちを向いた藤崎さんは、少し顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いた。
数メートル先の、藤崎さんの元へと歩みを進める。
ガサガサと落ちた葉っぱが砕ける音や、ぽきぽきと小枝の折れる音がする。
藤崎さんは俯いたままこっちを見ない。
怖い。
俯いたまま、彼女の口が動くのを確認する。
「……その。瑞樹。来てくれてありがとう」
「う、うん」
「……えっと、話したいことっていうのはね」
「すぅ」と呼吸する音が聞こえた。
何かを決心したように、彼女は私の目を見る。
その目は、少しだけうるうると揺れていた。
「私。初めてあなたに会った時、凄くドキドキした。その時は気のせいだと思ったんだけど……でも気のせいじゃなかった」
……告白。だった。
藤崎さんの言うこれは。
一目惚れってこと?
……私に似てる。
私もてんちゃんに一目惚れしたようなものだから。
でも、そんな好意を前から抱かれていたのに、なんで私は気付かなかったの?
私が鈍感すぎた?
……いや、違う。
てんちゃんのことしか意識していなかったからだ。
「私が話しかけたら、毎日話し返してくれる。その時気付いたの。……あの時のドキドキは気のせいじゃないって」
「……だから?」
だからって。
その後に続く言葉は分かっていた。
言って欲しくない。
その言葉になんて返せばいいのか分からないから。
それでも彼女は止まらない。
「だから。私は瑞樹が好き。……私と、付き合って」
彼女のうるうるとした目から、ついに涙が零れ、一筋の線となって綺麗な頬を伝った。
それでも顔は下げずに、何かを願うような顔で私を見つめ続ける。
息が詰まる。
なんて言えばいいの。
こんなの初めてで分からない。
「ごめんなさい」でいいの?
それで伝わる?
だって。これじゃ断りきれてない。
きっぱりと断るためには……どうすればいいの。
私の心が荒れに荒れて。
何かを考えようとしても、何も考えれなくて。
もう、この場から逃げ出したいと思った、その時だった。
誰かの走る音が遠くから聞こえてきて、どんどん近づいてきて。
私の背後へと、その人がやってきた。
はぁはぁと、死ぬんじゃないかっていうくらい息切れを起こしてる。
誰だか見ていない。
でも、分かる。
梅雨の時期から。
ずっと後悔をし続けていた。
好きを伝えられなくて、謝れなくて。
もう二度と、言葉を交わせれないかと思った相手。
その相手に、今から何を言われるかなんて分からない。
でも、それなのに。
変わってしまったと思ったけど。やっぱり、この気持ちは変わらない。
大好きな人だ。
振り返れば。
確かにそこに、てんちゃんがいた。
当の藤崎さんはというと、さようならの挨拶をした後、すぐに教室を飛び出して行った。
体育館裏にいっているのだろう。
……告白されるんだろうな。
あの手紙の感じでそれ以外な訳がない。
私自身平静を装っているけど、内心めっちゃ驚いている。驚きまくっている。
私のことを好きになった理由も、いつ、告白されるくらいの好感度になっていたのかも分からない。
私は意を決して、立ち上がった。
前の席の固まってるてんちゃんを一瞥し、教室を後にする。
廊下を歩く。ゆっくりと。
まだ付かないでと願いながら。
下駄箱でスリッパを脱いで靴に履き替える。
歩く。
さらにゆっくりと。
コンクリート、砂利、土。
どんどん変わりゆく地面。
その地面の感触を踏みしめる度、目的地に近付いていて、今の時間は現実なんだなと謎の納得をしてしまう。
そうしていたら、私は体育館裏にたどり着いていた。
体育館と鉄格子に挟まれたその場所は狭い。
鉄格子の向こうには小川があって、それを囲うように大量の木々があって薄暗い。
いかにも人が寄り付かなさそうな、告白にピッタリな場所だった。
そして。
藤崎さんはそこにいた。
あさってを向いてぽつんと。
私の足音に反応してこっちを向いた藤崎さんは、少し顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いた。
数メートル先の、藤崎さんの元へと歩みを進める。
ガサガサと落ちた葉っぱが砕ける音や、ぽきぽきと小枝の折れる音がする。
藤崎さんは俯いたままこっちを見ない。
怖い。
俯いたまま、彼女の口が動くのを確認する。
「……その。瑞樹。来てくれてありがとう」
「う、うん」
「……えっと、話したいことっていうのはね」
「すぅ」と呼吸する音が聞こえた。
何かを決心したように、彼女は私の目を見る。
その目は、少しだけうるうると揺れていた。
「私。初めてあなたに会った時、凄くドキドキした。その時は気のせいだと思ったんだけど……でも気のせいじゃなかった」
……告白。だった。
藤崎さんの言うこれは。
一目惚れってこと?
……私に似てる。
私もてんちゃんに一目惚れしたようなものだから。
でも、そんな好意を前から抱かれていたのに、なんで私は気付かなかったの?
私が鈍感すぎた?
……いや、違う。
てんちゃんのことしか意識していなかったからだ。
「私が話しかけたら、毎日話し返してくれる。その時気付いたの。……あの時のドキドキは気のせいじゃないって」
「……だから?」
だからって。
その後に続く言葉は分かっていた。
言って欲しくない。
その言葉になんて返せばいいのか分からないから。
それでも彼女は止まらない。
「だから。私は瑞樹が好き。……私と、付き合って」
彼女のうるうるとした目から、ついに涙が零れ、一筋の線となって綺麗な頬を伝った。
それでも顔は下げずに、何かを願うような顔で私を見つめ続ける。
息が詰まる。
なんて言えばいいの。
こんなの初めてで分からない。
「ごめんなさい」でいいの?
それで伝わる?
だって。これじゃ断りきれてない。
きっぱりと断るためには……どうすればいいの。
私の心が荒れに荒れて。
何かを考えようとしても、何も考えれなくて。
もう、この場から逃げ出したいと思った、その時だった。
誰かの走る音が遠くから聞こえてきて、どんどん近づいてきて。
私の背後へと、その人がやってきた。
はぁはぁと、死ぬんじゃないかっていうくらい息切れを起こしてる。
誰だか見ていない。
でも、分かる。
梅雨の時期から。
ずっと後悔をし続けていた。
好きを伝えられなくて、謝れなくて。
もう二度と、言葉を交わせれないかと思った相手。
その相手に、今から何を言われるかなんて分からない。
でも、それなのに。
変わってしまったと思ったけど。やっぱり、この気持ちは変わらない。
大好きな人だ。
振り返れば。
確かにそこに、てんちゃんがいた。
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