土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第4章 西南戦争の勃発

第9話

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 荒井郁之介海兵局長は、川村純義海軍大輔の了解を取る間も惜しんで、内々の話ということで陸軍省に海兵隊の動員、作戦計画を内報することにした。
 実際問題として、荒井の唯一の上司である川村海軍大輔は西郷隆盛説得のために鹿児島に赴いており、西郷軍の挙兵対策が焦眉の急である以上、海兵隊のトップとしてはそういった行動をとらざるを得なかったのだ。

 この動員、作戦計画は、2月9日に陸軍省に届いた。
 早速、この内報を受けた陸軍省の幹部は会議を開くことにしたが、正直に言って、海兵隊の動員、作戦計画に対しては冷淡な反応をする幹部が多数だった。

 山県有朋陸軍卿が、海兵隊の計画を承けての会議を主宰した。
「海兵局から内報ということで、海兵隊の動員、作戦計画が届いた。
 この件について、諸君の忌憚のない発言を求めたい」

「正直に言って、海兵隊の動員、作戦計画は妥当なものと評価しうるでしょう。
 ただ、本来なら陸軍の所管であるべき屯田兵が、海兵隊の計画に入っているのは、癇に障りますな」
 ある陸軍の幹部が、未だに根に持った発言をした。

「あれは、台湾出兵のてん末から屯田兵自身が海兵隊の下で働きたいと言い出したのが最大の要因だからな。
 単純に海兵隊を悪くは言えない」
「西郷従道中将の自業自得の側面が大きいのは私も認めますが。
 陸軍が不利になる情報をせっせと海兵隊が流した、という噂を聞きます。
 それを考えると今でも私の気分が悪くなります」

 それをきっかけに陸軍の幹部が、思い思いに発言を始めた。

「話を変えますが、私も西郷軍の取りうる行動については、海兵隊の見方を支持します。
 実際問題として、西郷軍には海軍が無く、東京や大阪へ海上から上陸することはできません。
 どうしてもやろうとすれば、長崎港を急襲して船舶を更に抑えることが前提になりますが、皮肉なことに長崎には海兵隊が海兵1個中隊と砲兵1個中隊を既に配備済みであり、警報により既に警戒態勢にある海兵隊を西郷軍が海上から運べる程度の兵力で制圧することは困難と考えます。
 陸路を西郷軍が進んで長崎に向かうならば、熊本鎮台がそれを阻止しようとするでしょう。
 結局、西郷軍がとれる作戦行動は2つです。
 守勢をとって鹿児島に割拠して徹底抗戦を行うか、攻勢をとって九州全土を制圧して、更に東に進もうとするか。
 海兵隊のいうとおりです」

「私もそれには同意しますが、海兵隊の西郷軍が攻勢をとった場合の作戦計画案には反対せざるを得ません。
 海兵隊の作戦計画案は陸軍を犠牲にして海兵隊がいい目を見ようとしているようにしか考えられません。
 また、兵力分散の愚を犯すことにもなります。
 西郷軍が全力を持って鹿児島奪回を策した場合、孤立した海兵隊だけで鹿児島を維持できるでしょうか。
 各個撃破されかねません」

「私は海兵隊の動員計画にも疑問を覚えます。
 屯田兵を主力にする以上、動員に時間がかかるのは否定しませんが、動員が完了した部隊から速やかに陸軍と共闘させるべきではないでしょうか。
 全軍が揃うのを待ってでは、九州を西郷軍に制圧される危険があります」

 山県陸軍卿は、幹部の面々の意見を聴取した後、最終的に言った。
「陸軍としては、海兵隊の動員、作戦計画については現段階では意見を述べないが、川村海軍大輔の了解を得たうえで、最終的には陸軍の統帥、作戦の下に、海兵隊が全面的に現場では従うようにしたいと思うがいかがか。
 陸軍の指導に、現場では従ってもらわねば困るからな」

「異議なし」
「山県陸軍卿の意見が、妥当でしょう」
 幹部の面々も、山県陸軍卿の意見に賛同した。

「では、そのように陸軍省の意向を海兵局に伝えることにする」
 山県陸軍卿は会議を締めくくった。
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