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「殿下が正式に宣言をし、私がそれを受諾すれば」
「よかろう。『アドリアード国王太子イーサン・ウォード・アドリアードはアドリアード国侯爵セレネ・ヴィンラードとの婚約を破棄する事を宣言する!!』」
「……『アドリアード国侯爵セレネ・ヴィンラードは王太子イーサン殿下との婚約破棄、確かにお受けいたしました』」
イーサンの宣言にセレネが静かに応える。
その瞬間。
「なっ!? これはいったい何だっ!? 何故魔力が……!?」
がくり、と王太子が膝を突く。先程セレネが膝を突かない事に眉を顰めた王太子が、だ。
例えるなら一杯に水を入れた皮袋にいくつもの穴が空いていて、少しずつ水が抜けていく感じか。今までは絶え間なく注ぎ込まれていたために、穴に気付いていなかった。それがどうだ。セレネが宣言を受諾した瞬間、何かに塞がれたように魔力の供給が止まった。あっという間にイーサンから魔力が消える。魔力とは身体が作るもの。供給が止まるとはどういう事だ。どういう……
「イーサン!!」「殿下!!」
急に崩れ落ちたイーサンに驚き、周りが駆け寄る。それと同時に、信じられない事に気付いた。あれ程イーサンに満ち満ちていた魔力が全く感じられないのだ。イーサンの魔力は強く、通常他人の魔力を感じるなどほとんど出来ないが、イーサンは常に魔力で他人を圧倒させていた筈なのに。
「何事だ!!」
その時、ホール入口の扉が慌ただしく開いた。騒ぎを聞き付けた国王がやって来たのだ。日頃あまり運動をしていない身体で急いだからか、額から汗が吹き出している。息を切らせながらホールを見やり、壇上で崩れ落ちた王太子に気付くと、怒りに染まった顔でセレネを睨み付けた。
「ヴィンラード侯爵!!これはどういう事だ!!」
「どういう事もなにも、見たままですわ陛下。王太子殿下が婚約破棄をなさりたいと仰るので、お受けしたまで」
「なに!?」
「ち、父上!!俺…私の魔力が!!何故です!!何故魔力が…!!」
魔力が、と呟き続ける息子にかける言葉の見つからず呆然とする国王に、静かに冷めた視線を向けるセレネ。どさり、と何かの音に国王が振り向けば、遅れてホールに到着した王妃が、事態を悟り気絶して倒れていた。
「王妃!?」
慌てて抱き起こし、護衛騎士に介抱させる。だが、国王がほんの目を離した隙に、事態は国王にとって更に悪い方向へと転がった。宰相子息がセレネへと声をあげたのだ。
「セレネ・ヴィンラード!!貴様一体殿下に何をした!!」
「何をしたといわれても、具体的には何もしておりません。陛下に申し上げた通り、婚約破棄を受託しただけです」
「ならば何故殿下の魔力が消える!?」
「先程わたくしが申し上げたではありませんか。『破棄後は破棄前の状態に戻る』、と」
そう言われた時、宰相子息は気付いた。目の前で静かに佇む女性から放たれる魔力を。
「よかろう。『アドリアード国王太子イーサン・ウォード・アドリアードはアドリアード国侯爵セレネ・ヴィンラードとの婚約を破棄する事を宣言する!!』」
「……『アドリアード国侯爵セレネ・ヴィンラードは王太子イーサン殿下との婚約破棄、確かにお受けいたしました』」
イーサンの宣言にセレネが静かに応える。
その瞬間。
「なっ!? これはいったい何だっ!? 何故魔力が……!?」
がくり、と王太子が膝を突く。先程セレネが膝を突かない事に眉を顰めた王太子が、だ。
例えるなら一杯に水を入れた皮袋にいくつもの穴が空いていて、少しずつ水が抜けていく感じか。今までは絶え間なく注ぎ込まれていたために、穴に気付いていなかった。それがどうだ。セレネが宣言を受諾した瞬間、何かに塞がれたように魔力の供給が止まった。あっという間にイーサンから魔力が消える。魔力とは身体が作るもの。供給が止まるとはどういう事だ。どういう……
「イーサン!!」「殿下!!」
急に崩れ落ちたイーサンに驚き、周りが駆け寄る。それと同時に、信じられない事に気付いた。あれ程イーサンに満ち満ちていた魔力が全く感じられないのだ。イーサンの魔力は強く、通常他人の魔力を感じるなどほとんど出来ないが、イーサンは常に魔力で他人を圧倒させていた筈なのに。
「何事だ!!」
その時、ホール入口の扉が慌ただしく開いた。騒ぎを聞き付けた国王がやって来たのだ。日頃あまり運動をしていない身体で急いだからか、額から汗が吹き出している。息を切らせながらホールを見やり、壇上で崩れ落ちた王太子に気付くと、怒りに染まった顔でセレネを睨み付けた。
「ヴィンラード侯爵!!これはどういう事だ!!」
「どういう事もなにも、見たままですわ陛下。王太子殿下が婚約破棄をなさりたいと仰るので、お受けしたまで」
「なに!?」
「ち、父上!!俺…私の魔力が!!何故です!!何故魔力が…!!」
魔力が、と呟き続ける息子にかける言葉の見つからず呆然とする国王に、静かに冷めた視線を向けるセレネ。どさり、と何かの音に国王が振り向けば、遅れてホールに到着した王妃が、事態を悟り気絶して倒れていた。
「王妃!?」
慌てて抱き起こし、護衛騎士に介抱させる。だが、国王がほんの目を離した隙に、事態は国王にとって更に悪い方向へと転がった。宰相子息がセレネへと声をあげたのだ。
「セレネ・ヴィンラード!!貴様一体殿下に何をした!!」
「何をしたといわれても、具体的には何もしておりません。陛下に申し上げた通り、婚約破棄を受託しただけです」
「ならば何故殿下の魔力が消える!?」
「先程わたくしが申し上げたではありませんか。『破棄後は破棄前の状態に戻る』、と」
そう言われた時、宰相子息は気付いた。目の前で静かに佇む女性から放たれる魔力を。
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