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アルバート殿下。華燭の典、
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王都中が祝福するような大婚礼だった。
アルバート殿下と、隣国から嫁いできた王女ララベル。
金糸の衣装に身を包む殿下と、薔薇のように華やかな花嫁は、まさに美男美女の絵姿。
参列した誰もがため息をもらす。
その人ごみの中で、エヴァンズ公爵夫妻──アドレとメイベルは、並んで座っていた。
⸻
「……これで殿下もうちに入り浸ることもなくなるな」
アドレがぼそりとつぶやく。
「ふふ、いいじゃないですか。唐揚げ仲間なんですから」
「仲間でもな、家に帰って“ただいま”と同時に殿下がいるのは……」
アドレは少し顔をしかめる。
「……その、夫婦の“ただいまの口づけ”ができんだろう」
メイベルは、ぽかんとした後、真っ赤になった。
「えっ!? そ、そんなの……したことないですよ!」
「俺もだ」
「わ、私もですっ!」
二人して顔を赤らめ、視線を泳がせる。
隣では華やかな婚礼の誓いが交わされているのに、こちらは妙に初々しい空気に包まれていた。
(帰宅後の“ただいまキス”)
結婚式からの帰り道。
馬車の中でメイベルは、ふとそわそわと落ち着かない。
「……あの、アドレ様」
「なんだ」
「……“ただいまの口づけ”って、やっぱり、するものなんですか?」
アドレは無言でこちらを見つめる。
その沈黙に、メイベルの心臓がどきどき跳ねた。
⸻
屋敷に着き、扉を開ける。
ふたりきりの玄関。
メイベルは深呼吸をして、顔を上げた。
「た、ただいまです!」
「……おかえり」
アドレがゆっくりと歩み寄る。
メイベルは目をぎゅっとつむった。
……しかし。
「……」
「……?」
何も起きない。
そっと目を開けると、アドレが額に手を当てて苦笑していた。
「……緊張しすぎだ。顔が真っ赤だぞ」
「な、なら最初から言わないでくださいよぉ!」
⸻
結局その夜。
二人は食卓で唐揚げと枝豆をつまみながら、ほっと肩を寄せ合った。
「……まあ、ゆっくりでいいさ」
「……はい。えへへ」
小さな笑いとぬくもりが、ようやくふたりだけの“新婚の夜”を包んでいった。
(ひとり練習編)
その夜。
アドレが書斎にこもったあと、メイベルはこっそり玄関に立っていた。
「……えっと、ただいま!」
ぺこりと頭を下げて、ドアを開け閉め。
アドレの低い声を真似してみる。
「……おかえりなさい」
「そ、それで……こう、顔を上げて……」
両手で頬を押さえながら、くるくる回る。
「わああ! 無理! はずかしすぎるっ!」
赤くなって玄関の床をゴロゴロ転がった。
⸻
ちょうどそのとき。
後ろから小さな咳払い。
「……なにをしている」
振り向けば、ドアの陰にアドレ。
書斎から戻ってきて、全部見ていたらしい。
「ええええっ!? い、いやその、ちょっと練習を……!」
「……」
「わ、笑ってくださいよぉ!」
アドレは顔を覆い、肩を震わせていた。
「……新婚なのに、玄関で転がるな」
「ひいいいっ!」
⸻
その晩。
メイベルは布団に潜り込み、枕に顔を埋めて叫んだ。
「うぅー! もう一生“ただいまキス”の練習なんてしませんーっ!」
けれどアドレは、そんな彼女の背をそっと撫でながら、穏やかに呟いた。
「……次は、俺が教えてやる」
(成功編)
次の日の夕暮れ。
アドレは外から帰ってきた。
玄関のドアが開く音に、メイベルは心臓がドキンと跳ねる。
「……おかえりなさいませ!」
いつもより大きな声を出してしまった。
「ただいま」
低く落ち着いた声。
アドレが一歩近づく。
メイベルは思わず目をぎゅっとつむった。
──昨日の失敗が頭をよぎる。
でも今日は逃げない。
その瞬間。
そっと頬に触れる温もり。
唇に、やわらかな感触。
「……!」
⸻
「……やっと成功だな」
アドレは淡々と言ったが、耳まで赤い。
メイベルは目をまん丸にして、そして顔を真っ赤にした。
「な、な、な……っ、き、キスっ!? いきなりは反則ですっ!」
「昨日、練習していただろう」
「ひぃぃぃぃ! 見てたんですかぁーーっ!」
玄関に響くのは、彼女の絶叫と、アドレの低い笑い声。
⸻
その夜。
メイベルは枕に顔を埋めてごろごろ転がりながら、にやにやが止まらなかった。
「……えへへ、やっぱり新婚っていいなぁ」
アルバート殿下と、隣国から嫁いできた王女ララベル。
金糸の衣装に身を包む殿下と、薔薇のように華やかな花嫁は、まさに美男美女の絵姿。
参列した誰もがため息をもらす。
その人ごみの中で、エヴァンズ公爵夫妻──アドレとメイベルは、並んで座っていた。
⸻
「……これで殿下もうちに入り浸ることもなくなるな」
アドレがぼそりとつぶやく。
「ふふ、いいじゃないですか。唐揚げ仲間なんですから」
「仲間でもな、家に帰って“ただいま”と同時に殿下がいるのは……」
アドレは少し顔をしかめる。
「……その、夫婦の“ただいまの口づけ”ができんだろう」
メイベルは、ぽかんとした後、真っ赤になった。
「えっ!? そ、そんなの……したことないですよ!」
「俺もだ」
「わ、私もですっ!」
二人して顔を赤らめ、視線を泳がせる。
隣では華やかな婚礼の誓いが交わされているのに、こちらは妙に初々しい空気に包まれていた。
(帰宅後の“ただいまキス”)
結婚式からの帰り道。
馬車の中でメイベルは、ふとそわそわと落ち着かない。
「……あの、アドレ様」
「なんだ」
「……“ただいまの口づけ”って、やっぱり、するものなんですか?」
アドレは無言でこちらを見つめる。
その沈黙に、メイベルの心臓がどきどき跳ねた。
⸻
屋敷に着き、扉を開ける。
ふたりきりの玄関。
メイベルは深呼吸をして、顔を上げた。
「た、ただいまです!」
「……おかえり」
アドレがゆっくりと歩み寄る。
メイベルは目をぎゅっとつむった。
……しかし。
「……」
「……?」
何も起きない。
そっと目を開けると、アドレが額に手を当てて苦笑していた。
「……緊張しすぎだ。顔が真っ赤だぞ」
「な、なら最初から言わないでくださいよぉ!」
⸻
結局その夜。
二人は食卓で唐揚げと枝豆をつまみながら、ほっと肩を寄せ合った。
「……まあ、ゆっくりでいいさ」
「……はい。えへへ」
小さな笑いとぬくもりが、ようやくふたりだけの“新婚の夜”を包んでいった。
(ひとり練習編)
その夜。
アドレが書斎にこもったあと、メイベルはこっそり玄関に立っていた。
「……えっと、ただいま!」
ぺこりと頭を下げて、ドアを開け閉め。
アドレの低い声を真似してみる。
「……おかえりなさい」
「そ、それで……こう、顔を上げて……」
両手で頬を押さえながら、くるくる回る。
「わああ! 無理! はずかしすぎるっ!」
赤くなって玄関の床をゴロゴロ転がった。
⸻
ちょうどそのとき。
後ろから小さな咳払い。
「……なにをしている」
振り向けば、ドアの陰にアドレ。
書斎から戻ってきて、全部見ていたらしい。
「ええええっ!? い、いやその、ちょっと練習を……!」
「……」
「わ、笑ってくださいよぉ!」
アドレは顔を覆い、肩を震わせていた。
「……新婚なのに、玄関で転がるな」
「ひいいいっ!」
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その晩。
メイベルは布団に潜り込み、枕に顔を埋めて叫んだ。
「うぅー! もう一生“ただいまキス”の練習なんてしませんーっ!」
けれどアドレは、そんな彼女の背をそっと撫でながら、穏やかに呟いた。
「……次は、俺が教えてやる」
(成功編)
次の日の夕暮れ。
アドレは外から帰ってきた。
玄関のドアが開く音に、メイベルは心臓がドキンと跳ねる。
「……おかえりなさいませ!」
いつもより大きな声を出してしまった。
「ただいま」
低く落ち着いた声。
アドレが一歩近づく。
メイベルは思わず目をぎゅっとつむった。
──昨日の失敗が頭をよぎる。
でも今日は逃げない。
その瞬間。
そっと頬に触れる温もり。
唇に、やわらかな感触。
「……!」
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「……やっと成功だな」
アドレは淡々と言ったが、耳まで赤い。
メイベルは目をまん丸にして、そして顔を真っ赤にした。
「な、な、な……っ、き、キスっ!? いきなりは反則ですっ!」
「昨日、練習していただろう」
「ひぃぃぃぃ! 見てたんですかぁーーっ!」
玄関に響くのは、彼女の絶叫と、アドレの低い笑い声。
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その夜。
メイベルは枕に顔を埋めてごろごろ転がりながら、にやにやが止まらなかった。
「……えへへ、やっぱり新婚っていいなぁ」
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