172 / 238
Ⅲ.大好きな卵編
52.俺は、自分のためにこの世を危機に貶める①
しおりを挟む俺が野営地に一人で戻ると、俺は白い大型の獣に拉致されたことになっていた。
まぁ……そう言えなくもないが。どっちかと言えば、俺が拉致した側か?
審問官一同は騒然とする中で、俺とそしてルルドの捜索隊を結成する検討していたらしい。
この集団で俺が欠ければ……さらにルルドを欠けば、どう考えたって生存帰還率はぐんと下がるからな。
カインが俺に真っ先駆け寄って、「ヴァレリウス……大丈夫だったか?」と、深刻に尋ねられて驚いた。
馬鹿がつくほど、真面目な奴。根っこはある意味、真っ白なままなんだろうな。
さらに、さっきの巨大な獣の正体を聞かれて、何と誤魔化そうか考えて、「あいつは害はねぇよ」と、口にできる事実だけ伝えた。
あー……まずいな。ニヤける。
顔、引き締めねぇと。ダメだわ、これ。
耳に残った、ルルドの甘い声。
目に焼き付いた、欲情し火照った顔。
そして、恍惚と彷徨いながらも、俺を求めるルルドの姿。
新しく鮮やかな記憶は、いくらでも俺を昂らせる。
俺と目が合っただけで、一瞬で顔と耳、さらに全身を朱に染めた、白い竜。
俺の指先がわずかに肌に触れただけで強張るルルドに、もだもだと疑心暗鬼になっていたさっきまでの俺ならば、拒絶だと思い込んだだろう。
でも今となっては……単純に初めて感じる理解できない愛欲に恥じらっているようにしか見えなかった。
俺も、大概単純だな。
久々に触れる素肌は、相変わらず吸い付くような滑らかさだった。
真っ白な肌が桃色に染まって、これまでより、ずっと熱を孕んでいる気がした。
熱い肌の感触に、どうしようもなく愛しさが募った。
ふわりと香る柔らかな髪を梳き、頭の形を確かめるように撫でてやれば、ルルドはその感触に感じ入り、上気した肌はそのままで、悩まし気な艶っぽい声を漏らしながら、俺の手にすりすりと擦り寄ってくる。
もっと撫でろと言わんばかりの行動に、俺の気持ちも高ぶって。
ルルドの険しかった表情が、切なげに乞うようなものへと変わる。
止まっていた呼吸が再開して、甘い濡れた吐息がこぼれ出して。
うっすらと開いた瞼の隙間から覗いた瞳は、とろりと蜜のようにとろけていた。白く長いまつ毛が黒い瞳にかかって、きらきらと細密に光って……。
ゆらゆらと黒い瞳が揺れて、薄紅色の唇から、赤い舌がチラリと覗く。小さく喘ぐように漏れる声が俺を求めてる。
うっとりと惚けた熟れた果物みたいな、甘い甘いルルドの顔。「いい顔だな……」と思わず漏らした俺の言葉に、ルルドの瞳がゆらゆらと揺れた。
まっ直ぐに俺を見つめるルルドの眼差しには、同じ熱量がこもっている。
そう思ったのは、俺の勘違いじゃねぇよな……?
俺を見上げる潤んだ瞳も、物欲しそうな唇も、ぴくぴくと快感に震える身体も、すべてが艶麗で……体も心も確かに俺を望んでいた。
ルルドは俺に、確かに欲情してる。
嫉妬するほどに、独占欲に自制を失うほどに、俺を求めてる。
「だって……僕、変なんだもん。
ヴァル見てると、ヴァルのこと考えると……それだけで……。なのに、こんな風に触られたら……」
そういうルルドの言葉も、俺が触れれば悦ぶ体も、心地よさそうに震える心も、全部が愛おしくて。たまらなくて。
緩く立ち上がっていたルルドの中心は、俺が撫でればすぐに芯を持って固くなった。
で、あっという間に脈打って張りつめて、俺の手の中であっさりと絶頂を迎えた。
真っ赤な顔で、ぎゅっと俺の肩に縋りつき、嬌声を噛み殺すルルドに、俺はくぎ付けになった。
「うう~……ヴァルが、ヴァルが悪いんだからぁ……」
なんて言って、恨みがましく俺を見る表情も、俺への淫欲に戸惑う仕草も可愛くて、愛しいばかりで。
はぁ……まったくよ。俺はいつまで待たされんだろうな。
でも、待たされるだけなら、まだいいよ。
今回のことで……ルルドに一方的にわけもわからず避けられて、俺は身に染みた。
成す術もなく離れていくルルドを受け入れるしかねぇなんて状況は、やっぱり冗談じゃねぇ。
一夜明け、カインはどことなく吹っ切れた様子だった。
対してメイナードは、一段と鬱々とした、追い詰められた面持ちだった。
鍋のスープを二つよそい、パンも二つとって、連中から少し離れた、けれど声は聞こえる位置に座る。
ユーリは昨晩と同様に……いや、さらに活き活きと饒舌に元居た世界のことを話していた。
なんとなく聞き流していた俺の耳に、
「俺には、双子の兄がいたんだ」
と、飛び込んできて、俺は吹き出しそうになるスープをすんでのところで飲み込んだ。
ユーリの双子の兄。
これって間違いなく“迷い星”の……ルルドのことだ。
40
あなたにおすすめの小説
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる