少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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学園生活

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「ユーリ、忘れ物ない?ちゃんと持った?」

「大丈夫だって、もう何度も確認したんだから」

初めて学校に行くから母さんも不安なのは分かる。
俺も初めてだから、母さんには心配掛けないように笑顔を見せるが不安だ。
魔力も弱いままで、ちゃんとやっていけるのか分からない。

でも、俺のやりたかった事の一つだ…生前行けなかった学校に通う。
普通の人みたいに勉強して、友達を作って遊びたい。

小学生みたいな考えだと思うが、小学校にも行った事がないから思考が小学生で止まっているのかもしれない…もう、16歳なのにね。
体験出来なかった事を精一杯やりたい、今からでも遅くはないはずだ。

母さんに手を振り、魔術学園への道を地図を見ながら歩く。

16歳までの知識は一般家庭では両親から教えられる。
ある程度知識がある中、専門的な新しい知識を学校で学ぶ。

義務教育だから、リーン帝国に住む人は必ず魔術学園に通わないといけない。

21歳まで学び、自分のやりたい職業を見つけたり…もう仕事していたら、もっと活かせるように極めたり出来る。
俺は、何になりたいか…か……両親に楽させたいとそんな事ばかり考えていたから具体的な事は考えていなかった。

とにかく給料が高い仕事をする事しか頭になかった。
魔力を必要としない仕事、やっぱり力仕事かな。

ぺらっとして筋肉も何もない腕を見つめて、小さくため息を吐いた。
家の手伝いで力仕事もやってきたんだけどな。

考え事をしていて歩いていたから、誰かに肩がぶつかった。
後ろからぶつかって来たから、前に倒れそうになったが足で踏ん張る。

「ご、ごめんなさ…」

「ちんたらしてんじゃねーよ!!」

俺の前までやって来て、ニヤニヤ笑っているササくんとササくんの友達数人が捨て台詞のように吐き捨てて行ってしまった。
相変わらずだなぁ、ちょっと本気でぶつかられたから肩が痛かった。

当然彼らも同じ学園に通うために歩いていた。

今までは外にいる時だけ絡まれていたが、絡まれる時間が増えると思うとササくんとクラスが違う事を祈るしかない。

学校では貴族と平民の壁はなく、同じクラスになる事もある。
わざわざ休み時間を削ってまで意地悪はしてこないとは思うけど、学園ぐらいは平和に過ごしたい。

包帯がずれていないか確認して、学園に向かう。

街の広場を通ると、朝早いのにいつもより人が多かった。
学校に通う人もいるが、大人も家から出てきた。
普段は遅くに開く酒場の店主達も早起きだ。

自分の店の飾り付けや、屋台の準備で大忙しだった。

普段見慣れた街がより豪華な装飾の街に変わっていく。

「そういえば今日だったな」

「そーだねぇ」

「リンくん、アンダーくん」

俺の目線の先を合わせるように二人が横に並んで眺める。
子供の頃からいつも何となく二人と一緒にいた。
それがいつの間にか当たり前になっていた大切な俺の友達。

手伝いで友達が出来なかった俺が、外で水を汲んでいた時に二人が声を掛けてきたのが出会いのきっかけ。
歳が近い子の知り合いは、魔物に襲われていた子といじめてくる子しかいなかった。

広場で遊んでいれば友達は早く出来たかもしれない。
でも俺は、魔物に襲われた時から心配掛けた償いとして家の手伝いを優先した。

母さんはすぐに気付いて「気にしなくていいのよ」と言ってくれたが俺は好きでやっているからと言った。

俺が勝手に償いとしてやっているだけだから誰も気にしなくていいんだ。

そんな俺に初めての子が話しかけてくれて嬉しかった。

最初は挨拶だけのぎこちないものだったが、だんだん打ち解けていき友達になるのに時間は掛からなかった。
活発で周りを明るくさせるリンくんと、のんびりやだけどいざという時は頼りになるアンダーくん。
二人とも漫画には出てこないし同じ平民だから安心出来る。

このまま俺も漫画から外れてのんびり過ごせればいいな。

広場の飾り付けは今日の午後から始まるパレードのためのものだ。
毎年開催されるが、今日はいつもとは一味違う。

聖騎士イヴが騎士団長に就任して、この帝国を守ると国民達に宣言する大切な日だ。
全ての国民達に幸せが訪れると言われている。

だからかまだ始まってもいないのに、もう皆ニコニコしている。
準備を見ているこちらまで嬉しい気持ちになる。

遠くから見るだけなら、いつも国の行事を遠くから見ているから変わらない。
俺はただの一国民だ、物語に何も影響を与えない。

そのまま読者目線で、メインキャラクターを見守るだけでいい。

パレードのために、今日の入学式は少し早めに終わるらしい。
学校も入学式より、そちらを優先していた。

やっぱりこれも聖騎士が正式に誕生するからなのかな。

「楽しみだな、聖騎士様って近寄りがたい人だから間近で見た事ないんだよなぁ」

「…そういえば僕もー、お姫様なら見た事あるんだけどねぇ」

「エマ様だろ?俺も見た見た!同じ歳なのにオーラが違うよな!ユーリもエマ様見たか!?」

「え…あ、うん」

エマには遠目だけだけど見た事がある。
よく街で護衛を連れて歩いているから目撃者は多い。

お姫様が護衛がいるとはいえ街を歩けるのはここが平和だって証拠なのかもな。
あまり近付くとマズいかな…と思って、まじまじとは見た事がない。

エマの容姿は漫画で知ってるから遠くでも見つけられた。

でもイヴはほとんど遠目からも見た事がなかった。
騎士の仕事として外回りに行っているはずだけど、タイミングが合わない。

だからこのパレードでイヴを見る事になる。
それが俺の密かな楽しみの一つになっている。

一緒にパレードに向かう約束をしているから楽しみだねと話しながら学校に向かうために止めていた足を再び動かした。

入学式は名物みたいな、学園長の長い話を聞いて心の中で感動していた。
俺が感動しているのは話の内容ではなく、漫画でもあったシーンを追体験しているからだ。

隣に座っているリンくんは少し顔を引きつらせて引いていた。
学園長の話は苦手な人が多いって生前に聞いていた。

追体験もそうだが、校長の長話そのものを聞いた事がなかった。
俺は学校あるあるの一つとして、これが噂の…と思いながら聞いていた。

これが何回も続いたら、確かにうんざりするかもしれない…今は物珍しいだけで学園長の長話を楽しんでいた。

入学式が終わったらリンくんに「お前、あんなに真剣に聞いて凄いな」と言われた。
アンダーくんはほとんど寝ていたと大きな欠伸をしていた。

廊下を歩いている時、奥の方に人だかりが出来ていた。

隙間から少し覗いてみたら、人だかりの一人が「エマ様」と呼んでいた。
そういえば俺とエマは同じ歳だったな、王族が学園に通うだけで大変そうだな。

漫画では少しだけイヴの学園生活も描かれていたが、イヴも今のエマと同じだったな。

リンくん達に呼ばれて、俺はエマの横を通り過ぎて歩いていった。
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