少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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今すぐに駆け寄りたいのに、動かない足が憎くて憎くて堪らない。

でも、あの方の家は分かった…一番大きな屋敷だ…あそこにアイツもいるのか。

感覚がない手を握りしめる。
僕は何も準備をしないで来たわけではない。
家の中にいるアイツを消す方法を本で見た。

人間の本は魔術に頼らない方法が沢山書いてあった。

僕の家は魔力レベルが低い家庭だから、こうした人間の本は沢山ある。
やっぱり、神様は僕の味方なんだ…必ず聖騎士様を助けろと言われている気がする。

人間には、触れずに相手を不幸にする方法があるらしい。
それは、呪いと呼ばれているまじないだった。

正方形に切られた木に呪いたい相手を考えながら名前を書く。
そして自分の血を木に吸わせる。
最後に自分の髪を木に巻いて、呪いの人形は完成する。

腰に下げていた小型ナイフを手に取って、腕を切ると痛みと同時に血が流れてきた。
ポタポタと木に染み込ませた。
人間はこうして呪うんだろうけど、僕は人間ではなく魔導士だ…その呪いの効果もきっと増すだろう。

体が回復するまで少し掛かったが、やっと歩けるようになり…機会をずっと伺っていた。
窓を見るとアイツがいて、憎悪で顔が歪んだ。
見られたら仕掛けられない。

そしてやっとの事で木を置く事が出来た。
あの方はここから帰ってくるから、ここに置こう。
近くて見ていたら、あの方が帰ってきていた。

なんだろう、僕が置いたあの木から嫌な感じがする。
これって成功って…事なのかな。

僕にはよくわからないが、今出て自分が呪いに掛かるのは嫌だ。
ずっとどうなるのか見守っていたら、あの方が屋敷から出てきた。

そして僕の体液が染み込んだ木を掴んでいた。

すぐに消してしまったから残念な気持ちだったが、触れてくれた事が嬉しくて興奮した。

でもダメだな、あんなのじゃ絶対にバレてしまう。
もっと、あの方にバレない方法を考えないと…

そう思ってあの方の屋敷の前に立つと、足元に変なのがいた。
生き物なのか、でも見た事がない動物だ。

そうだ、もう一つ試したい呪いがあったのだと荷物を探る。
全て終わるまで貴族街から出る事が出来ないから、いろいろ持ってきていた。

生き物の命を使った呪いだ、こちらの方が効果あるのかもしれない。
黒いものを潰すと、手が汚れてしまった…でもそんな事を気にしている場合ではない。

屋敷の壁に生き物の血を塗って、ナイフで切り裂きながら名前を掘る。
これで屋敷の中にいるアイツは逃げ場がなくなる。

クスクス笑っていたら、足元がカサカサと音がした。
足元を見ると地面が真っ黒になっていた…こんなに黒かっただろうか。
不思議に思っていると、真っ暗な地面からびっしりと目が開いて僕を見ていた。

顔を青ざめると同時に、真っ黒いものは僕に向かって襲いかかってきた。

二つ目もダメだった、どうしてどうして? 僕の愛が足りないの?

あの方を誰よりも理解しているし、愛しているのになんで分かってくれないの?

あんな男、僕が殺してやる…そこに相応しいのはお前ではなく僕なんだ!

最後の呪いを使う時が来たようだ。

正直言って、今までのはちゃんと出来るかどうかの確認に過ぎない。
アイツを思い出すだけで、この人形を引きちぎりたい思いでいっぱいだ。

アイツの形をした人形、僕はその人形に今まで込めた呪いを全て使う事にした。

人形に自分の血を塗り込んだ、そして心臓部分には生き物の死骸を詰める…この場合はあの黒い生き物だ。
そしてアイツの髪の毛で人形の首を締める。

この髪の毛は手に入れるのも一苦労だった。
毎日あの方がゴミを出しているなんて考えるだけでも腹が立つけど、ゴミの中を漁ってやっと一本見つけた。
持って帰りたい気がするが、アイツのゴミかもしれないからやめた。

ナイフを手にすると、人形が小さく脈打っていた。
それを聞いて、握り潰したかったけど我慢した。

僕をこんな気持ちにさせたんだ、絶対に許さない…殺す殺す。

この人形の呪いは呪いたい相手とリンクする。
だから人形にした事は必ず相手に伝わる。

だからナイフで心臓を抉れば必ずアイツの心臓も触れずに止まらせる事が出来る。

やるなら顔を見てしたいなと思いながら屋敷を眺めていた。
アイツはやっぱり二番目の呪いでも平気な顔をしていた。

屋敷を丸呑みするように、黒い生き物が這ってたのに無害とか…本当に使えない。
でも、あの黒い生き物ってなんなんだろう。
僕を襲ったと思ったら何でもなかった。
でも、あれ以来沢山黒い生き物が見えるようになった。

変なの、でも何だか気分がいい…そして妙にあの男が腹立たしい。

残酷に殺したくてたまらなくなる。

そんな事を考えていたら、アイツが窓を開けていた。
呑気に背伸びしている顔をぐちゃぐちゃにしたい。
勿論、言葉通りのぐちゃぐちゃだよ。

ナイフをボタンで出来た目に当てる。
噴き出る血飛沫が見たい、僕の最大限の呪いだ。

人形の目にナイフを突き立てると、窓のところにいるアイツは片目を押さえて窓から離れた。
バレるとかそんな事、どうでも良かった。

笑いが止まらなくて、何度も何度も目を突き刺すと視界が赤く染まった。
僕から奪うからこうなるんだ!身の程を知れ!!

次はどうしてやろうかと思って、窓の方を見た。
そこにはアイツがいて、目を擦っていた。

あれ?慌ててるようには見えない、なんで…今まであんなに呪いが順調だったのに。
いや、そんな筈はない…だって人形はちゃんと僕が刺すと血が溢れて…

そう思って人形を見ると、ポタポタと血が落ちていた。

僕は自分の目に触れて、震えが止まらなくなった。

「僕の目、目…が、ない…なんで、なんでっっ!!!!??」

自分の目がないと分かると、目があった部分に激痛が走った。

ボタボタと血を流している。

そんな筈はない、この人形はアイツの姿をしているし…髪の毛だってアイツのもの。
たとえアイツのじゃなくても、僕のものなわけがない。

なんで、なんで…もう一度…今度はきっと大丈夫だ、きっと…

いつもなら怖くて出来ない事でも今の僕は判断が出来なくなっていた。

もう片方の目を潰すと、視界が真っ暗になって何も見えなくなっていた。

今、どうなっているんだろう…アイツは苦しんでいるのかな。
それを確認する目がもうなくて、人形が手から滑り落ちて何処にあるのかも分からない。

ナイフで振り下ろしても地面に突き刺さるだけだった。
もう、夜なのかな…だって目の前が真っ暗で何も見えない。

「こんなところにいたのか」

「あっ…その声は…」

その声は美しくて、僕を夢中にさせるあの方の声だ。
近くにいる感じがして手を差し伸ばす。
すると、手ではなく僕の頭を掴んでいた。
目のところに指を入れるから、酷い激痛がして手を離してほしくてあの方の腕を握る。

僕の頭から手が離れたが、すぐに僕の腕に衝撃が走り激痛に顔を歪ませた。

痛みがある方に触れると、そこにある筈の腕がなかった。

「あっ、が…が…」

「汚い手で誰が触っていいって言った?お前にはヘドロが一番似合ってる」

前が見えないから何を言っているのか分からない。
でも、前が見えないのは惜しいな…見えたらきっと美しい瞳に映る僕が見えたのに…

傷口から、なにかが押し付けられる激痛が感じて目の前にいるあの方に助けを求めた。
でも、その痛みは永遠のような長さを味わった。

気が狂いそうな意識の中「呪いを返してあげる」というあの方の声が聞こえた。
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