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10話 クラフトの音、慣れた手つき
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拠点の裏には、草原へと流れる川があり、大人が思い切りジャンプしてようやく向こう岸に届くほどの幅がある。川沿いの斜面には数本の木が力強く根を張り、朝露を浴びて葉を揺らしていた。ここなら拠点からも近いし、作業するにはうってつけだ。リト君は背負っていたツルハシをそっと近くの岩に立てかけ、その上に腰を下ろしている。まだ幼い彼に木を切らせるわけにはいかない。これは俺の仕事だ。俺は数歩前に出て、太さや傾きから一本の木を選んだ。そして石の斧を肩まで振りかぶり、勢いよく振り下ろす――。
刃が幹にめり込んだ瞬間、衝撃が肩から腕、そして背中へと駆け抜けた。乾いた打撃音が周囲に響き、木の皮が裂ける音が続く。何度か斧を振るううちに、木はギシギシと悲鳴を上げ、最後にはバキバキという音と共にゆっくりと傾き、そのまま倒れ込んだ。
「リト君、村が近くにあるって言ってたけど、その村は何ていう村なんだ?」
俺は作業を止めることなく、リト君に話しかける。リト君は足をパタパタとばたつかせ、指遊びしながら俺の問いに答える。
「え~っと、《フェルム村》っていうんだけど、のどかでいい村ですよ。行ったことないんですか?」
そりゃあ、この森と草原しか足を踏み入れていないからな。そもそも近くに村がある事すら把握してなかったし、なんなら俺以外の人にあったのは数日間ぶりだから。俺は心でそう思いながら軽く微笑んだ。
「そうだね、この世界の事はよく知らないから……リト君はそのツルハシを持って、どこに向かおうとしてたの?」
リト君は首を左右に振りながら楽しそうに答えた。どうも彼には緊張感というものはないらしい。こっちは今を生きるのに必死だというのに。
「パパが仕事で使う”石炭”を採掘しに行こうと思って出かけたんです。そしたらユウタおじさんに……」
俺の動きが少しだけ鈍る。石炭だって? ゲームで火を扱うことができるようになるあの石炭の事か? この近くにあるってことだよな……。俺はもう少し詳しく聞くことにした。
「へぇ、その石炭ってどこで採れるんだい?」
そういうと、リト君は村を指差した方向とは逆方向を指差した。
「こっちの方向に少しいくと、《ミルネラ鏡窟》っていう洞窟があるんです。明かりが無いと進めないんですけど」
話を聞いていると、どうやらその洞窟は石炭だけでなく、鉄や銅といった鉱石も採掘できるらしい。しかし明かりが必要なうえ、奥に進むとモンスターが出るとのことで、一般人が立ち入れるのは石炭が採れるわずかな場所のみとのことだ。それはつまり、今後、俺が鉱石を必要とした時に立ち入らなければいけないことを示唆していた。そうこうしているうちに木を切り終わり、それらを俺はインベントリにしまった。だがインベントリの中身を確認すると、木材ではなく〈原木:6〉と表記されている。
「ん? 木材じゃない? おかしいな……」
俺が頭をポリポリしていると、リト君は大声ではしゃぎ始めた。
「また! ユウタおじさん、それどうやってるんですか!? 凄いですね! 物が消えるなんて……」
その目は好奇に溢れた純真無垢な目をしている。まぁ、誰だって驚くか。俺も最初は驚いたし……でもどう説明すればいいんだろ?
「いやぁ、実は俺にもよくわからないんだよね。消すこともできるし、目の前に出現させることもできるんだよ。どういう原理かは知らないけど……」
まぁ、百聞は一見にしかず。見せるのが早いか。俺は先程手に入れた原木を目の前に出した。するとリト君はさらに大はしゃぎ。「もう一回見せて!」と言わんばかりの表情を浮かべているが、俺にはクエストの時間もある。軽く流した後、リト君を連れて、拠点の中に入った。そして、作業台の前に立って、クエストタブを開く。
「原木ってことは、何かクラフトすることができるんじゃないか?」
俺はリト君そっちのけで、クラフトに集中。しばらく閲覧しているとどうやら原木から木材を作ることができるようだ。
【木材】×4
必要資材:原木1
ん? ちょっと待てよ。原木1つで木材が4つもできる……てことは、木材24個も手に入るのか!? ちょっと待てよ、今俺のインベントリって……。
〈インベントリ〉
木の槍:6/10
石の斧:9/10
木材:3
神経草:1
毒草:1
毒キノコ:1
パン:3
――
毒消し草:6
木の棒:14
木の実:16
小麦:3
原木:6
まずいな。このままだと木材が溢れてしまう。それに保管箱も手に入れることができない。クエスト失敗まで1時間とちょっと。ここは毒草か、毒キノコを破棄してしまうか? いや、勿体ないな。ここはリト君に助けてもらうとか? いや……いやいや、ダメだ。子供に毒キノコとか持たせるってどう考えてもやばい大人だろ。だけど、どこかで役に立つのなら持っておきたいし……。しばらく葛藤を続けた後、俺はある決断をした。俺はスッとリト君の顔を覗いた。リト君は首を傾げ、こちらを見つめている。
「リト君、ちょっと持って欲しいものがあるんだけど良いかな?」
「はい……なんですか?」
「匂いを嗅いだり、食べたりしたらダメだよ?」
俺はそう言って、インベントリから毒草と毒キノコを取り出し、そっとリト君の前に差し出した。彼は目を丸くしながら、その異様な見た目の二つをじっと見つめ、やがて戸惑いながらも両手で丁寧に受け取った。
「なんですか? これ」
「ん? 毒草と毒キノコ」
そう言い放った瞬間、リト君はビクッと反応して、思わず吹き出してしまう。ゲホゲホと咳ごみながら、その両手はしっかりと握っている。
「す、すいません。まさか毒草と毒キノコを渡されるとは思っていなくて……」
「うん、俺もだいぶ葛藤はしたんだけどね……。すぐに済むから……」
俺は急いで原木を木材にクラフトしていく。作業台の上で原木が木くずを散らしながら、次第に4つの木材へと変化していく。その様子を横で見ていたリト君は、「すごっ……」と一言だけ呟き、目の前の光景に目を見開いていた。そして原木2つを木材8つにクラフトしたとき、クエストタブが淡く光る。
《クエスト達成! 報酬獲得!》
木材を6個採取しろ!
報酬:経験値+20、能力値振り分け+1、保管箱+1
「い、今の凄いですね! 台の上で木が一瞬で4つの木材に変わってましたよ!?」
リト君は毒草と毒キノコを両手で握りしめたまま、腕ごと作業台に体重をかけるようにもたれかかり、目をきらきらと輝かせている。小さな体では高さが足りないのか、つま先立ちで必死に作業台の上を覗き込んでいる姿が、なんとも微笑ましい。
「はは……これも、どういう原理でなってるのかはさっぱりなんだよね」
愛想笑いでごまかしつつ、クエストを達成したことを確認する。経験値が20入ったという事はそろそろレベルも上がるんじゃないか?
【中島佑太】
レベル:5 スキルポイント:3 能力値振り分け:3
体力:10
筋力:7
敏捷:5
技術:5
感性:5
魅力:5
やっぱり、ようやくレベルが上がる法則がわかったぞ。”現在のレベル×10”の経験値が必要みたいだな。なら、次は50の経験値が必要ってわけだ。それにレベルが上がるごとにスキルポイントと能力値振り分けが1つずつ獲得できるようだな。UIの仕組みはほとんど理解してきた。俺はインベントリを開き、保管箱の内容を確認する。
【保管箱】
効果:50個のアイテムを保管することができる。連結させると100個を保管できる巨大保管箱に変化する。
どうやらアイテムを保管できるようだ。必要な時に必要な物を必要分だけ使用できる……これは今の俺にとってはかなり重要なアイテムだ。それに連結も可能ときた。
「へぇ、保管箱は並べると大きくなるのか……」
「1人で何を話してるんですか?」
リト君に話しかけられて、視線を向ける。そうか、リト君には俺のUIのウィンドウが見えないんだったな。よそから見たら35歳のおっさんが独り言を言ってる絵にしか見えないか。そう考えるとなんか少し恥ずかしくなってきたな。俺は引きつった笑みを浮かべてリト君の質問を軽く流した。
「あぁ、いや。こっちの話だよ。さてと、保管箱はどこに置こうか……とりあえず、作業台の横にでも置くとするか」
俺は作業台の右隣に保管箱を置くことに。スペースを確保して、いつでも巨大保管箱にできるようにしておこう。俺が作業台の横に保管箱をグリッドに合わせると、ポンと煙の中から突然現れたかのように作業台の横に綺麗に配置される。その光景を目の当たりにして、リト君は突然目の前に現れた保管箱に興味を示した。
「えぇ~! 今度はどうやったんですか!?」
どうやら俺の行動一つ一つが気になって仕方ないらしいな。とはいえ、説明も仕様が無いし。俺は両手を軽く上げて肩をすくめる。
「さぁ、俺にもさっぱり。説明は難しいけど、できるみたい」
「なんですか、それ?」
いや、そりゃ、そういう反応なるよね。リト君はキョトンとした表情を浮かべ、必死にどうやったのかを保管箱を舐めまわすように確かめる。別に保管箱には何の仕掛けも無いんだけどな……。あ、そうだ。保管箱は確か大きくできるんだよな。保管箱ってどうやったら作れるんだろ? 俺はクラフト画面から、保管箱を探し出した。
【保管箱】
必要資材:木材8
効果:50個のアイテムを保管することができる。連結させると100個を保管できる巨大保管箱に変化する。
ほぉ、木材を8つも使うとな? まぁ、小さいより大きい方が何かと役に立つだろうから、保管箱をクラフトするか。作業台の上に木材を8つ、綺麗に並べると、カチッと不思議な音を発しながら、一つずつ重なっていき、その形は次第に箱へと変化していく。そして作業台の上に保管箱が出来上がると。リト君が今にも目を飛び出しそうな程に驚いていた。
「うわぁ~! これ、本物ですか?」
俺が渡した資材を両手に握りしめたまま、手の甲や指先で保管箱をペタペタと触りながら確かめるリト君。最初は目を疑うことだらけだろう。だが、こればっかりは俺にもわからないからこれ以上理由は聞かないでくれよ。俺は保管箱をスッと持ち上げると、既においてある保管箱の横に隙間を無くすように配置してみる。
カチッ……
それはとても不思議な光景だった。互いの保管箱がまるで生き物のように形を変え、側面が互いに吸い込まれると、やがて一つの大きな箱に変貌を遂げた。これが巨大保管箱とよばれるやつか? 俺は中を確認するため、蓋を開けてみると、中は仕切りなどがなく、完全な一つの箱となっていた。俺とリト君は思わず「おぉ~」と声を揃えた。その光景はもはや休日にDIYをしている親子のようだった。
「さて、リト君もう大丈夫だよ、ありがとう」
俺はそう言って、リト君から毒草と毒キノコを受け取ると、そのまま保管箱に投入した。そして現状使い道がない、神経草、毒消し草、小麦、木の棒、原木も保管箱に投入した。
〈保管箱〉残:70
毒草:1
毒キノコ:1
神経草:1
毒消し草:6
小麦:3
木の棒:14
原木:4
〈インベントリ〉
木の槍:6/10
石の斧:9/10
木材:3
パン:3
木の実:16
「さぁ、リト君、お話はもう大丈夫かな?」
俺は保管箱の蓋を閉めながらリト君に尋ねると、指を口に当てながら上を向いて、何かを考えた後、ぽつりと呟いた。
「ユウタおじさんがとりあえずおかしな人だってことは分かりました」
その口ぶりは冗談めいているようで、案外本気だったのかもしれない。俺は思わず苦笑いを浮かべた。たしかに、彼からすれば見慣れない行動ばかりだっただろう。
「はは……そうだね、否定はしないでおくよ」
俺が頬をポリポリと指先で掻いていると、リト君は真っすぐな瞳を覗かせながら尋ねてきた。
「おじさんはこの後何するんですか?」
まっすぐに向けられた問いかけに、言葉を選ぶ手が一瞬止まる。さて、何をしようか――本当は、もう少し資材を集めようと思っていたんだが……。
「う~ん、草原を少しぶらつこうかなと思ってたんだけど……――」
言いかけて、ふと口をつぐんだ。さっきの会話を思い返す。そういえば――リト君は、洞窟に向かう途中だったはずだ。目的は“石炭”。あれがあれば、明かりとなるアイテムを作ることができる。探索範囲を広げる俺にとっても石炭は生活の幅を広げてくれるマストアイテムの1つ。ここは……。
俺は咳ばらいをして喉の調子を整えた後、リト君にある提案を持ちかけた。
「リト君……洞窟についていっても良いかな?」
刃が幹にめり込んだ瞬間、衝撃が肩から腕、そして背中へと駆け抜けた。乾いた打撃音が周囲に響き、木の皮が裂ける音が続く。何度か斧を振るううちに、木はギシギシと悲鳴を上げ、最後にはバキバキという音と共にゆっくりと傾き、そのまま倒れ込んだ。
「リト君、村が近くにあるって言ってたけど、その村は何ていう村なんだ?」
俺は作業を止めることなく、リト君に話しかける。リト君は足をパタパタとばたつかせ、指遊びしながら俺の問いに答える。
「え~っと、《フェルム村》っていうんだけど、のどかでいい村ですよ。行ったことないんですか?」
そりゃあ、この森と草原しか足を踏み入れていないからな。そもそも近くに村がある事すら把握してなかったし、なんなら俺以外の人にあったのは数日間ぶりだから。俺は心でそう思いながら軽く微笑んだ。
「そうだね、この世界の事はよく知らないから……リト君はそのツルハシを持って、どこに向かおうとしてたの?」
リト君は首を左右に振りながら楽しそうに答えた。どうも彼には緊張感というものはないらしい。こっちは今を生きるのに必死だというのに。
「パパが仕事で使う”石炭”を採掘しに行こうと思って出かけたんです。そしたらユウタおじさんに……」
俺の動きが少しだけ鈍る。石炭だって? ゲームで火を扱うことができるようになるあの石炭の事か? この近くにあるってことだよな……。俺はもう少し詳しく聞くことにした。
「へぇ、その石炭ってどこで採れるんだい?」
そういうと、リト君は村を指差した方向とは逆方向を指差した。
「こっちの方向に少しいくと、《ミルネラ鏡窟》っていう洞窟があるんです。明かりが無いと進めないんですけど」
話を聞いていると、どうやらその洞窟は石炭だけでなく、鉄や銅といった鉱石も採掘できるらしい。しかし明かりが必要なうえ、奥に進むとモンスターが出るとのことで、一般人が立ち入れるのは石炭が採れるわずかな場所のみとのことだ。それはつまり、今後、俺が鉱石を必要とした時に立ち入らなければいけないことを示唆していた。そうこうしているうちに木を切り終わり、それらを俺はインベントリにしまった。だがインベントリの中身を確認すると、木材ではなく〈原木:6〉と表記されている。
「ん? 木材じゃない? おかしいな……」
俺が頭をポリポリしていると、リト君は大声ではしゃぎ始めた。
「また! ユウタおじさん、それどうやってるんですか!? 凄いですね! 物が消えるなんて……」
その目は好奇に溢れた純真無垢な目をしている。まぁ、誰だって驚くか。俺も最初は驚いたし……でもどう説明すればいいんだろ?
「いやぁ、実は俺にもよくわからないんだよね。消すこともできるし、目の前に出現させることもできるんだよ。どういう原理かは知らないけど……」
まぁ、百聞は一見にしかず。見せるのが早いか。俺は先程手に入れた原木を目の前に出した。するとリト君はさらに大はしゃぎ。「もう一回見せて!」と言わんばかりの表情を浮かべているが、俺にはクエストの時間もある。軽く流した後、リト君を連れて、拠点の中に入った。そして、作業台の前に立って、クエストタブを開く。
「原木ってことは、何かクラフトすることができるんじゃないか?」
俺はリト君そっちのけで、クラフトに集中。しばらく閲覧しているとどうやら原木から木材を作ることができるようだ。
【木材】×4
必要資材:原木1
ん? ちょっと待てよ。原木1つで木材が4つもできる……てことは、木材24個も手に入るのか!? ちょっと待てよ、今俺のインベントリって……。
〈インベントリ〉
木の槍:6/10
石の斧:9/10
木材:3
神経草:1
毒草:1
毒キノコ:1
パン:3
――
毒消し草:6
木の棒:14
木の実:16
小麦:3
原木:6
まずいな。このままだと木材が溢れてしまう。それに保管箱も手に入れることができない。クエスト失敗まで1時間とちょっと。ここは毒草か、毒キノコを破棄してしまうか? いや、勿体ないな。ここはリト君に助けてもらうとか? いや……いやいや、ダメだ。子供に毒キノコとか持たせるってどう考えてもやばい大人だろ。だけど、どこかで役に立つのなら持っておきたいし……。しばらく葛藤を続けた後、俺はある決断をした。俺はスッとリト君の顔を覗いた。リト君は首を傾げ、こちらを見つめている。
「リト君、ちょっと持って欲しいものがあるんだけど良いかな?」
「はい……なんですか?」
「匂いを嗅いだり、食べたりしたらダメだよ?」
俺はそう言って、インベントリから毒草と毒キノコを取り出し、そっとリト君の前に差し出した。彼は目を丸くしながら、その異様な見た目の二つをじっと見つめ、やがて戸惑いながらも両手で丁寧に受け取った。
「なんですか? これ」
「ん? 毒草と毒キノコ」
そう言い放った瞬間、リト君はビクッと反応して、思わず吹き出してしまう。ゲホゲホと咳ごみながら、その両手はしっかりと握っている。
「す、すいません。まさか毒草と毒キノコを渡されるとは思っていなくて……」
「うん、俺もだいぶ葛藤はしたんだけどね……。すぐに済むから……」
俺は急いで原木を木材にクラフトしていく。作業台の上で原木が木くずを散らしながら、次第に4つの木材へと変化していく。その様子を横で見ていたリト君は、「すごっ……」と一言だけ呟き、目の前の光景に目を見開いていた。そして原木2つを木材8つにクラフトしたとき、クエストタブが淡く光る。
《クエスト達成! 報酬獲得!》
木材を6個採取しろ!
報酬:経験値+20、能力値振り分け+1、保管箱+1
「い、今の凄いですね! 台の上で木が一瞬で4つの木材に変わってましたよ!?」
リト君は毒草と毒キノコを両手で握りしめたまま、腕ごと作業台に体重をかけるようにもたれかかり、目をきらきらと輝かせている。小さな体では高さが足りないのか、つま先立ちで必死に作業台の上を覗き込んでいる姿が、なんとも微笑ましい。
「はは……これも、どういう原理でなってるのかはさっぱりなんだよね」
愛想笑いでごまかしつつ、クエストを達成したことを確認する。経験値が20入ったという事はそろそろレベルも上がるんじゃないか?
【中島佑太】
レベル:5 スキルポイント:3 能力値振り分け:3
体力:10
筋力:7
敏捷:5
技術:5
感性:5
魅力:5
やっぱり、ようやくレベルが上がる法則がわかったぞ。”現在のレベル×10”の経験値が必要みたいだな。なら、次は50の経験値が必要ってわけだ。それにレベルが上がるごとにスキルポイントと能力値振り分けが1つずつ獲得できるようだな。UIの仕組みはほとんど理解してきた。俺はインベントリを開き、保管箱の内容を確認する。
【保管箱】
効果:50個のアイテムを保管することができる。連結させると100個を保管できる巨大保管箱に変化する。
どうやらアイテムを保管できるようだ。必要な時に必要な物を必要分だけ使用できる……これは今の俺にとってはかなり重要なアイテムだ。それに連結も可能ときた。
「へぇ、保管箱は並べると大きくなるのか……」
「1人で何を話してるんですか?」
リト君に話しかけられて、視線を向ける。そうか、リト君には俺のUIのウィンドウが見えないんだったな。よそから見たら35歳のおっさんが独り言を言ってる絵にしか見えないか。そう考えるとなんか少し恥ずかしくなってきたな。俺は引きつった笑みを浮かべてリト君の質問を軽く流した。
「あぁ、いや。こっちの話だよ。さてと、保管箱はどこに置こうか……とりあえず、作業台の横にでも置くとするか」
俺は作業台の右隣に保管箱を置くことに。スペースを確保して、いつでも巨大保管箱にできるようにしておこう。俺が作業台の横に保管箱をグリッドに合わせると、ポンと煙の中から突然現れたかのように作業台の横に綺麗に配置される。その光景を目の当たりにして、リト君は突然目の前に現れた保管箱に興味を示した。
「えぇ~! 今度はどうやったんですか!?」
どうやら俺の行動一つ一つが気になって仕方ないらしいな。とはいえ、説明も仕様が無いし。俺は両手を軽く上げて肩をすくめる。
「さぁ、俺にもさっぱり。説明は難しいけど、できるみたい」
「なんですか、それ?」
いや、そりゃ、そういう反応なるよね。リト君はキョトンとした表情を浮かべ、必死にどうやったのかを保管箱を舐めまわすように確かめる。別に保管箱には何の仕掛けも無いんだけどな……。あ、そうだ。保管箱は確か大きくできるんだよな。保管箱ってどうやったら作れるんだろ? 俺はクラフト画面から、保管箱を探し出した。
【保管箱】
必要資材:木材8
効果:50個のアイテムを保管することができる。連結させると100個を保管できる巨大保管箱に変化する。
ほぉ、木材を8つも使うとな? まぁ、小さいより大きい方が何かと役に立つだろうから、保管箱をクラフトするか。作業台の上に木材を8つ、綺麗に並べると、カチッと不思議な音を発しながら、一つずつ重なっていき、その形は次第に箱へと変化していく。そして作業台の上に保管箱が出来上がると。リト君が今にも目を飛び出しそうな程に驚いていた。
「うわぁ~! これ、本物ですか?」
俺が渡した資材を両手に握りしめたまま、手の甲や指先で保管箱をペタペタと触りながら確かめるリト君。最初は目を疑うことだらけだろう。だが、こればっかりは俺にもわからないからこれ以上理由は聞かないでくれよ。俺は保管箱をスッと持ち上げると、既においてある保管箱の横に隙間を無くすように配置してみる。
カチッ……
それはとても不思議な光景だった。互いの保管箱がまるで生き物のように形を変え、側面が互いに吸い込まれると、やがて一つの大きな箱に変貌を遂げた。これが巨大保管箱とよばれるやつか? 俺は中を確認するため、蓋を開けてみると、中は仕切りなどがなく、完全な一つの箱となっていた。俺とリト君は思わず「おぉ~」と声を揃えた。その光景はもはや休日にDIYをしている親子のようだった。
「さて、リト君もう大丈夫だよ、ありがとう」
俺はそう言って、リト君から毒草と毒キノコを受け取ると、そのまま保管箱に投入した。そして現状使い道がない、神経草、毒消し草、小麦、木の棒、原木も保管箱に投入した。
〈保管箱〉残:70
毒草:1
毒キノコ:1
神経草:1
毒消し草:6
小麦:3
木の棒:14
原木:4
〈インベントリ〉
木の槍:6/10
石の斧:9/10
木材:3
パン:3
木の実:16
「さぁ、リト君、お話はもう大丈夫かな?」
俺は保管箱の蓋を閉めながらリト君に尋ねると、指を口に当てながら上を向いて、何かを考えた後、ぽつりと呟いた。
「ユウタおじさんがとりあえずおかしな人だってことは分かりました」
その口ぶりは冗談めいているようで、案外本気だったのかもしれない。俺は思わず苦笑いを浮かべた。たしかに、彼からすれば見慣れない行動ばかりだっただろう。
「はは……そうだね、否定はしないでおくよ」
俺が頬をポリポリと指先で掻いていると、リト君は真っすぐな瞳を覗かせながら尋ねてきた。
「おじさんはこの後何するんですか?」
まっすぐに向けられた問いかけに、言葉を選ぶ手が一瞬止まる。さて、何をしようか――本当は、もう少し資材を集めようと思っていたんだが……。
「う~ん、草原を少しぶらつこうかなと思ってたんだけど……――」
言いかけて、ふと口をつぐんだ。さっきの会話を思い返す。そういえば――リト君は、洞窟に向かう途中だったはずだ。目的は“石炭”。あれがあれば、明かりとなるアイテムを作ることができる。探索範囲を広げる俺にとっても石炭は生活の幅を広げてくれるマストアイテムの1つ。ここは……。
俺は咳ばらいをして喉の調子を整えた後、リト君にある提案を持ちかけた。
「リト君……洞窟についていっても良いかな?」
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