【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅲ.大好きな卵編

52.俺は、自分のためにこの世を危機に貶める①

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 俺が野営地に一人で戻ると、俺は白い大型の獣に拉致されたことになっていた。

 まぁ……そう言えなくもないが。どっちかと言えば、俺が拉致した側か?

 審問官一同は騒然とする中で、俺とそしてルルドの捜索隊を結成する検討していたらしい。
 この集団で俺が欠ければ……さらにルルドを欠けば、どう考えたって生存帰還率はぐんと下がるからな。

 カインが俺に真っ先駆け寄って、「ヴァレリウス……大丈夫だったか?」と、深刻に尋ねられて驚いた。

 馬鹿がつくほど、真面目な奴。根っこはある意味、真っ白なままなんだろうな。

 さらに、さっきの巨大な獣ルルドの正体を聞かれて、何と誤魔化そうか考えて、「あいつは害はねぇよ」と、口にできる事実だけ伝えた。



 あー……まずいな。ニヤける。
 顔、引き締めねぇと。ダメだわ、これ。

 耳に残った、ルルドの甘い声。
 目に焼き付いた、欲情し火照った顔。

 そして、恍惚と彷徨いながらも、俺を求めるルルドの姿。

 新しく鮮やかな記憶は、いくらでも俺を昂らせる。

 俺と目が合っただけで、一瞬で顔と耳、さらに全身を朱に染めた、白い竜。
 俺の指先がわずかに肌に触れただけで強張るルルドに、もだもだと疑心暗鬼になっていたさっきまでの俺ならば、拒絶だと思い込んだだろう。

 でも今となっては……単純に初めて感じる理解できない愛欲に恥じらっているようにしか見えなかった。

 俺も、大概単純だな。

 久々に触れる素肌は、相変わらず吸い付くような滑らかさだった。
 真っ白な肌が桃色に染まって、これまでより、ずっと熱を孕んでいる気がした。

 熱い肌の感触に、どうしようもなく愛しさが募った。

 ふわりと香る柔らかな髪を梳き、頭の形を確かめるように撫でてやれば、ルルドはその感触に感じ入り、上気した肌はそのままで、悩まし気な艶っぽい声を漏らしながら、俺の手にすりすりと擦り寄ってくる。

 もっと撫でろと言わんばかりの行動に、俺の気持ちも高ぶって。

 ルルドの険しかった表情が、切なげに乞うようなものへと変わる。

 止まっていた呼吸が再開して、甘い濡れた吐息がこぼれ出して。

 うっすらと開いた瞼の隙間から覗いた瞳は、とろりと蜜のようにとろけていた。白く長いまつ毛が黒い瞳にかかって、きらきらと細密に光って……。

 ゆらゆらと黒い瞳が揺れて、薄紅色の唇から、赤い舌がチラリと覗く。小さく喘ぐように漏れる声が俺を求めてる。

 うっとりと惚けた熟れた果物みたいな、甘い甘いルルドの顔。「いい顔だな……」と思わず漏らした俺の言葉に、ルルドの瞳がゆらゆらと揺れた。

 まっ直ぐに俺を見つめるルルドの眼差しには、同じ熱量がこもっている。

 そう思ったのは、俺の勘違いじゃねぇよな……?

 俺を見上げる潤んだ瞳も、物欲しそうな唇も、ぴくぴくと快感に震える身体も、すべてが艶麗で……体も心も確かに俺を望んでいた。

 ルルドは俺に、確かに欲情してる。
 嫉妬するほどに、独占欲に自制を失うほどに、俺を求めてる。

「だって……僕、変なんだもん。
 ヴァル見てると、ヴァルのこと考えると……それだけで……。なのに、こんな風に触られたら……」

 そういうルルドの言葉も、俺が触れれば悦ぶ体も、心地よさそうに震える心も、全部が愛おしくて。たまらなくて。

 緩く立ち上がっていたルルドの中心は、俺が撫でればすぐに芯を持って固くなった。
 で、あっという間に脈打って張りつめて、俺の手の中であっさりと絶頂を迎えた。

 真っ赤な顔で、ぎゅっと俺の肩に縋りつき、嬌声を噛み殺すルルドに、俺はくぎ付けになった。

「うう~……ヴァルが、ヴァルが悪いんだからぁ……」

 なんて言って、恨みがましく俺を見る表情も、俺への淫欲に戸惑う仕草も可愛くて、愛しいばかりで。

 はぁ……まったくよ。俺はいつまで待たされんだろうな。

 でも、待たされるだけなら、まだいいよ。

 今回のことで……ルルドに一方的にわけもわからず避けられて、俺は身に染みた。
 成す術もなく離れていくルルドを受け入れるしかねぇなんて状況は、やっぱり冗談じゃねぇ。





 一夜明け、カインはどことなく吹っ切れた様子だった。
 対してメイナードは、一段と鬱々とした、追い詰められた面持ちだった。

 鍋のスープを二つよそい、パンも二つとって、連中から少し離れた、けれど声は聞こえる位置に座る。

 ユーリは昨晩と同様に……いや、さらに活き活きと饒舌に元居た世界のことを話していた。
 なんとなく聞き流していた俺の耳に、

「俺には、双子の兄がいたんだ」

 と、飛び込んできて、俺は吹き出しそうになるスープをすんでのところで飲み込んだ。

 ユーリの双子の兄。
 これって間違いなく“迷い星”の……ルルドのことだ。
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