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第三十七話 二人の戦闘
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クローナは槍を握る手に力を込める。
それと同時、男の一人がクナイのようなものを構え、壁を蹴って天井へと駆け上がった。
もう一人は正面から、驚くべき速さでクローナとの距離を詰めてくる。
上下からの、完璧な連携攻撃。
「させない!」
クローナは地面を蹴って正面の男に突進する。
彼女の槍の穂先が赤い閃光となって闇を切り裂いた。
武術大会の決勝で負けた悔しさが、その一撃に普段以上の鋭さを与えていた。
だが男は焦る様子もなく、持っていた奇妙な形の盾を構える。
キィン。という甲高い音が響くはずだった。
だがクローナの渾身の一撃は、盾に触れる寸前で急激にその勢いを殺されてしまった。
「なっ……!?」
手応えのない感触に、クローナの体勢がわずかに崩れる。
男はその隙を見逃さなかった。
盾で槍をいなしながら、懐に潜り込み短剣を振るう。
クローナは咄嗟に身を翻して致命傷は避けたが、その脇腹を浅く切り裂かれた。
「クローナ!」
「大丈夫! だけどこいつら……何かおかしい!」
クローナは距離を取り体勢を立て直す。
だが敵の猛攻は止まらない。
正面の男がクローナを足止めしている間に、天井に張り付いていたもう一人の男がアリアに向かって音もなく降ってきた!
「アリア!」
クローナが叫ぶが間に合わない。
絶体絶命。そう思われた、その瞬間。
「――【守護】」
アリアが叫んだ。
彼女が首から下げていた、何の変哲もない石のペンダントが淡い光を放つ。
その光はアリアの全身を薄い膜のように覆い、天井から迫った男の刃をカキンと硬い音を立てて弾き返した。
それは以前、アリアに頼まれてノアが彼女に付与したお守りだった。
「……なるほど。あのネズミの仲間、というわけか」
男たちは初めて警戒の色を浮かべて二人と距離を取る。
その間に、アリアは震える手でノアが残した『概念辞書』を開いていた。
「クローナ、下がってください!」
アリアはクローナの前に立つと、震える声でしかしはっきりと叫んだ。
「あの者たちの武具はただの魔法武具ではありません! 直接的な攻撃の『概念』そのものを、歪めて減衰させる古代の術式が刻まれています! 正面から戦っては勝てません!」
「じゃあ、どうしろって言うのよ!」
クローナは脇腹の傷を押さえながら荒い息を繰り返す。
彼女の体力は確実に削られていた。
アリアは必死に辞書のページをめくる。
ノアが書き記したつたない文字。
銅貨の実験、木の棒の実験……。
その中に、彼女の目が一つの記述で止まった。
ゴブリン退治の記録。
そこにノアが付け加えた、小さな覚書があった。
『――【跳弾】。コストは低いが、軌道が読めないため対人戦には不向きか?』
不向き? いや、違う。
アリアの頭脳が高速で回転する。
敵の防御は正面からの直接的な攻撃にしか作用しない。
なら予測不能な、間接的な攻撃なら……。
「クローナ!」
アリアはポケットから、ノアがゴブリン退治で使っていたあの丸い石ころを一つクローナに投げ渡す。
「これ……!」
「はい! ノアさんが私たちに残してくれた切り札です! 敵じゃない! 壁を狙ってください!」
クローナは一瞬だけ戸惑った。
だが彼女は親友の言葉を、そしてあの不器用な仲間の力を信じた。
「……分かった!」
クローナは男たちに背を向け、わざとがら空きの背中を見せるようにして、通路の壁に向かって力いっぱい石を投げつけた。
「愚かな!」
男たちが好機とばかりに二人へ同時に襲いかかった、その瞬間。
壁に当たった石は【跳弾】の概念によって予測不能な軌道で跳ね返り、男たちの背後からその無防備な後頭部を、立て続けに撃ち抜いた。
「ぐっ……!?」
「な……に……!?」
概念的な防御が間に合わなかった番人たちは、白目をむいてその場に崩れ落ちる。
「……やった」
アリアはその場にへたり込んだ。
クローナはまだ信じられないといった顔で、自分の手と通路の奥を見つめている。
「……あいつ、本当にすごいじゃない」
彼女が初めて、ノアのことを素直に認めた瞬間だった。
二人は互いに頷くと、気を失った番人たちを乗り越え、地下水路のさらに奥深くへと再び走り出した。
それと同時、男の一人がクナイのようなものを構え、壁を蹴って天井へと駆け上がった。
もう一人は正面から、驚くべき速さでクローナとの距離を詰めてくる。
上下からの、完璧な連携攻撃。
「させない!」
クローナは地面を蹴って正面の男に突進する。
彼女の槍の穂先が赤い閃光となって闇を切り裂いた。
武術大会の決勝で負けた悔しさが、その一撃に普段以上の鋭さを与えていた。
だが男は焦る様子もなく、持っていた奇妙な形の盾を構える。
キィン。という甲高い音が響くはずだった。
だがクローナの渾身の一撃は、盾に触れる寸前で急激にその勢いを殺されてしまった。
「なっ……!?」
手応えのない感触に、クローナの体勢がわずかに崩れる。
男はその隙を見逃さなかった。
盾で槍をいなしながら、懐に潜り込み短剣を振るう。
クローナは咄嗟に身を翻して致命傷は避けたが、その脇腹を浅く切り裂かれた。
「クローナ!」
「大丈夫! だけどこいつら……何かおかしい!」
クローナは距離を取り体勢を立て直す。
だが敵の猛攻は止まらない。
正面の男がクローナを足止めしている間に、天井に張り付いていたもう一人の男がアリアに向かって音もなく降ってきた!
「アリア!」
クローナが叫ぶが間に合わない。
絶体絶命。そう思われた、その瞬間。
「――【守護】」
アリアが叫んだ。
彼女が首から下げていた、何の変哲もない石のペンダントが淡い光を放つ。
その光はアリアの全身を薄い膜のように覆い、天井から迫った男の刃をカキンと硬い音を立てて弾き返した。
それは以前、アリアに頼まれてノアが彼女に付与したお守りだった。
「……なるほど。あのネズミの仲間、というわけか」
男たちは初めて警戒の色を浮かべて二人と距離を取る。
その間に、アリアは震える手でノアが残した『概念辞書』を開いていた。
「クローナ、下がってください!」
アリアはクローナの前に立つと、震える声でしかしはっきりと叫んだ。
「あの者たちの武具はただの魔法武具ではありません! 直接的な攻撃の『概念』そのものを、歪めて減衰させる古代の術式が刻まれています! 正面から戦っては勝てません!」
「じゃあ、どうしろって言うのよ!」
クローナは脇腹の傷を押さえながら荒い息を繰り返す。
彼女の体力は確実に削られていた。
アリアは必死に辞書のページをめくる。
ノアが書き記したつたない文字。
銅貨の実験、木の棒の実験……。
その中に、彼女の目が一つの記述で止まった。
ゴブリン退治の記録。
そこにノアが付け加えた、小さな覚書があった。
『――【跳弾】。コストは低いが、軌道が読めないため対人戦には不向きか?』
不向き? いや、違う。
アリアの頭脳が高速で回転する。
敵の防御は正面からの直接的な攻撃にしか作用しない。
なら予測不能な、間接的な攻撃なら……。
「クローナ!」
アリアはポケットから、ノアがゴブリン退治で使っていたあの丸い石ころを一つクローナに投げ渡す。
「これ……!」
「はい! ノアさんが私たちに残してくれた切り札です! 敵じゃない! 壁を狙ってください!」
クローナは一瞬だけ戸惑った。
だが彼女は親友の言葉を、そしてあの不器用な仲間の力を信じた。
「……分かった!」
クローナは男たちに背を向け、わざとがら空きの背中を見せるようにして、通路の壁に向かって力いっぱい石を投げつけた。
「愚かな!」
男たちが好機とばかりに二人へ同時に襲いかかった、その瞬間。
壁に当たった石は【跳弾】の概念によって予測不能な軌道で跳ね返り、男たちの背後からその無防備な後頭部を、立て続けに撃ち抜いた。
「ぐっ……!?」
「な……に……!?」
概念的な防御が間に合わなかった番人たちは、白目をむいてその場に崩れ落ちる。
「……やった」
アリアはその場にへたり込んだ。
クローナはまだ信じられないといった顔で、自分の手と通路の奥を見つめている。
「……あいつ、本当にすごいじゃない」
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