乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

5話 ⑦大浴場

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 洗い場に向かえば、見覚えのある姿を見つける。
 あの金髪は……
「ア~イちゃん!」
 後ろから抱き着けば、「うおっ」とその人物が声を上げた。あれ、声違くね?
「誰かと思ったらヴォンヴァートくんか」
「あれ……アインの兄ちゃん?」
「アインと間違えたのかい?」
「す、すまん!」
 鏡に映る顔を見て抱き着いたままの体を離す。よく見れば体格とかも違ってた。アイちゃんの金髪は眩しいくらいに綺麗でいつもすぐ見つけられたから間違ってると思わなかった……。
「2年もこの時間なのか?」
「俺だけ特別。用事があって遅れちゃってね」
「へえ」
 洗い終えたのかアラカは荷物を持って出口へ向かう。
「お湯漬からないのか?」
「ああ、うん。みんな1年生だし、誰か一人でも知り合いがいたら良かったんだけど」
「ザイドとアインは?」
「あの二人の間に入るのはちょっと」
 確かに。今頃お湯の掛け合いをしているか、アイちゃんがザイドに抱き着いているか……。
「じゃあ俺は?」
「え?」
「俺と入ればいーだろ?」
「ぶっ……あははははは! それもいいけど、今回は遠慮するよ、君と入りたい子がいっぱいいるみたいだし」
 ほんと楽しそうに笑うよな……と思っていたら、そんなことを言われる。
「え」
「リリアくん? どうしていつも置いていくの?」
「クソ師匠! 安心しやがれ! チカンは退治したからよ!」
「そうじゃない……そうじゃないんだ、もっと脳が揺さぶられるような……こんなんじゃないんだ」
 こわいわ。
 アラカに振り向いて言う。
「失礼」
「う、うん」
 奴らが隣に座れないように既に両側に座っている場所を見つけて、椅子へ座る。
 ふぅ……と息をつくと、隣からくすくすと笑い声が聞こえてきた。
「……?」
「ヴォンヴァートくんはモテモテで大変だね」
「お、オロク……!」
 裸同士であの距離を取られるのはまずい……! と身構えるが、オロクは近づいてくる様子がない。髪を洗ってまっすぐ鏡を眺めている。
 それにしても……フツーの大きさ。
「どこ見てるの?」
「ど、どこも見てねえ!」
 俺の方が大きいよな? 同じくらいか? いや俺の方が大きい!
「シロくんは?」
「キリクゥなら先に湯舟に使ってるよ」
「一緒じゃなかったのか?」
「キリクゥには体を洗ってくれる従者が2人いるから、早く終わったんだ」
「なんだそれシロくんも金持ちかよ」
「体洗わないの? 俺はこの後体を洗ったら終わりだよ」
「その情報いるか?」
「後ろでハイエナが見てるから」
「ハイエナ?」
 げえええええええええ3人衆が後方でスタンバイしている!! どちらかが空けば必ず誰かが来る! と言うか後ろで争って迷惑を掛ける! その間に逃げてもいいが、ゆっくりお湯に漬かるにはあいつらが体を洗っている最中がいい。
「さっさと体を洗わないと」
 配られたシャンプーを使って慌てて髪を洗い始める。
「俺は喧嘩させた方がいいと思うけど」
「え?」
 軽めに済ませてシャワーで流しているとそんなことを言われた。
「あの人たち、すぐに体を洗って来そうじゃない?」
「た、確かに。でも隣に誰かが座ったら終わり……」
「俺が手伝ってあげるよ」
「え」
「背中、流してあげる」
「それ変わる?」
 ボディソープを出して体を洗っていると、オロクがそんなことを言う。
「後ろ向いて」
「…………」
 背中流してもらうってどんなのだろう。やってもらおうかな。後ろを向けば、オロクの手が背中に触れる。
「「「ああああああああああああああ」」」
 そう言えばあいつらの目的って俺の背中を流すことだったかも。
「…………こう言うのってタオル使うもんじゃなかったか?」
「そうだった? でも俺の使っていいの? もう下洗ったよ?」
「じゃ、じゃあ俺の使えよ」
 後ろへ向けてタオルを差し出すが、受け取る気配はない。
 後ろの気配が近づき、耳に吐息が触れた。
「ごめんね。触りたかったんだ」
「……っ、……っ!」
 すぐに離れていく気配に、安心するも、心臓の音は飛び跳ねまくっている。
 こ、怖い。
 なんか怖い。
「も、もう充分だ!」
 振り返れば、すぐそこに顔がある。思わず目をぎゅっと瞑るが、オロクの気配は遠のいた。あれ、いつもならキスしてくるのに。
 さすがに人が多かったからしてこなかったのか?
 じっとオロクの横顔を見つめていると、こちらにオロクが振り返る。黒い瞳とバチッと視線が交わって、動けなくなる。
「俺はそろそろ行くよ。準備はいい?」
「お、おう」
 オロクが立ち上がれば三人衆の方から喧嘩の声が聞こえてくる。三人が喧嘩に熱中し始めたら、俺はそそくさとその場を離れた。
 お礼を言おうとオロクの姿を探す。
 学年ごとに使うためか浴場はだだっ広い。前世で通っていた体育館より広いんじゃないだろうか。入学式で集められた講堂も相当な人数が入れたみたいだけど。1学年が1クラス30人前後で10クラス以上はある。そのためオロクの姿は見失ったが次会った時にお礼を言えばいいかと、湯船に漬かろうと辺りを見渡す。
「お、シロくん発見」
 キリクゥの姿を見つけて傍へと向かうと、湯船には漬からずその前に仁王立ちしていた双子が肩を握ってきて通せんぼする。
「何するんだよ」
「ここはキリクゥ様専用ダ」
「大浴場に専用もクソもあるかよ」
「コこはキリクゥ様が入学した後増設させた。キリクゥ様専用で間違いない」
 ぶん殴ってもいいけど、たぶんオロクの言っていたキリクゥの従者だろう、キリクゥに断りなく殴るわけにはいかないし何より来世ポイントが減る。
「…………シロくんと話したかったのに」
「「しろくん?」」
 同い年くらいだし今は高等部1年生が風呂に入る時間だからこの従者たちも1年生で間違いない。-50ptは大きいからな。
「オロクでも探すか」
「オロク様と知り合いカ?」
「キリクゥ様のゴ友人なら露天風浴場を貸し切りにされている筈だ」
「貸し切り? なんで?」
「キリクゥ様からのご配慮だ」
「はあ」
 つまり友人だから同じ待遇をさせたと。サイフェンも金持ちだけどキリクゥはさらに上を行く金持ちなのかもしれない。
 取り合えずこいつらがいないならオロクのところには行けそうだな。
「ドこへ行く」
 踵を返せば呼び止められる。
「どこって……どこでもいーだろ」
「オロク様は貸し切りだ。邪魔されないようニ」
「……はぁぁ。めんどくせえ……。分かったよ。俺は適当に漬かりますんで心配しないでくださ~い」
 ひらひらと手を振って去っていく。さっさとその場を離れたので彼らからの返事は帰ってこなかった。
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