【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅳ.お腹いっぱいで幸せ編

6.俺は、ルルドをもてなしたい②

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「それにしてもヴァル。竜気をたどったっていっても、良く僕を見つけられたね?」

 他人事みたいに、「あの広い森の中で、大変だったんじゃない?」なんて言いながら、俺の服や靴についた泥をまたもやキレイにしてくれる。

「まったくだ。白だから目立つにしてもな。
 竜体でいるなら、もっとデカくなってればいいものを……」
「え?それはムリだよ」
「は?お前、大きさは匙加減だって……」
「だからだよー。あれ以上大きくなったら、首飾りがちぎれちゃうでしょ」
「………ああ、なるほど……」

 普通は身体の大きさに、装備首飾りを合わせるもんだ。
 それをこいつは、俺の作った首飾りに合わせて、身体の大きさを決めてただと……?

「そういうとこだぞ、お前」
「そういうとこ?………どういうとこ?」
「やってることが、可愛すぎるってことだよ」
「可愛すぎる……つまり、もっと大胆に竜っぽくしろってこと?
 たしかに、今の僕ならこの森の一番大きな木よりも大きくなれるもんね!」

 自信満々で竜っぽくない恐ろしいことをさらりと言うな。
 訂正すんのも面倒くせぇよ。

「でもね、ヴァル。ちょっと考えてみてよ。
 そんなに大きくなったら、たくさんご飯がべないとお腹いっぱいにならないくなっちゃうじゃない!」

 ふんふんと鼻息荒く意気込み、安定の食いしん坊発言をするルルドを、いやお前竜なんだから大きさと食事量なんて関係ないだろう、と微笑ましく思いながら。

 今、成熟したルルドが竜体で大きくなったなら……。
 あのサイズで、あれだけ神々しかったんだから。なおさら崇高な風格をたたえているに違いない。

 と、ちょっと見たくなったことは、黙っておく。

 くだらない雑談の一つ一つが、ルルドが隣にいることを、ありありと感じさせてくれる。



 行きは身を切るような孤独と焦りで、無限に感じた道のりだったが。

 戻るときは俺と、ルルドの二人。

 明らかに互いを繋ぐものを感じながらの帰り道は、あっという間だった。




 わずかばかり木々が途切れ切り開かれた場所に、1階建ての建物がぽつんと取り残されたように佇んでいた。

「うわぁ……なに……?ここ」

 木と煉瓦でつくられた建物は、小屋より大きく、屋敷よりは小さい。

「お家!?お家だー!こんな森の中に、お家が出てきた!え?クマ?小人?すごいっ!」

 くま?こびと?なんだ……そりゃあ。

「太い柱!すごい、ピカピカだ!!」
「ああ」
「壁もすべすべだ!すごーい!」

 柱も一本一本、自分で丁寧に磨き、外壁の板も滑らかになるまで研磨し、塗装した。
 赤褐色のレンガがアクセントになっており、我ながらなかなかの出来栄えだと思う。

「大きいログハウスってかんじで、すっごく可愛いね!」

 ろぐはうす、がなんだかわからないが、すごい、かっこいい、可愛いを繰り返すルルドの好感触に、ひとまず胸をなでおろす。

 はしゃいだ犬みたいに家の周りをぐるぐる回り、外観を確かめてルルドが言う。

「これ、全部ヴァルがつくったの?」
「あー……ま、そうだな」

 俺以外にこんな辺鄙なとこに来る物好きはいねぇよ。

「ここは初めからある程度ひらけてたんだよ。
 その場所を使って、俺がちょっとずつ建てたんだ。
 地方に出たついでっつーか……まぁ、すぐ帰ってもいいこと無かったからな」

 まだ、ユーリが現れる前からやってたことだ。
 ユーリが現れてからも、一種の現実逃避として、一人でここを訪れては、作業に没頭していたもんだ。

「さすがに地盤を整えるのや、木を切り倒すとき、基礎部分は竜気術を使ったが。基本的には手作業でやったから、アラもあるけど……。
 俺は気に入ってる。
 まあ……なんつーか、ここをどうするか考えてる時だけが、俺にとっては息抜きだったつーか……」

 忙しくて、実際にここに来れない時も、ここのことを考えれば、荒んだ心もちょっとはマシになった。

「そっか……大事な場所なんだね」
「ああ……そうだな」

 ルルドに出会ってからも、この場所が俺にとって価値ある大切な場所だったことは変わらねぇが。

 意味合いは180度変わった。

「お前に会ってからは、今の現実から逃げるためっつーより……。
 この先のこと考えて、今を色々楽しめる場所になったっつーか」

 早く終わってしまえばいいと先も見えねぇ泥沼にいた俺が、今よりも先の未来に思いを馳せて、前向きに楽しめるようになるなんて。

 お前が俺をどんだけ変えたか、これがどんだけ凄いことか。

 お前にはわかんねぇだろうな。

 お前はずっと、俺の希望なんだぜ。

「そっかぁ。ここは、ヴァルの夢のために自分で作ったヴァルのお家なんだね」
「お前、話聞いてたかよ。ちがうだろ」
「え?」
「俺の家、じゃなくて、俺たちの家、だろ」
「……あ……うっ……ヴァル、それって……」
「なんだよ。お前ここまできて、別々に暮らすつもりかよ」
「ううんっ!そうじゃない!……そうじゃないけど……。
 なんか、びっくりしちゃって………」

 ルルドはぶんぶんと首を横に振り、もごもごと言いよどむ。
 眦を赤く染める様子からは、確かに肯定的は感情が伺えるのに。

 びっくりってなんだ。びっくりって。
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