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第一章
7話 ⑦攫われた二人
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「せんやの居場所は!?」
「居場所が分かったんだ、着いてきて! でもみんなには言わないでくれ、君を連れ出すことは許してもらえなかった」
「分かったからはやくせんやを助けに行こう!!」
アラカに上着をかけられ、シェルターから出て、生徒に見つからないように建物に隠れながら着いていく。アラカはしばらくすると、魔法具を取り出した。
「アラさん? せんやは?」
「今から魔法で向かう。転移用の魔法具があって良かった」
魔法具が発動した時、スマホに連絡が来た。開いてみると、せんやから『ヴォンヴァートくん今どこにいるの?』『トイレに行ってから帰ってきてないってみんなが言ってる』とトーク画面に表示される。
——え?
光に包まれて浮遊感に襲われる。ドテッと地面に落ちて瞬きをすると、目の前には機械的な室内が広がっていた。
文字列と線が並んだ電子カーテン?のようなものの奥に人影が見える。
「いらっしゃい、リリア」
文字列が消えて電子カーテンの奥から現れたのはウォーゼンだった。そばに立つアラカを見上げる。
「ど、どう言うことだアラさん……」
「兄貴が警戒してたのはオロクだけだったってことだ」
ウォーゼンの長い人差し指が俺の顎を掬う。立てずにいると、奥にベッドがあることに気がつく。
誰か寝てる?
「リリアはあそこに繋いでおけ」
「はい」
アラカがウォーゼンに頭を下げる。いつもの明るい雰囲気じゃないアラさんが少しだけ怖い。ウォーゼンが部屋から出ると、アラカが俺の腕を掴んで、引きずる。膝が震えて立ち上がれねえ。
引きずられるままついたのは、奥にあったベッドだ。真っ白な天幕とシーツのベッド。ベッドの上に放り投げられて、片足を掴まれる。ガチャンと足枷を付けられる。
「アラさん! 待ってくれ!」
「ごめんなヴォンヴァートくん、信じてくれてたのに」
起き上がったら、トンッと肩を押されてベッドへもう一度倒されてしまう。アラカの背中は電子カーテンで隠され、自動扉の開閉音が聞こえてアラカが出て行ったことが分かる。
そばに温もりを感じて隣を見ると、ぐっすりと眠ったオロクがいた。何もなかったみたいに穏やかに眠る寝顔に毒気を抜かれる。
「オロク? こんなところで何やってんだ?」
ほっぺたを触わる、フニフニして気持ちいい。夢中になって触っていたら、「うぉーぜんさま?」とオロクがむにゃむにゃ呟く。あいつと間違えられると癪だ。
取り敢えず無事みたいで安心したわ。だけど……ウォーゼンの奴本当に部下想いなのかよ。オロクも名前呼んでたし面識があるってのは本当だったんだな。こんないいベッドに寝かしてやるなんて、大事にされてんじゃねえか。……待てよ? 今ほっぺた触わってたら当たり前みたいにウォーゼンと間違われたけど、ウォーゼンの奴普段からオロクのほっぺたプニプニしてやがるのか? まさかな……。
「ヴォンヴァートくん? 何してるの?」
考え事してて気付かなかったが、オロクが目を覚ましたのか俺をじっと見つめている。
「お、おう。おはよう……」
「おはよう。どうして君がウォーゼンさまの仮眠室に? 俺たち職員棟の中庭にいたはずだよね?」
中庭と言われてドキッとする。泣きじゃくってたくせに今は平気そうだ。オロクが起き上がって髪や服装を整えながらキョロキョロと辺りを見回している。
「ここウォーゼンの仮眠室なのかよ」
「普段は使ってないし、シーツは洗われているよ」
「そんなことは気にしてねえ。それよりここから脱出する方法だ」
「ヴォンヴァートくんが攫われるなんて考えられなかったな。ここは基地の中枢だから、転移の魔法具がないと脱出は難しそうだね」
転移の魔法具といえば……
「そうだお前、アラカがスパイだって知ってたか!? アインの兄ちゃんだから信頼してたのに、騙されてこの有様だよ! なんか腹立ってきたッ!」
「もちろん知ってたけど、最近はあんまり関わってないよ。そんなに慕ってるなんて少し妬けちゃうな」
「うっ……」
振ったばっかなのによくそんなセリフ吐けるなこいつ……。
「アラカ先輩がまだ魔法具を持ってたらいいね」
他人事みたいに笑ってんじゃねえよ。
「アラさんが持ってることに賭けるしかねえ。俺に協力してくれオロク」
「もちろん。ヴォンヴァートくんのためなら協力するよ」
ぎゅっと手を握ってくる。
「よ、よくそう言うセリフ吐けんな?」
「ヴォンヴァートくんこそ、よく秋月先生の前で好きって言えたよね」
「うぐっ!」
急に恥ずかしくなってきた、せんやの奴また調子に乗るんじゃねえか? 言うんじゃなかった。あの時は色々と焦ってたからな……こいつのことも泣かせちまったし……。
「お、お前もう大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思う?」
「平気そうには見えるけど」
オロクは眉を寄せて俺から目を逸らす。
「……俺以外の人は好きにならないでって言ったのに」
「うっ! お、お前なぁ! 好きになるなって言われたからって、その通りになるわけねえだろ!」
「でもヴォンヴァートくんと初めてキスしたのは俺なのに」
オロクは枕をぎゅっと抱きしめていじけている。
「お、オロク~?」
ご機嫌伺いに呼びかけてみるが、ぷいっと向こうを向く。ぷくっと膨らんだほっぺたが見える。子供かよ。
「居場所が分かったんだ、着いてきて! でもみんなには言わないでくれ、君を連れ出すことは許してもらえなかった」
「分かったからはやくせんやを助けに行こう!!」
アラカに上着をかけられ、シェルターから出て、生徒に見つからないように建物に隠れながら着いていく。アラカはしばらくすると、魔法具を取り出した。
「アラさん? せんやは?」
「今から魔法で向かう。転移用の魔法具があって良かった」
魔法具が発動した時、スマホに連絡が来た。開いてみると、せんやから『ヴォンヴァートくん今どこにいるの?』『トイレに行ってから帰ってきてないってみんなが言ってる』とトーク画面に表示される。
——え?
光に包まれて浮遊感に襲われる。ドテッと地面に落ちて瞬きをすると、目の前には機械的な室内が広がっていた。
文字列と線が並んだ電子カーテン?のようなものの奥に人影が見える。
「いらっしゃい、リリア」
文字列が消えて電子カーテンの奥から現れたのはウォーゼンだった。そばに立つアラカを見上げる。
「ど、どう言うことだアラさん……」
「兄貴が警戒してたのはオロクだけだったってことだ」
ウォーゼンの長い人差し指が俺の顎を掬う。立てずにいると、奥にベッドがあることに気がつく。
誰か寝てる?
「リリアはあそこに繋いでおけ」
「はい」
アラカがウォーゼンに頭を下げる。いつもの明るい雰囲気じゃないアラさんが少しだけ怖い。ウォーゼンが部屋から出ると、アラカが俺の腕を掴んで、引きずる。膝が震えて立ち上がれねえ。
引きずられるままついたのは、奥にあったベッドだ。真っ白な天幕とシーツのベッド。ベッドの上に放り投げられて、片足を掴まれる。ガチャンと足枷を付けられる。
「アラさん! 待ってくれ!」
「ごめんなヴォンヴァートくん、信じてくれてたのに」
起き上がったら、トンッと肩を押されてベッドへもう一度倒されてしまう。アラカの背中は電子カーテンで隠され、自動扉の開閉音が聞こえてアラカが出て行ったことが分かる。
そばに温もりを感じて隣を見ると、ぐっすりと眠ったオロクがいた。何もなかったみたいに穏やかに眠る寝顔に毒気を抜かれる。
「オロク? こんなところで何やってんだ?」
ほっぺたを触わる、フニフニして気持ちいい。夢中になって触っていたら、「うぉーぜんさま?」とオロクがむにゃむにゃ呟く。あいつと間違えられると癪だ。
取り敢えず無事みたいで安心したわ。だけど……ウォーゼンの奴本当に部下想いなのかよ。オロクも名前呼んでたし面識があるってのは本当だったんだな。こんないいベッドに寝かしてやるなんて、大事にされてんじゃねえか。……待てよ? 今ほっぺた触わってたら当たり前みたいにウォーゼンと間違われたけど、ウォーゼンの奴普段からオロクのほっぺたプニプニしてやがるのか? まさかな……。
「ヴォンヴァートくん? 何してるの?」
考え事してて気付かなかったが、オロクが目を覚ましたのか俺をじっと見つめている。
「お、おう。おはよう……」
「おはよう。どうして君がウォーゼンさまの仮眠室に? 俺たち職員棟の中庭にいたはずだよね?」
中庭と言われてドキッとする。泣きじゃくってたくせに今は平気そうだ。オロクが起き上がって髪や服装を整えながらキョロキョロと辺りを見回している。
「ここウォーゼンの仮眠室なのかよ」
「普段は使ってないし、シーツは洗われているよ」
「そんなことは気にしてねえ。それよりここから脱出する方法だ」
「ヴォンヴァートくんが攫われるなんて考えられなかったな。ここは基地の中枢だから、転移の魔法具がないと脱出は難しそうだね」
転移の魔法具といえば……
「そうだお前、アラカがスパイだって知ってたか!? アインの兄ちゃんだから信頼してたのに、騙されてこの有様だよ! なんか腹立ってきたッ!」
「もちろん知ってたけど、最近はあんまり関わってないよ。そんなに慕ってるなんて少し妬けちゃうな」
「うっ……」
振ったばっかなのによくそんなセリフ吐けるなこいつ……。
「アラカ先輩がまだ魔法具を持ってたらいいね」
他人事みたいに笑ってんじゃねえよ。
「アラさんが持ってることに賭けるしかねえ。俺に協力してくれオロク」
「もちろん。ヴォンヴァートくんのためなら協力するよ」
ぎゅっと手を握ってくる。
「よ、よくそう言うセリフ吐けんな?」
「ヴォンヴァートくんこそ、よく秋月先生の前で好きって言えたよね」
「うぐっ!」
急に恥ずかしくなってきた、せんやの奴また調子に乗るんじゃねえか? 言うんじゃなかった。あの時は色々と焦ってたからな……こいつのことも泣かせちまったし……。
「お、お前もう大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思う?」
「平気そうには見えるけど」
オロクは眉を寄せて俺から目を逸らす。
「……俺以外の人は好きにならないでって言ったのに」
「うっ! お、お前なぁ! 好きになるなって言われたからって、その通りになるわけねえだろ!」
「でもヴォンヴァートくんと初めてキスしたのは俺なのに」
オロクは枕をぎゅっと抱きしめていじけている。
「お、オロク~?」
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