104 / 120
第9章 鹿児島上陸作戦と鹿児島占領
第6話
しおりを挟む
「本当に、我々も西郷軍にとっても、お互いに地獄のような日々ですね」
6月に入って、北白川宮大尉が何とも言えない顔色をして、本多幸七郎少佐に言っていた。
「全くだな」
本多少佐も同様の顔色をして、北白川宮大尉に同意した。
既に鹿児島攻防戦が始まってから、1月程が経とうとしていた。
政府軍は、鹿児島奪還を図る西郷軍に対して、兵力的に劣勢という現状に陥っていた。
そのために、政府軍は増援を希求していたが、ほぼ同時期に行われた人吉攻防戦に対して、政府軍の補充等までも優先的に回されたり、まずは人吉を奪還してからという態度を、山県有朋参軍が固守したりしたために、鹿児島に政府軍の増援は結果的に送られなかった。
川村純義参軍は、山県参軍の態度に、腸が煮えくり返る思いをしていたが、総司令官の有栖川宮は、山県参軍と同道しており、山県参軍の判断≒有栖川宮の判断という現状の前には如何ともし難かった。
だからといって、西郷軍が鹿児島攻防戦で優位に立っていたわけではない。
地元の鹿児島の住民の多くは、政府軍の鹿児島に対する放火戦術への反感も加わり、西郷軍の側に立っていたし、兵力的にも西郷軍は優位に立っていたが、それを補うだけの政府軍には火力と補給の優位があった。
砲弾を1発撃つたびに、次の砲弾が無事に届くかどうか心配しないといけない西郷軍に対し、政府軍はそこまで補給の面では追い込まれてはいなかった。
(これは政府軍が、補給に苦慮していなかった、ということではない。
政府軍も、苦慮はしている。
だが、西郷軍に対して、その補給量は圧倒的に優位だった。
例えば、政府軍は、苦労しながらも鹿児島防衛軍に、1日に3食食べさせていたが、西郷軍は1日2食が限界で、それも芋だけの1食も含めた上で、という惨状だったのだ)
更に政府軍は、西郷軍に対して、火力面で圧倒的に優位に立っていた。
1発撃たれたら、2発は撃ち返せ、という政府軍の前に、西郷軍の砲火は徐々に沈黙を強いられつつあった。
それに対して、西郷軍は夜襲を駆使し、政府軍の火力の猛威を、減殺しようとした。
さすがに夜襲に対しては、政府軍の火力の優位も生かせない。
西郷軍が夜襲で鹿児島奪還を図り、1つの陣地を夜間に奪取する。
それに対して、昼間には政府軍が奪われた陣地に対して砲撃を加えた後、歩兵を突撃させて陣地を奪還するというシーソーゲームが行われていた。
川村参軍は、上記のような状況の中で、簡潔な命令を発した。
「政府軍は現在の陣地を死守せよ。
反撃は増援を待ってから行う」
「死守せよ、というのは簡単ですが、故郷奪還のために奮闘する西郷軍相手には困難な戦いですね」
「全くだ。その度に多くの兵が死んでいく」
北白川宮大尉の問いに、本多少佐は半分嘆くように答えた。
海兵隊は、西郷軍の夜襲の度に、それに対応する部隊の一員として送り込まれている、といっても過言では無い状況に追い込まれていた。
そして、海兵隊は奮戦の末、陣地死守に成功することもあり、失敗することもある。
だが、その度に、海兵隊には死傷者が続出しているのだ。
実際、北白川宮大尉までが、かすり傷とはいえ戦傷を負う惨状なのだ。
懐良親王以来の名誉の戦傷、と北白川宮大尉は笑ったが、本多少佐は背中に冷や汗をかいた。
かといって、政府軍にとって陣地を放棄しての退却は論外だった。
6月上旬現在、鹿児島にいる政府軍は、鹿児島のみを確保していると言っても過言ではない。
退却できる余地が、政府軍にはないのだった。
従って、陣地を死守するしかない。
「1日でも早く増援が来ないと崩壊するぞ」
本多少佐は、海兵隊を始めとする政府軍の現状に、焦慮の念をひたすら抱く有様だった。
6月に入って、北白川宮大尉が何とも言えない顔色をして、本多幸七郎少佐に言っていた。
「全くだな」
本多少佐も同様の顔色をして、北白川宮大尉に同意した。
既に鹿児島攻防戦が始まってから、1月程が経とうとしていた。
政府軍は、鹿児島奪還を図る西郷軍に対して、兵力的に劣勢という現状に陥っていた。
そのために、政府軍は増援を希求していたが、ほぼ同時期に行われた人吉攻防戦に対して、政府軍の補充等までも優先的に回されたり、まずは人吉を奪還してからという態度を、山県有朋参軍が固守したりしたために、鹿児島に政府軍の増援は結果的に送られなかった。
川村純義参軍は、山県参軍の態度に、腸が煮えくり返る思いをしていたが、総司令官の有栖川宮は、山県参軍と同道しており、山県参軍の判断≒有栖川宮の判断という現状の前には如何ともし難かった。
だからといって、西郷軍が鹿児島攻防戦で優位に立っていたわけではない。
地元の鹿児島の住民の多くは、政府軍の鹿児島に対する放火戦術への反感も加わり、西郷軍の側に立っていたし、兵力的にも西郷軍は優位に立っていたが、それを補うだけの政府軍には火力と補給の優位があった。
砲弾を1発撃つたびに、次の砲弾が無事に届くかどうか心配しないといけない西郷軍に対し、政府軍はそこまで補給の面では追い込まれてはいなかった。
(これは政府軍が、補給に苦慮していなかった、ということではない。
政府軍も、苦慮はしている。
だが、西郷軍に対して、その補給量は圧倒的に優位だった。
例えば、政府軍は、苦労しながらも鹿児島防衛軍に、1日に3食食べさせていたが、西郷軍は1日2食が限界で、それも芋だけの1食も含めた上で、という惨状だったのだ)
更に政府軍は、西郷軍に対して、火力面で圧倒的に優位に立っていた。
1発撃たれたら、2発は撃ち返せ、という政府軍の前に、西郷軍の砲火は徐々に沈黙を強いられつつあった。
それに対して、西郷軍は夜襲を駆使し、政府軍の火力の猛威を、減殺しようとした。
さすがに夜襲に対しては、政府軍の火力の優位も生かせない。
西郷軍が夜襲で鹿児島奪還を図り、1つの陣地を夜間に奪取する。
それに対して、昼間には政府軍が奪われた陣地に対して砲撃を加えた後、歩兵を突撃させて陣地を奪還するというシーソーゲームが行われていた。
川村参軍は、上記のような状況の中で、簡潔な命令を発した。
「政府軍は現在の陣地を死守せよ。
反撃は増援を待ってから行う」
「死守せよ、というのは簡単ですが、故郷奪還のために奮闘する西郷軍相手には困難な戦いですね」
「全くだ。その度に多くの兵が死んでいく」
北白川宮大尉の問いに、本多少佐は半分嘆くように答えた。
海兵隊は、西郷軍の夜襲の度に、それに対応する部隊の一員として送り込まれている、といっても過言では無い状況に追い込まれていた。
そして、海兵隊は奮戦の末、陣地死守に成功することもあり、失敗することもある。
だが、その度に、海兵隊には死傷者が続出しているのだ。
実際、北白川宮大尉までが、かすり傷とはいえ戦傷を負う惨状なのだ。
懐良親王以来の名誉の戦傷、と北白川宮大尉は笑ったが、本多少佐は背中に冷や汗をかいた。
かといって、政府軍にとって陣地を放棄しての退却は論外だった。
6月上旬現在、鹿児島にいる政府軍は、鹿児島のみを確保していると言っても過言ではない。
退却できる余地が、政府軍にはないのだった。
従って、陣地を死守するしかない。
「1日でも早く増援が来ないと崩壊するぞ」
本多少佐は、海兵隊を始めとする政府軍の現状に、焦慮の念をひたすら抱く有様だった。
0
あなたにおすすめの小説
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる