幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな

文字の大きさ
40 / 54
第五部

第38話 女神様はプレゼントを受け取らない

しおりを挟む
 去年、中学生だった頃にもあった学校の行事ごとの1つだった。
 本人はまるで乗る気が無かったが、周りには見えていない。そのお陰で、その日は毎年、男女問わず無数のプレゼントが用意されていた。

 が、美桜はそれらを受け取ったことは1度もない。
 ……1つ例外があるとするなら、僕のプレゼントだけは受け取ってくれたっけ。


 中学の頃はお互いに疎遠気味だったこともあり、中々話す機会もなかったのだが、生徒の大群をまいてきたかのか疲弊した様子の美桜を、放課後の教室で待っていた。

 確かその年に渡したのは、鞄用のキーホルダーだったはずだ。
 手軽なものだったし、僕もみなと同じように断られると腹を括って渡したが……反応は予想の斜め上を行き、美桜はその頃には滅多に見せなかった微笑みを浮かべて「大切にします」と、そう言ってくれたんだったか。


「ってか、オレらと同じ中学から来てる奴っていないはずだろ? いくら真城さんが中学と変わらないほど……いや、それ以上にモテているっていう現状があるにしても、そんな個人情報、どっから流れてきてるんだろうな」

「本当にな。末恐ろしいよ」

「あの“誰にでも塩対応”な真城さんが自分から暴露するはずもねぇと思うしなぁ……。おっと、ここに例外がいたか!」

「誰が例外だよ」

 けれど、あながち伊月の言うことも当たっている。

 周りの人達、つまりは美桜に尊敬と慈悲を込めることの出来る信者ではなく、ただの幼馴染という関係でしかない僕のプレゼントだけを受け取った。そんなの──普通に考えれば例外の何物でもないのだ。

 その証拠に、今は僕にだけ素の状態を曝け出す彼女の言動そのものこそ、例外だと突きつけられる唯一無二の証拠になるに違いない。

「それにしたって、何で真城さんはお前以外の誕プレ受け取らないんだろうな。オレだったら、貰うけど」

「浮気者だな」

「浮気してねぇから! 個人的意見の1つと言え!」

 どうだか。それが吉と出るか凶と出るか──今後待ち受けるであろうお前の誕生日を待つとしようか。
 運動神経が良いこともあって、結構人気高いからな伊月は。

「……受け取らないんじゃない。んだと」

「どゆこと?」

「単純な話だ。伊月、お前は見知らぬ他人から渡されたプレゼントをどう思う?」

「どうって……そりゃあ嬉しいけど」

「そうか。じゃあそれが、かもしれなかったら?」

「げっ……!!」

 あくまでもこれは例え。まぁ本人の意思と変わるものはないが。
 だが、伊月にはわかったようだ。
 知り合いから貰うプレゼントとか、ファンからのプレゼントとも違う。美桜にとっては全てが『他人からのプレゼント』。
 そんなの、得体の知れないものの何物もない。

「……ん? 待て。何でお前がそんなこと知ってんだ?」

「ゔっ……」

 や、やらかしてしまった。
 伊月があまりにも侮蔑するものだからつい反論という意味で、深層内部にまで首を突っ込ませる結果になってしまった。

 とはいえ、隠す理由は特別ない。口止めもされていないし、真実を知られたところで知ったという『過去形』である以上、罵ることは不可能だ。

 だったら、話してしまうのが身のためだろうか?

「安心しろ。今がまだ教室だから話しにくいってのもあるだろうし、昼休みまでこの話は保留にしておいてやるよ」

「……伊月」

 伊月が最近、よく頼もしいと思えるのは幻覚か? それとも錯覚か?
 どちらにせよ、今の言葉で確信は出来た。

「……いや。別に大したことでもないし、今話すよ」



 ✻



 さかのぼること──今から2年前。丁度、美桜の誕生日の日のことだった。

 その日、プレゼントを渡すために放課後まで教室で美桜を待っていた僕は、無事に現れてくれた主役にプレゼントを渡した。

 息は上がり、呼吸は乱れ、運動神経が人並み以上とはいえどかなり消耗したらしい。
 そんな中でも「大切にします」と、逆にこちらが気分を良くするような笑みを向けられ、僕は必然的に顔を逸らしてしまった。

 美桜はプレゼントの箱を開け、小さなリス型のキーホルダーを取り出して暫くそれを天井に掲げて眺めていた。まるで、創造物を拝むかのようにして。

 多少恥ずかしい気分になり、僕はチラッと視線だけを美桜に向けるがすぐまた逸らした。

 気恥ずかしかったのだ。
 単純なことだろう。

 幼馴染でも容姿端麗な才女とまで言われ、学校のみなからは『女神様』と崇められ、そんな彼女が僕のあげたただのキーホルダーを喜んでくれている。

 そんな光景だけで、他の奴らから敵意を買うことは必然だろうな……誰もいなくてよかった。
 教卓の中に隠れる……とか。そんなこともないみたいだし。

 すると、美桜が訊ねてきた。

「これを渡すために、待っててくれたんですか?」

「……別に。暇だったから居ただけ。渡せたのは次いでだ」

「……そう、なのですか」

 少し俯いて、残念そうな表情を浮かべる美桜。
 まずい……何か変なことでも言ってしまったのだろうか? 皆目見当もつかない。
 そして今度は、僕が美桜に訊ね返した。

「そういうお前は、プレゼント貰わなかったのか? いっぱい渡してる人いたみたいだけど」

「……お気持ちは嬉しいです。けれど、受け取れません」

「何で?」

「だって──得体が知れませんから」

 と、僕の疑問に即答してきた。

「……つまり、他人を信用出来ないってことか?」

「そんなところです。考えてもみてください。いきなり見知らぬ他人から『受け取ってください』と汗だくな形相で言われれば、誰だって恐怖に陥りますよ……っ!」

「よっぽど急いでたんだな、その人」

 そう思わずにはいられなかった。
 決して同情ではないが、美桜の言うことにも一理あるなとそう思ったからだ。



 ✻



 そして──時は現在へと戻る。

「……なに? お前、中学の頃って真城さんと疎遠気味じゃなかったっけ?」

「まぁそうだな。基本的には。でも会えば挨拶ぐらいはしてたぞ、その頃でもな」

「何だそりゃ……。あっ、てか思ったけど、お前プレゼントなんて律儀に渡してたんだな! しかも、わざわざ人目を掻い潜るようなことまでしたさー!」

「うっさい!」

 ニヤニヤと、徐々に口角が歪んでいく親友に僕は少々腹が立った。
 やっぱ、話さなきゃよかったな。

“後悔先に立たず”──一体いくらこの言葉の真意に気づかされなきゃならないのやら。学習能力が無いな、僕も。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...