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第五部
第44話 ぼっちは作戦決行の下準備をする
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夕暮れどきというにはまだ早い午後3時半過ぎ。
僕は放課後の、ほぼ無人となった教室から離れて図書室で本を読んでいた。
さっさと帰りたいところではあるが、今日ばかりはそうはいかない。
本日までの『課題』を攻略しないことには、僕はあいつに怒られる羽目になってしまう。何という理不尽。
そういう訳で、今はこの図書室で職員室に呼ばれている幼馴染こと『真城美桜』を待っている。
優等生というのは本当に忙しいことだ。
“特に用事がない”と言うだけで、先生達の雑務に付き合わされる。
出来ることなら職員室にはお説教や用事ごとのときしか寄りたくはない。事実、大多数の高校生が考えうることだろう。
美桜はどうだろうかわからないが、反抗するような態度も様子も見せないため、あながち嫌というわけではないのかもしれない。
学級委員とかでもないというのに、本当に断れない人間だなと関心する。
クラス編成タイプの学校なら、学級委員というのを決めるだろう。大体が、クラスの人気者がやらされるようなアレだ。
一見すると──行事ごとに率先して動き、クラスのためにみんなを引っ張る委員だと思うが、昔読んだ少女漫画にこんなことが描いてあった。
『学級委員というのは別名──雑務係だ』と。
かなりはしょりはしたが、大体こういう感じのことが描いてあった。
言葉のインパクトが強すぎて、この歳(もうすぐ16歳)になっても忘れられない。
美桜が学級委員という立場ではないが、入学してから僅か1ヶ月にして、教師陣から絶大な信用を寄せられている。それも──学校の看板みたいな位置付けで。
本当に、優等生という生き物は苦労するな。同情はしないが。
「……よし」
パタン、と読んでいた本を閉じる。
読んでいたのは最近流行りのSF青春もの。SNSでもかなりの好評を寄せているようで、普段は手を伸ばすことのないレーベルだが、どうしても気になりつい手を伸ばした。
伸ばしてしまったからにはちゃんと読む。
それに本は結構高いからな。買ってしまった以上、読んでみるのが最短ルートだと僕は思う。
バイトしているとは言っても、少量な小遣い稼ぎとそう変わらない。
おそらくだが、親からお小遣い貰う方がいいと思う。
……僕に、そんなお粗末なこと出来ないけど。
「……そろそろ帰ってくる頃だな」
もちろん家にではない、この図書室にだ。
普段はあまり美桜と“一緒に帰る”という自殺に近い行為に積極的になれないのだが、今日ばっかりは退っ引きならない事情があるのだ。
それは──週末のイベントに向けての『下調べ』でもある。
すると、図書委員も今日は休み。利用しているのは僕だけというぼっちの憩いの空間に、躊躇いもせずに扉を開ける音がする。
そこには、肩に鞄を下げ、走ってきたのか少し息を荒らげる美桜がいた。
ほらな。優等生なんて、所詮は仮面。本来の美桜は、多少の校則を破ってでも約束のために駆けてくれる普通の高校生なのだ。
「おお、随分遅かったな」
「す、すみません……お待たせしてしまって」
「いや、謝る必要はないけど。何かあったのか?」
「いえ。……ただ、古典の先生の手伝いをしてからというもの、あれもこれもと雑務を押しつけられてしまって」
「おぉ……」
やはり、僕に優等生という看板は向いていない。
たかが文武両道な彼女だからといっても、こいつは先生達のアシストじゃない。普通の高校生──真城美桜なのだから。
せめて僕だけは『味方』でいたい。余計なお世話かもしれないが。
「では、帰りましょう!」
「やけに気合い十分だな。ただ帰るだけだぞ?」
「珍しいことに、今日は湊君の方から『一緒に帰りたい』とお願いされましたからね。それに合わせて私の心も急上昇です!」
言葉の使い方が色々と間違っている気がするが……まぁいいか。この1週間は。
さて、続きを話そう。
普段はただでさえ目立つ容姿をしている美桜と帰ることを強く拒絶する僕だが、どうして今日に限って僕の方から名乗り出たのか。
──時間は、図書室に行くまでの通路でのこと。
遡ること、今から30分ほど前のこと。
僕は放課後の、ほぼ無人となった教室から離れて図書室で本を読んでいた。
さっさと帰りたいところではあるが、今日ばかりはそうはいかない。
本日までの『課題』を攻略しないことには、僕はあいつに怒られる羽目になってしまう。何という理不尽。
そういう訳で、今はこの図書室で職員室に呼ばれている幼馴染こと『真城美桜』を待っている。
優等生というのは本当に忙しいことだ。
“特に用事がない”と言うだけで、先生達の雑務に付き合わされる。
出来ることなら職員室にはお説教や用事ごとのときしか寄りたくはない。事実、大多数の高校生が考えうることだろう。
美桜はどうだろうかわからないが、反抗するような態度も様子も見せないため、あながち嫌というわけではないのかもしれない。
学級委員とかでもないというのに、本当に断れない人間だなと関心する。
クラス編成タイプの学校なら、学級委員というのを決めるだろう。大体が、クラスの人気者がやらされるようなアレだ。
一見すると──行事ごとに率先して動き、クラスのためにみんなを引っ張る委員だと思うが、昔読んだ少女漫画にこんなことが描いてあった。
『学級委員というのは別名──雑務係だ』と。
かなりはしょりはしたが、大体こういう感じのことが描いてあった。
言葉のインパクトが強すぎて、この歳(もうすぐ16歳)になっても忘れられない。
美桜が学級委員という立場ではないが、入学してから僅か1ヶ月にして、教師陣から絶大な信用を寄せられている。それも──学校の看板みたいな位置付けで。
本当に、優等生という生き物は苦労するな。同情はしないが。
「……よし」
パタン、と読んでいた本を閉じる。
読んでいたのは最近流行りのSF青春もの。SNSでもかなりの好評を寄せているようで、普段は手を伸ばすことのないレーベルだが、どうしても気になりつい手を伸ばした。
伸ばしてしまったからにはちゃんと読む。
それに本は結構高いからな。買ってしまった以上、読んでみるのが最短ルートだと僕は思う。
バイトしているとは言っても、少量な小遣い稼ぎとそう変わらない。
おそらくだが、親からお小遣い貰う方がいいと思う。
……僕に、そんなお粗末なこと出来ないけど。
「……そろそろ帰ってくる頃だな」
もちろん家にではない、この図書室にだ。
普段はあまり美桜と“一緒に帰る”という自殺に近い行為に積極的になれないのだが、今日ばっかりは退っ引きならない事情があるのだ。
それは──週末のイベントに向けての『下調べ』でもある。
すると、図書委員も今日は休み。利用しているのは僕だけというぼっちの憩いの空間に、躊躇いもせずに扉を開ける音がする。
そこには、肩に鞄を下げ、走ってきたのか少し息を荒らげる美桜がいた。
ほらな。優等生なんて、所詮は仮面。本来の美桜は、多少の校則を破ってでも約束のために駆けてくれる普通の高校生なのだ。
「おお、随分遅かったな」
「す、すみません……お待たせしてしまって」
「いや、謝る必要はないけど。何かあったのか?」
「いえ。……ただ、古典の先生の手伝いをしてからというもの、あれもこれもと雑務を押しつけられてしまって」
「おぉ……」
やはり、僕に優等生という看板は向いていない。
たかが文武両道な彼女だからといっても、こいつは先生達のアシストじゃない。普通の高校生──真城美桜なのだから。
せめて僕だけは『味方』でいたい。余計なお世話かもしれないが。
「では、帰りましょう!」
「やけに気合い十分だな。ただ帰るだけだぞ?」
「珍しいことに、今日は湊君の方から『一緒に帰りたい』とお願いされましたからね。それに合わせて私の心も急上昇です!」
言葉の使い方が色々と間違っている気がするが……まぁいいか。この1週間は。
さて、続きを話そう。
普段はただでさえ目立つ容姿をしている美桜と帰ることを強く拒絶する僕だが、どうして今日に限って僕の方から名乗り出たのか。
──時間は、図書室に行くまでの通路でのこと。
遡ること、今から30分ほど前のこと。
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