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裏切り者
裏切り者①
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元騎士団のメンバーが廃城に居着いてから、アデリーはほんの少し気持ちが楽になっていた。
元騎士団の面々も手に職を持っていないので、雑用をこなしており、それはアデリーと立場的には差がなかった。もちろん元騎士団なのだから何も出来ないアデリーとは違い、戦いになったら本領発揮するのだろうし、狩りに行けば弓や槍を使いこなしたりもする。大工に興味がある人はカルロの元に入り浸り手伝いをし、ベニートの鍛冶を手伝う者もいる。皆が出来ないから安心なのではなく、いくつになっても学び職を得ようとしていいのだということが心強かった。
「結局、アデリーは何になりたいのよ」
ロセと二人で寝る準備をしているときだった。悪意があるわけではないが、ロセの言葉がいつものようにアデリーを悩ませる。
「料理が一番性に合っていると思うのだけど、ここではベッラが居るからね……」
「人数が増えればベッラだけじゃ切り盛り出来ないんじゃない?」
それはそうなのだが、今のところ元騎士団一行が突然やってきた日以外、ベッラがすべての料理を一人で賄っている。未だにアデリーはパン焼き専門だ。
「そんなに増えていくかしらね。既に部屋はほぼ埋まっているし、人が来るというなら、その人達も職を持っているのが普通だから──」
「まぁね。家族単位で暮らしていた人なら、そこに一人は料理をする人間もいるわね」
そんな事を二人で話していると、扉をノックする音がした。ロセが先に気がついて立ち上がり外に声が届くように問いかける。
「誰なの?」
「ロセ? 私よ。ベッラよ」
二人は顔を見合わせてから、ロセが扉の閂を外して開けた。雪が先に吹き込んできて、その後自分の肩を抱いたベッラが滑り込んできた。
「はぁ、ここの地域ってほんと雪が降るわね。寒いわ」
肩に付いた雪を払い、服の雪も払い落としながら身震いしてみせた。
「もう寝る時間よ、何か用?」
ロセが顔をしかめたが、ベッラがそんな顔しないでと笑って肩を叩いた。
「今夜からここに参加させてもらえないかしら。この部屋で寝起きしたいの」
「え、だってトニと同室になったって喜んでいたじゃない。もう喧嘩別れ?」
ロセがまたトゲのある言い方をしたのでアデリーがハラハラして聞いていたが、ベッラはまるで気にしていない。
「まさか! 愛し合っているわ。そうじゃないのよ。ほら、元騎士団のメンバーが居るじゃない? だからトニも冬の間は宿の方に泊まりたいんですって」
「ああ、そういうこと。酒盛りに参加したいって訳ね」
「昔の馴染みが集まっていればそうなるわ。それなら私は若い娘たちのチームに入れてもらいたいなってことでここに来たの」
アデリーも立ち上がって話に加わった。
「それは大歓迎よ。ね、ロセ?」
「待ちなさいよ。ベッドはどうするの? 二つしかないのに」
今は右の壁にはアデリーのベッドが、左の壁にはロセのベッドがつけてある。その間にはかなり狭いが通路があった。
「そこの通路をベッドにするわ。明日トニとカルロに作ってもらうの」
「狭いじゃない! ムリムリ。棺桶じゃあるまいし」
アデリーはじっとその通路を眺めていて閃いた。
「わかったわ! 枠を取り払って特大のベッドを一つ作ればいいのよ。そうしたら皆平等になるし、それなりのスペースを確保出来るじゃない」
ロセは右眉をクイッと上げて「正気なの? 狭くなるわよ?」と不満そうだ。しかし、ベッラが手を叩いて「名案だわ! それがいいわね」と、喜んだのでロセはそれ以上何も言わなかった。
「三人で寝れば暖かいわ。それに薪も節約出来るもの」
アデリーもベッラ同様、素直に喜んだが、ロセはため息を吐いて言う。
「百歩譲ってそうするとしてもよ? 今夜はどうするのよ。戻るの?」
「アデリーのベッドに潜り込もうかしら」
フフと笑うベッラにロセが自分のベッドの藁布団を捲って叩いた。
「こっちに寝なさい。体格的に考えてベッラが一人で寝るべきだわ、明らかに。私達が二人で寝るのが正しいでしょ」
ロセの意外な提案にベッラもアデリーも内心驚いた。あのロセが自分のベッドを譲るなんて、少し前なら考えられないことだ。ベッラがロセを抱き締めて「優しい! あなたってば優しくなったわね」と、感激していた。
「冷静な判断を下しただけよ。ちょっと、苦しいってば」
嫌がられてベッラはロセを離したが、気持ちは高揚したままらしい。
「ねぇ、そうしたら明日の夜は皆に内緒のパーティーをしない? 小さなパイを三人分焼くから、夜に食べましょうよ」
「それならここの住人全員分焼いたほうがいいのではないでしょうか。私達だけっていうのは後ろめたいですし」
ベッラがアデリーの反論に「あら、その通りね。私ってば興奮しすぎてちょっぴり良くない発想をしてしまったみたい」と、微笑んで肯定した。
「それなら、私がパイを焼くわよ」
ロセがパイを焼く役を買って出たことで、二人の視線を集めて「なによ。私だってパイくらい焼けるのよ?」と、唇を尖らせた。
その後は三人で何のパイにするか話が盛り上がり、いつもより就寝するのが遅れてしまった。それでもアデリーはワクワクしてなかなか寝付くことが出来なかった。
元騎士団の面々も手に職を持っていないので、雑用をこなしており、それはアデリーと立場的には差がなかった。もちろん元騎士団なのだから何も出来ないアデリーとは違い、戦いになったら本領発揮するのだろうし、狩りに行けば弓や槍を使いこなしたりもする。大工に興味がある人はカルロの元に入り浸り手伝いをし、ベニートの鍛冶を手伝う者もいる。皆が出来ないから安心なのではなく、いくつになっても学び職を得ようとしていいのだということが心強かった。
「結局、アデリーは何になりたいのよ」
ロセと二人で寝る準備をしているときだった。悪意があるわけではないが、ロセの言葉がいつものようにアデリーを悩ませる。
「料理が一番性に合っていると思うのだけど、ここではベッラが居るからね……」
「人数が増えればベッラだけじゃ切り盛り出来ないんじゃない?」
それはそうなのだが、今のところ元騎士団一行が突然やってきた日以外、ベッラがすべての料理を一人で賄っている。未だにアデリーはパン焼き専門だ。
「そんなに増えていくかしらね。既に部屋はほぼ埋まっているし、人が来るというなら、その人達も職を持っているのが普通だから──」
「まぁね。家族単位で暮らしていた人なら、そこに一人は料理をする人間もいるわね」
そんな事を二人で話していると、扉をノックする音がした。ロセが先に気がついて立ち上がり外に声が届くように問いかける。
「誰なの?」
「ロセ? 私よ。ベッラよ」
二人は顔を見合わせてから、ロセが扉の閂を外して開けた。雪が先に吹き込んできて、その後自分の肩を抱いたベッラが滑り込んできた。
「はぁ、ここの地域ってほんと雪が降るわね。寒いわ」
肩に付いた雪を払い、服の雪も払い落としながら身震いしてみせた。
「もう寝る時間よ、何か用?」
ロセが顔をしかめたが、ベッラがそんな顔しないでと笑って肩を叩いた。
「今夜からここに参加させてもらえないかしら。この部屋で寝起きしたいの」
「え、だってトニと同室になったって喜んでいたじゃない。もう喧嘩別れ?」
ロセがまたトゲのある言い方をしたのでアデリーがハラハラして聞いていたが、ベッラはまるで気にしていない。
「まさか! 愛し合っているわ。そうじゃないのよ。ほら、元騎士団のメンバーが居るじゃない? だからトニも冬の間は宿の方に泊まりたいんですって」
「ああ、そういうこと。酒盛りに参加したいって訳ね」
「昔の馴染みが集まっていればそうなるわ。それなら私は若い娘たちのチームに入れてもらいたいなってことでここに来たの」
アデリーも立ち上がって話に加わった。
「それは大歓迎よ。ね、ロセ?」
「待ちなさいよ。ベッドはどうするの? 二つしかないのに」
今は右の壁にはアデリーのベッドが、左の壁にはロセのベッドがつけてある。その間にはかなり狭いが通路があった。
「そこの通路をベッドにするわ。明日トニとカルロに作ってもらうの」
「狭いじゃない! ムリムリ。棺桶じゃあるまいし」
アデリーはじっとその通路を眺めていて閃いた。
「わかったわ! 枠を取り払って特大のベッドを一つ作ればいいのよ。そうしたら皆平等になるし、それなりのスペースを確保出来るじゃない」
ロセは右眉をクイッと上げて「正気なの? 狭くなるわよ?」と不満そうだ。しかし、ベッラが手を叩いて「名案だわ! それがいいわね」と、喜んだのでロセはそれ以上何も言わなかった。
「三人で寝れば暖かいわ。それに薪も節約出来るもの」
アデリーもベッラ同様、素直に喜んだが、ロセはため息を吐いて言う。
「百歩譲ってそうするとしてもよ? 今夜はどうするのよ。戻るの?」
「アデリーのベッドに潜り込もうかしら」
フフと笑うベッラにロセが自分のベッドの藁布団を捲って叩いた。
「こっちに寝なさい。体格的に考えてベッラが一人で寝るべきだわ、明らかに。私達が二人で寝るのが正しいでしょ」
ロセの意外な提案にベッラもアデリーも内心驚いた。あのロセが自分のベッドを譲るなんて、少し前なら考えられないことだ。ベッラがロセを抱き締めて「優しい! あなたってば優しくなったわね」と、感激していた。
「冷静な判断を下しただけよ。ちょっと、苦しいってば」
嫌がられてベッラはロセを離したが、気持ちは高揚したままらしい。
「ねぇ、そうしたら明日の夜は皆に内緒のパーティーをしない? 小さなパイを三人分焼くから、夜に食べましょうよ」
「それならここの住人全員分焼いたほうがいいのではないでしょうか。私達だけっていうのは後ろめたいですし」
ベッラがアデリーの反論に「あら、その通りね。私ってば興奮しすぎてちょっぴり良くない発想をしてしまったみたい」と、微笑んで肯定した。
「それなら、私がパイを焼くわよ」
ロセがパイを焼く役を買って出たことで、二人の視線を集めて「なによ。私だってパイくらい焼けるのよ?」と、唇を尖らせた。
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