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第一章
7話 ⑧スパイのオロク
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そのほっぺたをつついてやろうと手を伸ばした時だった。ウィンと自動扉の開く音がして、電子カーテンの奥からウォーゼンが歩いてくる。シーシェンも顔はいいけど、ウォーゼンも結構イケメンだよな。つい目で追ってしまうくらいには。
「オロク、起きたのか?」
枕を抱きしめたままのオロクの前にしゃがみ込んでオロクの顔を覗き込むウォーゼン。表情はあんまり変わってないが声が優しい気がする。
「やっぱりリリアと同じ部屋にして正解だったな」
ん? 何が正解なんだ?
「おい、ウォーゼン——」
「——かわいいな」
オロクの頭を撫でるウォーゼン。甘やかしすぎだろ。
「ウォーゼンさま、ヴォンヴァートくんをどうするつもりですか?」
頭を撫でられたままウォーゼンを見上げるオロクにウォーゼンは顔を寄せて言う。
「どうもこうも、実験するに決まってんだろ。まさか反対だなんて言わねえよな?」
「痛い目に合わせないと約束してください……ヴォンヴァートくんが苦しいのは嫌なので」
オロクがウォーゼンを見つめる。いつもより瞳がうるうるしてるように見える。ほっぺたも赤い。ウォーゼンはジトッとした目でそれを見ている。
「しょうがねえな、分かった、約束してやるよ。だけどあいつはそうはいかねえぞ~?」
「げっ」
オロクの顔がとたんに嫌っそうな顔になる。珍しい表情だ。
「まあ、ここにお前がいることは知らねえし、お前がリリアを好きってこともまだ知らねえから大丈夫だろう」
さっきから俺の知らねえ話ばっかしやがって。オロクがスパイだって思い知るな。
「実験はしばらく先ですよね?」
「ああ」
「実験が終わったらヴォンヴァートくんを学校に帰してくれますか?」
「…………まあ」
実験はしていいみたいになってるけど、よく考えたらオロクは敵側なんだよな。いつか改心するとは言え、まだだし。
「オロク、俺実験なんてされたくねえんだけど?」
「ヴォンヴァートくん、顔が近い……」
ぽっと顔を赤く染めるオロクにぎょっとする。何もする気ねえんだけど? 顔を赤らめるなこっちがむずむずする。
「それより、実験が始まるまでは二人きりだよ。ずっと一緒にいられるね」
「…………?」
「ヴォンヴァートくんが先生を好きでも、関係ないよ。今は俺と二人きりなんだから」
両肩を掴まれたと思ったらドサッと押し倒される。枕が俺の上に乗る。な、なんだこの雰囲気!? 周りがピンクに見えてくる! オロクの顔が近づいてくる!
「待て待て待て!? 俺はせんやとだけするって決めたんだ!」
「決めたから何? 約束はしてないんだよね? 俺とは違って。先生に他の人を好きにならないでって言われたの? 言われてないよね? 今から俺を好きになっても大丈夫ってことだよね?」
「大丈夫じゃねえ! それよりどうしたんだお前! いつもより早口だな!?」
オロクが舌舐めずりしてから再び顔を近づけてくる。うぎゃああああああ!?
「殺すしかねえ」
「え」
ドス黒い空気が蔓延して地を這うような低い声が発せられる。パッとオロクの顔を避けるとその声の持ち主に殺されんばかりに睨まれる。その目は世界が滅亡しそうなくらいの憎悪で満ち溢れている。
「オロク、離れろ。こいつと二人きりにしてるのはそう言うことをさせるためじゃなくてだな」
ウォーゼンがオロクの腕を引っ張ると、オロクはいやいやと首を振る。
「ヴォンヴァートくんといっぱいちゅーしたいんです」
ぎゅっとオロクに抱きしめられてしまう。甘えた声だすな! 抱きつくな! なんか小動物みたいで撫でたくなる!
「お前な、俺ともしたことねえくせにリリアとなんて」
もっと邪魔しろウォーゼン! ぐいっとオロクを引き剥がそうとするウォーゼンにオロクは抵抗している。
「クソッ!! リリアを殺して欲しくなかったら、こんなことはやめろオロク!」
「ヴォンヴァートくんが好きなんです」
はらはらとオロクは涙を流し始める。ぎゅうううっと俺を抱きしめて離そうとしない。中庭の時のオロクみたいになったな。
「おいオロク、俺もお前とこんなことするのは嫌なんだが?」
「うっ……ううう」
ぼろぼろ涙を流して眉を寄せるオロクに、「うっ」と胸を押さえてしまう。こいつの泣き顔は結構厄介なんだよな。
「オロクこっちを向け」
ウォーゼンがオロクの肩を掴んで振り向かせる。オロクの顔を両手で包んでウォーゼンの顔がオロクの顔に近づいていく。
ん? え? なんで?
ちゅうっとウォーゼンの唇がオロクの涙を吸い上げる。頭の中が真っ白になった上に天使がへんてこなラッパを吹きながら俺の周りを飛び始めた。
「————————」
って、しっかりしろ俺! 一瞬頭ん中真っ白になった……っ! つ、つーかうぉ、ウォーゼンの奴部下想いってレベルじゃねえだろ!? これは危険だ、オロク離れろ!
慌ててオロクに近づいて袖を引くと、ウォーゼンに睨まれる。ひっ!
「ぅ……うぉ、ウォーゼンさまっ!?」
オロクがウォーゼンの胸を両手で突き飛ばす。
「な、何するんですか……!」
ギッとウォーゼンを睨み上げるオロクはまるで威嚇する小狐みたいで迫力がねえ。さっきからなんかかわいかったのは、小動物みたいだからか?
「ふふふふ……初めてオロクに……くふふふふ」
「何だこいつ気持ちわりぃな」
「ヴォンヴァートくん、口直しして」
「うわああああああ!? ふざけんなお前!?」
ぎゅっと俺に抱きついてきて顔を寄せてくるオロクを避ける。
それよりウォーゼンの奴、オロクにキスするってどういうこった!? ま、まさかウォーゼンは部下想いとかじゃなくて、オロクにだけ甘いってことか!?
「リリア殺す」
さっきから殺気を向けられてるのはそのせいかよ!?
「そ、それよりウォーゼン、学園襲撃はどうなったんだ! 俺に何の実験をする気だ!」
「…………フン。まだアルマタクトに辿り着けてねえからな。あっちはあいつに任せてるから大丈夫だろう。実験の準備ができたら呼びにくる。オロク、そいつにそれ以上何かしたらそいつを殺す」
「キスはだめなんですか?」
「——ダメだッ!!」
うるせえ。鼓膜が破れるかと思った。地団駄を踏むようにドカドカ足音を立てながらウォーゼンが出ていく。
オロクがぽそっと「言わなきゃバレないかな」と呟いている。キスする気満々じゃねえか。しねえからな!
「オロク、起きたのか?」
枕を抱きしめたままのオロクの前にしゃがみ込んでオロクの顔を覗き込むウォーゼン。表情はあんまり変わってないが声が優しい気がする。
「やっぱりリリアと同じ部屋にして正解だったな」
ん? 何が正解なんだ?
「おい、ウォーゼン——」
「——かわいいな」
オロクの頭を撫でるウォーゼン。甘やかしすぎだろ。
「ウォーゼンさま、ヴォンヴァートくんをどうするつもりですか?」
頭を撫でられたままウォーゼンを見上げるオロクにウォーゼンは顔を寄せて言う。
「どうもこうも、実験するに決まってんだろ。まさか反対だなんて言わねえよな?」
「痛い目に合わせないと約束してください……ヴォンヴァートくんが苦しいのは嫌なので」
オロクがウォーゼンを見つめる。いつもより瞳がうるうるしてるように見える。ほっぺたも赤い。ウォーゼンはジトッとした目でそれを見ている。
「しょうがねえな、分かった、約束してやるよ。だけどあいつはそうはいかねえぞ~?」
「げっ」
オロクの顔がとたんに嫌っそうな顔になる。珍しい表情だ。
「まあ、ここにお前がいることは知らねえし、お前がリリアを好きってこともまだ知らねえから大丈夫だろう」
さっきから俺の知らねえ話ばっかしやがって。オロクがスパイだって思い知るな。
「実験はしばらく先ですよね?」
「ああ」
「実験が終わったらヴォンヴァートくんを学校に帰してくれますか?」
「…………まあ」
実験はしていいみたいになってるけど、よく考えたらオロクは敵側なんだよな。いつか改心するとは言え、まだだし。
「オロク、俺実験なんてされたくねえんだけど?」
「ヴォンヴァートくん、顔が近い……」
ぽっと顔を赤く染めるオロクにぎょっとする。何もする気ねえんだけど? 顔を赤らめるなこっちがむずむずする。
「それより、実験が始まるまでは二人きりだよ。ずっと一緒にいられるね」
「…………?」
「ヴォンヴァートくんが先生を好きでも、関係ないよ。今は俺と二人きりなんだから」
両肩を掴まれたと思ったらドサッと押し倒される。枕が俺の上に乗る。な、なんだこの雰囲気!? 周りがピンクに見えてくる! オロクの顔が近づいてくる!
「待て待て待て!? 俺はせんやとだけするって決めたんだ!」
「決めたから何? 約束はしてないんだよね? 俺とは違って。先生に他の人を好きにならないでって言われたの? 言われてないよね? 今から俺を好きになっても大丈夫ってことだよね?」
「大丈夫じゃねえ! それよりどうしたんだお前! いつもより早口だな!?」
オロクが舌舐めずりしてから再び顔を近づけてくる。うぎゃああああああ!?
「殺すしかねえ」
「え」
ドス黒い空気が蔓延して地を這うような低い声が発せられる。パッとオロクの顔を避けるとその声の持ち主に殺されんばかりに睨まれる。その目は世界が滅亡しそうなくらいの憎悪で満ち溢れている。
「オロク、離れろ。こいつと二人きりにしてるのはそう言うことをさせるためじゃなくてだな」
ウォーゼンがオロクの腕を引っ張ると、オロクはいやいやと首を振る。
「ヴォンヴァートくんといっぱいちゅーしたいんです」
ぎゅっとオロクに抱きしめられてしまう。甘えた声だすな! 抱きつくな! なんか小動物みたいで撫でたくなる!
「お前な、俺ともしたことねえくせにリリアとなんて」
もっと邪魔しろウォーゼン! ぐいっとオロクを引き剥がそうとするウォーゼンにオロクは抵抗している。
「クソッ!! リリアを殺して欲しくなかったら、こんなことはやめろオロク!」
「ヴォンヴァートくんが好きなんです」
はらはらとオロクは涙を流し始める。ぎゅうううっと俺を抱きしめて離そうとしない。中庭の時のオロクみたいになったな。
「おいオロク、俺もお前とこんなことするのは嫌なんだが?」
「うっ……ううう」
ぼろぼろ涙を流して眉を寄せるオロクに、「うっ」と胸を押さえてしまう。こいつの泣き顔は結構厄介なんだよな。
「オロクこっちを向け」
ウォーゼンがオロクの肩を掴んで振り向かせる。オロクの顔を両手で包んでウォーゼンの顔がオロクの顔に近づいていく。
ん? え? なんで?
ちゅうっとウォーゼンの唇がオロクの涙を吸い上げる。頭の中が真っ白になった上に天使がへんてこなラッパを吹きながら俺の周りを飛び始めた。
「————————」
って、しっかりしろ俺! 一瞬頭ん中真っ白になった……っ! つ、つーかうぉ、ウォーゼンの奴部下想いってレベルじゃねえだろ!? これは危険だ、オロク離れろ!
慌ててオロクに近づいて袖を引くと、ウォーゼンに睨まれる。ひっ!
「ぅ……うぉ、ウォーゼンさまっ!?」
オロクがウォーゼンの胸を両手で突き飛ばす。
「な、何するんですか……!」
ギッとウォーゼンを睨み上げるオロクはまるで威嚇する小狐みたいで迫力がねえ。さっきからなんかかわいかったのは、小動物みたいだからか?
「ふふふふ……初めてオロクに……くふふふふ」
「何だこいつ気持ちわりぃな」
「ヴォンヴァートくん、口直しして」
「うわああああああ!? ふざけんなお前!?」
ぎゅっと俺に抱きついてきて顔を寄せてくるオロクを避ける。
それよりウォーゼンの奴、オロクにキスするってどういうこった!? ま、まさかウォーゼンは部下想いとかじゃなくて、オロクにだけ甘いってことか!?
「リリア殺す」
さっきから殺気を向けられてるのはそのせいかよ!?
「そ、それよりウォーゼン、学園襲撃はどうなったんだ! 俺に何の実験をする気だ!」
「…………フン。まだアルマタクトに辿り着けてねえからな。あっちはあいつに任せてるから大丈夫だろう。実験の準備ができたら呼びにくる。オロク、そいつにそれ以上何かしたらそいつを殺す」
「キスはだめなんですか?」
「——ダメだッ!!」
うるせえ。鼓膜が破れるかと思った。地団駄を踏むようにドカドカ足音を立てながらウォーゼンが出ていく。
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