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第3部:旋風 - 国民支持のうねり
第122話 全国の議員とのネットワーク
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相川結衣の当選から、まだ一か月も経っていなかった。
しかし、その短い期間のあいだに、坂本健人の議員会館にはこれまで見たことのない“種類のメール”が届き始めていた。
最初は一通。それは北海道の小さな町議会からだった。
『坂本議員の活動、拝見しています。
地方は国政と違い、もっと地べたの悩みと向き合っています。
いつか意見交換ができれば嬉しいです』
次の日には、九州の町議会議員からも届いた。
『相川さん当選おめでとうございます。
私は子育て支援をやっています。
あなたの“小さな声を拾う政治”という言葉に心が動きました』
さらに次の日には、関西、中部、東北──
日本中から、地方議員たちの名刺画像付きのメールやDMが雪のように届いた。
「健人さん、これ……全部、地方議員の方々からです」
朝、真田がプリントアウトした紙の束を持って現れる。
その厚みは、もはや小冊子のようだった。
田島もページをめくりながら驚く。
「すげえ量じゃん。なんだよこれ、全国から来てんのか?」
健人はページを一枚一枚読みながら、じっくりと目を細めた。
「……俺たちが、どっかの誰かの背中を押してたってことか」
そう呟いた瞬間、胸が熱くなった。
ネットのフォロワーや街頭での市民の反応とは違う。
“政治の現場”で孤独に戦っている人たちからの声──。
その重さは、想像以上のものだった。
◆
田島が言った。
「健人。さあ、これはもうやるしかねぇよ」
「何を?」
「全国つなげる場!」
言った瞬間、真田が慌ててパソコンに向かう。
「オンラインミーティングならすぐ設定できます。
政治団体の公式アカウントから募集をかければ……参加したい議員が集まります」
健人は頷いた。
「やろう。孤独で戦っているのは俺たちだけじゃない。
みんなの声を一つにまとめられたら……大きな力になる」
その日の夜。
政治団体サイトに《地方議員ネットワーク会議》参加者募集の案内を公開すると──
翌日にはもう、メールが50通近く届いていた。
「全国からですよ……北海道から沖縄まで。これ、すごいことです」
真田が驚くのも無理はなかった。
地方議会はそれぞれ独立した小さな世界だ。
その小さな点が、一つの線として繋がり始めたのだ。
◆
第一回オンライン会議の日。
健人、真田、田島は議員会館の一室にパソコンを置き、緊張しながら待っていた。
開始5分前──画面に続々と参加者が入室してくる。
《北海道・根雪町議会》
《宮城県・潮見市議会》
《埼玉県・ひだまり区議会》
《奈良県・柳葉町議会》
《沖縄県・北浜村議会》
30名以上──
これがすべて日本のどこかで選ばれた議員たちだと思うと、健人の胸は震えた。
「こんなに……」
呟く健人の肩を、田島が叩いた。
「ほら行くぞ。主催者なんだろ、お前が」
健人は深呼吸をし、カメラの前に姿勢を正した。
「今日は、お忙しい中ありがとうございます。
無所属の衆議院議員、坂本健人です」
その瞬間、画面の向こうから拍手が起きた。
オンライン越しでも、その温度ははっきりと伝わってきた。
最初に話したのは、北海道の議員だった。
「子どもの貧困が深刻です。役所の予算も人手も足りない。
国の制度をもっと柔軟にしてほしいんです」
次に話したのは、四国の女性議員。
「高齢者が増え、買い物難民が増えています。
“地方の声”は国にはなかなか届きません」
続々と、全国から声が上がる。
「議会が古い体質で困っている」
「若手が孤立している」
「改革派は目をつけられる」
「デジタル化が全く進まない」
その言葉一つひとつに、健人は深く頷いた。
──こんなにいる。
自分と同じように、壁にぶつかっている仲間が。
◆
会議が終わると、参加議員たちが自発的にグループチャットを作った。
以来、そこでは毎日のように情報交換が行われるようになった。
『こんな条例案を作りました』
『国政と連携できないか?』
『坂本さん、この資料を国会で使えますか?』
健人のスマホは、未読メッセージ数が常に三桁になった。
だが苦労よりも嬉しさが勝った。
──一人ではない。
国を変えたいと願う人は、こんなにもいる。
◆
参加議員が50名を超えたころ、ついにメディアが動いた。
『無所属議員・坂本健人、地方議員ネットワークを形成』
『霞が関だけではない“改革の芽”』
『地方から国を変える潮流』
ニュース番組やネット記事で取り上げられ、その勢いは国会内にも広まった。
国民革新党の若手議員が廊下で声をかけてきた。
「坂本くん、最近ずいぶんなネットワーク広げてるらしいじゃないか。
……ほどほどにしとけよ? 上が警戒してる」
健人は微笑んで返した。
「地方の声は、この国の根幹です。
それを聞くのは政治家として当然のことだと思っています」
廊下の空気が一瞬だけ止まり、若手議員は苦笑して去っていった。
◆
その夜。
健人は議員会館の机で、ネットワーク参加者の名簿を眺めていた。
北海道。
東北。
関東。
中部。
関西。
中国・四国。
九州。
沖縄。
画面に並んだ名前たちは、まるで日本列島そのものだった。
「……ここからだ」
健人は静かに呟いた。
“国を変える”という大きな目標。
そのためには、中央だけを見ていては何も動かない。
地方の現場、地方で汗を流す議員たち
その声こそが国を動かす力になる。
胸の奥で、強い確信が灯った。
“国の形は、中央で作られるんじゃない。
全国の町で、日々、必死に戦う人たちが形作る。
だから――仲間は、中央ではなく全国に広がっていく”
しかし、その短い期間のあいだに、坂本健人の議員会館にはこれまで見たことのない“種類のメール”が届き始めていた。
最初は一通。それは北海道の小さな町議会からだった。
『坂本議員の活動、拝見しています。
地方は国政と違い、もっと地べたの悩みと向き合っています。
いつか意見交換ができれば嬉しいです』
次の日には、九州の町議会議員からも届いた。
『相川さん当選おめでとうございます。
私は子育て支援をやっています。
あなたの“小さな声を拾う政治”という言葉に心が動きました』
さらに次の日には、関西、中部、東北──
日本中から、地方議員たちの名刺画像付きのメールやDMが雪のように届いた。
「健人さん、これ……全部、地方議員の方々からです」
朝、真田がプリントアウトした紙の束を持って現れる。
その厚みは、もはや小冊子のようだった。
田島もページをめくりながら驚く。
「すげえ量じゃん。なんだよこれ、全国から来てんのか?」
健人はページを一枚一枚読みながら、じっくりと目を細めた。
「……俺たちが、どっかの誰かの背中を押してたってことか」
そう呟いた瞬間、胸が熱くなった。
ネットのフォロワーや街頭での市民の反応とは違う。
“政治の現場”で孤独に戦っている人たちからの声──。
その重さは、想像以上のものだった。
◆
田島が言った。
「健人。さあ、これはもうやるしかねぇよ」
「何を?」
「全国つなげる場!」
言った瞬間、真田が慌ててパソコンに向かう。
「オンラインミーティングならすぐ設定できます。
政治団体の公式アカウントから募集をかければ……参加したい議員が集まります」
健人は頷いた。
「やろう。孤独で戦っているのは俺たちだけじゃない。
みんなの声を一つにまとめられたら……大きな力になる」
その日の夜。
政治団体サイトに《地方議員ネットワーク会議》参加者募集の案内を公開すると──
翌日にはもう、メールが50通近く届いていた。
「全国からですよ……北海道から沖縄まで。これ、すごいことです」
真田が驚くのも無理はなかった。
地方議会はそれぞれ独立した小さな世界だ。
その小さな点が、一つの線として繋がり始めたのだ。
◆
第一回オンライン会議の日。
健人、真田、田島は議員会館の一室にパソコンを置き、緊張しながら待っていた。
開始5分前──画面に続々と参加者が入室してくる。
《北海道・根雪町議会》
《宮城県・潮見市議会》
《埼玉県・ひだまり区議会》
《奈良県・柳葉町議会》
《沖縄県・北浜村議会》
30名以上──
これがすべて日本のどこかで選ばれた議員たちだと思うと、健人の胸は震えた。
「こんなに……」
呟く健人の肩を、田島が叩いた。
「ほら行くぞ。主催者なんだろ、お前が」
健人は深呼吸をし、カメラの前に姿勢を正した。
「今日は、お忙しい中ありがとうございます。
無所属の衆議院議員、坂本健人です」
その瞬間、画面の向こうから拍手が起きた。
オンライン越しでも、その温度ははっきりと伝わってきた。
最初に話したのは、北海道の議員だった。
「子どもの貧困が深刻です。役所の予算も人手も足りない。
国の制度をもっと柔軟にしてほしいんです」
次に話したのは、四国の女性議員。
「高齢者が増え、買い物難民が増えています。
“地方の声”は国にはなかなか届きません」
続々と、全国から声が上がる。
「議会が古い体質で困っている」
「若手が孤立している」
「改革派は目をつけられる」
「デジタル化が全く進まない」
その言葉一つひとつに、健人は深く頷いた。
──こんなにいる。
自分と同じように、壁にぶつかっている仲間が。
◆
会議が終わると、参加議員たちが自発的にグループチャットを作った。
以来、そこでは毎日のように情報交換が行われるようになった。
『こんな条例案を作りました』
『国政と連携できないか?』
『坂本さん、この資料を国会で使えますか?』
健人のスマホは、未読メッセージ数が常に三桁になった。
だが苦労よりも嬉しさが勝った。
──一人ではない。
国を変えたいと願う人は、こんなにもいる。
◆
参加議員が50名を超えたころ、ついにメディアが動いた。
『無所属議員・坂本健人、地方議員ネットワークを形成』
『霞が関だけではない“改革の芽”』
『地方から国を変える潮流』
ニュース番組やネット記事で取り上げられ、その勢いは国会内にも広まった。
国民革新党の若手議員が廊下で声をかけてきた。
「坂本くん、最近ずいぶんなネットワーク広げてるらしいじゃないか。
……ほどほどにしとけよ? 上が警戒してる」
健人は微笑んで返した。
「地方の声は、この国の根幹です。
それを聞くのは政治家として当然のことだと思っています」
廊下の空気が一瞬だけ止まり、若手議員は苦笑して去っていった。
◆
その夜。
健人は議員会館の机で、ネットワーク参加者の名簿を眺めていた。
北海道。
東北。
関東。
中部。
関西。
中国・四国。
九州。
沖縄。
画面に並んだ名前たちは、まるで日本列島そのものだった。
「……ここからだ」
健人は静かに呟いた。
“国を変える”という大きな目標。
そのためには、中央だけを見ていては何も動かない。
地方の現場、地方で汗を流す議員たち
その声こそが国を動かす力になる。
胸の奥で、強い確信が灯った。
“国の形は、中央で作られるんじゃない。
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