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第6章 激闘、田原坂
第14話
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結局、桐野利秋は、部下の懇願を拒みきれなかった。
最終的には情で動いてしまったのだ。
ただ、桐野も捨て奸に志願しようとする部下に対して、釘は刺した。
決して自ら死のうとするな、何とかして生き残れ、そして生きて西郷さんのために尽くせ、と諭した。
だから、厳密に言えば、この後、西郷軍の4番大隊の志願者が採った行動は、捨て奸ではなく、現代で言うところの指揮官を狙撃することによる足止めというべきかもしれない。
だが、結果としてもたらされたものにはそう大差は無かった。
最初は小隊長1人の懇望だったが、いつのまにか、4番大隊内で捨て奸への志願者は、最終的に100名を僅かに満たない程になった。
そして、思い思いに志願者は散開して、巧みに身を隠して必殺の一弾を、政府軍の指揮官に見舞おうと策した。
狙撃射撃の基本は、闇夜に霜が降るごとく、静かに引き金を引くことだ、という。
身を隠さないと、静かに銃の引き金は引けない。
また、捨て奸の志願者たちが使用した銃は、今や完全に旧式化した前装式ライフル銃であるエンフィールド銃ではあるが、一弾必殺の狙撃銃として用いるのならば、政府軍の主力銃であるスナイドル銃より優れている、という評価さえある銃であった。
そして、自ら志願するだけあって捨て奸の志願者には皆、狙撃に自信がある者が揃っていた。
その結果、政府軍、特に海兵隊は思わぬ痛手を被ることになった。
「この勢いで、植木まで進軍するぞ」
野津鎮雄第1旅団長は意気軒昂だった。
田原坂突破1番乗りを果たした勢いに乗って、第1旅団は政府軍の先頭に立って、順調に突撃を続けていた。
野津第1旅団長も部下と共に進撃していたが、いつの間にか自らが最前線に近づいており、西郷軍の捨て奸が仕掛けた狙撃の罠にはまってしまっていたのだ。
第1旅団が罠に気づいたのは、野津第1旅団長が戦死したことによるものだった。
まず、野津第1旅団長の腹が撃ち抜かれ、思わず野津第1旅団長が腹を抱え込んだことから、次の銃弾は野津第1旅団長の頭を掠めただけで済んだ。
だが、更なる第3弾は、その動きを見越して放たれていたのだ。
第3弾は野津第1旅団長の咽喉を貫通し、野津第1旅団長は即死した。
第1旅団は旅団長戦死を受けて、慌てて捨て奸狩りに奔走し、隊形を大いに乱した。
その混乱のため、遅れて最前線に赴いた伝習隊こと第1海兵大隊は、いつの間にか最前線近くまで進軍していた。
捨て奸に志願した西郷軍の兵にとっては、海兵隊は戊辰戦争、いや幕末以前からの恨み重なる旧幕府諸隊の末裔である。
第1海兵大隊は、たちまちのうちに捨て奸の狙撃の的になった。
「落ち着いて、身を伏せて、狙撃兵のいる場所を確認しろ。その上で撃ち返せ」
古屋佐久左衛門は、部下に対して、自らも身を伏せつつ、そう指示した。
捨て奸の狙撃は怖いが、そう射撃速度は速くないし、捨て奸の数もそう多くはいない。
多少の犠牲は出るだろうが、落ち着いて対処すれば何とかなる。
古屋はそう判断しており、その判断は決して間違ってはいなかったが、古屋は自身が、捨て奸の第1の目標になっていることには気づいていなかった。
「あの肩章は紛れもなく海兵隊少佐、何としても仕留めてやる」
捨て奸の狙撃が、多少遠かろうと古屋に集中したのだ。
さすがに10発近い狙撃を集中して浴びては、古屋が幾ら身を伏せていても、何発かは命中する。
「やられた」
胸からか腹からか、大量の血が古屋の咽喉をさかのぼってくる。
部下が慌てて周囲を捜索して、古屋を狙撃した捨て奸を全滅させた。
それを見届けて血を吐きだしつつ、古屋は声にならない声で叫んだ。
「熊本へ」
そこまで何とか叫んで、古屋は絶命した。
最終的には情で動いてしまったのだ。
ただ、桐野も捨て奸に志願しようとする部下に対して、釘は刺した。
決して自ら死のうとするな、何とかして生き残れ、そして生きて西郷さんのために尽くせ、と諭した。
だから、厳密に言えば、この後、西郷軍の4番大隊の志願者が採った行動は、捨て奸ではなく、現代で言うところの指揮官を狙撃することによる足止めというべきかもしれない。
だが、結果としてもたらされたものにはそう大差は無かった。
最初は小隊長1人の懇望だったが、いつのまにか、4番大隊内で捨て奸への志願者は、最終的に100名を僅かに満たない程になった。
そして、思い思いに志願者は散開して、巧みに身を隠して必殺の一弾を、政府軍の指揮官に見舞おうと策した。
狙撃射撃の基本は、闇夜に霜が降るごとく、静かに引き金を引くことだ、という。
身を隠さないと、静かに銃の引き金は引けない。
また、捨て奸の志願者たちが使用した銃は、今や完全に旧式化した前装式ライフル銃であるエンフィールド銃ではあるが、一弾必殺の狙撃銃として用いるのならば、政府軍の主力銃であるスナイドル銃より優れている、という評価さえある銃であった。
そして、自ら志願するだけあって捨て奸の志願者には皆、狙撃に自信がある者が揃っていた。
その結果、政府軍、特に海兵隊は思わぬ痛手を被ることになった。
「この勢いで、植木まで進軍するぞ」
野津鎮雄第1旅団長は意気軒昂だった。
田原坂突破1番乗りを果たした勢いに乗って、第1旅団は政府軍の先頭に立って、順調に突撃を続けていた。
野津第1旅団長も部下と共に進撃していたが、いつの間にか自らが最前線に近づいており、西郷軍の捨て奸が仕掛けた狙撃の罠にはまってしまっていたのだ。
第1旅団が罠に気づいたのは、野津第1旅団長が戦死したことによるものだった。
まず、野津第1旅団長の腹が撃ち抜かれ、思わず野津第1旅団長が腹を抱え込んだことから、次の銃弾は野津第1旅団長の頭を掠めただけで済んだ。
だが、更なる第3弾は、その動きを見越して放たれていたのだ。
第3弾は野津第1旅団長の咽喉を貫通し、野津第1旅団長は即死した。
第1旅団は旅団長戦死を受けて、慌てて捨て奸狩りに奔走し、隊形を大いに乱した。
その混乱のため、遅れて最前線に赴いた伝習隊こと第1海兵大隊は、いつの間にか最前線近くまで進軍していた。
捨て奸に志願した西郷軍の兵にとっては、海兵隊は戊辰戦争、いや幕末以前からの恨み重なる旧幕府諸隊の末裔である。
第1海兵大隊は、たちまちのうちに捨て奸の狙撃の的になった。
「落ち着いて、身を伏せて、狙撃兵のいる場所を確認しろ。その上で撃ち返せ」
古屋佐久左衛門は、部下に対して、自らも身を伏せつつ、そう指示した。
捨て奸の狙撃は怖いが、そう射撃速度は速くないし、捨て奸の数もそう多くはいない。
多少の犠牲は出るだろうが、落ち着いて対処すれば何とかなる。
古屋はそう判断しており、その判断は決して間違ってはいなかったが、古屋は自身が、捨て奸の第1の目標になっていることには気づいていなかった。
「あの肩章は紛れもなく海兵隊少佐、何としても仕留めてやる」
捨て奸の狙撃が、多少遠かろうと古屋に集中したのだ。
さすがに10発近い狙撃を集中して浴びては、古屋が幾ら身を伏せていても、何発かは命中する。
「やられた」
胸からか腹からか、大量の血が古屋の咽喉をさかのぼってくる。
部下が慌てて周囲を捜索して、古屋を狙撃した捨て奸を全滅させた。
それを見届けて血を吐きだしつつ、古屋は声にならない声で叫んだ。
「熊本へ」
そこまで何とか叫んで、古屋は絶命した。
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