幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな

文字の大きさ
39 / 54
第五部

第37話 4月30日っていう日について

しおりを挟む
 その日は、いつも通りの快晴で。夏に近づきつつある、少しだけ蒸しっている空気を持った気圧が襲っていた。

 前触れとしては浅すぎた。
 しかしやって来る日はいずれ来る。人間、生きてこの星の中で過ごしている限り、時間が過ぎれば過ぎるほど、1年はあっという間に過ぎ去っていく。

 それを証明しているかのようだ。

 僕こと、和泉いずみみなとが高校生になってもうすぐ1ヶ月。その1ヶ月を迎えるために、毎年の如くはやって来る。



 4月30日──祝日の次の日も、そのまま休みならいいのに。というか寧ろ、その日が2月29日の『うるう年』みたいなそんな日ならいいのに。



「……世界って残酷だと思わないか? どうして4月には30日っていう日が存在してるんだ? あまりにも2月が不公平だ。何で2月には28日までしかないのに、4月はそうじゃないんだ? ──どうしてだと思う?」

「知らねぇ。ってか、そんなこと知ってどうすんだお前」

「無論、学校を休む」

「随分とくだらねぇ理由だな」

 くだらないとは何だ。人が真剣になって学校登校を拒否しようと策を講じているというのに! 僕からすれば一大事を避ける決定的手段なのだ。仮病を使いたい、そう思える唯一の日だ。

「はぁぁあ……。何を真剣に悩んでるのかと思ってみれば。んなくだらないことで欠席日数を稼ぐ気か? 進路に響くぞー」

「……心配してくれるのか?」

「アホ。無駄なことで欠席日数を増やすなって言ってるんだ!」

 なるほどな。
 つまり、僕自身のことを心配してくれているわけではないということか。
 少しは人間の心配もしてほしいものだがな。

「……それで? 何でいきなりそんなこと言い始めたわけ?」

 パリっと、伊月は机の上に豪快に広げられたポテチを食べながら訊ねる。
 他人ひとの話を聞く気が果たしてあるのか、こいつ?

「知ってるだろ……ぐらい」

「そりゃあな。伊達に3年間も同じ中学で過ごしてないし」

 僕と伊月は中学校からの親友だ。付き合いもそこそこ長いこともあって、互いの意思もわかり合えるようになっている。

 まぁだからといって、意見が一致するということは決して無いわけで……、

「別にそこまで気負う必要なんてなくないか? 単純に、お前からの贈り物だったらすぐに受け取りそうな感じするけど?」

「んな単純じゃないんだよ……。伊月、カーストって知ってるか? ああいうのはな──」

「あぁぁぁぁぁああ────!! もういい! そのくだりはもうしなくていい!」

 急に髪をむしり出したかと思えば発狂して。……まったく、忙しい奴だ。

「……わかったか。とにかく僕は、あの学校中が盛り上がるような行事ごとに巻き込まれたくないんだよ」

「だからって休むことはねぇだろ。対策のしようなんて幾らでもあるんだしさ」

「そう……だけど」

 伊月の言うことは尤もだ。
 わざわざ仮病を使って将来への架け橋を1本折ってしまうリスクよりかは、もっと別な対策を行使すればいい。

 例えば『頭が痛い』とか『眠いので』とかの理由を使って、保健室に逃げ込んだりとかな。
 ウチの学校の保健医は気前が良く、生徒との解け合いも早い。

 他の先生からも高い評判を得ているし、こんな常套句みたいな嘘八百なことを言っても、喜んでベッドを貸してもらえることだろう。

「はぁぁあ……。ヤダな、この時期って。何で連休に入る前にこんなに苦労しなきゃいけないんだ……」

「そう思ってんの、お前だけだと思うけどな。他の奴らなんて『何を渡すべきか』とかで右往左往してそうだけど。寧ろ、来る気満々って感じだったしな!」

「いいんじゃないのか……本人様は去年同様みたいだけど」

「また断りか?」

「おそらくな。お気の毒だけど、本人の意思決定が優先だし仕方ないだろ」

 ゴールデンウィークに入る前のひと行事としてカウントされる、僕が避けたい恒例行事。

 学校の3大行事──『体育祭』『合唱コンクール』『卒業式』。その中の1つに加えられるほどの勢いだったものが、まさか高校でも行われることになろうとは……。

 さすがの人気力というか、信仰度というか。

 4月30日。


 その日は──我が学校の女神様『真城ましろ美桜みお』の誕生日なのだ。


 あまり知られてはいないが簡単に考えればわかること。
 美桜を数字化すると『30みお』となる。なんて上手いこと考えられた名前だよな、本当。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

処理中です...