【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅲ.大好きな卵編

23.僕、運命を感じてます③

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「良かった。君は女の子だね」

 捕まえたよ。ヒクイドリさん。もう、逃がさないから。

 あれ?なんかがくぶるしてるね?大丈夫だよ。そんなに怖がらなくても。
 確かにちょっと強めにぎゅっとしてるけど、卵をもらわなきゃいけないのに、殺すわけないでしょ。

 はぁ……ふかふかの羽毛だな。こうして抱き着いてると、凶暴な鳥なんて信じられない。

 ──がさりっ

「は………?」 

 草の揺れる音と、人の声。
 そしてふんわりと香ったイイ匂い。美味しそうな、安定の匂い。

 僕を見て、ヒクイドリを見て、もう一度僕を見て固まるヴァルがそこにいた。

「あれぇ……?なんで?なんで、ヴァルがこんなとこにいるの?」 

 速攻で見つかったじゃない。フラグの回収、早すぎない?

 おかしいな。僕がヴァルのイイ匂いに気づかないなんて。
 ここって、たくさんの竜気が溢れすぎてて、僕のお鼻、ちょっと調子が悪いのかも。
  
「それは、こっちの台詞だ」 
「ええー……っと……これは、なんというか……もはや、運命かな?」 

 昨日のお昼にヴァルを見つけて、今日の朝にはヴァルに見つかる。

 うん、僕たちどうやっても出会う運命なんでしょ。絶対。

 ヴァルの表情が抜け落ちて、しばし無言で呆然としている。「運命……はぁ、運命ね」なんてぶつぶつとつぶやいて、額を右手で押えうつむいてしまった。

 あれ?ヴァル、どうしちゃったの?僕と運命なの、嫌だった?

 僕はヒクイドリから離れて、ヴァルの様子をうかがって反応を待った。

 ぎらり、とヴァルの瞳が鋭く光り、僕を射抜く。
 あっという間に、間合いを詰められて、僕はヴァルに捕まってしまった。

「ヴァル、やっぱり力強い……」 
  
 片手でこの力……すごい。ヴァルの握力、一体いくつなの?で、手大きい。僕の頭つかめちゃうもんね。

 いや、今はそうじゃなくて。

「ふえ……僕の頭、みしみしいってるよぉ」

 もしや、ヴァル激おこ?これまでで、一番のおこなの?

「家で待ってろって言ったよな?あ?」

 ううっ……だって、だって。卵が。ヴァルの卵が……!
 ああ、でもっ……このままだと、僕の頭が、卵みたいにぐしゃってなっちゃう!

「ごめ……ごめんなさい……ヴァル、ごめんなさい」

 はぁ………と、ヴァルが深いため息をつく。

 はぁ…………。

 はぁ…………。

 うーん、悩ましい吐息だなぁ。
 でもさすがに、この状況じゃむずむずしないや。よかった。助かった。でも、痛い。

「ああ、くそっ……」

 大きなため息をたくさん繰り返し吐いたヴァルは、やっと僕の頭を解放してくれる。

「ヴァル、あのね」
「何だ?」

 わぁ。怖い顔。すっごく睨まれてる!
 でも、大切なことだから、これは教えてあげないとね。

「ため息つくと、幸せが逃げちゃうんだよ」
「お前が言うな!!」
「うんうん。大丈夫だよ。逃げても、僕が全部捕まえてあげるからね!」

 僕が原因のため息だもんね?僕がちゃんと責任をもって、捕まえとくからね。

「ああ………頼むわ」
「うん!」

 そこで、また大きなため息を一つ。いや、もう一つ。どこに逃げたかな、ヴァルの幸せ二つ分。

 ヴァルの視線が、僕の横で動かなくなっている大きな鳥に向いた。

「ルルド。これは……ヒクイドリじゃねぇのか?」 
「え?ああ、そうだよ。さすがヴァルは物知りだね!」 
  
 ヒクイドリはこのあたりにしか生息してないはずなのに。 
  
「ヒクイドリ。別名、不死鳥。どんなに傷を負おうとも蘇るといわれている、奇跡の鳥だぞ。知らない奴の方が少ない」

 へえ。そんなこと言われてるんだ。

「何だってお前、こんなとこで、こんなもん捕まえて…………。
 おい、ルルド。まさかだが……」
「うん、飼うんだよ!で、卵産んでもらうの!」
「元の場所に、放してこい!」
「ええーっ!なんで!?」

 僕、一生懸命捕まえたのに!

「なんで、じゃない!なんででもだ!馬鹿!!今すぐ放してこい!!」
「やだやだっ!絶対、連れて帰るから!10羽全部、連れて帰る!」
「はぁっ!?10羽だと……!!??」
「ああ、やっぱり少ないよね。ごめんね、ヴァル。僕この1週間頑張ったんだけど……」

 そうだよ。僕、この1週間頑張った。でも、たったの10羽しか捕まえられなくて。
 ホントはもっとたくさん捕まえるつもりだったんだよ?

「ヴァル、がっかりした?」
「いや、むしろびっくりだろ!」
「だよねぇ。少なすぎて、びっくりだよね」

 ヒクイドリの数、思った以上に少ないみたい。

「だーかーらーっ!そうじゃねぇんだよ!10羽って……大きさ考えろよ!」
「ああ、卵は小さいらしいもんね」

 むう。やっぱり10羽じゃ足りないか。もっとたくさんじゃないと、食べ応えないよね。

「違う!そもそも、なんだ卵って。………まさか、殖やす気か?」
「違うよー。卵を食べるの」
「…………は?」
「とっても美味しいらしいよ!」
「………………」

 うーん。ヴァル、何も言わなくなっちゃった。
 あ。もしかして期待に胸いっぱいで、声もでなくなっちゃったのかな?
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