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落ちる王子、引きずられる王家
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「……陛下からの正式文書です。
“新体制下における王妃候補の再選定について、王太子に裁量を持たせる”と」
「再選定……? ミキは、聖女だぞ?」
「王子、ご忠告を。
“聖女であること”と“王妃として国を支えること”は、まったく別の役割です」
声を低くした側近ナランが、控えめに言った。
「現在、神殿からの出費が急増しています。
祝福演出、記録映像、聖具の更新……
すべて“信仰事業”という名目ですが、内容は――ただのショーです」
「それでも、民は喜んでる。
あいつの笑顔を、見てるんだ」
「……それも“今だけ”です。
“ミキ様は可愛い”だけでは、国政は動かない」
王子は唇を噛んだ。
(わかってる……わかってるんだよ)
でも、言葉にできない。
だって自分は――あいつに、
「可愛いね」「そばにいてくれてありがとう」って言われたくて、
マリーを捨てたんだ。
⸻
夜。
王宮の私室。
窓の外には静かな夜風。
書きかけの書簡が、机の上でぴらりと揺れる。
(……マリー、今どこにいるんだ)
“勉強ができる”
“格式がある”
“強情で、無愛想で、でも正しかった”
「……お前だけだった。
“国のために”って目で、俺を見てたのは」
そう呟いたとき、自分でも驚いた。
まだその名前を、心の中で呼んでいたことに。
「……こんなはずじゃなかった」
◆ライゼル王太子──堕落の報せ
その日、王宮内にとんでもない報告書が提出された。
「……ミキ様が、同じ夜に複数の男性と“親密な接触”を行っていた疑いが」
「複数……? だれだ」
「……側近ナルデン。そして、書記官リュークです。
ふたりとも、王太子殿下の“側近”として日常的に行動を共にしていた者です」
沈黙。
世界が、ぐらりと傾いたようだった。
王子の心臓が跳ねる。呼吸が乱れる。
「……嘘だ」
「……事実です。
寝所の警備記録、侍女の報告、洗濯物の持ち出し、全てが一致しています」
「……っ、ミキが……ミキが……っ!!」
(あいつは、俺のものだったはずなのに)
(……俺の“選んだ主役”だったのに)
(……俺の、俺の、俺だけの……!!)
崩れ落ちたその姿に、
さすがに側近たちも目を逸らした。
⸻
◆王家会議:王位継承問題、浮上
「次代王位、アルフォンス王子に移譲の可能性が出てきた」
「えっっっっっ!?
いやいや、なんで俺!?」
戸惑う第二王子アルフォンス。
ぐでっとしたソファの上で、菓子を口に運びながら。
「叔父さんが次でしょ? 王弟の……あの……えーと……」
「リヴィウス殿下。38歳。独身。糖尿病気味。運動嫌い。
近衛の訓練にも出なくなって久しいわ」
マリーが資料を読み上げるように冷たく言った。
「それに……若い頃、手当たり次第だったのよ。
一部の貴族筋では、**“去勢された”って噂もあるくらい」
アルフォンスが固まる。
「え、なにその後味最悪の事実……」
「だから、即位しても短期政権よ。
貴族たちは“早いうちに若い後継を立てたい”って話をもう進めてる」
「ちょっ……俺!? 俺はさ、政治とか、そういうの――」
「やるのよ。あなたしかいないから」
マリーは淡々と告げる。
「……“マリー、助けてくれる?”って言うなら、少しくらいは手伝ってあげてもいいわよ」
「なにその女帝感!?」
“新体制下における王妃候補の再選定について、王太子に裁量を持たせる”と」
「再選定……? ミキは、聖女だぞ?」
「王子、ご忠告を。
“聖女であること”と“王妃として国を支えること”は、まったく別の役割です」
声を低くした側近ナランが、控えめに言った。
「現在、神殿からの出費が急増しています。
祝福演出、記録映像、聖具の更新……
すべて“信仰事業”という名目ですが、内容は――ただのショーです」
「それでも、民は喜んでる。
あいつの笑顔を、見てるんだ」
「……それも“今だけ”です。
“ミキ様は可愛い”だけでは、国政は動かない」
王子は唇を噛んだ。
(わかってる……わかってるんだよ)
でも、言葉にできない。
だって自分は――あいつに、
「可愛いね」「そばにいてくれてありがとう」って言われたくて、
マリーを捨てたんだ。
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夜。
王宮の私室。
窓の外には静かな夜風。
書きかけの書簡が、机の上でぴらりと揺れる。
(……マリー、今どこにいるんだ)
“勉強ができる”
“格式がある”
“強情で、無愛想で、でも正しかった”
「……お前だけだった。
“国のために”って目で、俺を見てたのは」
そう呟いたとき、自分でも驚いた。
まだその名前を、心の中で呼んでいたことに。
「……こんなはずじゃなかった」
◆ライゼル王太子──堕落の報せ
その日、王宮内にとんでもない報告書が提出された。
「……ミキ様が、同じ夜に複数の男性と“親密な接触”を行っていた疑いが」
「複数……? だれだ」
「……側近ナルデン。そして、書記官リュークです。
ふたりとも、王太子殿下の“側近”として日常的に行動を共にしていた者です」
沈黙。
世界が、ぐらりと傾いたようだった。
王子の心臓が跳ねる。呼吸が乱れる。
「……嘘だ」
「……事実です。
寝所の警備記録、侍女の報告、洗濯物の持ち出し、全てが一致しています」
「……っ、ミキが……ミキが……っ!!」
(あいつは、俺のものだったはずなのに)
(……俺の“選んだ主役”だったのに)
(……俺の、俺の、俺だけの……!!)
崩れ落ちたその姿に、
さすがに側近たちも目を逸らした。
⸻
◆王家会議:王位継承問題、浮上
「次代王位、アルフォンス王子に移譲の可能性が出てきた」
「えっっっっっ!?
いやいや、なんで俺!?」
戸惑う第二王子アルフォンス。
ぐでっとしたソファの上で、菓子を口に運びながら。
「叔父さんが次でしょ? 王弟の……あの……えーと……」
「リヴィウス殿下。38歳。独身。糖尿病気味。運動嫌い。
近衛の訓練にも出なくなって久しいわ」
マリーが資料を読み上げるように冷たく言った。
「それに……若い頃、手当たり次第だったのよ。
一部の貴族筋では、**“去勢された”って噂もあるくらい」
アルフォンスが固まる。
「え、なにその後味最悪の事実……」
「だから、即位しても短期政権よ。
貴族たちは“早いうちに若い後継を立てたい”って話をもう進めてる」
「ちょっ……俺!? 俺はさ、政治とか、そういうの――」
「やるのよ。あなたしかいないから」
マリーは淡々と告げる。
「……“マリー、助けてくれる?”って言うなら、少しくらいは手伝ってあげてもいいわよ」
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