世話好きな不死鳥に拾われました!

のは(山端のは)

文字の大きさ
23 / 23

退屈したら(最終話)

しおりを挟む
「さあ、これでいい」

 ヴェルが魔法をかけてくれた青いグラスを俺はまじまじと見つめた。
「日差しの下で見ていい?」
「構わない。落としても割れないだろう」
「え、さすがにそれは怖い」

 俺たちの住む洞窟は、森を見下ろすほど高い位置にあるのだ。
 ヴェルを信じていないわけではないが、たとえ壊れなくても、探し出すのに苦労しそうだ。
 落とすのは怖いが、明るいところで見たい欲には叶わない。
 日差しに透かすと、水の中にいるみたいにキラキラしていた。

「ルアーカ」
 ヴェルが水を呼び寄せたので、さっそくグラスに入れてもらおうと差し出したのだが、彼はやっぱり指を俺の口に突っ込んだ。
 どうしてだよ。
 ちょっと間抜けな状況だけど、ヴェルがしたいんじゃ仕方ない。
「飲んだら、さっそく練習を始めよう」
 その言葉を聞いて、俺はちょっと強引に吸いついてしまった。
 だって、早くやってみたい。

 だけど俺には、一から水を集めるのは難しかった。
 なので俺の練習はしばらく朝露を集めることってことになった。
 指先に魔力を集中して、露を引き寄せグラスに落とす。
 プルプルするほど頑張ったけれど、魔法のせいなのか自然に落ちたのか微妙な感じだ。

「……ああ、まあ……時間はたっぷりある」
 かなり気を使われてしまった。
 小精霊たちにまで呆れられた気がする。

 そう、こいつらは結局残った。むしろ増えたような?

 数えてみようかと思ったところで、どこからか「ツピツピ」と可愛い声が聞こえた。
 見回してすぐそこの枝に声の持ち主を発見する。

「おはよう、また会ったね」
 手を差し伸べると、小鳥は軽い羽音をさせて止まってくれた。
「ツピン!」

 あまりにも可愛い。デレデレしていると、ヴェルは俺の傍らで腕組みして小鳥を睨んでいた。
 動物には優しいのに、おかしいな。それに、この子も逃げない。

「……まさか、この子も精霊?」
「ようやく気付いたのか」
「それで嫉妬してたの? 小鳥だよ?」
「年を経れば人の姿を模すこともある」
「へえ、そっちも可愛いんだろうな――」

 なんて笑ってたら、ヴェルが俺の頬をギュっとつねった。
「痛いよ」
「浮気するからだ」
 そう言って小鳥を追い払ってしまった。
 少し残念だ。

「ヴェルも昔は小鳥だった」
「私は生まれたときから不死鳥だ」


 その日の午後、リィがふらりとやってきた。
 そして俺たちを一目見て、瞼を半分下ろして呟いた。
「とうとうツガイにナッチャタんだ……」

 なんと返したらいいものかオロオロする俺と違って、ヴェルはむしろ誇らしげに俺の肩を抱いた。
「そうだ」
「ニンゲンのクセにさ」
「ご、ごめ――」
「ヤメテヨネ、そうイウノ」

 リィはそう言って、洞窟に積まれた布の点検を始めた。

「ソウダ! これヤル!」
「ん? 俺に?」

 リィが取り出したのは暖かそうなコートとマフラーだった。それに、手袋も。
「もらっていいの?」
「キセツにあったフクをキルベキだろ」

 それに……と、彼は「このアイダのオワビ」とそっぽを向いたまま付け足した。
「うん! ありがとう、リィ!」
「ウーン、でもチョットふふく」
 何がだろう。俺は首を傾げた。
「コンド、もっとニアウのカッテくる」

 そして彼は、自分の鱗が緑だからハッキリした紫は似合わないのだと愚痴った。まあ、そうかもしれない。
 ヴェルにも似合わないとも言った。
「デモ、キミにならニアウかもね」

「いや、俺、あんまり派手なやつは……」
「マエマデならね。イマはきっとニアウよ。キミ、カワイクなったから」
 思いがけない褒め言葉にキョトンとしてしまった。
 そして俺以上に過剰反応を見せたのはヴェルだ。

 後ろから俺を腕の中に収めてリィを睨みつけた。
「リィ……」
 ヴェルの視線を受けて、リィは肩をすくめる。「ベッタリくっつかれてタイヘンだね」なんて首を振りながら。
「シンパイしなくても、ボク、そろそろいくヨ」
「ああ、もうそんな時期か」
「え、なに、なんの話?」

 リィとヴェル、二人だけでわかりあってるのはなんか悔しい。
 答えてくれたのはヴェルだ。

「寒くなってきたからな。リィは春までもっと暖かい土地へ行くんだ」
「そうなんだ。でも、帰ってくるんだよね」
「マアネ。タカラモノをアズケテあるし」

 リィは布の山をうっとりと眺めた後、入ってきた時と同じように、まぶたを半分閉じてこちらに抗議のまなざしを向けてきた。
「アンマリ、ヨゴサナイでね」
「うん……、気を付ける」

 言いつつも、俺は若干目をそらしてしまった。
 愛し合う行為は、あちこちにいろいろ飛んでしまうのだ。
 ヴェルが綺麗にしてくれたんだけどな……。

 リィはため息を残して、南へと旅立っていった。

「どんなところに行くのかな」
「そのうち行ってみるか?」
「興味はあるけど……、すごく目立つよね」
「近くまで飛んで歩けばいい」

 想像してみた。ヴェルと一緒にいろんなところを旅すること。
「退屈したら、行ってみよう」
「退屈したら、か」
「うん。今は魔法の練習もしなきゃだし。それに……」
 チラリと見上げると、ヴェルが指を繋いできた。何食わぬ顔つきだが、小指がさわさわといたずらを仕掛けている。

「すぐ盛っちゃうからね」

 俺も、ヴェルも。
 だから旅は少しお預け。
 小精霊たちも、気を利かせてようにそろそろと出口のほうへ向かったことだし。

「する?」
「私のひなは、本当におねだり上手で困ったものだな」

 言葉とは裏腹に、ヴェルは俺を抱き上げた。





しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

こうらい ゆあ

人外×人間、最高でした!
ふたりのほんわかするやりとりや、執着的な愛に包まれる展開、とっても好きです!
甘く、でもちょっと切ない展開。でも最後はハッピーエンドに、読んでて心温まりました。

2025.11.27 のは(山端のは)

人外×人間、楽しんでいただけて嬉しいです🥰
執着愛っていいですよね。
甘さと切なさも味わっていただけてよかったー!
こちらこそ嬉しい感想にほっこりしました。
こうらい ゆあさん、ありがとうございます!!

解除
黒川
2025.11.22 黒川

今回も素敵な作品をありがとうございました。再読完了〜!!リアタイでもジレジレしながら追ってましたが、まとめて読むとまた楽しさが一気に来ますねっ!好きっ!
イシャズ君とルアーカ君の件にちょっと切なさを感じましたが、ヴェルさまと収まるべき場所におさまったなぁと清々しい気持ちの読後感でした。最終話のリィ君のルアーカ君へのデレも可愛いかったです。てか、リィ君可哀想可愛いですよね!?今回の作品の中での一番のオキニイリです。いつかリィ君スピンオフが世に出てくる事を夢見てます(笑)
のはさんの作品は、ずっとラブコメ路線の作品ばかりを読んでいたので、今回の作風は新鮮でした。でも所々に感じる、のはさんコメディ節の香りを嗅ぎ取るのも作家さま推しとして楽しかったです。
これからも応援しております!

2025.11.22 のは(山端のは)

黒川さん、しれっと二周してくださってるー!リアタイも!
ありがとうございます~!

作風新鮮に感じてもらえました!?
今回濃密BLということで、コメディ成分控えめに、控えめに~
と念じながら書いた甲斐がありましたー!
にじみ出た成分まで嗅ぎ取って楽しんでいただけたということで、今、よっしゃとガッツポーズ中です。

しかもリィがお気に入りとのことで、わあ!嬉しい!
スピンオフを夢見ちゃうくらい!?
そういえば、あまり書いたことのないタイプだったかもしれません。

作品の隅々まで楽しんでいただいて本当に嬉しいです。
黒川さん、いつもありがとうございます!

解除
波乃宮
2025.11.12 波乃宮

 かわいらしくて、ほのぼのしてる感じがすごく好きです。この世界にふわっとはまっていたい読後感が最高です!

2025.11.12 のは(山端のは)

波乃宮さん、感想ありがとうございます!!
『世界にふわっとはまっていたい』
うわあ、嬉しい💕最高の誉め言葉です😭
あと数話、楽しんでくださいねー!!

解除

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

生贄傷物令息は竜人の寵愛で甘く蕩ける

てんつぶ
BL
「僕を食べてもらっても構わない。だからどうか――」 庶子として育ったカラヒは母の死後、引き取られた伯爵家でメイドにすら嗤われる下働き以下の生活を強いられていた。その上義兄からは火傷を負わされるほどの異常な執着を示される。 そんなある日、義母である伯爵夫人はカラヒを神竜の生贄に捧げると言いだして――? 「カラヒ。おれの番いは嫌か」 助けてくれた神竜・エヴィルはカラヒを愛を囁くものの、カラヒは彼の秘密を知ってしまった。 どうして初対面のカラヒを愛する「フリ」をするのか。 どうして竜が言葉を話せるのか。 所詮偽りの番いだとカラヒは分かってしまった。それでも――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。