花鳥見聞録

木野もくば

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第九話 泉か海か湖か

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 ミヅハを探しているモクとルイは、ヨウのいる世界に来ていました。
 水神の正体が分かったため、出会った場所である泉に向かおうとしましたが、なぜかたどり着くことができません。

 途方とほうにくれた二人は、ヨウをたよることにしました。なぜなら、ヨウの息子が水神の姿に似ていたからです。

「あの子ども、たしかモナカって名前だったよな」

「……うん。モナカは、ミヅハと同じ髪色かみいろで同じ瞳の色をしていたね」

「やっぱり、水神と無関係じゃないよな」

「関係あると思う。ヨウが話を誤魔化ごまかさないで教えてくれるといいね」

「もうすぐヨウの家だ。ルイ、大丈夫か? もう少しの辛抱しんぼうだぞ」

「だ、大丈夫! 頭が痛くて目がまわるけど、今日はたおれたりしないようにガンバる」

 そのころ、ヨウの家では幼児の姿から十代後半の姿に成長していたモナカが、ちまちまとリンゴの皮をむいていました。
 すると、となりの部屋から、青白い顔をしたヨウがやってきました。体の調子が悪いのかフラフラと足取りがおぼつかない様子です。

「リンゴの皮むきに、どんだけ時間がかかるんだよ。モナカは本当にぶきっちょだな」

「ヨウ、うるさい。 ……よし、なんとかウサギができたぞ。これくらいの量で足りるか?」

「ああ、ありがとう。三人で食うには十分だよ」

「……三人ね。また、オレには見えない友達が来るんだな」

「そうだよ。モナカもよかったら一緒に話を聞くか? もしかしたら、お前の本当の親や自分の正体について知ることができるかもしれないぞ」

「……やめとく。オレの親は、ヨウだけでいい。まあ、本当の親がオレに会いたいと思うなら拒絶きょぜつもしないけどね」

「……そうか」

「それに自分は何があっても自分だし。過去より今が大事。これからもオレは、やりたいことに向かって迷わず突き進むだけさ。ヨウにヘタクソって言われ続けてもリンゴの皮をウサギの形にむきたいようにね」

 そう言いながらモナカは、リンゴのウサギをつまむとヨウに屈託くったくのない笑顔を向けた。

「ははは、すばらしい信念しんねんだ。さすが教育者を目指すだけあるな。がんばれよ」

「がんばるさー。さてと、ヨウのお客さんがくる前に、オレは今度の授業で使う教材でも買いに行くかな」

「明日が授業日だったか。それにしても勉強に来る子どもたちが増えてきて、この家だと少し手狭てぜまになってきたな」

「そうだな。いつかは、もっと大きい建物で授業したいな。まあ、細々と変えていくよ」

「ところでさ、お前って最近、子どもたちにトオノ先生って呼ばれてるよな? なんで?」

「……たぶん、ヨウが発端ほったんかな」

「へ? ボク何かしたっけ?」

「この家に子どもたちが勉強に来るたび、トーヌップ学校にようこそって、いつもヨウが言ってるだろ。それを、子どもたちがマネして言い出してさ」

「ああ! もしかして、子どもたちがトーヌップの発音が言いづらいとかでトオノになったとか?」

「当たり。たしかトーヌップって、別の世界の言葉で、意味は湖の丘だっけ?」

「そうそう。ミヅハがいた世界の言葉。この家は、湖の近くの丘の上に建ってるだろ。だからボクは、そう呼んだわけだ」

「ふーん。まあ、俺もモナカ先生よりトオノ先生の方がしっくりくるから、わりと気に入ってるよ。そう呼ばれるの」

「よかった、よかった。……ゴホゴホ」

 ヨウがつらそうに咳込せきこむ様子に、モナカが心配そうに声をかける。

「……もう、どうにもならないのか?」

「ああ。どんなものにも終わりがある」

「……そうか。無理するなよ。父さん」

「父さんか~。久しぶりに呼んでくれたな。いつも、そう呼んでくれたらうれしいのに」

「仕方がないだろ。ヨウの見た目が、もうオレより年下に見えるようになってきたんだから」

「……そうだな。たしかに周りから見たら変に思われるな」

「……じゃあ、そろそろ行ってくるよ。お友だちによろしくな」

「行ってらっしゃい。……あっ! なあ、モナカ。泉と海と湖だったら何が一番好き?」

「急に何だ? ……まあ、湖かな。この場所が好きだし」

「そうか、よかった」

「これ、何の質問?」

「んー。特に意味はないよ。モナカの父親は、やっぱりボクだよねって思いたいだけの質問」

「つまり、泉か海のどちらかがオレの……」

「待った! この質問の答えは取り消せません。モナカは湖を選びました」

「はいはい。オレの父親はヨウですよ。ヨシヨシ」

「ううっ。父親としての威厳いげんが……」





屈託くったくのない笑顔)
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