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Ⅲ.大好きな卵編
25.俺は、急遽予定の変更を余儀なくされる
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降誕の地への巡礼は、贖罪とは程遠く騒々しい道のりとなった。
初めこそ整備された街道だったが、徐々に悪路になる。そんな道で速度をあげれば馬車がかなり揺れるのは、子供だってわかる。
当然わかってて、ほぼ休憩なんぞ挟まないきつきつの日程にしたんだよな?
自分らで立てた計画だ。どうせ長々僻地に行くのはイヤだという、誰かさんの気持ちに合わせた結果だろうが。しっかり守って、さっさと進め。
じゃなきゃ、装備や持ち物もそれに合わせてある。もってきた食料が足りなくなんぞ。
そんな中、ユーリは相も変わらず元気だった。
「足が痛い」、「お尻が痛い」、「こんなもの食べられない」、「お風呂に入りたい」なんて可愛いもんから、「なんで俺が」、「俺は悪くない」、「帰ったら覚えてろよ」、「この世界の生活水準クソ」、「俺、無神論者だし」などなどなど……。
そして、無限ループする。
よく飽きねぇな。信じらんねぇ。あんなにずーっと汚物みたいな言葉ばっか垂れ流して、自分が嫌になんねぇのか?
あんなこと考えてる脳がまず腐る。で、ダダ漏らしてる口が腐る。最後は自分の声で耳が腐る。
もはやお前、全身腐ってんだろ。大神官のナニ同様、生ゴミがお似合いじゃねぇの?
あいつの苛立ちは日を追う毎に増し、降誕の地に着くや否や、竜気術を大盤振る舞いだった。カインとメイナードは巡礼を成し遂げようとする、ユーリの心意気の現れと歓喜したが。
俺には、ストレス解消のために、巨大な生物を嬉々として蹂躙する虐殺者にしか見えなかった。
そのユーリの放った規格外の竜気術のうち、何発かが俺に向かって飛んできて、思わず笑った。笑う俺を、殺気立った顔で睨むお前は、悪魔そのものだったぞ。
ブレないクズっぷりだな。安心するわ。俺のくだんねぇ罪悪感、毎度綺麗に吹き飛ばしてくれて、マジ感謝だわ。
ユーリの癇癪は降誕の地に入って2日ほど経った頃にピークを迎えた。もはや憤死しそうなレベルだった。
ユーリはこの地にいれば、俺が自ずと自滅すると考えてたんだろう。
もしくは………もっと、直接的に自分の竜気術に巻き込むつもりだったんだろうが。
残念だったな。俺はもはや澱みを扱える。お前がどれほど竜気を乱そうと、俺は大丈夫なんだよ。腹ぺこ竜のお陰でな。
こちとら場数が違うんだよ。馬鹿のいっちょ覚えみたいな手、二度も食うかよ。
黒い竜石がぼろぼろと面白いほどに溜まっていくな。ありがとよ、ユーリ。ルルドに、いい土産ができたぜ。
その後ユーリは、ぶつぶつと「なんで」「どうして」を繰り返し、疲労からか徐々に減速。最終的には無言で自分で歩くことすらしなくなった。
仕方なく、メイナードとカインが甲斐甲斐しく交互に負ぶって、ぬかるんだ湿地を進む。
さすがの二人も、ユーリの真剣さも深刻みもない姿に、戸惑いの表情を浮かべてる。
いい感じじゃねえの。この調子だ。
ユーリは救世主ではなかったと、偽物の烙印を押される未来はすぐそこだ。全てに見放され、一人失意に打ちひしがれ絶望したユーリを………俺が屠る。
俺は……この巡礼が終わって、ユーリとの因縁に決着がついたら、神官をやめて、神殿を去るつもりでいる。
で、俺の思いをルルドに伝える。
できればルルドが成熟する前に。
ルルドが一人前になるまでに、でろでろに甘やかして、俺から離れたいなんて微塵も思わねぇようにしてやる。
どうせ、なるようにしかならねぇんだから。日和ってても仕方ねぇ。
どの道、俺はできることをやるしかねぇ。
だから、俺は……俺が、ユーリとの因縁に決着をつけて、憂いをさっぱり取り除く。
そうしたら……お前はきっと、どこへ行こうと俺と一緒に来てくれるよな?
なんて考えてたのに。
その声は突如響いた。
「俺たちの大切な子、ルルド。会いたかったぞ。
ルルドのためなら、ヒクイドリの一羽や十羽や百羽、いくらでも許可するさ」
音として認識したものかわからない。温度を持って体を震わす声に、じわりと汗がにじんだ。
突然飛び込んできた声に、身体が反応し瞬時に身構える。
巨漢と言っていいだろう、筋骨隆々とした勇壮な出で立ちの雄々しい男だった。
太めの眉に彫りの深い顔立ちに厚い唇。長く立ち上る深紅の髪は、まるで炎のようで、赤褐色の瞳が力強い圧倒する輝きを放っている。
人ならざる者の気配、神々しくも恐ろしくもある圧迫感。
何者かを理解して、警戒を解いた。
人の警戒程度、何の意味もないからだ。
「リッキー!」
間違いない、赤銅竜の長だ。
嬉々として名を呼ぶルルドに、確証を得る。
「ホントにリッキーだ!」
どいつもこいつも、唐突に現れるな。
しかし、これまでで一番名前に違和感がすごい。厳めしい剛健そうな大男が、リッキーとは。本当は何て名前なんだ?知りたくはねぇけど。
巨体に似合わずゆっくりと火の粉が落ちるような軽さで、赤銅竜の長は地に降りた。
でかいな。ケビンよりさらに二回りは大きい。
これで竜の長、制覇したんじゃねぇか。なんだこれ。俺、すごくねぇか。
は?竜の長ってこんな簡単に会えんのかよ。
いや、そもそもルルドが竜だったわ。
いつだったか、ルルドがそれぞれ3人の長が三角関係だのなんだのと、下らねぇことを言っていたけど…………。
親子みたいだな。むしろ。3人そろうと。
青銀竜の長が母、黄金竜の長が子、で赤銅竜の長が父。どう見ても、親子。家族。
あー……俺、ルルドがうつったかな。どうでもいいこと、考えてるわ。
なぁ、ルルド。
なんで、お前は降誕の地にいて、さらにこんな事態になってんだろうな?
その上で、決死の決意も覚悟も全部反古にされたっつーか。意味なかったっつーか。
俺は今、恥ずかしくて仕方ねぇ。一人で、馬鹿みたいにかっこつけて。結局俺が、こいつの行動を制限するなんて無理なんだよな。
ルルドは確かに、俺の何かを動機にして、俺のやることを受け入れて、すり寄ってくる。
でもそれは、ルルドがそうすることを選んだからだ。
こいつに俺を選ばせるしか……選ばせ続けるしか、無いってことだろ……?
俺にはできることが多いようで、実際はほんの僅かだよ。
…………………いや、それよりも、だ。
赤銅竜の長。こいつ、さっきなんつった。
『ルルドのためなら、ヒクイドリの一羽や十羽や百羽、いくらでも許可するさ』
とかなんとか、言わなかったか?馬鹿か。馬鹿だろ。
初めこそ整備された街道だったが、徐々に悪路になる。そんな道で速度をあげれば馬車がかなり揺れるのは、子供だってわかる。
当然わかってて、ほぼ休憩なんぞ挟まないきつきつの日程にしたんだよな?
自分らで立てた計画だ。どうせ長々僻地に行くのはイヤだという、誰かさんの気持ちに合わせた結果だろうが。しっかり守って、さっさと進め。
じゃなきゃ、装備や持ち物もそれに合わせてある。もってきた食料が足りなくなんぞ。
そんな中、ユーリは相も変わらず元気だった。
「足が痛い」、「お尻が痛い」、「こんなもの食べられない」、「お風呂に入りたい」なんて可愛いもんから、「なんで俺が」、「俺は悪くない」、「帰ったら覚えてろよ」、「この世界の生活水準クソ」、「俺、無神論者だし」などなどなど……。
そして、無限ループする。
よく飽きねぇな。信じらんねぇ。あんなにずーっと汚物みたいな言葉ばっか垂れ流して、自分が嫌になんねぇのか?
あんなこと考えてる脳がまず腐る。で、ダダ漏らしてる口が腐る。最後は自分の声で耳が腐る。
もはやお前、全身腐ってんだろ。大神官のナニ同様、生ゴミがお似合いじゃねぇの?
あいつの苛立ちは日を追う毎に増し、降誕の地に着くや否や、竜気術を大盤振る舞いだった。カインとメイナードは巡礼を成し遂げようとする、ユーリの心意気の現れと歓喜したが。
俺には、ストレス解消のために、巨大な生物を嬉々として蹂躙する虐殺者にしか見えなかった。
そのユーリの放った規格外の竜気術のうち、何発かが俺に向かって飛んできて、思わず笑った。笑う俺を、殺気立った顔で睨むお前は、悪魔そのものだったぞ。
ブレないクズっぷりだな。安心するわ。俺のくだんねぇ罪悪感、毎度綺麗に吹き飛ばしてくれて、マジ感謝だわ。
ユーリの癇癪は降誕の地に入って2日ほど経った頃にピークを迎えた。もはや憤死しそうなレベルだった。
ユーリはこの地にいれば、俺が自ずと自滅すると考えてたんだろう。
もしくは………もっと、直接的に自分の竜気術に巻き込むつもりだったんだろうが。
残念だったな。俺はもはや澱みを扱える。お前がどれほど竜気を乱そうと、俺は大丈夫なんだよ。腹ぺこ竜のお陰でな。
こちとら場数が違うんだよ。馬鹿のいっちょ覚えみたいな手、二度も食うかよ。
黒い竜石がぼろぼろと面白いほどに溜まっていくな。ありがとよ、ユーリ。ルルドに、いい土産ができたぜ。
その後ユーリは、ぶつぶつと「なんで」「どうして」を繰り返し、疲労からか徐々に減速。最終的には無言で自分で歩くことすらしなくなった。
仕方なく、メイナードとカインが甲斐甲斐しく交互に負ぶって、ぬかるんだ湿地を進む。
さすがの二人も、ユーリの真剣さも深刻みもない姿に、戸惑いの表情を浮かべてる。
いい感じじゃねえの。この調子だ。
ユーリは救世主ではなかったと、偽物の烙印を押される未来はすぐそこだ。全てに見放され、一人失意に打ちひしがれ絶望したユーリを………俺が屠る。
俺は……この巡礼が終わって、ユーリとの因縁に決着がついたら、神官をやめて、神殿を去るつもりでいる。
で、俺の思いをルルドに伝える。
できればルルドが成熟する前に。
ルルドが一人前になるまでに、でろでろに甘やかして、俺から離れたいなんて微塵も思わねぇようにしてやる。
どうせ、なるようにしかならねぇんだから。日和ってても仕方ねぇ。
どの道、俺はできることをやるしかねぇ。
だから、俺は……俺が、ユーリとの因縁に決着をつけて、憂いをさっぱり取り除く。
そうしたら……お前はきっと、どこへ行こうと俺と一緒に来てくれるよな?
なんて考えてたのに。
その声は突如響いた。
「俺たちの大切な子、ルルド。会いたかったぞ。
ルルドのためなら、ヒクイドリの一羽や十羽や百羽、いくらでも許可するさ」
音として認識したものかわからない。温度を持って体を震わす声に、じわりと汗がにじんだ。
突然飛び込んできた声に、身体が反応し瞬時に身構える。
巨漢と言っていいだろう、筋骨隆々とした勇壮な出で立ちの雄々しい男だった。
太めの眉に彫りの深い顔立ちに厚い唇。長く立ち上る深紅の髪は、まるで炎のようで、赤褐色の瞳が力強い圧倒する輝きを放っている。
人ならざる者の気配、神々しくも恐ろしくもある圧迫感。
何者かを理解して、警戒を解いた。
人の警戒程度、何の意味もないからだ。
「リッキー!」
間違いない、赤銅竜の長だ。
嬉々として名を呼ぶルルドに、確証を得る。
「ホントにリッキーだ!」
どいつもこいつも、唐突に現れるな。
しかし、これまでで一番名前に違和感がすごい。厳めしい剛健そうな大男が、リッキーとは。本当は何て名前なんだ?知りたくはねぇけど。
巨体に似合わずゆっくりと火の粉が落ちるような軽さで、赤銅竜の長は地に降りた。
でかいな。ケビンよりさらに二回りは大きい。
これで竜の長、制覇したんじゃねぇか。なんだこれ。俺、すごくねぇか。
は?竜の長ってこんな簡単に会えんのかよ。
いや、そもそもルルドが竜だったわ。
いつだったか、ルルドがそれぞれ3人の長が三角関係だのなんだのと、下らねぇことを言っていたけど…………。
親子みたいだな。むしろ。3人そろうと。
青銀竜の長が母、黄金竜の長が子、で赤銅竜の長が父。どう見ても、親子。家族。
あー……俺、ルルドがうつったかな。どうでもいいこと、考えてるわ。
なぁ、ルルド。
なんで、お前は降誕の地にいて、さらにこんな事態になってんだろうな?
その上で、決死の決意も覚悟も全部反古にされたっつーか。意味なかったっつーか。
俺は今、恥ずかしくて仕方ねぇ。一人で、馬鹿みたいにかっこつけて。結局俺が、こいつの行動を制限するなんて無理なんだよな。
ルルドは確かに、俺の何かを動機にして、俺のやることを受け入れて、すり寄ってくる。
でもそれは、ルルドがそうすることを選んだからだ。
こいつに俺を選ばせるしか……選ばせ続けるしか、無いってことだろ……?
俺にはできることが多いようで、実際はほんの僅かだよ。
…………………いや、それよりも、だ。
赤銅竜の長。こいつ、さっきなんつった。
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