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初恋、やり直し
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エリアスはオレリアンを応接間に通して両親を呼ぶと、仕方なくコンスタンスも同席させた。
ずっと拒み続けてはきたものの、今はまだコンスタンスはオレリアンの妻であり、妻に対する権利は夫の方に分がある。
いつまでもこうして拒否するだけではいけないと、公爵側もそれをわかってはいたのだ。
公爵夫妻とエリアスを前に、オレリアンは
「どうか私に2ヶ月だけ時間をいただきたい」
と頭を下げた。
騎士団に長期の休暇を申し入れ、侯爵領へ赴く…、そこにコンスタンスを伴いたいと言うのだ。
侯爵領は、結婚以来1年近く、コンスタンスが暮らしていた場所である。
記憶はなくとも馴染んだ地であれば過ごしやすいだろうから、そこで夫婦として再出発したいのだと。
当然のごとく、公爵夫妻も兄エリアスも断固拒否した。
そもそも記憶のないコンスタンスと夫婦をやり直す必要は無いと。
彼女はまだ幼い少女同然なのだから。
「確かに夫婦と言うのには語弊があります。
私はコンスタンスに妻としての役目を果たして欲しいわけではありませんから。
ただ、コンスタンスが記憶を取り戻すまで…、いや、年相応に成長する過程を、側で、保護者として見守らせていただきたいのです。
侯爵領で一緒に過ごし、それでもやはり彼女が実家に戻りたいと言うなら、その時は必ずお返し致します。
どうか、結婚以来酷い夫であった私に償いをさせてください」
オレリアンは真摯に訴えた。
この1年、いくら王命での政略結婚とはいえ、妻を領地に放置したまま歩み寄る努力もしなかった。
それを今、激しく後悔している。
記憶は戻らないならそれでいい。
寧ろ、戻らない方がいいかもしれない。
ただ、今の彼女を、守らせて欲しいのだ。
そんなオレリアンを、ルーデル公爵は冷たく睨んだ。
「2ヶ月経ったらどうだと言うのだ。
実家に戻さない限り、結局は王都のあの邸に戻って来るのだろう?
その時はまたコニーを領地に残すつもりか?」
「いいえ。もちろん王都に伴うつもりです」
「それこそ言語道断だ。
父として、コニーをあんな家に戻すわけにはいかない」
長期休暇で領地に戻ると言っても、オレリアンは騎士団を辞めるわけではない。
休暇を終えて王都に戻ってくれば、あの邸には義母のカレンがいるのだ。
元伯爵夫人の義母があの邸を仕切っている限り、コンスタンスが平穏に暮らせるとは思えない。
例え領地で2人が穏やかな時を共有してきたとしても、王都に戻った途端以前と同じ事が起きるのではないか。
それにカレンはコンスタンスの記憶喪失の事実を知らない。
ヒース侯爵邸に滞在していた数日間、ルーデル公爵家の者がガードしてカレンをコンスタンスに近づけなかったからだ。
知ったらあの女のこと。
公爵家やオレリアンの弱みを握ったとばかりに振る舞うかもしれない。
しかし公爵の心配をよそに、オレリアンは静かに首を横に振った。
「王都の西に邸を借りました。
義母はそこに住まわせます」
「…隠居させるということか?
あの女が、大人しく従うのか?」
「今の当主は私です。
必ず従わせます」
オレリアンは表情を引き締め、力強く公爵を見つめた。
だが公爵はスッと目を逸らし、娘の方へ目を向けた。
コンスタンスは心配そうに父と夫を交互に見つめている。
父はそんな娘を見てフッと表情を緩めると、
「コニーはやらない…。
コニーを見守るのは父である私の務めだ…」
と呟いた。
「義父上、それは、」
「コニーは楽しいはずの少女時代をお妃教育に費やし、その挙句、見知らぬ男に嫁がされ、そして、その男に傷つけられた。
この子が7歳以降の記憶を失くしたのは神が与えてくれた時間なのだと思う。
きっと神が、少女時代からやり直すようにと、この子に時間をくださったのだ。
そのやり直しの時間に、そなたは必要ない」
公爵のキッパリとした物言いに、オレリアンは唇を噛んだ。
たしかに、幼い少女でしかないコンスタンスに、夫など必要無いのだ。
だがそこで突然、それまで黙って聞いていたコンスタンスが立ち上がった。
「お父様!
私、旦那様の領地に行きたいわ!」
そう言って。
ずっと拒み続けてはきたものの、今はまだコンスタンスはオレリアンの妻であり、妻に対する権利は夫の方に分がある。
いつまでもこうして拒否するだけではいけないと、公爵側もそれをわかってはいたのだ。
公爵夫妻とエリアスを前に、オレリアンは
「どうか私に2ヶ月だけ時間をいただきたい」
と頭を下げた。
騎士団に長期の休暇を申し入れ、侯爵領へ赴く…、そこにコンスタンスを伴いたいと言うのだ。
侯爵領は、結婚以来1年近く、コンスタンスが暮らしていた場所である。
記憶はなくとも馴染んだ地であれば過ごしやすいだろうから、そこで夫婦として再出発したいのだと。
当然のごとく、公爵夫妻も兄エリアスも断固拒否した。
そもそも記憶のないコンスタンスと夫婦をやり直す必要は無いと。
彼女はまだ幼い少女同然なのだから。
「確かに夫婦と言うのには語弊があります。
私はコンスタンスに妻としての役目を果たして欲しいわけではありませんから。
ただ、コンスタンスが記憶を取り戻すまで…、いや、年相応に成長する過程を、側で、保護者として見守らせていただきたいのです。
侯爵領で一緒に過ごし、それでもやはり彼女が実家に戻りたいと言うなら、その時は必ずお返し致します。
どうか、結婚以来酷い夫であった私に償いをさせてください」
オレリアンは真摯に訴えた。
この1年、いくら王命での政略結婚とはいえ、妻を領地に放置したまま歩み寄る努力もしなかった。
それを今、激しく後悔している。
記憶は戻らないならそれでいい。
寧ろ、戻らない方がいいかもしれない。
ただ、今の彼女を、守らせて欲しいのだ。
そんなオレリアンを、ルーデル公爵は冷たく睨んだ。
「2ヶ月経ったらどうだと言うのだ。
実家に戻さない限り、結局は王都のあの邸に戻って来るのだろう?
その時はまたコニーを領地に残すつもりか?」
「いいえ。もちろん王都に伴うつもりです」
「それこそ言語道断だ。
父として、コニーをあんな家に戻すわけにはいかない」
長期休暇で領地に戻ると言っても、オレリアンは騎士団を辞めるわけではない。
休暇を終えて王都に戻ってくれば、あの邸には義母のカレンがいるのだ。
元伯爵夫人の義母があの邸を仕切っている限り、コンスタンスが平穏に暮らせるとは思えない。
例え領地で2人が穏やかな時を共有してきたとしても、王都に戻った途端以前と同じ事が起きるのではないか。
それにカレンはコンスタンスの記憶喪失の事実を知らない。
ヒース侯爵邸に滞在していた数日間、ルーデル公爵家の者がガードしてカレンをコンスタンスに近づけなかったからだ。
知ったらあの女のこと。
公爵家やオレリアンの弱みを握ったとばかりに振る舞うかもしれない。
しかし公爵の心配をよそに、オレリアンは静かに首を横に振った。
「王都の西に邸を借りました。
義母はそこに住まわせます」
「…隠居させるということか?
あの女が、大人しく従うのか?」
「今の当主は私です。
必ず従わせます」
オレリアンは表情を引き締め、力強く公爵を見つめた。
だが公爵はスッと目を逸らし、娘の方へ目を向けた。
コンスタンスは心配そうに父と夫を交互に見つめている。
父はそんな娘を見てフッと表情を緩めると、
「コニーはやらない…。
コニーを見守るのは父である私の務めだ…」
と呟いた。
「義父上、それは、」
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この子が7歳以降の記憶を失くしたのは神が与えてくれた時間なのだと思う。
きっと神が、少女時代からやり直すようにと、この子に時間をくださったのだ。
そのやり直しの時間に、そなたは必要ない」
公爵のキッパリとした物言いに、オレリアンは唇を噛んだ。
たしかに、幼い少女でしかないコンスタンスに、夫など必要無いのだ。
だがそこで突然、それまで黙って聞いていたコンスタンスが立ち上がった。
「お父様!
私、旦那様の領地に行きたいわ!」
そう言って。
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