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第4部:政権奪取 - 総理就任
第165話 握手と笑顔の裏の駆け引き
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与党内部の反乱が報じられた翌日。
国民革新党の党本部は、何事もなかったかのように静かだった。
いや、正確には――静かに装っていた。
健人は党本部のエントランスをくぐった瞬間、その空気の違いを肌で感じ取った。
昨日まで向けられていた露骨な警戒心は消え、代わりに貼り付けられたような笑顔が並んでいる。
「坂本先生、おはようございます」
「いやあ、昨日は大変でしたね」
「お疲れでしょう?」
次々に差し出される手。
柔らかな声。
穏やかな表情。
――だが、どれも“本心”ではない。
健人は一人ひとりと丁寧に握手を交わしながら、相手の目を見た。
そこには歓迎ではなく、計算があった。
警戒でもなく、評価でもなく、値踏みだ。
(昨日は反乱。今日は笑顔。
……切り替えが早すぎる)
政治の世界では珍しくもない。
だが、ここまで露骨だと逆に分かりやすかった。
反対派の幹部の一人が、肩を叩くように近づいてくる。
「坂本くん。昨日は本当に大変だったな」
健人は微笑んで頭を下げる。
「お騒がせしてしまって、申し訳ありません」
「いやいや。若いというのは、それだけで力だ。党も君に期待しているよ」
言葉は柔らかい。
だが“若い”という言葉には、明確な含みがあった。
――経験不足。
――まだ制御できる。
――暴走させないよう見ている。
健人はその含意を理解した上で、あえて真正面から返す。
「期待に応えられるよう、全力でやります。
ただ――信念だけは、曲げるつもりはありません」
一瞬、相手の笑顔が固まった。
ほんの一瞬。
だが健人は見逃さなかった。
廊下の奥では、城戸幹事長が立っていた。
周囲には記者の姿も多い。
健人が近づくと、城戸は一歩前に出て、しっかりとした握手を求めてきた。
「坂本。君の影響力は、想像していた以上だ」
その言葉は、純粋な評価であり、同時に警戒でもあった。
「党内がこれほど揺れるとは思っていなかった」
健人は正直に答える。
「僕もです。ただ――
国民の声がそれだけ溜まっていた、ということだと思います」
城戸は一瞬だけ目を細め、それからゆっくりとうなずいた。
「君は、本当に危うい男だな。
だが、今の党にとっては……必要な存在でもある」
“必要”という言葉の裏には、
“使えるかどうか”という判断が透けて見えた。
会場では記者団がカメラを構え、
黒崎副総理が健人の隣に立つ。
「党として、一丸となって前へ進む。
今はそれが何より重要だ」
フラッシュが焚かれる。
二人は並んで笑顔を作る。
だが、カメラが切れた瞬間、黒崎は声を落とした。
「勢いだけでは、政権は持たん」
健人は一拍置いてから答えた。
「だからこそ、勢いを“制度”に変えようとしています」
黒崎は短く息を吐き、苦笑する。
「……君は、本当に遠慮がないな」
それは嫌味とも、感心とも取れる声音だった。
別の幹部は若手議員たちを前に健人を称賛する。
「坂本先生は、新しい風だ。党も変わらなければならない」
だが、その裏で別の場所では、こう囁かれている。
「理想論が過ぎる」
「支持率が落ちたら、切り捨てればいい」
「使えるうちに使う」
政治とは、そういう世界だ。
廊下の端で真田は腕を組み、全体を冷静に見渡していた。
誰がどの議員と話し、誰が距離を取っているのか。
誰が健人を見て、誰が見ていないのか。
「……綺麗に分かれてますね」
田島が小声で言う。
「表では称賛。裏では警戒。
全員、腹の中が真っ黒だ」
真田は淡々と答えた。
「ですが、想定内です。
むしろ、これだけ動いているということは……
坂本さんが“無視できない存在”になった証拠でもあります」
健人はその言葉を聞きながら、再び握手を求められる。
若手議員の一人が、少し興奮気味に言った。
「坂本さん、正直言って……
表で褒めて、裏で潰す。
それがこの世界なんですか?」
健人は即答しなかった。
少しだけ考え、それから静かに言う。
「だからこそ、僕は表でも裏でも、同じことを言う」
若手議員は驚いたように目を見開く。
「それで……生き残れるんですか?」
健人は、はっきりとうなずいた。
「生き残るためにやってるんじゃない。
変えるために、ここにいる」
会合の終盤。
幹部と主要議員が集められ、形式的な円陣が組まれた。
「党一丸となって、未来へ!」
掛け声が響く。
拍手が起きる。
だが健人には分かっていた。
この円の中で、誰一人として“同じ未来”を見てはいない。
誰もが、それぞれの計算を胸に抱いている。
(それでもいい)
健人は拳を握る。
(この中で、信念を持って立ち続ける)
笑顔の裏に刃があるなら、
正面から受け止める覚悟は、もうできている。
党内の駆け引きは、ここからが本番だ。
”握手は友好の証じゃない。
それは、互いの力を測る行為だ。
笑顔の裏に刃があるなら、
俺は正面から受け止める。
駆け引きの中でも、
信念だけは折らない“
国民革新党の党本部は、何事もなかったかのように静かだった。
いや、正確には――静かに装っていた。
健人は党本部のエントランスをくぐった瞬間、その空気の違いを肌で感じ取った。
昨日まで向けられていた露骨な警戒心は消え、代わりに貼り付けられたような笑顔が並んでいる。
「坂本先生、おはようございます」
「いやあ、昨日は大変でしたね」
「お疲れでしょう?」
次々に差し出される手。
柔らかな声。
穏やかな表情。
――だが、どれも“本心”ではない。
健人は一人ひとりと丁寧に握手を交わしながら、相手の目を見た。
そこには歓迎ではなく、計算があった。
警戒でもなく、評価でもなく、値踏みだ。
(昨日は反乱。今日は笑顔。
……切り替えが早すぎる)
政治の世界では珍しくもない。
だが、ここまで露骨だと逆に分かりやすかった。
反対派の幹部の一人が、肩を叩くように近づいてくる。
「坂本くん。昨日は本当に大変だったな」
健人は微笑んで頭を下げる。
「お騒がせしてしまって、申し訳ありません」
「いやいや。若いというのは、それだけで力だ。党も君に期待しているよ」
言葉は柔らかい。
だが“若い”という言葉には、明確な含みがあった。
――経験不足。
――まだ制御できる。
――暴走させないよう見ている。
健人はその含意を理解した上で、あえて真正面から返す。
「期待に応えられるよう、全力でやります。
ただ――信念だけは、曲げるつもりはありません」
一瞬、相手の笑顔が固まった。
ほんの一瞬。
だが健人は見逃さなかった。
廊下の奥では、城戸幹事長が立っていた。
周囲には記者の姿も多い。
健人が近づくと、城戸は一歩前に出て、しっかりとした握手を求めてきた。
「坂本。君の影響力は、想像していた以上だ」
その言葉は、純粋な評価であり、同時に警戒でもあった。
「党内がこれほど揺れるとは思っていなかった」
健人は正直に答える。
「僕もです。ただ――
国民の声がそれだけ溜まっていた、ということだと思います」
城戸は一瞬だけ目を細め、それからゆっくりとうなずいた。
「君は、本当に危うい男だな。
だが、今の党にとっては……必要な存在でもある」
“必要”という言葉の裏には、
“使えるかどうか”という判断が透けて見えた。
会場では記者団がカメラを構え、
黒崎副総理が健人の隣に立つ。
「党として、一丸となって前へ進む。
今はそれが何より重要だ」
フラッシュが焚かれる。
二人は並んで笑顔を作る。
だが、カメラが切れた瞬間、黒崎は声を落とした。
「勢いだけでは、政権は持たん」
健人は一拍置いてから答えた。
「だからこそ、勢いを“制度”に変えようとしています」
黒崎は短く息を吐き、苦笑する。
「……君は、本当に遠慮がないな」
それは嫌味とも、感心とも取れる声音だった。
別の幹部は若手議員たちを前に健人を称賛する。
「坂本先生は、新しい風だ。党も変わらなければならない」
だが、その裏で別の場所では、こう囁かれている。
「理想論が過ぎる」
「支持率が落ちたら、切り捨てればいい」
「使えるうちに使う」
政治とは、そういう世界だ。
廊下の端で真田は腕を組み、全体を冷静に見渡していた。
誰がどの議員と話し、誰が距離を取っているのか。
誰が健人を見て、誰が見ていないのか。
「……綺麗に分かれてますね」
田島が小声で言う。
「表では称賛。裏では警戒。
全員、腹の中が真っ黒だ」
真田は淡々と答えた。
「ですが、想定内です。
むしろ、これだけ動いているということは……
坂本さんが“無視できない存在”になった証拠でもあります」
健人はその言葉を聞きながら、再び握手を求められる。
若手議員の一人が、少し興奮気味に言った。
「坂本さん、正直言って……
表で褒めて、裏で潰す。
それがこの世界なんですか?」
健人は即答しなかった。
少しだけ考え、それから静かに言う。
「だからこそ、僕は表でも裏でも、同じことを言う」
若手議員は驚いたように目を見開く。
「それで……生き残れるんですか?」
健人は、はっきりとうなずいた。
「生き残るためにやってるんじゃない。
変えるために、ここにいる」
会合の終盤。
幹部と主要議員が集められ、形式的な円陣が組まれた。
「党一丸となって、未来へ!」
掛け声が響く。
拍手が起きる。
だが健人には分かっていた。
この円の中で、誰一人として“同じ未来”を見てはいない。
誰もが、それぞれの計算を胸に抱いている。
(それでもいい)
健人は拳を握る。
(この中で、信念を持って立ち続ける)
笑顔の裏に刃があるなら、
正面から受け止める覚悟は、もうできている。
党内の駆け引きは、ここからが本番だ。
”握手は友好の証じゃない。
それは、互いの力を測る行為だ。
笑顔の裏に刃があるなら、
俺は正面から受け止める。
駆け引きの中でも、
信念だけは折らない“
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