幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな

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第五部

第37話 4月30日っていう日について

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 その日は、いつも通りの快晴で。夏に近づきつつある、少しだけ蒸しっている空気を持った気圧が襲っていた。

 前触れとしては浅すぎた。
 しかしやって来る日はいずれ来る。人間、生きてこの星の中で過ごしている限り、時間が過ぎれば過ぎるほど、1年はあっという間に過ぎ去っていく。

 それを証明しているかのようだ。

 僕こと、和泉いずみみなとが高校生になってもうすぐ1ヶ月。その1ヶ月を迎えるために、毎年の如くはやって来る。



 4月30日──祝日の次の日も、そのまま休みならいいのに。というか寧ろ、その日が2月29日の『うるう年』みたいなそんな日ならいいのに。



「……世界って残酷だと思わないか? どうして4月には30日っていう日が存在してるんだ? あまりにも2月が不公平だ。何で2月には28日までしかないのに、4月はそうじゃないんだ? ──どうしてだと思う?」

「知らねぇ。ってか、そんなこと知ってどうすんだお前」

「無論、学校を休む」

「随分とくだらねぇ理由だな」

 くだらないとは何だ。人が真剣になって学校登校を拒否しようと策を講じているというのに! 僕からすれば一大事を避ける決定的手段なのだ。仮病を使いたい、そう思える唯一の日だ。

「はぁぁあ……。何を真剣に悩んでるのかと思ってみれば。んなくだらないことで欠席日数を稼ぐ気か? 進路に響くぞー」

「……心配してくれるのか?」

「アホ。無駄なことで欠席日数を増やすなって言ってるんだ!」

 なるほどな。
 つまり、僕自身のことを心配してくれているわけではないということか。
 少しは人間の心配もしてほしいものだがな。

「……それで? 何でいきなりそんなこと言い始めたわけ?」

 パリっと、伊月は机の上に豪快に広げられたポテチを食べながら訊ねる。
 他人ひとの話を聞く気が果たしてあるのか、こいつ?

「知ってるだろ……ぐらい」

「そりゃあな。伊達に3年間も同じ中学で過ごしてないし」

 僕と伊月は中学校からの親友だ。付き合いもそこそこ長いこともあって、互いの意思もわかり合えるようになっている。

 まぁだからといって、意見が一致するということは決して無いわけで……、

「別にそこまで気負う必要なんてなくないか? 単純に、お前からの贈り物だったらすぐに受け取りそうな感じするけど?」

「んな単純じゃないんだよ……。伊月、カーストって知ってるか? ああいうのはな──」

「あぁぁぁぁぁああ────!! もういい! そのくだりはもうしなくていい!」

 急に髪をむしり出したかと思えば発狂して。……まったく、忙しい奴だ。

「……わかったか。とにかく僕は、あの学校中が盛り上がるような行事ごとに巻き込まれたくないんだよ」

「だからって休むことはねぇだろ。対策のしようなんて幾らでもあるんだしさ」

「そう……だけど」

 伊月の言うことは尤もだ。
 わざわざ仮病を使って将来への架け橋を1本折ってしまうリスクよりかは、もっと別な対策を行使すればいい。

 例えば『頭が痛い』とか『眠いので』とかの理由を使って、保健室に逃げ込んだりとかな。
 ウチの学校の保健医は気前が良く、生徒との解け合いも早い。

 他の先生からも高い評判を得ているし、こんな常套句みたいな嘘八百なことを言っても、喜んでベッドを貸してもらえることだろう。

「はぁぁあ……。ヤダな、この時期って。何で連休に入る前にこんなに苦労しなきゃいけないんだ……」

「そう思ってんの、お前だけだと思うけどな。他の奴らなんて『何を渡すべきか』とかで右往左往してそうだけど。寧ろ、来る気満々って感じだったしな!」

「いいんじゃないのか……本人様は去年同様みたいだけど」

「また断りか?」

「おそらくな。お気の毒だけど、本人の意思決定が優先だし仕方ないだろ」

 ゴールデンウィークに入る前のひと行事としてカウントされる、僕が避けたい恒例行事。

 学校の3大行事──『体育祭』『合唱コンクール』『卒業式』。その中の1つに加えられるほどの勢いだったものが、まさか高校でも行われることになろうとは……。

 さすがの人気力というか、信仰度というか。

 4月30日。


 その日は──我が学校の女神様『真城ましろ美桜みお』の誕生日なのだ。


 あまり知られてはいないが簡単に考えればわかること。
 美桜を数字化すると『30みお』となる。なんて上手いこと考えられた名前だよな、本当。
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