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第4部:政権奪取 - 総理就任
第164話 与党内部の反乱
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公開討論会の翌朝、党本部の空気は明らかに変わっていた。
廊下ですれ違う議員たちの視線は鋭く、どこか落ち着きがない。電話口で声を潜める者、控室に集まって小声で議論する者。誰もが同じ話題を避けているようで、しかし頭の中ではそればかりが渦巻いている。
――坂本健人。
その名前が、今や党内で最も重く、最も危うい存在になっていた。
討論会での評価は想定を超えていた。
世論調査、ネットの反応、報道番組での論調。どれもが「坂本健人」という存在を、単なる話題の新人ではなく、「現実的な選択肢」として扱い始めている。
それが、党の均衡を揺るがしていた。
午前中、ある派閥の非公式会合が開かれた。
ベテラン議員が集まる閉ざされた会議室で、怒号に近い声が飛ぶ。
「新人だぞ? 冗談じゃない」
「総理は人気投票じゃない」
「党の歴史を何だと思ってる」
机を叩く音が響き、誰かが深いため息をついた。
一方、別のフロアでは若手・中堅議員たちが集まり、まったく逆の議論を交わしていた。
「討論、見ましたか?」
「正直、あの答え方は今までにない」
「国民の目線で話してた」
彼らの多くは、健人と同じように派閥の後ろ盾を持たず、地盤も弱い議員たちだった。
だからこそ分かる。今、国民が何を見ているのかを。
その二つの流れは、互いに交わることなく、しかし確実に党を引き裂こうとしていた。
城戸幹事長は、その中心で静かに状況を見つめていた。
表向きは何も語らず、記者からの質問にも曖昧な言葉を返すだけ。しかし、水面下では各派閥の動きを一つ一つ拾い上げ、頭の中で地図を描いていた。
(割れるな……だが、抑え込めば爆発する)
その頃、健人は議員会館の自室で資料に目を通していた。
だが、文字はほとんど頭に入ってこない。
真田が静かにドアを閉め、言った。
「党内、かなり荒れています」
健人は顔を上げた。
真田の表情はいつになく硬い。
「想像以上です。反対派も、支持派も、引く気はありません」
「……俺のせい、ですよね」
健人の言葉は、重く部屋に落ちた。
「違います」
真田は即座に否定した。
「これは、党が長年避けてきた問題が表に出ただけです。あなたは引き金に過ぎません」
そこへ田島が入ってきた。
「なあ健人、もう分かってるだろ。向こうは“なかったこと”にする気だ」
「……」
「でも、若手はもう引かねえ。俺たちもだ」
健人は椅子にもたれ、天井を見上げた。
胸の奥に、重たいものが沈んでいる。
「俺がここに来たせいで、党が壊れるなら……それって、本末転倒じゃないか」
しばらく沈黙が流れた。
真田が、低い声で言った。
「壊れるのではありません。変わるか、変われないかです」
午後になると、党内向けのリーク記事がいくつも出始めた。
“経験不足”
“理想論者”
“危うい改革派”
意図は明白だった。
坂本健人を「不安要素」に仕立て上げる。
しかし、それは逆効果でもあった。
若手議員たちは、その露骨さに反発を強め、非公式の勉強会を立ち上げた。テーマは「次の国のかたち」。そこに、健人の名前はまだ出てこない。だが、誰もが彼を意識していた。
夜。
健人は一人、議員会館の窓辺に立っていた。外には党本部の灯りが見える。
(これは……俺個人の問題じゃない)
無所属で国会に立ち、党に入り、今や党そのものを揺さぶっている。
望んだわけじゃない。だが、逃げるわけにもいかない。
田島が、静かに言った。
「健人。もう後戻りはできねえよ」
「……分かってる」
「だったら、腹くくれ」
健人は小さく息を吸い、吐いた。
「これは反乱じゃない。国民の声が、党に届いただけだ」
その言葉は、誰に言うでもなく、しかし確かな覚悟を伴っていた。
党は今、試されている。
守るために変わらないのか。
変わるために、揺れるのか。
健人は、胸元のバッジに触れた。
――ここからが、本当の勝負だ。
”組織は安定を求める。
だが、安定だけを守る組織は、
いつか国民を見失う。
これは反乱じゃない。
変わろうとする意思が、
表に現れただけだ“
廊下ですれ違う議員たちの視線は鋭く、どこか落ち着きがない。電話口で声を潜める者、控室に集まって小声で議論する者。誰もが同じ話題を避けているようで、しかし頭の中ではそればかりが渦巻いている。
――坂本健人。
その名前が、今や党内で最も重く、最も危うい存在になっていた。
討論会での評価は想定を超えていた。
世論調査、ネットの反応、報道番組での論調。どれもが「坂本健人」という存在を、単なる話題の新人ではなく、「現実的な選択肢」として扱い始めている。
それが、党の均衡を揺るがしていた。
午前中、ある派閥の非公式会合が開かれた。
ベテラン議員が集まる閉ざされた会議室で、怒号に近い声が飛ぶ。
「新人だぞ? 冗談じゃない」
「総理は人気投票じゃない」
「党の歴史を何だと思ってる」
机を叩く音が響き、誰かが深いため息をついた。
一方、別のフロアでは若手・中堅議員たちが集まり、まったく逆の議論を交わしていた。
「討論、見ましたか?」
「正直、あの答え方は今までにない」
「国民の目線で話してた」
彼らの多くは、健人と同じように派閥の後ろ盾を持たず、地盤も弱い議員たちだった。
だからこそ分かる。今、国民が何を見ているのかを。
その二つの流れは、互いに交わることなく、しかし確実に党を引き裂こうとしていた。
城戸幹事長は、その中心で静かに状況を見つめていた。
表向きは何も語らず、記者からの質問にも曖昧な言葉を返すだけ。しかし、水面下では各派閥の動きを一つ一つ拾い上げ、頭の中で地図を描いていた。
(割れるな……だが、抑え込めば爆発する)
その頃、健人は議員会館の自室で資料に目を通していた。
だが、文字はほとんど頭に入ってこない。
真田が静かにドアを閉め、言った。
「党内、かなり荒れています」
健人は顔を上げた。
真田の表情はいつになく硬い。
「想像以上です。反対派も、支持派も、引く気はありません」
「……俺のせい、ですよね」
健人の言葉は、重く部屋に落ちた。
「違います」
真田は即座に否定した。
「これは、党が長年避けてきた問題が表に出ただけです。あなたは引き金に過ぎません」
そこへ田島が入ってきた。
「なあ健人、もう分かってるだろ。向こうは“なかったこと”にする気だ」
「……」
「でも、若手はもう引かねえ。俺たちもだ」
健人は椅子にもたれ、天井を見上げた。
胸の奥に、重たいものが沈んでいる。
「俺がここに来たせいで、党が壊れるなら……それって、本末転倒じゃないか」
しばらく沈黙が流れた。
真田が、低い声で言った。
「壊れるのではありません。変わるか、変われないかです」
午後になると、党内向けのリーク記事がいくつも出始めた。
“経験不足”
“理想論者”
“危うい改革派”
意図は明白だった。
坂本健人を「不安要素」に仕立て上げる。
しかし、それは逆効果でもあった。
若手議員たちは、その露骨さに反発を強め、非公式の勉強会を立ち上げた。テーマは「次の国のかたち」。そこに、健人の名前はまだ出てこない。だが、誰もが彼を意識していた。
夜。
健人は一人、議員会館の窓辺に立っていた。外には党本部の灯りが見える。
(これは……俺個人の問題じゃない)
無所属で国会に立ち、党に入り、今や党そのものを揺さぶっている。
望んだわけじゃない。だが、逃げるわけにもいかない。
田島が、静かに言った。
「健人。もう後戻りはできねえよ」
「……分かってる」
「だったら、腹くくれ」
健人は小さく息を吸い、吐いた。
「これは反乱じゃない。国民の声が、党に届いただけだ」
その言葉は、誰に言うでもなく、しかし確かな覚悟を伴っていた。
党は今、試されている。
守るために変わらないのか。
変わるために、揺れるのか。
健人は、胸元のバッジに触れた。
――ここからが、本当の勝負だ。
”組織は安定を求める。
だが、安定だけを守る組織は、
いつか国民を見失う。
これは反乱じゃない。
変わろうとする意思が、
表に現れただけだ“
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