83 / 139
83『孫文桜』
しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺・83(忠八編)
『孫文桜』
裏門だったが、あっさり入れたのには驚いた。
なんせ、宣戦布告をしてきたばかりのC国大使館だ。日本は、この宣戦布告を受諾はしていない。世界中で、こんなに明確にケンカを売られても買わない国はないだろう。信じられないが野党が国会で受諾に反対して、与党の一部もこれに同調している。
理由は簡単だ。憲法が国の交戦権を認めていないからだ。
さらに信じられないことだが、この宣戦布告の原因になった佐世保沖海戦をやった日本の吉本司令を処分保留のまま謹慎処分にしたことだ。国民の多数と与党は吉本司令を支持していたが、人民党を始めとする野党のほとんどが吉本司令の更迭と懲戒解雇、凶器準備集合、殺人などで長崎地裁に訴えた。
世界中があきれ返った。
吉本艦隊がとった行動は、世界の海軍の常識からは当たり前を通り越して賞賛にあたいするもので、イギリスなどは『百年ぶりの日本海海戦』と政府声明を出したほどである。
オレも、そう思う。
武装した三隻の軍艦が、領海近くで射撃管制レーダーを照射し、砲口を自衛艦に向けたのだ。銃を構えて撃鉄を起こしたのに等しい。吉本司令の行動は、完全な正当防衛であり、自衛官として、差し迫った日本への脅威に対処した正当な任務遂行である。
元華族とは言え小市民としてのオレは。FBの意見に「いいね」を押すこととツイッターの意見を「リツイート」したり「お気に入り」に入れることでしかなかった。
そのオレが、孫文章なる人物から電話で指示を受け、警察が厳重に警備するC国大使館に入ったのだ。ガチでビビる。
オレは、大使館の応接室に通された。そこには八十ぐらいの老人と、どことなく、さくらに似た少女が柔らかい表情で座っていた。
「孫文章です。こちらはひ孫の孫文桜です。お見知りおきを」
電話同様の穏やかさで自己紹介をした。
「あ、え、四ノ宮忠八です。先祖のことは少しは知っていますが、僕はただの大学生です。なんの役にもたたないと思うんですが」
「そんなことはありません。我々は最初に井戸を掘った人を忘れません」
これは日C国交が回復したときに、時の総理大臣を褒め称えてC国が言った言葉だ。オレにもそれくらいの知識はある。
「五代前の四ノ宮忠義さんには、私の祖父は大変お世話になりました。心あるC国人は、その恩を忘れてはいません。おかげでC国は問題を抱えながらも、いままで独立を維持してこられました」
「ここからは、わたしがお話しします」
文桜がオレの顔を見つめた。似てはいるが、さくらには無い鋭さが目の奥に見えた。この子はただ者ではないと、オレの感性が言っている。
「今回のことで、国は分裂しようとしています。C国は肥大化と言っていい統一と分裂を繰り返すのが民族的な生理になっています。七十年続いた統一の時代は終わりました。時代が進んだ分、分裂の速度も早くなりました。分裂には騒乱が付き物ですが、わたしもひいおじい様も騒乱は避けたいと願っています。心あるC国人の多くもそう願っていますが、互いに疑心暗鬼です。そこで引っ張り出されたのがひいおじい様を筆頭にした私たち孫一族なんです。そして、その孫一族を助けてくださったのが、四ノ宮さんの一族なんです。私たちといっしょにC国に行って、C国の代表者たちを説得していただきたいのです。血を流さず、平和に分裂ができるように」
オレの心はビビっていたが、見抜いてもいた。
この文桜という少女は、一国のリーダーになる資質がある。AKBの総選挙で指原を予想した時よりも強く感じた。
「分かりました、ご一緒します」
オレの心の奥にあるものが、そう言わせた。
「よかった、分かってもらえて!」
文桜は、年相応の少女の顔に戻り、溢れる涙で顔をクシャクシャにした。うかつだが可愛いと思ってしまった。
「よく言った。これから文桜がする仕事の第一歩が終わった。さっそく出立しよう」
「あの、大使館の人たちにご挨拶とかは……」
「そんな者は、もう居ない。昨夜までに大使以下主だったものは、みな逃亡してしまった。日本政府も黙認している」
オレの想像力を超えて時代が動き始めている……。
『孫文桜』
裏門だったが、あっさり入れたのには驚いた。
なんせ、宣戦布告をしてきたばかりのC国大使館だ。日本は、この宣戦布告を受諾はしていない。世界中で、こんなに明確にケンカを売られても買わない国はないだろう。信じられないが野党が国会で受諾に反対して、与党の一部もこれに同調している。
理由は簡単だ。憲法が国の交戦権を認めていないからだ。
さらに信じられないことだが、この宣戦布告の原因になった佐世保沖海戦をやった日本の吉本司令を処分保留のまま謹慎処分にしたことだ。国民の多数と与党は吉本司令を支持していたが、人民党を始めとする野党のほとんどが吉本司令の更迭と懲戒解雇、凶器準備集合、殺人などで長崎地裁に訴えた。
世界中があきれ返った。
吉本艦隊がとった行動は、世界の海軍の常識からは当たり前を通り越して賞賛にあたいするもので、イギリスなどは『百年ぶりの日本海海戦』と政府声明を出したほどである。
オレも、そう思う。
武装した三隻の軍艦が、領海近くで射撃管制レーダーを照射し、砲口を自衛艦に向けたのだ。銃を構えて撃鉄を起こしたのに等しい。吉本司令の行動は、完全な正当防衛であり、自衛官として、差し迫った日本への脅威に対処した正当な任務遂行である。
元華族とは言え小市民としてのオレは。FBの意見に「いいね」を押すこととツイッターの意見を「リツイート」したり「お気に入り」に入れることでしかなかった。
そのオレが、孫文章なる人物から電話で指示を受け、警察が厳重に警備するC国大使館に入ったのだ。ガチでビビる。
オレは、大使館の応接室に通された。そこには八十ぐらいの老人と、どことなく、さくらに似た少女が柔らかい表情で座っていた。
「孫文章です。こちらはひ孫の孫文桜です。お見知りおきを」
電話同様の穏やかさで自己紹介をした。
「あ、え、四ノ宮忠八です。先祖のことは少しは知っていますが、僕はただの大学生です。なんの役にもたたないと思うんですが」
「そんなことはありません。我々は最初に井戸を掘った人を忘れません」
これは日C国交が回復したときに、時の総理大臣を褒め称えてC国が言った言葉だ。オレにもそれくらいの知識はある。
「五代前の四ノ宮忠義さんには、私の祖父は大変お世話になりました。心あるC国人は、その恩を忘れてはいません。おかげでC国は問題を抱えながらも、いままで独立を維持してこられました」
「ここからは、わたしがお話しします」
文桜がオレの顔を見つめた。似てはいるが、さくらには無い鋭さが目の奥に見えた。この子はただ者ではないと、オレの感性が言っている。
「今回のことで、国は分裂しようとしています。C国は肥大化と言っていい統一と分裂を繰り返すのが民族的な生理になっています。七十年続いた統一の時代は終わりました。時代が進んだ分、分裂の速度も早くなりました。分裂には騒乱が付き物ですが、わたしもひいおじい様も騒乱は避けたいと願っています。心あるC国人の多くもそう願っていますが、互いに疑心暗鬼です。そこで引っ張り出されたのがひいおじい様を筆頭にした私たち孫一族なんです。そして、その孫一族を助けてくださったのが、四ノ宮さんの一族なんです。私たちといっしょにC国に行って、C国の代表者たちを説得していただきたいのです。血を流さず、平和に分裂ができるように」
オレの心はビビっていたが、見抜いてもいた。
この文桜という少女は、一国のリーダーになる資質がある。AKBの総選挙で指原を予想した時よりも強く感じた。
「分かりました、ご一緒します」
オレの心の奥にあるものが、そう言わせた。
「よかった、分かってもらえて!」
文桜は、年相応の少女の顔に戻り、溢れる涙で顔をクシャクシャにした。うかつだが可愛いと思ってしまった。
「よく言った。これから文桜がする仕事の第一歩が終わった。さっそく出立しよう」
「あの、大使館の人たちにご挨拶とかは……」
「そんな者は、もう居ない。昨夜までに大使以下主だったものは、みな逃亡してしまった。日本政府も黙認している」
オレの想像力を超えて時代が動き始めている……。
0
あなたにおすすめの小説
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる