7歳の侯爵夫人

凛江

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16歳、やり直し

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『体調が戻ったので、少し静養したらこちらからお伺いしたいと思います』

コンスタンスは手紙を書き、丁重に、王妃の見舞いを断った。

それを受けて、王妃はあらためて半月後のお茶会に彼女を招待してきた。

「半月後ね…。準備には十分だわ」


その日から、コンスタンスは肌や髪の手入れを入念にするようになった。

肌にいいものを食べ、よく寝て、軽い運動もするようになった。

この2ヶ月以上お洒落もせず、着の身着のままで邸に引きこもっていた令嬢とは別人のようである。

王妃や王太子に会うなら、落ち込んで惨めな女に見られたくないと思ったのだ。

今のコンスタンスは、婚約解消の時どんなにフィリップが哀しみ、悩んでいたかなんて知らない。

彼のことだから、おそらく悩み苦しんだのであろうことは容易に想像できるが、それでも、王太子妃になるはずだった自分を側妃に望むなど、冗談じゃないと思う。

隣国から嫁いできた王女に対しても失礼だ。

「お茶会には完璧な淑女として参加しますわ。
そして、幸せな侯爵夫人を演じて参ります。
それが、私にとっても殿下にとっても、ひいては国にとっても、一番いい終幕だと思うの」

「それでこそコニーだ!」

兄エリアスは妹に拍手を贈った。

本来、コンスタンスは打たれ強く前向きな少女である。

長年のお妃教育で押さえ込まれてきた弊害で感情に乏しく見えるが、元々喜怒哀楽もはっきり表す子供だった。

前を向き始めた妹にかつての妹を重ね、エリアスは目を細めた。


「それからね、お兄様。
わたくし明日、ヒース侯爵様を訪ねようと思うの」

「…オレリアンを?」

「ええ」

エリアスは目を見開いて妹を見た。

たしかにオレリアンはあれ以来姿を現さないが、まさか記憶の戻らない妹が自分から会いに行くと言い出すとは、思いもしなかったのである。

「この2ヶ月余りの私の態度は、夫である侯爵様に対してあまりにも酷いものだったと思うの。
だから、謝りたいと思うんです」

「そうだな…」

仕方のないこととは言え、花を届けて去って行くオレリアンの背中を見送るのは切なかった。

とうとう姿を現さなくなった彼がどれほど傷ついているのかと思うと、エリアスとしても胸が痛い。

「結婚してから1年近く別居していたことは、お父様からお聞きしました。
侯爵様にとっても、私との結婚は決して嬉しいものではなかったのでしょう?
それなのに、あの方はああして毎日私にお花を贈ってくださっていたのですよね?」

オレリアンは2ヶ月もの間毎日花を贈ってくれていた。

どうでもいい相手にならそんなことはしないはずと、今ならわかる。

「たしかに…、結婚当初のおまえに対するオレリアンの態度は決して誠実だと言えるものではなかった。
だが、おまえが事故に遭ってから彼は見違えるほど変わった。
本当に慈しみ、大事にしていた。
それだけは、わかってやって欲しい」

「…ええ。
明日、侯爵様をお訪ねして、これからのこともお話したいと思います。
お兄様、ついて来てくださる?」

「ああ、もちろん」


ようやく前を向き始めたコンスタンスは、王妃に会う前にオレリアンに会いたい…、素直にそう思った。

彼が今何を考え、これからどうしたいのか聞きたいと思ったのだ。

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